風邪のお返し
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本当に悪いことをしたと思う。
正確には、 "した" ではなく "させた" なのだけど。
まさかハイリア人の風邪がリト族である彼にも移るだなんて、思ってもみなかった。そもそもの話、風邪が人に移るものだというのも族長様に聞いて初めて知ったのだから。
たった一日という短い期間だったけれど、あんなに体がしんどかったのは生まれて初めてのことだった。
死ぬかもしれないと、本気でそう思った。
だからあの時、あのつらく不安だったあの時に、そばにいてくれたリーバル様には感謝しかない。
風邪を移しておいて言うことでもないのだけれど。
『ふー……こんだけあればいいかなぁ』
ぱんぱんに膨れたポーチをぽんと叩いた。
皆には隠しているようだけれど、リーバル様は実はイチゴが好きだ。風邪を引いたこの状況で食べられるかはわからないが、もし喜んでくれたのなら嬉しい。
村に帰ろうと踵を返した時、冷たい風が吹いて思わず身震いする。
冷たいフルーツではなく体が温まるものを差し入れた方が良いだろうか。
……村に戻ったら何か温かい物を作ろう。
リーバル広場に降り立った時点で私の耳まで咳をする彼の声が届き、申し訳なさでいっぱいになる。
温かい食べ物を作りに帰る前に、少し様子を見に行こうか。
『リーバル様…?』
天井から吊るされたハンモックから、寝息と共に時折鼻をすする音が聞こえる。
寝ているのを邪魔してはいけないので小さく声をかけた。
返事がないため寝ているのだろうか。
顔だけでも見られればと思ったけれど、天井近くのハンモックを覗くには風の力を使わなければならない。室内でそんなことをしたらとんでもないことになるため断念した。
『私が風邪にならなければリーバル様も風邪をひくことはなかったのに…ごめんね…』
「は?何それ」
小さく呟いた言葉にまさか返事が返ってくるとは思わず、驚きのまま勢いよく振り返ると目の前にリーバル様が降ってきた。
「そうやって何でも自分のせいと捉えるのはやめなよ。
僕がこうして病に倒れたのは、僕の鍛え方が足りなかったからだ」
焦点の合わない目で私を睨みつけながらそう言い放つと、彼は頭を押さえながら蹲った。
助け起こそうと触れた体が熱い。それなのに、彼の体は小刻みに震えている。
本当に、死んでしまうのではないか。
頭を掠める不安に目頭が熱くなる。
いや、こんなところで泣いてる場合じゃない。
彼の腕を私の首の後ろへと回し、ふらふらと倒れそうになりながら立ち上がる。
こんなに震えているのに、リト伝統の様式の建物では暖をとろうにも難しい。私の家ならば、ハイリア人である私が暮らしやすいようにと皆が壁をつけて作ってくれたため、少なくともここよりは大分マシなはず。
意識の朦朧としているリーバル様を半ば強引に外へと連れ出した。
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正確には、 "した" ではなく "させた" なのだけど。
まさかハイリア人の風邪がリト族である彼にも移るだなんて、思ってもみなかった。そもそもの話、風邪が人に移るものだというのも族長様に聞いて初めて知ったのだから。
たった一日という短い期間だったけれど、あんなに体がしんどかったのは生まれて初めてのことだった。
死ぬかもしれないと、本気でそう思った。
だからあの時、あのつらく不安だったあの時に、そばにいてくれたリーバル様には感謝しかない。
風邪を移しておいて言うことでもないのだけれど。
『ふー……こんだけあればいいかなぁ』
ぱんぱんに膨れたポーチをぽんと叩いた。
皆には隠しているようだけれど、リーバル様は実はイチゴが好きだ。風邪を引いたこの状況で食べられるかはわからないが、もし喜んでくれたのなら嬉しい。
村に帰ろうと踵を返した時、冷たい風が吹いて思わず身震いする。
冷たいフルーツではなく体が温まるものを差し入れた方が良いだろうか。
……村に戻ったら何か温かい物を作ろう。
リーバル広場に降り立った時点で私の耳まで咳をする彼の声が届き、申し訳なさでいっぱいになる。
温かい食べ物を作りに帰る前に、少し様子を見に行こうか。
『リーバル様…?』
天井から吊るされたハンモックから、寝息と共に時折鼻をすする音が聞こえる。
寝ているのを邪魔してはいけないので小さく声をかけた。
返事がないため寝ているのだろうか。
顔だけでも見られればと思ったけれど、天井近くのハンモックを覗くには風の力を使わなければならない。室内でそんなことをしたらとんでもないことになるため断念した。
『私が風邪にならなければリーバル様も風邪をひくことはなかったのに…ごめんね…』
「は?何それ」
小さく呟いた言葉にまさか返事が返ってくるとは思わず、驚きのまま勢いよく振り返ると目の前にリーバル様が降ってきた。
「そうやって何でも自分のせいと捉えるのはやめなよ。
僕がこうして病に倒れたのは、僕の鍛え方が足りなかったからだ」
焦点の合わない目で私を睨みつけながらそう言い放つと、彼は頭を押さえながら蹲った。
助け起こそうと触れた体が熱い。それなのに、彼の体は小刻みに震えている。
本当に、死んでしまうのではないか。
頭を掠める不安に目頭が熱くなる。
いや、こんなところで泣いてる場合じゃない。
彼の腕を私の首の後ろへと回し、ふらふらと倒れそうになりながら立ち上がる。
こんなに震えているのに、リト伝統の様式の建物では暖をとろうにも難しい。私の家ならば、ハイリア人である私が暮らしやすいようにと皆が壁をつけて作ってくれたため、少なくともここよりは大分マシなはず。
意識の朦朧としているリーバル様を半ば強引に外へと連れ出した。
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