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主人公
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口 の 中 が 非 常 に 渇 く 。
バリ、バリ、と音を立て、削られてどう見ても不審な見た目をした男の口の中に姿を消していく。
「初めて食べましたが、割と気に入りました。」
「割とって何よ。」
小分けになった袋に1つずつ閉じ込められた渇いた生地の中に質素なクリームを薄く挟んだお菓子。
サクサクともザクザクとも何とも言えない食感と味、ウエハース。
ココア味。バニラ味とイチゴ味。
安く売られていて、その食べ物はよくアニメやゲームなんかのおまけのシールやカードがついている。
「で、これ何なんですか。」
中にはランダムに入っているカード。
キラキラした可愛く描かれた種類の違うアイドルの様な女の子達。
「え?私が集めているのよ。」
「いい大人が何してるんですか。」
「あなたには言われたくないわね。」
一体何歳なのかは知らないけど、多分いい成人男性が毎日毎日甘い物ばかり食べて、これでもかと言うほどの砂糖を入れた紅茶を飲んで。
そんな大人にだけはいい大人が…なんて言われたくないものだ。
この名探偵に日本に呼び付けられ、犯罪者ばかりを狙った奇妙な大量殺人犯を捕らえると言われやってきてからと言う物。すっかり日本のアイドルアニメにハマってしまい、現在発売中のウエハースの中に入っているカードを集めている最中。
中のカードは欲しいけど、おまけとしてついてくるウエハースは私には必要ないので彼に押し付けているといったところ。
「よくもまぁ毎日食べるわね」
「あはたふぁもっふぇ…(あなたが持って)来るんじゃないですか」
「いいじゃない。利害一致よ?」
「毎日買ってくるけど1枚も食べてません」
「私は中のカードが欲し…んぇ!?」
「あーーーん」
話している最中に手に持っていた食べかけのウエハースを口に押し込まれる。
Lの細くて長い人差し指が私の唇を掠め、唇の真ん中から熱を含む様な感覚。
男性とこれしきの事は決して経験がないわけでもないはずなのに、唇が熱い様な気がする。
口の中のチープな食べ物はほろほろ、とまるで音を立てる様に私の口の中でバラバラなって甘いバニラ味とほんのり香ばしいような、粉っぽい様な味が広がるのに味がしない。
……あれ、何この感覚。
「このお菓子、非常に口の中が渇く」
「私の指はあなたのリップで潤いました」
ほら、と人差し指を向けて赤みを含んだボルドーの色がうっすら移っている。
「…!あなたが触れるからよ!?」
「そんな反応もするんですね」
にっと笑う彼が憎らしくも少し可愛いと思ってしまった。
そして、心臓がややうるさい。
こほん、と咳払いを一つ。
「で、本題に入るけど」
慌てて話をすり替えるように口を開いた。あぁ、私のルージュは中央だけ薄くなってしまったのかしら。とコンパクトとリップを小さなクラッチバッグから取り出しながらこう尋ねる。
「ええ、そうですね。これを見てもらいたい…」
束ねられた資料とノートパソコンのモニターをこちらに向ける。
「それもそうだけど、どうしてあなた程の能力があって私と共に捜査なの?誰とも組まないじゃない。」
「…」
「珍しいわね。ワタリしか絶対そばに置かないのに…」
少しの間の沈黙。
彼は膝を抱えたまま少し目を伏せて口を開いた。
長いまつ毛と目の下の隈がより鮮明に見えた気がした。
「…この事件の犯人を追うにあたり、少し恐怖を感じました。」
「…」
この男でもそんなことがあったのかと口に出すのはやめて、私の中で留めた。
まるで喉元を掻き切られた様な感覚。
「ヤツの殺害方法は依然として不明。だが、直接手を下すことなく人を殺害できると読んでいる。そして、犯人のターゲットは皆心臓麻痺…」
低く、淡々と話す声がいつもよりさらに低く聞こえた。
左手がほのかにデニムをきゅっと掴むのを見逃せない。
「そうね、殺害方法については不可解な点があまりに多すぎる。そして、犯罪者ばかりを狙っているが、自分に歯向かう人間には容赦なく手を下す可能性も大いにあるわね。」
「はい、ですから今まで感じた事のない恐怖が少しあります。」
そうか、この男も孤独だったのか。
これでいい、こう生きるしかないと考えていたけれどやはりどこかで恐怖と孤独感に苛まれる事がなかったわけではない。
それは私だけではなく、 Lも同じだった。
年齢も名前もお互い知らないけれど、境遇は似ていたのだと察してからは彼と足並みを揃えてみるのも悪くないと思った。
今まで直面した事件で一番謎が多く、だからこそ恐ろしい。
「なるほどね。私もたまにふと思うかもあるからわからなくもないわよ。」
少し間を置いて続ける。
「…協力しましょう。報酬弾むわよね?」
こんな彼はあまりにもらしくない。
もっと淡々と、冷静で。行動的で大胆。
それが Lだろうと、空気を壊す様に冗談を投げた。
「ええ、それについてはかんがえていますよ。
…例えば
私とか?」
「…今の所ご遠慮させて頂くわ。」
そう、彼は大胆すぎる。
うるさい鼓動と渇く喉。
あぁもう一体私はどうしてしまったのだろう。
(遠慮はいりませんよ?)
(遠慮じゃないわ......)
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探偵達の孤独と恐怖
今売ってますよね〜デスノートウエハース
探し回ってますがゲットできてません…。