Chapter1
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2038年11月5日:AM09:10
『ふぅ…』
暖かい紅茶を飲みながら席で資料を眺める。出勤して来た時にはかじかんでいた手も、暖かいマグカップを握っていたことにより既に回復した。
さあ、やることはいっぱいだ。機械が苦手な先輩のためにもこの資料を纏めなければ。
まぁ、いつもチラ見しかしてくれないのだけど。
ちらりと真向かいの席に視線を移す。
先輩ことハンク・アンダーソン警部補の席は、出勤時間を過ぎたと言うのに未だ空いたままだ。
いつものことだが、彼がこの時間に出勤してきたことなんて1度もない。少なくとも、私がここデトロイト市警に就職してからは。
ある事件をきっかけにして人が変わってしまったと聞いた。大まかにはファウラー警部から聞いたけれど、警部補本人からは直接聞けずにいる。警部補を変えた事件から丸3年が経っているそうだが、あの人はまだ前に進めていないのだ。
…聞けるわけがない。
自分の心を軽くするには誰かに話を聞いてもらうのが1番だとはよく言うけれど、それもまた勇気がいることだ。認めたくないことを否が応でも認めなくてはいけなくなるのだから。
少しでも…。ほんの少しでも、私が尊敬するあの人がまた歩き出せるように側で見守り手伝ってあげたいけれど。
私が今するべきことは、人の過去を詮索することではないのだ。
「おはようございます」
『おはよ…うございま……』
印刷した資料を纏めるべく、警部補用に作ったファイルを取り出そうかとデスクの引き出しをあさっていると、頭上から声がかかったため慌てて顔を上げた。
「私はコナー。サイバーライフから派遣されたアンドロイドです」
コナーと名乗ったそのアンドロイドは、デスクに置いてある私の名札を確認した後私の顔をじっと見つめた。黄色に回転していたこめかみのLEDリングはすぐに見慣れた青へと戻る。
黄色のランプは一時的な異常を表しているんだったか。何か通信でもしていたのだろうか。
『私はミコ。ミコ・クロフォードよ』
そうだ、そういえば昨日帰りがけにファウラー警部が言っていた。アンドロイド捜査官の補佐のもと、私とアンダーソン警部補とで変異体の事件に臨むように、と。
『話は聞いてるわ。これからよろしくね、コナー』
席から立ち上がって手を差し出せば、コナーは自然な動作で私の手を握り返した。
ほんのり暖かい。男性の手らしく多少骨ばってはいるけれどそれなりに柔らかいし、私たちと遜色ないのでは。
さすがサイバーライフ。新たな人類を生み出したと言っても過言では無さそうだ。
「アンダーソン警部補はどちらに?」
『警部補はまだいらっしゃってないわ。早ければ昼過ぎには来るから、申し訳ないけれどそこの席で座って待っていて』
早ければ来るはず。
遅ければ……明日の昼過ぎになるかな。
アンダーソン警部補のデスクの横にあるイスを示せば、コナーはきょろきょろと辺りを見回しながら席に着いた。座った姿勢が良すぎてまるで借りてきた猫のようだ。思わずぷっと吹き出してしまい、咳で誤魔化した。
しばらく黙々と資料の纏め作業を行っていると、リズミカルな金属のような音が聞こえ出した。音の出処を探れば、なんとコナーがコインを器用に指先で弄んでいる。それもノールックで。
す、すごい…。
「クロフォード巡査?」
彼の指先でくるくると回転するコインを夢中で見ていると、突然コインは彼の手の中へと消えた。かけられた声にハッと視線を上げれば、やや首を傾げたコナーと目が合う。
『あぁいえ、ごめんなさいね。ただ、器用だなと思って見ていただけよ。
もし暇なら…もちろんあなたが良ければだけど、署内を案内しましょうか?』
「ええ。助かります」
『と言ってもそんなに規模は大きくないのだけどね。着いてきて』
.
