第26幕
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『あれ、なんで家知ってんの』
シスイとの任務から数日後、我が家にオビトがやってきた。
最近会えてなかったから引越し先は教えられてなかったのに。
クシナとかが教えたんかな。
何の用かと尋ねれば、ちょっと言いよどみながら修行へと誘われた。
なんでちょっと言いにくそうにしたんだろう。そんな口に出すことをはばかられる内容でもないだろこれ。
断る理由もないし、私も丁度オビトに用事があったからと快く引き受けた。
パンッ!!
私のお気に入り修行スポットの河原にて、例の如く魚の破裂音が響いた。
去年リンに教わって以来ずっと練習しているのに、なかなか成功しない掌仙術。前のようなド派手に臓物ぶちまけながらの破裂ではなく、ちょっと軽く破ける程度の破裂音となっただけ進歩しているとは思うが。
やれやれ、また今日もつみれ鍋だよ。
オビトはと言うと、センチメンタルな瞳で私の様子をぼーっと眺めながら、私が失敗して破裂させた魚を次々に焚き火で焼いている。っておい焦げてる焦げてる煙!!!!
『なんでそんな今日上の空なの?』
自分で誘ってきたのに。
昼休憩と称してオビトが焼いてくれた魚を食べながら焚き火を間に向かい合う。いつもならば大爆笑で私が魚を破裂させる様子を見ていただろうに。オビトが感傷的な目をしているだなんて似合わなすぎてとても不安になる。
先程の焦げた魚をしれっとオビトに持たせたら気付かずにそのまま食べてるし、本当に病気なんじゃないかこの子。
「実は……お前に相談があって…」
『相談…?』
「………」
やっと喋ってくれたと思ったらまたオビトは口をつぐんだ。
そんなに言い難いことなのかな。せっかく私を頼って尋ねてきてくれたのだから急かしたりなんてしないけれど。
「……誰にも聞かれないように話したい」
『あ、うん。それじゃファアァ!!??』
のっそりと立ち上がって急に手を掴まれたかと思うと、いつの間にか発動していたオビトの右目の写輪眼に吸い込まれるかのように場所が転換した。
これはトラウマになる。せめて予め言ってから使ってほしい。
きょろきょろと見回せば、先程の自然溢れる河原とは打って変わり、青みがかったモノクロの直方体が連なる無機質な空間へと変貌していた。
これは…アニナルで見た!オビト固有の瞳術 神威だ!神威空間だ!
挙動不審になる私に、丁寧にもオビトはこの神威のことを説明してくれた。
アニメと同じで音の響かない寂れた空間に、隣にオビトがいるというのに少しだけ背筋がゾワッとする。私も飛雷神の術という時空間忍術を使うからよく分かる。ここに置いていかれたら最後、絶対に出ることは出来ず、ここで朽ち果てるのを待つのみとなるのだろう。…オビトは敵に回さないようにしよう。
……ん?でもどこで万華鏡写輪眼を開眼したんだ?
「…悪かったな。修行ってのはその…建前だったんだ」
『うん』
不思議なことに、光源なんてどこを見渡しても全然ないのに何故か周りが薄ら明るい。まぁあんまり深く考えちゃダメなんだよね、こういうのは。
適当にその場に座りオビトが話してくれるのを待つ。
「それで…相談って言うのは……」
『……』
「……その…………」
『……』
「…………」
いつまで渋る気この子。
流石に待ってらんないよ全く。
『オビト』
「、!」
真向かいから隣へと少しだけずれ、そのふわっふわの髪を撫でた。
右頬に残った傷は痛々しく、オビトと再会した時のことを思い出す。見てるだけで胸が張り裂けそうになるくらいに悲しいあんな顔を、私はもう二度と見たくはない。
子どもの時から苦労を重ねてきたこの可哀想な友人の悩みの種を、どうにかして解決することはできないだろうか。…そのためにはまず聞かなくてはいけないんだけども。
私達がお互い木ノ葉の忍である限り、お前の敵になるなんてことは絶対にないからどうか安心して話して欲しい。
無言で髪を撫でながらオビトの目を見つめた。
「……やめろって。もうガキじゃねえんだから」
少しの間を置き、オビトはムッとしながら私の手を掴む。
確かに、かつてのお前と比べたらそりゃ大人になったのかもしれないが、いくら年上だとは言っても私の中では弟みたいな感覚があって、どうしてもナルトと同列の扱いをしてしまう。
子どもっぽく口を尖らせたのも束の間、すぐに深刻そうに目を伏せた。
「実は……俺の一族がクーデターを計画しているらしくて…」
うちはと関係ないお前に相談することじゃないとは思ってんだけど…とオビトは続ける。
内心ほっとしながら相槌をうつ。
良かった。シスイにはあぁ言ったけど、案の定何のアクションもないから不安になっていたんだ。オビトに聞いてみようと思ったことをまさか本人から言われるとは。
『話しづらいだろうに相談してくれてありがとうね』
他に誰かこのことを知っている人はいるのかと聞けば、イタチとシスイの名が上がった。"らしい" という言い方から察するに、このことは彼らから聞いたのだろう。
オビトはよく適当な理由をつけてうちはの会合をサボっていたし、クーデターのことも今更知ったのだそうだ。
『…きっと、うちはがクーデター起こしたら周りの国もここぞとばかりに攻め込んでくるだろうね』
「あぁ…。やっと一先ず終戦まで漕ぎ着けたってのに……また、戦争になるだろうな…」
さっきから掴まれたままの手を強く握られる。いッ、痛!力強っ…!!
無自覚だったようで、私が一瞬顔をしかめたのを見て慌ててその手を離してくれた。
その代わりに今度は私がオビトの手を掴み握り返す。
『絶対に止めよう』
オビトにと言うよりは、自分に言い聞かせるようにそう呟いた。
止めてみせる。絶対に。
どんな手を使っても。
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