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ストン、とはまった靴に不思議な感じがして戸惑っている冬馬にスタッフがすぐに寄ってきた。
「どこか合いませんか?」
「ああ、あの、少し靴が大きいような気がして…」
「なるほど。失礼します。」
促されるように椅子に腰掛けるとスタッフがいてテキパキと動く。慣れない。
初めての衣装にも、人に着替えを手伝われるのも。何もかも。着替えぐらい自分で出来ると言ったところ、フィッティングの意味分かってないでしょ、と年下に笑われた。年上の方はモデルをしていたらしいから慣れていそうなのは納得できるが年下の彼は自分と同じくこういうのは初めてなはずなのにどこか場慣れしているような雰囲気がどうにも癪に触る。それでもフィッティングの意味を冬馬より理解していたのは翔太の方だったのは事実で、それもなんだか良い心地はしない。でもこの短期間で何度もそんなことはあって、一々気にしてなんかいられないほどに毎日が目紛しかった。
「すこし靴紐を締めてみました。確認お願いします。」
「あっはい!ありがとうございます」
結び直された靴紐は先程よりもきっちりと左右対称で、キツくも緩くもなく自然すぎて不自然なぐらいに冬馬の足に合わせられていた。立ち上がって二、三歩。
振り返りまた二、三歩。こう、ハッキリと踵の高さがある靴は初めてなのに、さっきまで履いてたいつものスニーカーより馴染んで気味が悪い。
「いかがですか?」
じっと冬馬の様子を見ていたスタッフが問うた。
「うーん、ぴったりだと思う…あっ、思います。爪先とかなんか変な感じするというか、まだ履き慣れてないだけなような…?」
「なるほど。もう一度失礼しても良いですか?」またスタッフが冬馬の足元に跪くので足を差し出す。今度は靴紐には触らず、踵と足幅を揉むようにして挟んだ。
「踵は靴の中で動きませんか?」
「動かない、す」
「幅はきつくはないですか?」
「大丈夫です」
「わかりました。失礼します。」
足を床に下ろされて、今度は爪先を上から押される。足指だけでなく、靴の中の余白も押されていて、そんなに隙間があったのかと内心驚いた。
「もしかして靴デカすぎたか…!?」
「いえ、普通ですね。このぐらいの余裕は持たせるものですよ」スタッフの返答は淡々と冷静で少し恥ずかしくなった。
「踵と横幅はしっかり固定して、爪先には少し自由を持たせてください。スペースがありすぎるのは足を上手く支えられませんが、スペースが無さすぎるのは上手く動きが取れなくなりますから。どちらにせよケガに繋がりますし。なにより、天ヶ瀬さんはこの靴で踊るのですから。踊るのに不安定そうな所があれば調整します。」
そう言ってスタッフは手をしまい、冬馬の足元から退いた。
もう一度立って、二、三歩。踵と爪先を左右とも軽く鳴らすと固い音がした。
そうだ、この靴で踊るんだ。ステージで。駆けるように、二、三歩。ステップを踏むように振り返って、動きはレッスン室と同じように、思い出したのはシューズのゴムが擦れる音なのに聞こえた音は固く跳ね返ってきて。靴だけじゃなく、衣装もアクセサリーも、全部が初めて身に着けたもので全く慣れないものばかりなのに不思議になるほど冬馬の動きを邪魔しなかった。
ひと通り動いてみて顔を上げると、先程まで座っていたところでスタッフが目を丸くして立っていた。
「…いかがでしょうか?」
「ああ!バッチリだぜ!」
サイズが合ってて充分過ぎるほどに動きやすい。着慣れなさの違和感はきっとそのうち馴染むだろう。笑って返事をするとスタッフは微笑んで深くお辞儀をした。
「どこか合いませんか?」
「ああ、あの、少し靴が大きいような気がして…」
「なるほど。失礼します。」
促されるように椅子に腰掛けるとスタッフがいてテキパキと動く。慣れない。
初めての衣装にも、人に着替えを手伝われるのも。何もかも。着替えぐらい自分で出来ると言ったところ、フィッティングの意味分かってないでしょ、と年下に笑われた。年上の方はモデルをしていたらしいから慣れていそうなのは納得できるが年下の彼は自分と同じくこういうのは初めてなはずなのにどこか場慣れしているような雰囲気がどうにも癪に触る。それでもフィッティングの意味を冬馬より理解していたのは翔太の方だったのは事実で、それもなんだか良い心地はしない。でもこの短期間で何度もそんなことはあって、一々気にしてなんかいられないほどに毎日が目紛しかった。
「すこし靴紐を締めてみました。確認お願いします。」
「あっはい!ありがとうございます」
結び直された靴紐は先程よりもきっちりと左右対称で、キツくも緩くもなく自然すぎて不自然なぐらいに冬馬の足に合わせられていた。立ち上がって二、三歩。
振り返りまた二、三歩。こう、ハッキリと踵の高さがある靴は初めてなのに、さっきまで履いてたいつものスニーカーより馴染んで気味が悪い。
「いかがですか?」
じっと冬馬の様子を見ていたスタッフが問うた。
「うーん、ぴったりだと思う…あっ、思います。爪先とかなんか変な感じするというか、まだ履き慣れてないだけなような…?」
「なるほど。もう一度失礼しても良いですか?」またスタッフが冬馬の足元に跪くので足を差し出す。今度は靴紐には触らず、踵と足幅を揉むようにして挟んだ。
「踵は靴の中で動きませんか?」
「動かない、す」
「幅はきつくはないですか?」
「大丈夫です」
「わかりました。失礼します。」
足を床に下ろされて、今度は爪先を上から押される。足指だけでなく、靴の中の余白も押されていて、そんなに隙間があったのかと内心驚いた。
「もしかして靴デカすぎたか…!?」
「いえ、普通ですね。このぐらいの余裕は持たせるものですよ」スタッフの返答は淡々と冷静で少し恥ずかしくなった。
「踵と横幅はしっかり固定して、爪先には少し自由を持たせてください。スペースがありすぎるのは足を上手く支えられませんが、スペースが無さすぎるのは上手く動きが取れなくなりますから。どちらにせよケガに繋がりますし。なにより、天ヶ瀬さんはこの靴で踊るのですから。踊るのに不安定そうな所があれば調整します。」
そう言ってスタッフは手をしまい、冬馬の足元から退いた。
もう一度立って、二、三歩。踵と爪先を左右とも軽く鳴らすと固い音がした。
そうだ、この靴で踊るんだ。ステージで。駆けるように、二、三歩。ステップを踏むように振り返って、動きはレッスン室と同じように、思い出したのはシューズのゴムが擦れる音なのに聞こえた音は固く跳ね返ってきて。靴だけじゃなく、衣装もアクセサリーも、全部が初めて身に着けたもので全く慣れないものばかりなのに不思議になるほど冬馬の動きを邪魔しなかった。
ひと通り動いてみて顔を上げると、先程まで座っていたところでスタッフが目を丸くして立っていた。
「…いかがでしょうか?」
「ああ!バッチリだぜ!」
サイズが合ってて充分過ぎるほどに動きやすい。着慣れなさの違和感はきっとそのうち馴染むだろう。笑って返事をするとスタッフは微笑んで深くお辞儀をした。