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主人公
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「…私泳げないのよ……?」
「知りませんでしたね」
昼下がりの砂浜にパラソルを立て、そこにピクニックシートを敷き、そこに並んで寝そべった。
緩やかな波が私と Lの足元を優しく擽る。
「新しいことを一つ知りましたね。来てよかったです。」
「そう言うあなたは泳げるの?」
「泳げますよ」
「運動なんて縁が遠そうなのに、何でもできるのね?」
砂浜に寝そべった私達は自分たちの事を話した。
「…ここはビルのネオンも街灯もないし、星がよく見えるでしょうね」
「子供の頃から星が好きでしたね」
「あなたが天文学と神話を教えてくれたからかしら?」
小さな頃も田舎町にひっそり建つワイミーズハウスの庭で夜な夜なこっそり星を見た。
その度にLは私にあの方角に見えるのはベネブ、これはカシオペア等話し、天文学について教えてくれた。
「懐かしいですね」
「うん……」
眩しい日差しを遮るパラソルの下、Lは私を腕に閉じ込め、髪を撫でる。
「…おやすみ、ナナ」
低く落ち着いた、甘く柔らかいその声色で小さく呟く。その言葉に溶けて私の意識は遠のいた。
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雨の音…?
冷たく、陶器の割れる…
子供の泣き声。
「…!」
「目が醒めました……か」
目を覚まして何を考えるでもなく気がついたらLに抱き寄っていた。
「…大丈夫」
Lは私に応える様に抱きしめ、髪を撫でる。
「…ごめんなさい。寝てしまったわ」
「いいんですよ」
「もう夕方か…、L、夕陽綺麗」
「本当ですね。私はあまり景色に感情を揺られたことはありませんが、あなたといると何もかも美しく見えます」
「…ちょうど同じ事を言おうとしたところよ」
少しだけ夕陽を眺めた後、冷えるので戻りましょうとLは起き上がるので、パラソルを畳んで室内へ戻った。
夕食…と言ってもLは甘いものしか食べないし、予め手配してもらっていた食材で簡単なスイーツと自分の分の料理をし、ダイニングテーブルに並べる。
「…料理も製菓もできるんですか」
「そんなに大したものじゃないけど、軽くならね」
「これ程できて軽くですか」
Lは私の焼いたマフィン、ムースで仕立てたババロアを大層気に入った。
後はメロンやマンゴーなどの果物を切って並べ、それは2人でのんびり食したり、室内で過ごす。
「本当に恋人らしいこと、ですね」
「本当ね。それに今までこんな時間、1人でも取ったこともなかったわ」
少々不慣れな時間に困惑がなかったといえば朝になるが、翌日までのんびり過ごしたり他愛もない会話をして、小さな諸島を後にした。
「あなたが望めばいつでも来ましょう」
「ありがとう、L」
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日本の関東へ戻ると私のパソコンには1通のメールが届いており、ほんの束の間のバカンスを終えて早々…内容は殺伐としたものであった。
----私の意思を大きく揺らがせるメールとなった
(…フランス国家警察から?…何名か乳児の急死、相次ぐ体調不良?直近3箇所の幼稚施設で複数の園児達の被害)
目を伏せたくなる様な小さな変死体の証拠写真や詳細書類の数々を一つずつ確認し少し考える。
警察がいくら調べても証拠も何もない…か。
遺体からは異物も出てないとのこと。
(殺人としか考えられないわね。)
この不可思議な事件の解決に協力を頂きたい。と書かれたフランス語。…椅子にもたれ少し考える。
(遺体の手足に変色…か。でも検死からは何も出ず)
(3箇所とも事件時刻は12:30〜13:00の間…昼食に何か混入?)
私は子供の犠牲には特に敏感だった。少し胸が苦しくなるがすぐに取り掛かる旨を返事して送られてきた資料に目をやる。
「…難しい顔をしてどうしたんですか」
「あら、L…キラ事件の貸し、という事で少し力を貸してくれない?」
「もちろんです。どうしました?」
Lは自分の分と私の分のマグカップを両手に持ち、私に近づく。コトンと2つ音を立ててカップを一つ私の前に置き、隣の椅子に膝を立ていつもの様に座った。
「これを見てほしいの」
「…なるほど」
ふむ…と何か考える様に人差し指を唇に当て、天井を見上げる様に目線を上げた。
「考えられる事はいくつかありますが、詳細がもう少し欲しいところ。」
「そうよね、時間や現場に居合わせた職員がいるでしょうから尋ねてみるわ」
「依頼ですか?」
「そう、フランス警察からのね。…園児達を狙った殺人と思ってるんだけどどう思う?」
「事故の可能性も否定出来ませんがまず間違いないでしょう」
「そうよね。数年前にある大学の貯水槽に水溶性の一般的には危険性のない物質を少しずつ混入させ、長期に渡って学生や教員に使用させた。無数の生徒達や職員が腹痛や嘔吐、体調不良を相次いで訴えるという事件があったんだけど、警察がいくら調べても何も出ず。結局それは同学校の理科目学生2名によるイタズラで水道水の残留塩素の量が明らかに多く、健康影響ギリギリの量だったことがあったの。そう言う類の話しかとも思うけど、多分違うわよね」
「…水ですか。近しい可能性があります。死亡時刻や体調不良が起こった時間帯を見るに昼食の時間帯。」
「亡くなったのは全て1歳前後の子供達。で、体調不良での重症や1歳〜4歳未満……蜂蜜?」
「はい、乳児ボツリヌス症による食中毒。1歳未満の乳児が口にすれば死に値する事もあります。」
「配食業者を徹底的に調べるよう伝える」
「そうしましょう」
こうして警察は調査を進めると、事件の起きた児童施設で数年前自分の子供を受け入れてもらえなかった女性の犯行と分かったそうだ。
その配食センターでは幼児達の食事に蜂蜜を使用することなど無いという。こうして、事件は解決した。
「これで貸し借りなしです」
「なんだか比率が少し…まあいいわよ」
こうしてLと肩を並べ、共に思考し、仕事をこなすという事がどうしようもなく嬉しくて、誇らしかった。キラ事件から長期に渡ってずっと2人で動き、推理…こうしてきたのだからこんな日々にすっかり慣れてしまいそれがなくなってしまうという喪失感に淋しさを実感した。
1人になるのが嫌なのでは無い、Lと捜査できなくなる…これがずっと私の後ろ髪を引く状態だった。
(離れてしまえば、こう言ったこともなくなる…か)
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探偵達の日々