君の幸せを、まるで懇願するように目を閉じた
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「……くっ…」
なんてことだ。
まさかこんなことになるなんてね。
ラネール山道であの姫達と別れ、僕はメドーまで様子を見に来ていた。
………我ながら馬鹿なことをしたよ。
オオワシの弓を村に置いてきてしまうだなんて。
持ってきていたハヤブサの弓も、僕の相棒には到底叶わない程度の耐久力しかなく、既に壊れてしまった。バクダン矢だって底を尽きている。
「ぐあっ…!!」
ビットに翼を撃ち抜かれた。
カースガノンは冷たく僕を見下ろしている。
もうダメかも知れない…なんて、僕にしてはやけに潔いだろう?
状況は絶望的だった。
武器はなく、村に戻って体勢を立て直そうにも、メドー周辺にはバリアーが張られ、逃げることすら叶わない。
石柱の後ろに転がりながら身を隠す。
空の支配者が聞いて呆れるよね。戦うことも逃げることも出来ず、ただこうして地べたを這いずり回って死を先延ばしにすることしか出来ないのだから。
…きっともう村も混乱の渦に呑まれていることだろう。わりと外界から隔絶された場所にあるから魔物の影響は少ないとは思うけど…。
あいつは──シナトは無事だろうか。
ラネールからそのままここに直行しちゃったから何も伝えられなかったな。もしかしたら僕の帰りを待っていたりするんじゃないか…なんて、自惚れ過ぎか…。というか、シナトに限ってそんなこと絶対ないな。
何なら、今頃そこら辺の魔物に襲われていたりもするんじゃないか?
まあ……それもないとは思うけど。
…………「僕が守る」だなんて言っておいて、もうその約束は守れそうにもないな。
視界に影が差した。
カースガノンは、僕を嘲笑うかのようにゆっくりと銃口をこちらへと向ける。
一瞬。
ほんの一瞬だけ、あの時泣いてた君の顔が頭をよぎった。
「……やれやれ…」
自分の女々しさに今更気付くなんてね。
最期に、もう一度だけ君の笑う顔が見たかったよ。
きみの幸せを、まるで懇願するように目を閉じた