第30幕
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「オレ、父上の所に行かないと…!」
『んー、そうさせてやりたいのは山々なんだけどさぁ?』
そうは問屋が卸さないってね。
「まじ早く諦めてくれた方がうちとしては楽なんだけど〜?」
季節外れの桜が咲き乱れる庭に降り立った私とイバラ君を追ってきたのはギャルの方だった。てことは糸目はカカシの方か。
担いでいたイバラ君を下ろして物陰に身を寄せさせる。
髪の毛をくるくると指で弄ぶギャルだが油断はできない。クナイを持ち構えた。
『そっちこそ、ちょーっと見逃してくれちゃったりは…』
「するわけないじゃんうけるー!」
『だよねーっ!』
桜の花びらがひらひらと舞い落ちる中、私達は同時に動いた。
カンカンとクナイを打ち鳴らし合う中、何やら音に違和感を覚え視線を向ければ、ギャルは木製のクナイを使っていた。
わお。派手な見た目とは裏腹に雅な武器を使ってるもんだ。
『ねぇギャル!そのクナイお手製?!趣深いね!!』
「ギャルじゃないし!くれない ハンネ!!」
ぷんぷんと怒りながらもクナイを振るその手は正確だ。
ミナトやカカシはもっと鋭く姑息な切りつけ方してくるけれど、そんな彼らと比べたらこのハンネと名乗った子は全っ然可愛いし避けやすいものだ。
とは言え、やはり私も体術が苦手なため有効な攻撃はできない…。
「もう!逃げんなし!
手裏剣影分身の術!!」
一旦距離を置くと、今度は木製の手裏剣を投げつけてきた。
背後にはイバラ君が隠れているため弾き漏らしは許されない。そんなわけで、いっそ燃やし尽くしてやろうと素早く印を結んだ。
『火遁!豪火球の術!!』
分身した手裏剣が広範囲に降り注がれたためこちらも馬鹿でかい豪火球で応戦する。
やはり木製だからよく燃えるぜ。
桜の花びらの中に灰が混じる。月明かりのお陰でキラキラとして幻想的だ。
そんな中、武器が尽く燃えているというのに冷静なハンネが目についた。その唇は薄く弧を描いており何やら不気味だ。更に、目が合った瞬間キャッキャと笑い出したため、尚更気が触れたとしか思えない。
「あんたやっばいね〜!何がとは言わないけどうける〜!!」
『は?くそ失礼じゃん。何がとは言えよ』
散々人のことを脳内で不気味だとか気が触れたとかディスっておいて、今更お前が言うなって感じだよね。
『ぅ、おえっ…』
しばらく術のぶつけ合いや暗器による接近戦が繰り広げられるうちに、ようやく自分の体に起きた異変に気がつく。
ふわふわするような感覚に酷い吐き気。四肢に力が入らずそのままその場に尻もちをついてしまった。
目眩が酷く気持ち悪い。込み上げるまま胃の中身を地面にぶちまけた。
この感覚は身に覚えがある。根の者と戦った時にもくらったが恐らく毒だろう。
『っ…、氷遁……』
「命中精度やっば〜!どこ見てんの??」
ゆっくりだが印を組んでハンネを狙うも、歪んだ視界では狙いが定まらず全くもって当たらない。
体勢を起こすだけでもつらく地面に手を着いた。
「つらいでしょ〜この毒。でもあんたが悪いんだよ?中途半端な炎で夾竹桃は燃やしちゃいけないってのにさ〜?」
『く、そっ…』
「うちのクナイを全部避けられた時はまじ焦ったけど、あんたが馬鹿で良かった!」
夾竹桃?なんだそれは。もしかしてあの手裏剣だとかクナイの素材か?
燃やしてもダメだし刺されてもダメなのかもしや。そんなの今更気付いても遅いじゃないかチクショウ。
「アハハ!そうしてると虫みたいだねーあんた!」
『ぅぐっ!』
「姉ちゃん!!」
蹲り動けなくなった私を警戒しながら近づいてきたハンネは、攻撃してこない私を見て私の腹を思い切り蹴り上げた。
それにしても楽しそうに蹴りなさる。
「なッ、なんだしこれ!!」
もう1発かまそうと振り上げた足とは反対の足にすかさず飛びつき、押し倒しながら銀糸柩の印を結んだ。
氷の檻が形成され始めるのを確認し、完全に囚われる前に彼女を強く押して離れる。私も一緒に拘束されちゃあシャレにならないからね。
『はんっ。…迂闊に近寄るとか…お前こそ馬鹿でしょ…』
「はぁっ!?信じらんないんですけど!!あんた何──」
『ごめんうるさい』
氷遁造形術で檻を覆うように氷を張り、完全に外界とシャットアウトしてやった。ちょっと今ほんとに会話する元気も聞く気力もないから黙ってて欲しい。
ハンネが沈黙したのを見て恐る恐るイバラ君が近づいてきた。まともに動けない私を仰向けにするとすかさず口に何かを詰め込んでくる。
『ゴッフォッ!!!えほッ!!おほッ!!』
人が必死に呼吸している中突然口に入れられた粉末状の何か。
「ダメだよ姉ちゃん、吐かずにちゃんと飲まなきゃ」
もう一度言おう。突然口に入れられた粉末状の何か。
吐いたんじゃねえよむせたんだよ。
咳が落ち着いた頃、残りの粉末をまた口へと入れられた。やはり水は飲ませてくれなかったため、今度はむせ込まないようにと口に唾液をため、時間をかけて少しずつ飲み込んだ。苦いのに何か花の香りがして、若干ハーブティーっぽさがある。
どうやら、ハンネが原材料名というか毒の正体を明かした時から物陰で解毒薬を作ってくれていたようだ。
解毒薬を飲み込み終わった後も、対症療法として吐き気止め、痛み止め、目眩止め?の薬を飲ませてもらい、ほぼほぼ万全の状態へと戻ってきた。
『よっし、ここなら見つからないっしょ』
ハンネを捕らえた銀糸柩の強度を上げに上げ、念の為誰にも見つからないようにとイバラ君から教えてもらった隠し通路の奥へと隠しておいた。
よし、これでカカシの元へ向かえる。
「あっち、桔梗園の方から爆発音が聞こえるよ」
カカシがドンパチやっているようだ。
イバラ君にその桔梗園とやらに案内してもらいながら道を進んだ。
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