『ふぅ…』
暖かい紅茶を飲みながら席で資料を眺める。出勤して来た時にはかじかんでいた手も、暖かいマグカップを握っていたことにより既に回復した。
さあ、やることはいっぱいだ。機械が苦手な先輩のためにもこの資料を纏めなければ。
まぁ、いつもチラ見しかしてくれないのだけど。
ちらりと真向かいの席に視線を移す。
先輩ことハンク・アンダーソン警部補の席は、出勤時間を過ぎたと言うのに未だ空いたままだ。
いつものことだが、彼がこの時間に出勤してきたことなんて1度もない。少なくとも、私がここデトロイト市警に就職してからは。
ある事件をきっかけにして人が変わってしまったと聞いた。大まかにはファウラー警部から聞いたけれど、警部補本人からは直接聞けずにいる。警部補を変えた事件から丸3年が経っているそうだが、あの人はまだ前に進めていないのだ。
…聞けるわけがない。
自分の心を軽くするには誰かに話を聞いてもらうのが1番だとはよく言うけれど、それもまた勇気がいることだ。認めたくないことを否が応でも認めなくてはいけなくなるのだから。
少しでも…。ほんの少しでも、私が尊敬するあの人がまた歩き出せるように側で見守り手伝ってあげたいけれど。
私が今するべきことは、人の過去を詮索することではないのだ。
「おはようございます」
『おはよ…うございま……』
印刷した資料を纏めるべく、警部補用に作ったファイルを取り出そうかとデスクの引き出しをあさっていると、頭上から声がかかったため慌てて顔を上げた。
「私はコナー。サイバーライフから派遣されたアンドロイドです」
コナーと名乗ったそのアンドロイドは、デスクに置いてある私の名札を確認した後私の顔をじっと見つめた。黄色に回転していたこめかみのLEDリングはすぐに見慣れた青へと戻る。
黄色のランプは一時的な異常を表しているんだったか。何か通信でもしていたのだろうか。
『私はミコ。ミコ・クロフォードよ』
そうだ、そういえば昨日帰りがけにファウラー警部が言っていた。アンドロイド捜査官の補佐のもと、私とアンダーソン警部補とで変異体の事件に臨むように、と。
『話は聞いてるわ。これからよろしくね、コナー』
席から立ち上がって手を差し出せば、コナーは自然な動作で私の手を握り返した。
ほんのり暖かい。男性の手らしく多少骨ばってはいるけれどそれなりに柔らかいし、私たちと遜色ないのでは。
さすがサイバーライフ。新たな人類を生み出したと言っても過言では無さそうだ。
「アンダーソン警部補はどちらに?」
『警部補はまだいらっしゃってないわ。早ければ昼過ぎには来るから、申し訳ないけれどそこの席で座って待っていて』
早ければ来るはず。
遅ければ……明日の昼過ぎになるかな。
アンダーソン警部補のデスクの横にあるイスを示せば、コナーはきょろきょろと辺りを見回しながら席に着いた。座った姿勢が良すぎてまるで借りてきた猫のようだ。思わずぷっと吹き出してしまい、咳で誤魔化した。
しばらく黙々と資料の纏め作業を行っていると、リズミカルな金属のような音が聞こえ出した。音の出処を探れば、なんとコナーがコインを器用に指先で弄んでいる。それもノールックで。
す、すごい…。
「クロフォード巡査?」
彼の指先でくるくると回転するコインを夢中で見ていると、突然コインは彼の手の中へと消えた。かけられた声にハッと視線を上げれば、やや首を傾げたコナーと目が合う。
『あぁいえ、ごめんなさいね。ただ、器用だなと思って見ていただけよ。
もし暇なら…もちろんあなたが良ければだけど、署内を案内しましょうか?』
「ええ。助かります」
『と言ってもそんなに規模は大きくないのだけどね。着いてきて』
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