第27幕
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「はぁ……はぁ…ッく、…どう、やってここに……?」
『いいのそんな細かいこと気にしなくて』
地面に手を着き蹲るシスイの背中をさする。
答えになってないのは許して欲しい。
朝会った時、ぽんと背中を叩いたどさくさ紛れに飛雷神の術式を仕込んだなんて言えないよね。
ゆっくり背中を撫でながら仕込んだ術式を回収した。これでもう証拠はない。
「…ぐッ……悪、かったな…。
……っはぁ……お前の…言ってた意味が、…分かったよ…」
『いいって。過ぎたことだし。
とりあえず、そんな体じゃ乗り込むのは無理だよ。今日は諦めよう』
顔色が悪いし息も全然整わない。毒だろうか…?
とにかく、ここは何よりも先にシスイの命を優先したいところだが…。
「くそッ…!!
クーデターは………ッ…止められないのか…っ!」
『言ってる場合か。
今は自分を第一優先で考えなさいよ………ってあーもうほら…!』
背後に降り立つ気配。
思いのほか早かったな。先程の場所から離れてはいないけれど、もう少しくらいは時間を稼げると思ったのに。
『……ちっ、油目一族か…』
ふとくすぐったさを感じて目をやると、私の腕から小さな虫が敵の1人の元へと飛んで行った。
「そいつを渡せ」
『ハッ、くたばりやがれ』
追いかけてきた者の中にダンゾウがいないとは言え、追っ手は5人。シスイを守りながら戦うのはちょっと、いやかなり骨が折れそう。
威勢は良くとも頬を伝う冷や汗はどうにもならない。
「後悔するな、よッ!!!」
毒に侵されたシスイを派手に動かす訳にもいかないし、シスイを優先するならば私への攻撃もある程度は諦めるしかない。
投げられた手裏剣に備えクナイを構えた。
「悪い、遅くなったな」
覚悟はしたものの、予想していた痛みは訪れなかった。
その代わりに目の前にはオビトが立っていて、激しい金属音と共に手裏剣が散らされた。
全て弾いてくれたようだ。さすが隻眼とは言え写輪眼。
『ほんとだよ何してたのさ』
「俺だって色々あったんだよ」
敵を睨んだままそう言うオビトの服はところどころ擦り切れたり土で汚れている。やはりこいつも襲撃されていたようだ。
『オビト、ここへは私が残るからシスイ君を…そうだな、私の家にでも連れてって』
空き巣などを防止するためにと、引越してすぐにクシナが作って貼ってくれた結界札。無理に家の中に入ろうとすると発動し、相手に激しく電流を流した上でミナトの持つ片割れの札へと通知…というか合図が行くのだとか。
そんな物騒なその札を私は不要だと言ったけれど、まさかこんな風に使うことになろうとは。恐るべしクシナの先見の明。
もちろん、無理に入ろうとすればオビトにでさえも罠が発動してしまうため、入る時には神威を使えと念押しした。
「馬鹿!ここは俺が残る!お前こそ…!」
『この時間ならまだリンが木ノ葉病院にいると思うんだ』
オビトもまた、強力な万華鏡写輪眼を持っているためここへ置いていくわけにはいかない。今ここにダンゾウはいないが、虎視眈々と隙を伺っているのではないか…なんて考えてしまう。
それに、飛雷神で全員纏めて移動することも出来なくはないが、こいつらをそのままにして行くのは単純にただただ腹が立つのだ。
特にダンゾウ。原作で私の推し達に不幸な道を辿らせた張本人。いっそ全身派手に吹き飛んでいれば良かったのに。
「逃がすかっ!!!」
『お前の相手はこっち!』
私が飛雷神のクナイを投げるのとオビト達が神威で消えるのは同時だった。
「また飛雷神とやらか?同じ術とは芸がないな」
『馬鹿の一つ覚えで悪いね!』
投げたクナイへ…ではなく、普通の瞬身の術で目の前の奴とは別の敵への距離を詰め急所を切りつけた。やっぱ私に体術は向いていないようで、不意打ちで切りつけるのが精一杯みたいだ。
背後から囲まれたため、先程投げたクナイへと飛び印を組む。
『氷遁
奴らの頭上へいくつものでかい
でもやはり根、甘くない。2人は巻き込むことが出来たが、他2人は上手いこと土遁を使ったようで避けられてしまった。
それでも残るは2人。
リーダー格の奴ともう1人は…先程虫がたかってた…じゃなくて飛んで行った…そうだ、油目一族の奴か。
大丈夫、何とかなる。……虫は厄介だが…。
『……ぁれ…?』
視界が一瞬歪んだ。
ぶわっと嫌な汗が吹き出、鼓動が早くなる。更には頭を酷い痛みが襲ってきた上に、急な足の虚脱感で堪らず膝を着いた。
「やっと効いてきたか」
油目一族の得意げな態度が最高に腹立つが、こちらはまともに立てないので何とも言えない。どうやら、さっき私の腕についていた虫は毒虫だったようで、恐らくシスイもこいつにやられたのだろう。
『くッそ…』
吐き気がする。二重にぶれる視界が気持ち悪い。
完全に動けなくなる前に決着を付けなければ…。細かく震える手で印を組む。
『氷遁──』
「ミノリ……さん…?」
場に似つかわしくないやや高めの声。
先に動いたのは敵の方だった。
「うっ、うわあっ!!」
『サスケ…!』
毒のせいで体が思うように動かず、バランスを崩して地面に手を着いた。
慌てて逃げようとしたサスケの首をリーダー格の男が捕える。
「さて…この状況でお前はどうする…?」
「ミノリさん…!たっ、助けて……!」
何、この状況。
なんで本来里を守るべきはずの忍が、同じ里の人間─それも子どもを人質に取ってるの?
