第25幕
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「ぐぉおおおおお……ぴすぅ~……ごぉおおおおお……ぴすぅ~……」
「すぴー………すぴー……………」
「………………」
寝られるわけないよね。
いや、別にさぁ、男に囲まれてなんて寝られない…!なんてことはないよ?残念ながらそんな繊細じゃないからさぁ。
でもこれは完全に予想外でしょ。
若そうに見えて流石2児のパパだよもなかさん。普通におっさんのいびきじゃん。
それなのに宇宙さんはあんな大いびきの横ですぴすぴ言いながら寝られるんだからすごいわ。確かアカデミー時代からの後輩だったとか聞いたけど…なんでだろう、寝る時を共にしたこともあったとかで慣れてんのかな…。
シスイはと言えば、アイマスクと耳栓をして寝ておりました。用意周到すぎて笑えない。
─カララ
『おっ、涼しい』
どうせ夕方まで昼寝したし、早々に寝ることは諦め窓から外に出た。ベランダとかはもちろん無いので、普通に屋根の上に出てきましたわ。
屋根の上からの景色は、もう暗いから星空以外見えない。星空なんて木ノ葉でも外れの方に行けば普通に見えるから特に大きな感動もなく、ただ風を受けながら大の字になるのみよ。
『………静かだ』
遠くの方で酔っ払いの声とか虫の声、そして田舎特有のポッポー→ポッ↑ポー↑は聞こえるけれど、それでもとても静か。流石に屋根の上まではもなかさんのいびきも聞こえてこないようだ。
案外ここで寝てもいいかもしれない。静かだし涼しいし。
『…………うん…?』
目を閉じたはいいけれど、その分他の感覚が鋭くなるからか、先程は分からなかったが風に乗って花の香りや硫黄の匂いがすることに気が付いた。
あぁ、そういえば地元民が言ってたな。自然に湧き出た温泉があるって。…その匂いかな?
ん。
いいこと思いついた。
さっきは逆上せて1つしか温泉入れなかったし、今からその天然の温泉とやらに行ってみようかなと。
『よっ、』
そうと決めれば行動が早いことに定評があるからな、自分で言うのも何だが。
高台に上り、湯気が出ていて硫黄の匂いが強いところを探せば、ポイ捨てやタオルの置き忘れなどを注意する看板が立てられたどう見ても当たりの天然温泉を発見した。
『おぉ、まさしく秘湯だね』
木々で囲まれたその温泉には2つのこじんまりとした滝があり、そこから水とお湯が流れてきていた。
立て看板の説明によれば、それぞれ川から水と、この温泉の源泉から熱湯が流れてきているらしく、どちらの滝に近付くかで体感温度を調節しろとのことらしい。滝のある温泉なんて初めて見たけど、めっちゃ画期的ぃ!
ところでだが、よくこんな夜にこんな街灯もない場所ですらすらと看板が読めるでしょ?
温泉の真上はぽっかりと空がひらけていて、そこから綺麗な満月が見えるため視界には困らないのだ。
なんか既視感。ミナトに初めて会った時もこんな感じだった。あの時は洞窟…というか洞穴だったけど。
『いえーい』
月明かりの下、浴衣と下着を脱ぎ捨て温泉に飛び込…みはしないけどついテンションが上がっていえーいとか言ってしまった。
でも仕方ないよね。一人で月夜の天然温泉に入るだなんてさ、こんな経験なかなかないでしょ?テンション上がるに決まってるじゃん。
『………はぁ……』
水の滝に近いぬるめのところへと泳いでいき、岸に頭を預けて体の力を抜いた。
あ"ーーー、ここに住みたい。
『………』
月をしばらく仰ぎ見ながらぼーっとする。
私は頭が良い方ではないから、自分の行動が及ぼす影響だとかは正確に予測出来ないし、その結果を起こすための最善の行動とかも思いつかない。
取り急ぎうちは事件を阻止したいとは思うけれど、私はどうしたらいいんだろう。
シスイがダンゾウのせいで死んだみたいな記憶はあるけど、なんでだったかはそんなよく覚えてないんだよね。シスイもイタチと同じようにうちはのクーデターを阻止しようとしていて、でもダンゾウに邪魔されて、イタチに目を託して自殺…したんだっけな。
でもなんでダンゾウに邪魔されたんだ…?ダンゾウはダンゾウなりに里のことを考えてたってのは覚えてんだけど…。うちはが嫌いなんだっけ?あぁ、シスイの目を奪うためだっけか。は?自分のためじゃん。
まぁ、とりあえずシスイを守ればいいのかな?そしたらなんか…ほら、イタチとシスイでなんとか頑張ってくれるでしょ。
よしっ。そうしよう。
難しいことは私よりも頭のいい連中に考えてもらうべきだ。
『よっ、こい、しょっと』
着の身着のままで来たためタオルなんて物はないし、巻物ホルダーも諸々置いてきたので口寄せることも出来ない。
まぁ、自然乾燥でいいっしょ!みたいな楽観的な結論に達したので、足湯のように足だけ温泉につけたまま岸に腰掛けた。
ぬるめのところに浸かっていたとは言え、上がった瞬間は気持ちいいけどしばらくこうしてると流石にちょっと寒い。
気を紛らわすために足を動かしてお湯をバシャバシャする。
ある程度乾いたらもう浴衣を着てしまえばいいさ。それまでの我慢我慢。
「おまっ…なっ、お前…!」
『シっ、……!』
「…………」
『…………』
目と目が合う~!!!瞬か~ん好~きだと~気付~いた~!!!!って気付くかアホ!!!!!
