月が綺麗ですね
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『どうせ、ジャパニーズの女なら誰でも良いんでしょ』
1人でコロニーへ向かう途中、あの日サキから言われたそんな言葉を思い出した。
『はぁ?』
『チップは日本が好きなんだもんね。私じゃなくても良いんだ』
これだから女は面倒臭ぇ。
アンサーの言うように、「愛している」なんて。そんな事も一々言わなきゃ分かんねーのか?
ジャパニーズだから毅やサキが大切なんじゃない。彼らだから、ジャパニーズの文化を美しいと思ったんだ。
大統領は時間とも戦っている。好きでもねぇ女のために時間を割くほど暇じゃない。そのくらい分かれよ!
『…面倒臭ぇな』
思わず口から零れたその言葉に、俺よりずっと小さくて細っこいサキが振り向いて見上げてきた。その時のあの表情を思い出すと、今でも胸がザワザワする。
余計な事言って悪かったよ。お前にそんな表情をさせたい訳じゃなかったんだ。
お前は俺や、俺の周りにいるクノイチやゲイシャ共と違って弱くてひょろくて繊細で、気を付けないとすぐに怪我させちまうし傷付けちまう。
そんな事も忘れて、俺はお前を傷付けてばかりだ。
所謂"平凡な育ち"ってやつをしてきた繊細すぎるお嬢様のアイツと、俺みてぇなモンは多分合わねぇんだろう。価値観も違えば揉めてばかりいる。
それは確かに面倒臭ぇ。けど、それが嫌って訳じゃねぇんだ。
そんな事を考えて舌打ちを1つ。サキと出会って、側にいて、ムカつく事ばかりだ。
「Chicken shit!イライラするぜ」
走り抜ける荒野には俺の声が響くばかり。それに返事をするサキは今、側にいない。
側にいたら、このイライラは収まるのだろうか?それとももっと腹立たしくなるのだろうか?
分からねぇよ、そんな事。俺は頭が良くはねぇ。なら、試してその時の感覚に尋ねてみるだけだ。
走る、走る、走る。走ったら何か分かるだろうか。アイツに会えば、何か分かるだろうか。きっとその答えは、来る時が来れば分かるだろう。考えるだけ無駄ってやつだ。なら今の俺にすべき事は、ただ走る事だけなんだろう。