第28幕
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『よ………寄ってたかってなんでうちに集まんのさ…』
実家から我が家へと帰りほっと一息着いた時、丁度インターホンが鳴った。
聞こえたのがオビトの声だったからと、ドアスコープを覗かずに開けてしまったのが間違いだった。
「打ち上げだ打ち上げ!」
ドアを開けると、シスイとイタチが半ば引きずられるようにしてオビトに捕まっているのが目に入った。でも意外に満更でもなさそうなんだよなぁ。
丁度そこで会ってさ!じゃねんだよ。バレバレなんだよ嘘が。だってみんな普通に隠そうともせずに飲み物とかお菓子の入った袋持ってるもん。
打ち上げ自体は別にいいんだよ。でもさ、何故この狭い私の家に集まるのか。
オビトの家とかいいじゃん、一軒家で広いし。と伝えてみれば、だって片付けとか面倒じゃん、と返ってきた。いっけなーい!殺意殺意!
「悪い悪い。オビトさんがどうしてもお前に感謝の気持ちを伝えたいとか言って聞かなくてさ」
『あー、そんなら仕方ないな〜』
「言ってねーよそんなこと!!」
リビングに通してすぐにそんな漫才が繰り広げられる。さすが "精神が病んでることを除けば完璧" と書いてうちはと読む集団だ。お笑いへの造詣も深い。
「ミノリさんが困ると思って俺達も止めたのですが…面目ありません…」
と反省するように目を伏せるイタチの肩は小刻みに震えている。いやめっちゃ笑ってるじゃん。
そこにはすかさずオビトもツッコミをかましていた。
『あっははは!!!』
シスイはまだ分かるが、まさかイタチもボケが出来るだなんて…恐ろしい子…!
そんな意外性もあってめちゃめちゃ笑ってしまった。
クーデターの阻止が失敗していたら、今頃はこんな風に皆で笑い合ってはいなかっただろう。
あの時、少しでもダンゾウを止めるのが遅ければ…。フガクを説得することができなければ…。…きっと、一瞬にしてこの里は地獄へと変わっていた。
それなのに今こんな風に馬鹿みたいなことで笑っているだなんて。
そう考えると、尚更おかしくて笑ってしまう。
『くっくくく…ふふっ……………くっ…、ふ………』
「ミノリ…?」
1人で腹を抱えてついには蹲りながらも笑い続けていたが、昂りすぎたのか涙が出てきた。
今まで笑っていた私が急に肩を震わせ泣き出したため、その場が一気に凍りつく。
「お、おいミノリ…?!」
『…っふ、…くっ…ううぅ…』
「どっ、どうしたんだよ急に!?腹でも痛いのか…?!」
この3人の絡みほんと面白いし、皆とこうして無事に笑い合うことができて嬉しいし、こんな穏やかな時間を当たり前のように過ごせることを幸せに思う。
皆を困らせてるから早く泣き止まないとって思うのに、涙は勢いを増すばかりだ。
『ごめん……皆と一緒に…こうやって笑えるのが嬉しくて…』
「やっ、やめろ!そんなことでお前……お前ェ…!!」
俺も泣いちゃうじゃねぇか〜!!!とオビトが泣きながら肩を抱いてきて、もうどうしよう誰も収められないこの状況。
「……ありがとうな、2人とも。イタチも…」
「あぁ…」
『もう大好きだ皆ァア…!』
私達とは対称的にクールに振る舞うシスイとイタチを捕え、私とオビトの間に挟むようにしてハグをする。
こういう時はノリとテンションに全て任せるに限るさ。羞恥心に苛まれるのは後の私に任せよう。
『くぅ……っふふふふふっ…皆ぁぁ…愛してるぜぇっへっへっへ…』
「なんかミノリさん酔ってませんか?」
「いや、でも誰も酒なんて持ってきてないぞ。年齢的に飲めるのオビトさんしかいないし…」
『うっふっふっふ…うぅぅぅ……』
「泣くか笑うかどっちかにしてほしいな」
皆を抱く腕に力が入る。
この先の展開を知っているから、どんな残酷な未来が待ち受けていたかを知っているから。
今のこの時間が嘘みたいだ。
『ぐすっ……皆………生きててくれてありがとうね……』
「っはは………大袈裟だなぁ…」
*
*
*
「やっと2人とも落ち着いたみたいだな」
「悪かったな」
『大変申し訳なかった』
腫れぼったい目をシスイが用意してくれた温タオルで温める。
タオルで目を押さえながら正座する私とオビトを、2人はくすくすと笑った。
恥ずかし過ぎてもう顔からタオルを剥がせない。
「でも、本当に夢みたいだ。
オレの万華鏡でしか止められないと思っていたが…」
「そういえば、どうやってあのフガク隊長を止めたんだ?」
『えっ…それは…』
昨日ミナトに聞かれてから自分でも思い返してみて、だいぶ恥ずかしいことを言っていたことに気が付いた。今まであんなに醜態晒しておいて今更だが、とても言いたくない。
イタチは何も言わなかったが、明らかに興味津々な目でこっちを見ている。
目を逸らしながら言い淀む私に皆がきょとんと首を傾げる中、シスイは何かを思いついたようににやりと笑う。
「そんなに言いづらいならオレが手伝ってやろうか?」
『はっ?どうやって?』
「幻術」
『…………っ……?!』
今まで見たことがないほど…そう、あのミナトを凌駕するほどの俗に言う黒い笑みを見せるシスイ。驚きのあまり声が出なかった。
えっ、これは冗談…なのか…??