いやアホは私だ。あまりに動揺し過ぎてお互いすぐに動けず謎に見つめ合ってしまった。その間恐らく…30秒はあっただろう。お互い驚いた顔で、でも身体は動かなくて、シスイなんかは驚いた時のポーズのまんまでさ、傍から見たらひどく滑稽な光景だろうな。
先に動いたのは私だった。というか私の口だった。
『そこの服取ってくんない?』
なんでっ!?
自分でもびっくりだよ!いくら足元にあるからって物を持って来させようとすんなよ私!!
「お、おう…?」
いや応じんなやっ!!
お前昨日嫁入り前の娘が~とか言ってただろうが!!登場人物皆馬鹿か??!!止めろ!!お前は私の理性だろ!!???って何言ってんだ私は!私が一番馬鹿だ!!この馬鹿!!
思いのほかパニクっている。主に私が。
パニクり過ぎて思考回路がバグったのか、ここで恥じたら女が廃るぜ、みたいなそんな謎の精神が生まれつつあった。廃る女もないよもはや。
シスイは段々冷静さを取り戻したのか、私の浴衣類を取ってはくれたが、顔を背けながら手渡してきたし、私が服を着る時にもずっと後ろを向いてくれていた。
私がただの痴女みたいじゃないか、なんなんだ。
『誤解しないでほしいんだけど…』
「おぅ…」
『さっきの私は冷静じゃなかった。申し訳ない』
「いや…オレも悪い」
こんなに誰かと気まずい雰囲気になったことが未だかつてあっただろうか。あってたまるか。
なんでこんな所にいるんだよと、自分のことを棚に上げて聞いてみれば、私が外に出たのを気配で察知してはいたものの、全然帰って来ないからと心配して探しに来てくれたのだそうだ。
どうしよう悪いのは私だけだった。
『あー、あのさ、最近困ってることとかない?』
黙々と旅館に向かって歩くのも精神的にしんどく、空気を変えるためにも話を逸らすことにした。
「いや………あー、お前の貞操観念が低いことが最近の悩みだな」
『忘れろ。
もっとさ、あるでしょ。例えば一族の中でどーのこーのとかさ』
すると前を歩いていたシスイがバッと振り返った。
しまった、直球過ぎたか…。
「お前………。
………いや、やっぱないな」
まぁそうだよね。一族のことをそんな簡単には教えてくれないよね。それもこんなまだ会ってそんなに間もないやつに。
『私は君を友達だと思ってるから。イタチ君も。あと知ってるとは思うけど同期のオビトもさ。まだ君とは2回しか会ってないわけだけど、私にとって既に皆は大好きで大切な仲間なんだよ。
だから、関係ないなんて思わないで頼ってほしい。どんな形であれ私は君らの力になりたいんだ』
「………考えとくよ」
全然期待はしてないけどね。
端から私を頼ってくれるとは思ってない。でも別にいいんだ。こっちだって勝手に動くし、あと念の為オビトにも声をかけておくから。…あいつもたぶんクーデターには反対してくれるだろうし。
あの後は、やはりもなかさんのとてつもないいびきのせいで寝ることはできず、ただ目を瞑って耐えるだけの時間となっていた。
日が昇って間もない頃にチェックアウトを済ませ、予定していた通りに飛雷神の術で木ノ葉の里へと帰還した。帰ってくる前に湯の国を出たところにこっそりと飛雷神の術式を残して。いつかまた行くんだうふふ。
報告はシスイが行ってくれるとのことだったため、私は自宅へと帰って寝直すことにする。
散々な1日だったが、言いたいことは言ったし今後の方向性も決まったしでなかなか実りある時間だったと言えよう。
自分の言動や行動が今後に何かしらの良い影響をもたらしてくれると信じたいものだ。