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主人公
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程なくして、ワタリは空港のロータリーに車を停めた。
「…ありがとうL。また近いうち……」
声が、上手く出なかった。
Lの元を発つ。この事実が尾を引き、動けなかった。2人で捜査した事、2人で会話した事、バカンスに、抱き合った事、感じた指先の温もり、食事した事…そして、共に命を賭けた事。…レモンのの香りがするキャンディの味。
全ての記憶が私の決めたことに停止をかける様に色鮮やかにふつふつと湧き上がる。
「……ゲートまで行きましょう」
「…だめよ。顔は極力晒さないで」
「…」
私たちが口を開かないでいるとワタリは私は外の空気が吸いたいのでと、帽子を深々と被り運転席から降りて車の外へ出た。
「「……あの」」
「すみません、先にどうぞ」
「……いいえ、Lから」
少しの沈黙。
いつも、私に先に声をかけてくれたのは、Lだった。
Lが倒れた時の記憶。この世を去ってしまったと本気で覚悟したあの時のことが、蘇り、私の喉につかえた。
今は私から先に言わなくちゃいけない。そんな気がした。
「……そばに、いたいの」
「…!い、今何と?」
「L…あなたのそばにっ、ずっと、いたいの」
「…!」
Lは目を見開いたが、ばっと今までになく、強く勢いよく、私を抱きしめた…というより私に抱きついたが正しいかもしれない。
Lはいつも鳥の羽のように、ガラスの様に、それはそれは丁寧に丁寧に私に触れ私を抱きしめるのでこんなに強い力を感じたのは初めてのことだった。
目一杯のLの力を感じる。
「すみません。可能な限り優しく触れたかったんですが、許してください。ここ1ヶ月余りにも幸せに触れ過ぎてしまって、あなたと離れる明日からが想像できず、引き止めようかずっと迷っていたんです。」
「L…」
「本当に私と来てくれますか…?」
「…あなたの、そばに居させてくれますか?」
「っ!もちろんです。……いえ、
私はあなたと並び捜査した事も、あなたと思考を共有した事も、あなたが賭けた命も…全ての瞬間が命の続く限り続いて欲しいと思って手放したくありません…というよりどうしても手放せません。
どうか私の側にいて頂けませんか?」
首元に冷たい金属の感触を感じると、Lは私の首に信じられないほどに眩しく光る小さなダイヤのネックレスをかけた。ホワイトプラチナの繊細なチェーンにダイヤを一つあしらった物。
「……L。」
「絶対世界で1番幸せにします。世界一の探偵の名に懸けて、ナナ。」
「はい、Lと一緒に」
Lの気持ちに涙が溢れた。
Lは全てを悟ったように私を自分の胸の中に優しく迎え入れるように抱きしめた。
程なくして、運転席のドアが開く。
「さて、戻りましょう」
「っワタリ最初からそのつもりで…」
「おや、何のことかな?」
とぼけたようにするワタリ。もしかしたら、あの時一緒に来ないかと初めてLに言われた日からワタリは全てを察していたのかもしれない。
「全く…あなたには敵わないな。ワタリ」
「2人より長く生きているだけ。それだけのことですよ」
まるで、昔の…。
私たちを育ててくれた時のような…あの時を思い出させるような口振りを見せたワタリ。
「遠回りさせてしまったわ…ごめんなさい」
「旅客機を眺めるのも悪くありません。お気になさらず」
こうして、私たちはまた3人でホテルへと戻る道を辿った。
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後部座席の私たち。
「本当に離れませんね?」
「…離れないわよ」
「前言撤回とは言わせませんよ。誓約書にサインを頂けますね?」
「もう!何でも書くわよ」
「ほぅ。言いましたね?婚姻届も…?」
「流石に気が早いわ」
「一生そばにいると言ったじゃないですか。」
「それは見極めがいるわよ。…うっかりサインして、あなたと離婚調停は少々分が悪いじゃない」
「婚約も結んでないのにもう離婚の話ですか…あぁ、私ショックです」
「あ…、違うわよ。仮の話よ?仮。推理だって仮定が大切でしょ?」
「犯人と私たちの将来を一緒にしないでください」
こんなやり取りをしていた。
それをルームミラー越しに微笑ましく見届けるワタリ。
「2人とも、幸せになりなさい」
小さなワタリの呟きは誰にも聞こえず、飛行機の飛び立つ青い空に溶けて消えた。
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探偵達の歩調