第26幕
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「やっぱりお前に話して良かったぜ」
寂しさ溢れるこの空間でも、この太陽のような男と一緒に話していれば、不安感だって嘘のように消えてしまう。
さっきの焦げ魚を食べてた時の心ここに在らず状態はどこへやら、子どもの頃から変わらない大輪の花みたいな笑みをニカッと見せてくれた。
まだ何も解決はしていないけれど、誰かに話すことで少しだけでも心が軽くなったのなら良かった。
私も。お前が頼ってくれてすごく嬉しいよ。
そう伝えれば、少し気恥ずかしそうに頬をかいてそっぽを向いた。
「……実を言うと、俺はお前のことは1番信頼してるんだよ」
そっぽを向いたままぽつりと呟かれた。
顔は見えないが耳が赤い。オビトにしては珍しいことを言ってくれるものだ。
「あの時………お前が俺を救ってくれたから…」
私がカカシの雷切に突っ込んだ時のことを言っているようだ。
また懐かしいことを…。
「あの時リンが死んでいたら、今ここでこうしてお前と喋る俺はいなかっただろうな。だから、リンを……俺を救ってくれてありがとう」
『オビトに感謝される謂れはないよ』
あの時のあれは、リンでも、ましてやオビトのためでも何でもなく、完璧に自分のためにやったことだった。大切な友人を失いたくない。そんな一心で。
結果的にオビトが救われるという形になっただけだから、改めてお礼を言われることではないのだ。
私がこの世界で生きる限り、変えられる未来は変えてやる。
今までがそうだったようにこれからも。うちは事件の阻止だって、全ては新たな友人や仲間を失わないようにするための1つの手段でしかないのだから。
『まぁでも…そうだな…。
そんなに感謝してくれるなら何かしらで返してもらおうかな?』
「なっ!…なんだよ」
『絶対に火影になって、そんでリンとも結婚なんかしちゃったりして幸せに暮らしてね。私はそれでいいよ』
リンも一途だから叶わなそうな願いだけれど。
と、一瞬頭を過ぎったが可哀想だから本人には伝えないでおこう。
『……ふふ』
子どもの頃、私、オビト好きかも…?…ってなったことがあったけれど、あの時の気持ちの正体がようやく分かった。あの時点では "お気に入り" という認識で落ち着いたのだけれど、この感情を分かりやすく言えば…尊い。そう、つまりオビトは私にとって "推し" なのだと気付いた。
推しには幸せになってほしい。
でもこの理論でいくと、幸せになってほしいと思ってるミナト班からうちはクーデター反対派の皆は総じて推しということになってしまうな…。ハッ…!これが箱推しってやつか…!
「遅かったですね、オビトさん」
その後オビトに連れていかれたのは里の外れの渓谷だった。ここをずっと下っていくとどうやら終末の谷があるらしい。
私達が着いた時には既にイタチとシスイが待っており、彼らクーデター反対派はいつも人気のないここで密会しているのだそうだ。
『おぉ、イタチ君久しぶり〜。大きくなっ…いやほんとに大きくなり過ぎじゃない?』
「お久しぶりです、ミノリさん。フフ、成長期ですからね」
イタチの服装を見るに、彼はしばらく見ぬうちに暗部入りを果たしたようだ。この会わなかった7年もの間に身長は優に抜かされ見下ろされている。いや待て待て、7年という歳月ならばいつの間にか見下ろされるぐらいの身長になってもおかしくはないんだけど、よく考えてみて。この子12歳。
成長期という言葉で何事も解決できると思うなよ。
少しだけイタチやシスイとの談笑に興じるも、イタチは任務の合間を縫って来ているのだとかで早速本題に入ることとなる。
「ミノリ、直球に言う。
うちはのクーデターを止めるため、オレ達に手を貸してくれ」
『うん、いいよー』
「ははっ…軽いなノリが」
キリッとした表情だったシスイも、私のあまりにも緩い返事を聞いて苦笑せざるを得なかったようだ。
むしろ私から頼みたいぐらいだった。
うちはではないこの私を信頼して頼ってくれるのだから、感謝こそすれ拒否などするはずがない。
『他に仲間というか同士はいるの?』
「………いや…。
彼らは良くも悪くもうちはだ。結束は固い」
それだけ里に不満を持っている者が多いということか…。父親が火影をやっているだけに少し複雑な気持ちだ。
元々木ノ葉警務部隊というものは、二代目火影の千手扉間がうちは一族への信頼の気持ちを表すために創設したとのことだが、素直にそう受け取る者はうちはにはいない。里の政から遠ざけられたと不満を募らせ今こんなことになっているのだから。
『まぁでも…気持ちは分かるなぁ…。んな悠長なこと言ってる場合じゃないけど』
九尾事件の時にもまなびや ガク里抜けの際にもうちは一族の関連が疑われ、ついには監視対象となった。そしてその後も何の進展もなくずるずるとここまで来てしまったのだ。
疑いが晴れるのならばと協力をしてくれてはいるが、それもいつまで保つだろうか。
強大な力を持つ者はいつの時代も恐れの対象となりがちだ。
しかも精神的に不安定なあの "うちは" なのだから尚更シビアになるのも分かる。いい例がうちはマダラだ。
『…かと言って、暴力で解決する訳にも行かないしね』
「それでは本末転倒だからな」
『……うちはの関連を疑われてる事件が解決したら何か変わるのかな…』
黒幕の見当でもつけられればうちはと里で協力して捜査をし、そのついでにうちはへの待遇の改善とかも出来るかもしれないが…。
黒幕が "うちはである" ということしか分かっていない今、今すぐにこの事件を解決することは難しい。
オビトの闇堕ちを回避したため、今マダラの手足をしている者が誰か、見当さえつかない。もしかしたらマダラ本人がやっているという可能性も無きにしも非ずだけれど…。
仲間が4人集まったとは言えども、その日は一切何も進展することなく終わった。
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