なんで。
なんで?
『…ほんっとにさぁ……』
サスケがどうのこうのってよりかは、単純にその状況に腹が立つ。忍として恥ずかしくないのか。どんな思惑があれど、里を…人を守るという使命の元行われた行動だったと思っていたのに。
目的の為なら手段を選ばないと言うことか。
あぁ腹が立つ。
ほんっとに腹が立つ!!!!
─パキンッ
「なッ…?!たっ、隊長!!」
辺り一面が凍りつき冷気が身を包む。
リーダー格の男は、サスケを掴んでいた腕だけを残して瞬間冷凍され、そして粉々のさらさらに砕け散った。
まるで、雨隠れの村で見た零尾の記憶のように。
『──
尻餅をついたサスケを再度捕らえようと敵が動いたためすかさず印を組んだ。
「くッ、ぐあっ、あ"あ"あ"っ!!!!!」
宙に形作られた無数の氷の剣が敵を追尾するように降り注ぐ。
特に威力の調整なんてしなかった。こんな奴ら、死んだっていい。里の仲間を人質に取るような奴にこの里で生きる資格なんてない。
氷片が刺さった部位から凍りついていく敵のそばまで、覚束無い足で近づいて行く。
「っ、この化け物がッ!」
『ハッ、……今更言う…?それ』
1発殴ってやろうと思ったが、ぶっちゃけ立ってるのがやっとなので諦めた。ここで一生オブジェになってろ。
「ミ、ミノリさん……」
サスケは先程の場から全く動いていなかった。怒った私を見て怖がっていたのだろう。
尻餅からすぐに体勢を立て直したのに、敵に隙が出来ても私のそばへくることを躊躇したのだから。
まぁ気持ちは分からなくもないが。
『おいでサスケ。お前に怒ってるわけじゃないよ』
「ミノリさん…オレ……ごめんなさい…!」
『いいよ。家まで送る…帰ろう』
万全だったら殴ってたけどね。
飛雷神で飛ぶべくサスケの肩に触れる。
『……生きてんなら後でダンゾウに伝えて。
くたばれ!!って』
本当は直接言ってやりたいが、そんな元気もないのでかろうじて息のある油目一族の根に伝言を託すことにした。
伝わったら嬉しいが、まぁ別にいつか直接伝えるつもりだからどっちだっていい。
「その必要はない」
『っ…!!』
突如聞こえた声に勢い良く振り返ると、森からのっそりとダンゾウが姿を現した。
「ワシ直属の部下相手にここまで健闘するとは…さすが養子とは言え黄色い閃光の娘」
『そっちこそ。さすが卑の意志を継ぐ者』
ダンゾウを睨みつけながらサスケを後ろに隠す。
出来ればここで仕留めてついでに埋めてやりたかったが、そんなこと言ってる場合じゃない。
嫌な汗が全身から吹き出るのを感じる。ぶれていた視界はついにかすみへと変わり、今は殆どシルエットぐらいしか分からない。
痩せ我慢は得意だけれど、正直私の体はもう限界を迎えている。悔しいから口でだけは負けてなるものかと虚勢を張っているだけだ。
「逃がさん!」
飛雷神で戦線離脱するため背後のサスケに手を触れようとした。が、その一瞬の隙をついて間合いを詰められたため、慌ててサスケを突き飛ばしてその場から遠ざけた。
『ぅ"っ…ぐッ…!』
首を掴んだ状態で持ち上げられ息が出来ない。
片腕は吹き飛ばしてやったからと、ちょっとした油断があったのかもしれない。原作であんだけ馬鹿の一つ覚えみたいに使っていたのに完全に忘れていた。
『イザナギ…!』
「ほう…。イザナギを知っているとは大したものだ」
この至近距離でやっと気付いた。私が吹き飛ばしてやった左腕は何事も無かったかのようにくっついていて、あんだけ血塗れだった服も綺麗さっぱり元通りではないか。しかもご丁寧に頭の包帯は外され、視力を失った写輪眼…だったものをひけらかしている。
まずい。こんな毒に侵された状態で、しかもサスケを守りながら戦うだなんて、五体満足のダンゾウ相手に出来る気がしない。
隙をついて逃げなければ…!
『がッ…はっ…!』
「ふんっ、スガルの毒蟲の毒を食らっても尚ここまで動けるとはな。さすが化け物だ」
『ど…っちがッ…!だ、よッ…!!』
ダンゾウの拘束を外そうともがくが、大して力も入らないこの体では最早焼け石に水。
「ならこれではどうだ」
『っ…?!』
手に力が入らない。
自覚したその瞬間、ダンゾウの手を掴んでいた私の腕に何かの呪印のようなものが浮き上がった。
「─
これで体の自由が利くまい」
『くッ…そ……』
意識が遠くなる。
こんなとこで気を失うわけにはいかないのに。
くそっ…。
「──火遁 豪火球の術!!」
完全に意識を失う直前、遠くの方でそんな声が聞こえた。
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