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君は気づかないシリーズ

 

「おはよーう!!」

「蒼山、おはよー。今日もテンション高えなあ」

「だってさあ、見ろよ!俺、誕生日プレゼント貰っちったんだぜ!!」

「ふーん。良かったじゃん」

「おう!しかも、メッセージカード付きだ!!」

「へー……そりゃまた律儀な。なになに『蒼山君、誕生日おめでとう。』って、それだけかよ」

「ばーか。いいんだよ、それだけで。てか、この手紙で十分すぎるくらいだわ」

「ほんと、お前は欲ねーな。因みにプレゼントは何だったんだよ?」

「聞いて驚くなよ!?じゃーん!!」

「おお、リストバンドじゃんか。お前が欲しいって言ってたメーカーの」

「そうなんだよ!俺、こんな愛のあるプレゼント初めて!!」

「……そうかい」

「おうよ!……でもさ。メッセージカードには贈り主の名前ないし、しかも下駄箱に入ってたから、誰がくれたプレゼントか分からないんだよねー」

「……誰がくれたか分からねーのに、なんで捨てないで持ってきたんだよ?」

「それは俺への愛を感じたから!!」

「お前って、やっぱ馬鹿だな」

「うるせーよ!知っとるわ!」

「そんでお節介焼きで、誰にでも優しくしちゃう八方美人でさ」

「…………へ?」

「でもお前のそんなところ、俺は好きだよ」

「ひ、広瀬?……突然どうしたよ?」

「……あーあ。俺、ほんと気持ち悪い……」

「は!?いきなり気持ち悪いって、大丈夫か!?」

「あー…………たぶん寝不足なのかも。ゲームやり過ぎた」

「マジかよ!まーた、ゲームで徹夜かよー!!」

「……うっせ。ちょっと保健室で寝てくるわ」

「じゃあ次の授業のノート板書、広瀬の分も取っとく!」

「サンキュー。助かる」

「あ!……な、なあ、広瀬。お前は俺には言ってくれねーの?」

「は?」

「俺、今日誕生日なんだけど!!」

「…………言うかばーーか」

「はーー!?!?ノート取ってやんねーぞ!?!?」

「ははっ。じゃーな」







 
***
side:H


予想外すぎて頭がついていかない。
どうせアイツなら名無しのものなんて捨てるだろう、そんな姿を見ればこの想いも諦めやすくなると思ってた。
なのに、あんな嬉しそうな笑顔を見せられたら……!!

「……あー……これからどうしよう……」

この想いが届く訳がないと分かってた。
だから、このポジションで、友人の立場でずっといようと思ってた。
……友人の1人としてアイツの誕生日を祝いたかった。

けれど、このやましい気持ちで祝える訳なくて。
それでも、やっぱり大切な人の大切な日を祝いたくて。
捨てられること覚悟で、名無しでアイツの下駄箱に入れたのに。
まさか、受け取って貰えるなんてーー

「……あんなのに喜ぶとか、ほんとアイツ馬鹿」

俺からだよ、って素直に言えなかった俺もほんと馬鹿。







 
***
side:A

「……あーあ。俺の見当違いだったかあ」

まあ、この御時世にそんな都合のいいことなんてないのだ。
例えば、好きな奴からの誕生日プレゼント、とか。

メッセージカードの字がそっくりだったから、てっきりそうだと勝手に舞い上がってしまった。
……舞い上がりすぎて、丁度朝早く来ていた意中の相手の様子を伺ってみようとしたのが間違いだった。もう、一気に夢から醒めた気分だわ。

結局プレゼントは誰のだか分からないままだし、祝いの言葉すら貰えなかった。
でも誕生日に朝早くアイツに会えて、アイツの口からは貴重な、好き(褒め言葉の意味なんだろうが)の二文字が聞けた。

……それだけで、いい。
想いが届かなくても、アイツの近くにいられるだけで、俺はいつも幸せなんだから。
例えノート板書を取っといてくれるだけの友人だったとしても、な。

「それにしたって、祝ってくれたっていいじゃんか!ばーーか」

……好きだよ、って言えない俺もやっぱり馬鹿なんだけどさ。






end……? 



 
 
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