Chapter4
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『バス会社ABCDに確認したところ、昨晩女の子と女性型のアンドロイドが終点のここ─レイブンデールで降車したとの情報を得ました』
バス会社の証言と合致しているし、目撃情報の信憑性は高そうだ。
社員の証言によると、アンドロイドに「行く宛てがないからここに置いてくれないか」と聞かれたとのことだが…。
「通りがかったバスに乗って終点まで降りなかった。
恐怖にかられたことによる突発的な行動」
「アンドロイドが恐怖だと?」
「変異体ですよ。
感情に圧倒されると理不尽な決断を下すんです」
「それで一体どこにいるんだ」
「まだ近くにいるのかも。計画もなく…行く宛もない」
『私もそう思います。昨日は雨が降っていたし、10歳の子どもを連れて移動を続けられるとは思えません』
仮にも家事アシスタント型。それに、AX400型は子どもの世話にも特化したモデルだから、きっと保護対象である子どもに無理はさせないのではないだろうか。
変異のきっかけが何かは知らないけれど、ウィリアムズさんから逃げたということは、彼との間に何かしらの問題があったということでは?
全ては憶測だが…。
『突発的な行動だったなら、きっとお金は所持していないでしょうね。……だとしたら…』
バス停周辺のめぼしい場所と言えば…モーテルに廃屋、廃車ぐらいだろうか。コンビニの監視カメラには写っていなかったし、店員も見ていないと言っていたから。
ちらりと廃屋に目を移す。
外観は落描きだらけで、いかにも若者がたむろう場所といったような見た目。まぁ、だとしても、雨風を凌ぐだけなら丁度良さそうだが。
「フェンスにブルーブラッドが付着してる。
私が先に行きます。ああ、切らないように気をつけてください」
『ありがとう。
警部補は…ちょっと難しそうですから、裏口の方からいらしてください。
私はコナーと中を探索してみます』
「ああ分かった。くれぐれもそいつから離れるなよ」
窓から覗けば、中にアンドロイドが一人佇んでいるのを発見した。男性型のようだから探しているアンドロイドとは違うけれど、何かしら情報を得られないだろうか。
意外にもドアはすんなり開いた。
中に入ると、廃屋にはありえない暖かい空気が出迎えてくれ違和感を感じた。アンドロイドは暖を必要としないはず。いくらブルーブラッドが寒さに弱いとはいえ、昨日はそれほどでもなかったはずだ。
『ねぇあなた、ここにあなた以外の人はいる?』
「にっ、人間…!ラルフに意地悪しに来たんだな…!!」
「大丈夫。ほら、僕はアンドロイドだ」
『ごめんなさい、驚かせてしまったわ…』
彼の顔には見覚えがある。公園のメンテナンスをしているのをよく見かけた。他と違うのは、彼の顔の半分が大きく抉られているということ。
人間をこれだけ恐れているということは、きっと誰か心無い人物にやられたのだろう。…というか、人間以外にこんな残酷なことをする人いないわね。
『私は2階を見てくるわ。コナーは1階をお願い』
「ええ、分かりました」
正直な話、ラルフと名乗った彼には人間が近づくべきではないと思った。少なくともまだ今は。
彼の後ろにあったテーブルに大きなナイフが置かれているのが見えてしまったから。
ただ、コナーのことも心配だから、軽く見たらすぐに戻ってこよう。
『…イメチェンしたのね』
銃を構えながら慎重に浴室へと入ると、洗面台にLEDリングと切られた髪を発見した。
先程寝室の方にAX400 カーラと表記されたユニフォームがあったし、変装したのは間違い無さそうだ。
他にも何かないかと辺りを見回すと、あからさまにきっちり閉じられたシャワーカーテンが目に付いた。
『ッ…!……ちょっと待って嘘でしょう……』
銃を構えたまま勢いよくカーテンを開ければ、バスタブの中に予想外の物を発見してしまった。
死体だ。
鋭いナイフか何かで喉笛を切られている。状態が良いところを見るに、死後数日といったところか。
これは…早くコナーの元へ戻るべきかもしれない。
「カーラ!逃げろ!早く!!」
『コナー!!?』
警部補に知らせるべく階段を下りていると、大きな声と共に丁度コナーが倒れ込むところを目撃してしまった。
そしてその横を2つの影が勢いよく通り過ぎて行った。
「コナー!どうしたんだ!」
「いました!応援を!!」
起き上がりながら口早にそう告げコナーは影を追って走り出した。
私も早く追わなければ。
『警部補!2階浴室に死体が!私もコナーの後を追うので応援を!』
「くそっ!
分かったさっさと行け!」
警部補の言葉を聞くや否や、私もコナーの後を追って走り出した。
廃屋を出たところで他の警官が行く先を教えてくれたが、それより先にコナーが通りに出るところが見えたため、食い気味でお礼を述べ通り過ぎた。
雨が降っているからか、日中だというのに人通りは少なく全速力で走ることができた。
コナーが角を曲がったのを見て私もそれを追う。
コナーに追いついた頃には女の子とアンドロイドは既にフェンスを渡りきったところで、その瞬間女の子と視線がかち合った。
『「撃つな!!/撃たないで!!!」』
「殺しちゃダメだ!!」
追いついた警官が銃を構えたため制止する。
私達が振り返ったその隙に彼らは斜面を滑り降り、そして高速道路を渡り始めた。
「ああクソ、なんなんだ!」
追いついてきた警部補も今の状況に気がつき悪態をつく。
私達は警察だ。殺したいわけじゃない。
でも、彼らを追い詰めているのは間違いなく私達だった。
『待って!!危険だわ!もう追わないからそんなことしないで!!アリス!カーラ!!』
私の声に、道路に出る直前で1度だけ女の子が振り返るも、そのまま足を止めることはなく、中央分離帯まで辿り着いてしまった。
とにかく無事で良かったがもうこれ以上はやめてほしい。死んでは元も子もないのだから。
『、コナー?!』
「おい何してる!」
「逃がす訳には!」
『ダメよ!死んでしまうわ!』
フェンスから成り行きを見守っていると、隣でコナーがフェンスを上り始めすかさず警部補が止めた。
彼らを追おうとしているらしい。なんて馬鹿なことを。
「僕は追いかけます!!」
「コナー!このバカ野郎!!」
私もコナーの腕を掴んで止めようとしたが、結局振り払われ、尻餅をついている間にコナーは行ってしまった。
フェンスを掴んで立ち上がる。
彼らと同様に斜面を滑り降りたコナーはそのまま道路に乗り出し、走ってきた車を飛び越え、潜り抜け、あっという間に中央分離帯へと辿り着いた。
『はっ…はっ……はっ……!』
「っ!?おいミコどうした!」
コナーとカーラが道路のど真ん中で争っているのが滲んだ視界に映る。
気がつかない間に胸元を強く握り締めていた。胸が苦しい。息ができない。
警部補に声をかけられたことで、自分が過呼吸に陥っていたことを自覚し、発作を落ち着けるべく目を閉じた。
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