11月3日
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今日は、一年に一度のリトの村の祭日だ。
今まで怪我をすることなく無事に飛べたことへの感謝と、これからも安全にこの空を飛べるようにと祈りを捧げる、古くから行われていたこの村伝統のお祭りである。
お祭りと言っても、選ばれた村の戦士が舞を舞って見せ、感謝と祈りの言葉を述べる、ただそれだけのものなんだけれど。
で、その感謝や祈りを捧げる相手というのは、他でもないこの私 シナトなのである。というのも、今までの感謝の対象と言えば、その昔にいたとされる風の巫女様だったらしいけれど、今はもう現世に生まれ変わりがいるからと、私が本格的に風を操れるようになってからは私がこのお祭りの主役のようになってしまった。
小さい頃は、美味しいものもいっぱい食べられるし歌や音楽も楽しいしで、毎年楽しみにしていたんだけどね。
でも今は……
「なんだいその顔。ムスッとしてないでちゃんとしてくれよ」
『…だって……』
正直楽しくない。私だってみんなと一緒にお祝いしたいのに、私だけこんな特別な装束着て、ただ座っているだけなんて。
「ま、君の気持ちも分からなくはないけどさ」
『リーバル様代わってくださいよ。あなたの方が、きっとみんなからより感謝されてますよ』
「だったら、代わりに君がみんなの前で舞を披露するかい?」
『無理ですよそんなのー。…って、今年はリーバル様が舞うんですか?!』
「何、文句あるの?」
イエ…。意外だっただけです。
「今年は楽しませてあげるよ。
ま、期待しててもいいんじゃない?」
そう言ってリーバル様は自分の持ち場へと戻って行った。
やけに自信満々だったけれど、リーバル様、そんなに舞得意なのかな。
お祭りが始まってしばらくすると、広場に先程とは異なる衣装を着たリーバル様が現れた。相棒のオオワシの弓も、いつもはお揃いのスカーフを着けているのに、今日は紅白の布が巻かれている。
そして、しんとした空気の中、鈴の音に合わせて舞が始まった。
何と言うか…いつもと雰囲気が違うからだろうか、圧倒されてただそれをひたすらに見つめることしか出来なかった。
寒くないのに全身に鳥肌が立つ。周りの音なんてもう聞こえない。この世界には私とリーバル様しかいないのではないか、そんな気さえしてくる。
空中で身を翻して的を射、そのまま広場に着地すると、周りからどっと拍手が巻き起こった。どうやら、魅せられたのは私だけではなかったみたい。
「空を支配せし風の巫女よ、無事に空を巡られること、心より感謝致します。
願わくは、我が一族に更なる祝福を、永久の加護を、不変の祈りを与えんことを。
リトの戦士 リーバル、一族を代表し、我が一族の繁栄を祈念申し上げます」
厳かな雰囲気の中、リーバル様は私の前に跪いて祈りを捧げた。
「どうだい?今年は楽しめたんじゃないか?」
『ええ、感動しました!』
未だに興奮が収まらない。どれだけ圧倒されているんだか。
うまく言えないけれど、たぶん、これが心が揺さぶられるということなんだと思う。
「ま、このくらい当然だよ。この調子だと、来年も僕がやることになりそうかもね」
『そうかも知れないですね。
とても格好良かったですよ』
「………フン。
お褒めに預かり光栄です。我らが巫女サマ」
満足気に鼻を鳴らすと、リーバル様は私に向かって一礼した。
皆には悪いけれど、ただ座って見ているだけでいつも憂鬱だったこの日も、リーバル様が舞って見せてくださるのならば一年に一度の楽しみとなるだろう。
また見たいけれど、どうせ、普段お願いしたって舞ってくださらないだろうし、やっぱり来年を待つしかないんだろうな…。
代表を選ぶ時期になったら族長様に掛け合ってみよう。
と、いうわけで、
早く来年にならないかなぁ…。
11月3日