第22幕
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さて、そんなこんなでこの里への滞在最終日となったわけだが。
観光する場所もないし、クシナは連日砂パックへと通い込み、私とナルトは我愛羅と一緒に遊ぶ毎日を過ごしていた。
今日は何して遊ぶ?だなんて無邪気に笑う我愛羅を見るととても心が温まる。…のだけれど、原作初期の我愛羅を知っているだけに、どうにかしてそんな未来を回避してあげたい気持ちもある。
木ノ葉と違って砂隠れの里にはそんな簡単には来られないので方法が限られるけれど。
今では大分安定して使える飛雷神の術も、里から里へ移動なんかした日には漏れなく不法入国者扱いをされてしまうため使えないし。
うーん、うーんと内心唸る私の顔を我愛羅は覗き込む。あらやだ可愛い。どうにかしてこの子を救いたい。いずれナルトがどうにかしてくれるのかもしれないけれど、でも、だって…こんなにいい子なのに、こんなにちっちゃい時から誰のことも信じられずに人を殺すときにしか自分を感じられないなんて、そんなの悲しいじゃんか。
「、…えへへ…」
無意識に彼の頭を撫でていたようで、我愛羅はくすぐったそうに身じろいだ。
『ッナルト伏せろっ!!!!』
突然風を切る音と共に手裏剣が降り注ぎ、咄嗟に近くにいた我愛羅を背中で庇いながらクナイで弾きつつ、ナルトに当たりそうな手裏剣へはすかさずこちらも手裏剣を当てて軌道を逸らした。
突然のことにナルトは驚き尻もちをつくも、こういった際の行動は私やクシナに叩き込まれているため、すぐに体勢を整えその場で頭を抱えるようにしゃがみ込んだ。偉い偉い。かつて我が家で訓練した時には、我が出番来たれりとでも言いたげに敵役のミナトへ向かおうとしてクシナに殴られていたからね。学んだね。
我愛羅はと言えば、やや驚いた表情は見せたもののそこまで大きな反応がないのは流石と言うか。
子ども3人で遊んでいたかと思えばまさかの私が応戦したものだからか刺客はその場から逃げ出した。が、そう簡単に逃がしてたまるかってんだ。こちとら根に持つタイプぞ。
『カカシ!いるんでしょ!!ナルトを頼む!!!』
「ったく…。お前はどうするつもりなんだよ。って…話を聞かないなーあいつは」
その場に降り立った暗部がカカシしかいないところを見るに、他のメンバーはクシナについてるのかな?まあ妥当か。
カカシ1人に子ども2人を押し付ける訳にもいかないので、ナルトを託して私は我愛羅の保護に専念することにする。
……というのは建前で、本当は、今の刺客が誰を狙っていたのかを把握したかったのでナルトと我愛羅を引き離した。とは言え、私が手裏剣を捌いただけで逃げ出したのだからもう向かっては来ないかもしれないが。
『なーんてそんなことはなかったぜ』
我愛羅を背負って路地裏のような場所へとするりと逃げ込んだ奴の影を追う。
するとなんてこったい袋小路!私が追っていた刺客は遥か頭上に、そして背後にはもう1人の刺客。
大量の手裏剣を注がれたため、その狭い路地で必死に避けつつクナイで弾いた。私諸共と言うよりは主に我愛羅を狙っているような印象。なるほど我愛羅パパの仕業か。
「な、なんで僕を守ってくれるの…!」
我愛羅に向かう手裏剣を弾いたその後ろで砂のガードが作動しているのを見るに、別に私が我愛羅を守る必要なんて無いんじゃね、なんて一瞬そんな考えが頭を過ぎるけれど、そんなことしたらさらに我愛羅は人を信じられなくなるじゃん。放っておけないじゃんかそんなん。
『子どもは本来守られるべき存在なんだよ』
一瞬砂のガードあるしいんじゃね?なんて過ぎった私が言うセリフじゃないが。
我愛羅は何も言わなかったけれど、私の首に回す手の力が少し強まった気がする。
『少し揺れるよ』
にしても、暗器だけで術とかを一切使わないなんて、とんだ愛国者だね?里の景観を損ないたくないとか?
まぁ私は他里だから気にしないけどねー!
『土遁 奈落落とし』
路地の入口に立つ刺客の足元に所謂落とし穴を作り嵌めた。時空間忍術を使わなければ簡単には逃げられないよう、彼らには見えないように落とし穴自体を氷遁で囲って。
そして同タイミングで頭上の刺客に飛雷神のクナイを投げて飛び、そのままその刺客の後頚部をクナイの尻部分で殴打した。
殺すつもりはなかったけど、思いっきり殴ったので死ぬか後遺症残ったらすまんな。まあ風影子息を狙った罪だとでも思ってさ。
カカシはオビト達にナルトを預けてきたみたいで、のら〜りくら〜りと追いついてきた。そんなカカシに彼らを引渡し尋問を任せることにして、私は我愛羅を前に抱き直してその場に座った。
はぁ…何が悲しくて旅行中にVS忍しなきゃいけないのさ…。旅行と言うか任務だけど。報酬出るけど。
フッ、私に心休まる時など訪れないのさ…。
「ミノリはどうして弟のナルトじゃなくて僕を庇ってくれたの?」
『君を守れるのが私しかいなかったから…かな』
「でも…僕は化け物だから…。ミノリに守って貰わなくても平気だったんだよ」
こんな答えが返ってくるのも至極当然のこと。
そりゃそうだ。周りに化け物扱いされて育てば、そりゃ本物の化け物にだってなれちゃうよね。導いてくれる人はおらず、追い立てられたその道を行くしかなかったんだから。
原作みたいになったって誰にも文句は言えない。仕方ない。なるべくしてなったんだ。
答えは予想していたものの、いざ実際にこんな子どもからそんな言葉を聞くと、やはり少し戸惑ってしまい若干言い淀んでしまったが。
『、…さっきも言ったでしょ。子どもは大人に守られなきゃいけないの。守られて当然なんだよ』
「でも…でも!僕は誰にもッ…愛されてないから…!」
未来が変わってきている今日この頃、もう本当はあんまり展開をねじ曲げすぎない方がいいのかもしれない。
でも、私は出会った以上は黙って原作の通りになんて進めてあげられないから。
出会った皆が幸せに生きてほしいと思うこの気持ちはエゴ以外の何物でもない。自己中だとか、自分勝手だとか、何と言われようと結構結構。
『君は愛されてなくなんかないよ』
縋るように俯く我愛羅の頬を両手で挟み込み、無理矢理目を合わさせた。
これだけは信じて、決して忘れないでほしい 。そしていつか、私達が帰ってすぐかもしれないし、もっと先の未来かもしれない。孤独に苛まれ、自分の存在意義を探すようになった時には思い出してほしいと思う。
『今は分からなくても、絶対にこの言葉の意味が分かる時が来るから』
必ず。
だからどうか、母親と自分を、我愛羅自身も愛されるべき存在なのだと、ちゃんとお母さんの愛情を受けて生まれてきたのだということを…信じてほしい。
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