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主人公
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まるでバケツをひっくり返したかの様な豪雨。
ラグジュアリーホテルの最上階。分厚いガラスを打ち付け、流れ落ちる大粒の雨。
ここから夜景を見れたら最高に綺麗なんだろうに、生憎、ネオンの粒は雨粒達に反射してぼんやりとしてみることしかできない。
「夜景…見えないね〜 エル」
「…見たかったですか?」
パラ、パラと何やら分厚い書類を捲りながら私の何気ない問いかけに応える。
多分すっごく難しい書類かすっごく重要機密、もしくはどちらもがびっしりと記された書類なのだろう。私にはさっぱりわからない書類である。
「ごめん、邪魔しちゃったかな」
「問題ありませんよ。」
そんな会話をしながら彼の空いたティーカップに淹れたてのコーヒーを注ぎ、空になったシュガーポケットに均一にブロックになった角砂糖を追加する。
どちらも真っ白で非常に高価な陶器だ。
「…砂糖ピンク色ですね」
「そう、可愛いでしょう?」
糖分が補充できればなんでも構いませんと続け、これでもかというほどほのかにピンク色に染まった角砂糖を湯気の立つコーヒーの中に放り込んだ。
これはもう毎日見慣れた光景。
例えば彼がコーヒーをそのままミルクも砂糖も入れずに飲んだら過剰に心配してしまうだろう。
過去に一度だけそんなことがあってワタリと2人で大層心配したものだ。その時本人は”そんな日もあります”と淡々と告げたのだった。まあ、甘くないコーヒーを啜った姿を見たのがその一度きりなのだけれど。それ以来、コーヒーにも紅茶にも毎日毎日欠かさず砂糖を入れる。
「前からずっと思っていたんだけどさ…」
「はい、なんでしょう?」
「…角砂糖舐めてみたいよね」
「私は何度もやったことありますが、やってみますか?」
ポフ、とピカピカに磨かれたガラスのローテーブルへ置きひらひらと私を手招きする。 Lの座っているふわふわのチェアーに近付くとぐっと手を引かれ、 Lの膝の間に座る様な形に。
「最近、忙しくてあまり触れ合えてませんでしたからね。」
そう言って薄いピンク色の角砂糖を一つ自身の唇で啄むと私の唇に押し当て、そのままちゅ、と音を立てて口移し。
ぎゅっと固められた角砂糖を丁寧に剥がすように私の唇を甘くする様に舌で転がし、角度を変えて浅く、深く何度も何度もキス。
「………っん、ふぁ」
「そのカオ、そそられる」
ぎっしりと形付けられた角砂糖はあっという間に砂の様にバラバラになり、どちらのものかわからない唾液の水分で溶けてしまう。
ただ、ただ、甘ったるい Lの深いキスだけが尾を引く様に続く。
Lが敬語を使わない時はソウイウコト。
っは、と時折見せる男らしい顔と細長い手のひらで長い艶っとした前髪をかき上げる。
あ、めちゃくちゃ色っぽい。
「お味はどうです?」
ケロッとした声色に合わない仕草と艶めいた表情。
「,.....っっ甘い」
「でしょうね。一度私がやってみたかった事にあなたのやってみたいことを掛け合わせました。中々良い体験でした。」
「っっもぉ〜!」
詰まる言葉と、どこか物足りない気持ち。
「さ、続きはこっちで」
軽々しく膝の上の私を持ち上げると、ベッドルームの方へと向かう Lの足取り。
静かな薄暗い部屋と几帳面に整ったキングサイズのベッド。
うるさいくらいの雨音が遠のく。
その夜はピンク色の角砂糖より遥かに甘かった。
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甘い雨なんて存在しないから
(まだ眠い…)
(まだ寝ていて)
すこーしだけピンクなお話だよっていうのは白い角砂糖をピンク色にするしか方法が思いつきませんでした。