ちらりと横を見ると、オビトとイタチもすごい顔でシスイを見ている。
アッ…これ本気のやつか…!!
「…なんて、3人揃ってなんて顔してんだよ。冗談だよ冗談!」
「あっ…あぁ、そうだよな」
「すまん、俺は一瞬信じた」
いやあの顔は絶対本気だよ。
長い付き合いのイタチですらあんな顔をするぐらいなんだから。
…もしかしたら、何か良からぬ裏の顔を引き出してしまったのだろうか?
や、まぁ、人に裏なんて1つや2つや3つ4つくらいあるのが普通だし、別にいいんだけれども…なんと言うか…シスイには聖属性だとか光属性のイメージしかなかったから。
ちょっと、いやかなり意外だっただけだ。
「で、どうする?」
『ってやっぱ本気なんじゃねぇか!分かったよ言うよ!!』
傍から見れば好青年な笑みも、今この状況で見ればただの脅しでしかない。
私は幻術の才能が自分でもびっっっくりする程、なんなら他者も驚く程に才能がない。どのくらいかって聞かれると、簡単な幻術ですらかけられないほど。その上解術すら出来ないほどだ。幻術に嵌められたら九分九厘負ける。
それなのに、写輪眼の幻術なんて以ての外だ。
そんなわけで、絶対に幻術をかけられるわけにはいかないのだ。何を口走るか分かったもんじゃないし。
『えっと………。
……う〜っ恥ずかしっ…!…私達は…私達が理想とする関係の縮図だから………これが叶わないと思うなら……私達を見てほしい…みたいなことを…』
「は〜。なるほどな。他には?」
『他!?…えっ…他…?』
まさか全部言わせる気かこの人達。
この場に私の味方は誰一人としていないようだ。
顔が熱い。絶対今赤いだろうな。
『えっと……大切な人がうちはにいるから…。…うちは一族も…木ノ葉の仲間だから………失いたくない』
「…お前っ…本当に俺のこと大好きだな…」
『調子に乗んな!!』
「ミノリはオビトさんがってより、オレたち皆が大好きなんだよな〜」
「さっきも愛してるとか言っていましたしね」
『うわああああ……!!!』
羞恥心に苛まれるのは後の私に任せるとか言った過去の私、絶対許さねぇ…。
確かに、思い返せばとんだ綺麗事を言い放ちまくったと思うよ。さすが少年漫画の世界。部外者の私ですらそんな少年漫画の色に染まってしまったようだ。
まぁでもほんと、主に言葉だけでフガクが納得してくれたので良かったとは思う。
「あぁ、そういえば父が貴女に話したいことがあると言っていました」
『えっ、フガクさんが?
じゃあ皆が帰る時に一緒についてくわ』
なんだろう改めて。
全く心当たりが……いや、あるな…。
これはもしや相談役の話ではないか…。あああ急に会いたくなくなってきたぞ。
その後は皆でお菓子を食べながらちょっとした雑談やらオビトの恋バナに興じていた。余談だが、私が設立した "オビトの恋路を見守る会" にこの度シスイとついでにイタチが加わることとなりました。
大量に買ってきたお菓子が無くなってきた頃、私がフガクさんに呼ばれていたこともありお開きになることとなった。
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