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主人公
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長いフライトを終えイギリスの静かな郊外へとやってきた。
日本の関東地区とは随分景色が違って、柔らかい陽射しと草木が揺れる、静かな場所にひっそりと佇む、大きすぎず小さすぎもしない美しいレトロでアンティーク調な建物が一つ。
あまりにも綺麗で、女子なら誰もが憧れる様な建物と、周りの草花達。テラスがあり、広い庭はには色鮮やかなバラが咲き誇り、まるで小さなヴェルサイユ宮殿の一角、マリーアントワネットの秘密に過ごした隠れ家とでも言う様だった。
「…L、綺麗な家ね!」
「!!…気に入りましたか?」
「ええ、とても!」
思わず私はキャリーバッグをその場に置いて庭のバラや小花、草木を見て歩いた。
敷き詰められたガーデンタイルの散歩道、小さな噴水、どれも全て子供の頃の夢を敷き詰めた様なお城、そんな家だった。
そんな私を見てLはワタリと顔を見合わせた後、私の後を追うように、こちらへ寄った。
「それは何より。建ててよかった。」
「あなたの趣味が少し意外だったわ」
「…このガーデンもテラスも全てあなたの物です。いつでも好きなようにしていいんですよ。」
「…私に凄く甘いわよね」
「自分でも若干そう思いますが、あなたを20年近く想ってきたんです。そしてあろう事か私の恋人になり、側で生きてくれる事を選んでくれたのだから、当然でしょう」
「…まるでプリンスね?」
「あなたは私のプリンセスですから」
「え?なあに?」
大きな木の下に置かれたガーデンチェアとテーブルとそれを囲うようなバラのアーチが1番気に入って、そこに腰を下ろした。
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----小さなお城にね!える?
-------たくさんのお花を……える?
幼き頃の、絵本を抱えた少女との愛しい会話を思い返す。
初めて…自宅というわけではないが一応自宅と呼ぶには1番近しい場所へ彼女を初めて招いた。自身以外はワタリしか入った事がない…いや、入れる事を許す気もなかった。まあ、招く人間すらいなかったのだけど。まさか、“恋人”を招く事があるとは当然想定などいなかった。
建てたものの、1人で過ごすにはあまりにも広すぎて、美しすぎた。しかし、もしいつか機会があれば招待したいと思っていた。
「いつも冷静で、落ち着いているのに…珍しいですね。」
「…彼女がこんなにも喜ぶとは驚きです。ここを建ててよかったですな、L。さて、紅茶と焼き菓子を用意しましょうか。」
「…すまない」
「ナナ…」
あまりにもはしゃぐ彼女が愛おしくて、眩しい太陽のせいか、彼女のせいかは分からないが、目を細めずにはいられなかった。
もし、ここはいつか絵本を眺めながら語ったあなたの夢を叶える為に建てたのだと伝えたら驚くだろうか…?嫌悪するだろうか…?
「…本当に素敵ね?」
「もうすぐワタリが紅茶とお菓子を用意してきてくれますから、それまで庭を好きなように見てください」
「えぇ!そうするわ!」
柔らかい髪を靡かせ、ここにチューリップを植えるのはどうか、カサブランカは合わないか?など私に問いかける。
あぁ、いつも落ち着いた色でシックな服ばかり着ているがもし優雅な淡い色のドレスやワンピースを着て歩いてもよく似合うだろう…
はしゃぎ、喜ぶ姿はまるで端麗な姿とは裏腹に可憐な少女を彷彿させる。
----私、お花屋さんになりたいの
幼少期にそう語った彼女が一体どうしてこの界隈に足を踏み入れたのか、先にハウスを出た私はよく知らなかったが、キラ事件の最後”自身のような子供を減らす為、然るべき罰を与えるため”そう言い放ち、初めて理解した。
こんな、殺伐とした世界線で生きては欲しくなかったがこんな殺伐とした世界だから、私と共に来てくれた。…キラに1番救われたのは、私か?
本当はフローリストを望んだナナ、か。
もし彼女がフローリストであれば毎日花をありったけ買っただろうし、もしパティシエにでもなれば毎日菓子を買い占めただろう。それ程愛おしい存在だった。
「…それ程気に入りましたか」
「ええ、夢みたい」
ガーデンチェアから立ち上がり、目の前でおどけて笑う彼女に歩み寄る。
さわさわと揺れる草木を靡かせる、緩やかな風。時折舞う、バラの花びら。
そっとナナの背中ごと抱きしめる。
「なぁに?」
「これほどはしゃぐ姿を見たのは久しいですから…」
「あら、ごめんなさい」
「こちらに。私が手を持っていますから、目を閉じて」
「……えぇ」
身体を一度離し、ナナの手を取ると、庭の奥へと進んだ。
無数のローズアーチをトンネルにした奥へ進む。
「帰りはここは目を開いて潜った方いいでしょうが、まだ開けないで。」
「ええ、閉じてるわ」
アーチのトンネルを抜けると、バラとブルースター達で囲った、白い大きなブランコ。
「はい、開けてごらん」
「…!」
「どうぞ」
自身が先に座り、ナナを膝の上に座らせた。
「…実はここ、あなたの為に建てたんです。」
「…え?」
「いつか、絵本を抱えて小さなお城に憧れている、バラの咲き誇るこんな所で過ごしてみたいと願っていたので。いつか招こうと思っていたんです。なので、建てました。」
「…L」
「だから、あなたの好きだった絵本を元に建てたんです」
「…それで見覚えがあったのね」
「はい、招く事があるのかないのか、分かりませんでしたがそれでも1人の少女を救えるならばと建てておいたんです。たまに1人で過ごしてみたりもしましたが、あまりにも殺風景で。あなたが立ち入って、やっと完成しました。ですからここはあなたのお城です」
「そんなこと、言ったかもしれないわ。……ありがとう。L、幸せ」
瞳を潤ませて、私の腕にきゅっと可愛い力で抱きよるナナ。
「こんなに喜んでくれるなら私もこの場所も報われます」
「ねぇ、L?私あなたにしてもらってばかりじゃないかしら?」
「私がしたくてしてるんです…それにあなたが喜んでくれればそれで良い。それを共有し、共に過ごす。それが私の幸せです。ですか、今日からここは私達の”家”にしましょう。出てしまうことも多いですが、私達の帰る場所は必ずここにしましょう…
おかえり、ナナ。」
「…ただいま、L!」
緩い風の服、木陰の間。
ほのかに掠めるバラの香り。
甘い、甘い、キス。
「愛してる…ナナ」
————— END . ——————
探偵達の物語
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