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主人公
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イギリスの地方に建てられた、ひっそりと佇む小さな洋館。その周りは草木に覆われた柵に囲われ、門を開けばバラの咲き誇るガーデン。噴水が水飛沫を立て、小さく揺れるカモミールの白い花びらたち。
1番奥の大きな木の下、くるんとした猫脚のガーデンテーブルに広がる香りの良いカモミールティーの湯気が2つ。テーブルの中央には彩り豊かなマカロンとスコーン、プティングと小さなケーキを並べたケーキスタンド。
「…流石に疲れましたね」
「えぇ…書類を見過ぎて視力がなくなるかと思ったわ」
はぁ、とため息。
暖かい日差しと心地よい風が緩やかに走り髪を撫でる。
「…あなたがいなければ逃亡してましたよ」
「逃亡なんてするのかしら」
「冗談です」
束の間の息抜きと言った所。大好きな私の宝物の庭に出て恋人との優雅なティータイムを過ごしていた。
死神界から舞い降りたノートが巻き起こした殺人事件が終結してはや数ヶ月。
キラの活動が止まってから確実に犯罪が増えた。
そして、難解事件が私達の元へ相次いだ。事故、不審死、国家間の事件、国際問題など、その数は数え切れないほどで。1人で依頼を受け、事件を解決していた頃より遥かに忙しかった。
特にキラを捕まえたLとして世界に噂されるようになってより一層依頼が増える。Lへの依頼が増えた事で私の元へと回って来る依頼も多数あり、結果として私たちは仕事に追われた日々を過ごし、やっと落ち着いて今に至る。
「…あなたに触れる間も無く通信は入るし、触れようとすれば会議だなんだと。私達をなんだと思っているんでしょう」
「仕方ないじゃない。キラを捕まえた英雄として謳われ、世界中の上層部や政府、警察があなたを頼るのも無理ないわ…」
「…暫く落ち着いていますしどこか行きますか?」
「ううん、ここにいたいわ」
「そう言うと思いました」
「…なぜ聞いたのかしら」
「そう言って欲しかったんです」
場所を探し出されるなんて事は絶対嫌なので、極力あちこち飛び回り、ホテルや転々としてやっと家に帰ってきた所だった。
「だってここは私の宝物だもの」
「私は建てた時はあなたに…と思っていましたが、いまとなっては私にとっても宝物です。が、私の場合あなたがここに存在して初めて私の宝物です。」
甘い言葉が風に揺れる。
花壇に植えたカモミールがちょうど咲き誇って、小さな花達がひらりと踊り揺れる。
「…ずっと聞きたかった事がありました」
かちゃん、とティーカップとソーサーが優しくぶつかる音を立てた。
「ん?何かしら」
「何故この道を選んだんですか。あなたは幼少期、フローリストになりたいと言っていたはず」
そうねぇと青い空を少し見上げ、Lの方を見る。
黒く艶めく瞳は不思議そうに私を捉えた。
「…その先にあなたがいたから?」
「…私?」
「ええ。子供の頃から、あなたは頭が良くて謎や問題を解くのが好きだったから刑事や探偵になるんだと思っていたし、私にはあなたがミステリー小説の主人公の探偵のようにみえていた。そしていつの間にか大人になってあなたは世界に名を馳せる名探偵とまで呼ばれていて…私に星座や生物学、宗教論…様々な事を教えてくれたあのえるが。…そのえるが”いつか君が報われる世界にするから”って言ってくれたからかしら?」
「あなたも充分頭が良かったです。現にそうですし」
「あなたには劣るわよ…大人になって、というかあなたの言ったいつか私の世界が報われるように、の意味がわかったの。勿論私の解釈だけど、然るべき罰を与えられる人間になる。そう言う事だったのかと悟った時、私もそうなりたいと思ったわ」
「…それで月君を捕まえた時のあの発言だったんですね」
「…結果私が裁くはずだった両親はキラに殺されたけれどね。それと、知ってるわよ?あなたがあの手この手で不起訴にならない様手を回したり、刑事裁判に持ち込んでくれたことも」
「!…どうやって」
「…分かるわよ。でもその度に私は救われたの。その先にあなたがいるからと言うのはそう言うこと。私に汚名を着せないように私の事をひた隠しにしてくれた事も」
「…そうでしたか」
気恥ずかしそうにティーカップを手にし、カモミールティーを飲み干すL。
「…どんな理由でもあなたを救えていたのならよかったです。もし余計な事であれば…と躊躇いも少しありました。ですが嫌われたとしてもあなたにまで罪が被る事のないよう…と常に目をかけてはいました。私の持てる力を全て使うつもりでしたね。」
「…”L”は計り知れないわね?」
「はい、世界一ですから」
にっと笑うL。何度もこの存在、この笑う顔に救われた事かは数え切れ無いほど…そしてこの先もこの存在に幾度となく救われるんだろう。なんて未来の想像を繰り広げる。
「まぁ、私とLだし平気ね」
「…突然どうしたんです?」
「愛してるってことよ」
「…私も。愛してます」
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過去の話と未来の想像