第25幕
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『ぐわぁーー~~!』
なんていいお湯…。生きてて良かった…。女子らしからぬ声が出てしまったのも致し方ない。
「はははっ、なんて声出してんだよお前は!」
竹垣の向こうからシスイやもなかさん達の笑い声が聞こえてきた。
えっ。普通に入ってんじゃんシスイ。しかもエンジョイしてるみたいだし。あんな渋っておいてさぁ別にいいですけど。
湯の国 湯隠れの里でも屈指の高級旅館らしい。地元民は無料の銭湯だとか自然に湧き出た天然温泉に入るから絶対に行かないって言われた場所だ。
どうせ1泊だしお金も勿体ないからと団体部屋を借り、そして部屋に備え付けの別々の効能を持つという露天風呂に男女で分かれて入っているわけだ。流石高級温泉旅館。部屋に効能ごとの露天風呂つけるとか流石すぎて流石としか言えないね。
ちなみにだけど、この部屋はこの旅館の中でも安い方の料金なのだが、支払いは全て我儘を言った私持ちです。2ヶ月分の家賃が飛んでったけど、疲れも一緒に飛んでったので良し。この温泉にはそれだけの価値がある。
「──んですか?」
「──何を────ですか…」
私が今入る温泉には主に疲労回復、健康増進の効能があり、他の皆が入っているお隣の温泉には美肌効果があるのだと。本来なら女のお前が美肌効果のある温泉に入れやって感じだけど、そもそも私は疲労回復のために来たわけで。てか別にあとで交換すりゃいいだけだからと先にこっちに入れさせてもらったわけだ。
「オレは────ですよ」
『……ねえ!一人風呂寂しいからさあ!変化してそっち行っていい!!?』
お湯を満喫はしていたけれど、皆して私を差し置いて楽しそうに歓談している声が所々だけども聞こえるものだからちょっと寂しくなってくる。
いいなぁ女の子が一人でもいれば良かったのに。
「馬ー鹿お前、オレには写輪眼があるんだぞ!」
『いや見なきゃいいだけじゃん!』
まぁ男は男で積もる話もあるのだな、きっと。…なんて思っとくことにしよう。仲間外れは寂しいからそうやって無理矢理納得するしかない。
逆上せる程長時間浸かってしまい、ぼーっとする頭で浴衣を着て部屋に戻れば、私が上がったことを察知したもなかさんと宇宙さんはいそいそとお隣の温泉へと入って行った。私と同じだけ湯に浸かってたのに梯子できるとかすごいわ。
「おっ、やっと上がったのか」
シスイは結構早めに上がってTVを見ていたようだ。
色違いの浴衣を着ながらあぐらをかいてお茶を飲むその姿は流石うちは。芸術ですね。
「ってお前はまた!男のイタチでさえ髪をかわかしてるんだぞ!」
『君は?』
「オレはいいんだよ短いから」
『してないんかい』
ある程度のタオルドライはしたけれど、急な眠気がさぁほら。…とか言って、元々あんまりドライヤーは使わない派なだけだ。
『はぁ…ねっむ…』
「お前なぁ……」
畳の上にタオルを敷き、その上に髪を広げるようにして仰向けに大の字で寝転んだ。ご飯の時間になったら起こしてくれと言い残して私は寝ることにする。
シスイが何か言っていたが、風呂上がりで微睡み始めた私には聞こえなかった。
*
*
*
「悪かったって。いい加減機嫌直せよ」
部屋に運ばれた豪華絢爛な料理を黙々と食べ進める私にシスイは言った。もなかさんも宇宙さんも何度も頭を下げている。
『別に機嫌悪くありませんが。むしろ超ご機嫌ですけど』
もなかさん達にはとばっちりを食らわせて申し訳ないとは思うが、シスイこの男、ちゃんと仮眠という名の昼寝前に "ご飯の時間になったら起こして" と頼んでいたにも関わらず、まさかの昼食の時間でなく夕食前に起こしてきたのだ。
昼食は旅館で出ないから外食となるのだが、ついでに街も散策出来るからと私も行きたかったのに…!くそぅ…!
まぁ、一応声はかけてくれたらしいんだけどさ、死んだように眠っていたからそれ以上は声かけなかったんだって。だからシスイなりの優しさだったわけで、起きられなかった私も悪いからと、悔しい気持ちはあれどそこまで怒ってはいない。
あと、単純に夜ご飯が美味し過ぎてもはや昼のことはどうでもいい領域になっている。
だからさっき言ったことは全くもって嘘じゃない。超機嫌いい。
ただ、まだ私が怒っていると勘違いしているみんなの反応が面白いから真顔で黙々と食べてるだけだ。
とは言え、私はとても美味しく食べているが、みんなのご飯が不味くなるのも可哀想だしと表情を崩してあげることにする。
『ふっ…いいよもう。本当に怒ってないって』
「ホントか~?」
『本当に怒ってたらガン無視してたね』
ほっと安心したようにため息をつくもなかさんと宇宙さん。もなかさんは家でも奥さんと娘さんのしりにひかれているらしいし、宇宙さんもまた、年下の彼女さんをよく怒らせて今みたいな空気によくなるらしい。この2人には任務中ほんとに気を遣わせまくって申し訳ないな。
.