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赤く鋭く光る瞳は、怒りに燃えているように見えた。炎のごとく揺らぐ輝きに見つめられた時、瞳の奥に宿るただならぬ激情に焼き尽くされてしまいそうだった。
でも、私は知ってしまった。熱く燃えたぎる怒りの奥の奥に、密かに身を潜める悲しみの色が隠れていることを。
きっともう戻ることなんてできない。地獄の沼に足を踏み入れてしまったから。
気づいたらおかしな世界に迷い込んでいた。ほの暗く、肌寒い、人の気配があまりないような見知らぬ土地。生きているのか死んでいるのかも分からなくなるような現実味のない荒地に、私は立っていた。
わけも分からないまま、とにかく助けを呼ばないとと思いふらふらと歩いていると、遠くに懐かしい景色が見えた。
「縁側だ……」
懐かしいといっても、私はそれを生で見るのはたぶん初めてだった。歴史的な資料とか古い写真とか、そういうものの中で見慣れている古風な日本家屋が、30メートルくらい先のところに見えている。
まったく知らない場所にいても、そこに何かひとつでも見覚えのあるものが存在しているだけで安心できるんだから、人間って不思議だ。私は直前までの不安なんてまるでなかったかのように和風家屋に駆け寄った。
遠目に見ても分からなかったが、中はお世辞にも綺麗とは言いがたい状態だった。壁や畳はところどころ黒ずみ、床はどこを踏んでも大きく軋む。人が住んでいるわけではなさそうだ。
「あ……」
ちょうど家の中心あたりまで来ただろうか。部屋の壁に沿うように、この時代の日本家屋にはそぐわないものが置いてあるのが目にとまる。部屋の壁や畳に負けないぐらい黒ずんでいてよく分からないが、機械のようなものに見える。
得体の知れないものに近づくべきでないことは頭では分かっているのに、なぜだか足を止めることができなくて、手が届く距離まで近づいてしまった。
機械の表面には、配線や謎のピストンのようなものがついている。すすの下に薄らと文字が見えたので手の甲で拭ってみると、掠れた文字で generator と書いてあるようだった。
「ジェネレーター……発電機? なんで日本家屋の中にこんなものが――」
最後まで言い切る前に、視界の端を何かが過ぎる。どうして気づかなかったんだろう。こんなに大きな人影がすぐそばまで来ていたことに。
カチャカチャと硬いものどうしが擦れるような音がしたあと、私の肩のあたりに向かって何かが振り下ろされたことを理解したところで、私の思考はプツリと途切れた。
一瞬のことだった。目の前に噴き上がる赤と、強烈な腕の痛みにすべての感覚が支配される。痛い、怖い。気づいたら薄汚れた畳の上に蹲っている自分がいた。
無意識に肩を抱いた手のひらに触れる、生ぬるいもの。それが何なのか考えたくもない。誰か、誰か助けて、誰でもいいから。
「う、っ……あぁ……!」
恐怖で目も開けられずにいる私の身体がふわりと持ち上がる。さっき切りつけてきた大男が、グローブでもはめてるのかと思うほど大きな手のひらで私の肩を鷲掴みにしているようだ。
何なんだろう、これは。いきなり見覚えのないところに連れて来られたかと思えば、和室にジェネレーターというあべこべな世界が広がっていて、おまけに謎の大男までいる。しかも襲われた。痛みを感じるということは夢でもないし、何がどうなっているのか分からない。
大粒の涙が閉じたままの瞼から溢れ、頬を濡らす。
「嫌だ……やめて……」 掠れた声で、必死になって命乞いの言葉を口にする。
「日本人……か」
こちらの言葉に反応して、大男が初めて声を発した。得体のしれない化け物のように見えた男が口にしたのは、私と同じ言語だった。
固く閉じていた瞼を反射的に開いてしまう。燃えるような赤を放つ仮面の奥の目が、真っ直ぐに私を見つめている。
どうしてか、私はその瞳から視線を逸らすことができなかった。表面を覆うおどろおどろしい熱に怯んではいけないような、もっと重要で見落としてはいけない何かがそこにあるような、そんな気がした。
「ぐっ、」
「え……?」
大男が現れた方向から突然一筋の光が差してきたかと思えば、次の瞬間には私は盛大に尻もちをついていた。
人間だ。大男とは違う、一般的な大人の人間が二人立っている。
片割れの男性が上手く立ち上がれずにいた私を素早く抱えると、一緒にいた女性がもう一度ライトの電源ボタンを押した。目元に直接光を浴びせられた大男が怯み、走り出す二人。一瞬の出来事だった。
息ぴったりの連携で助けてくれた二人にお礼も言えないまま、私は抱えられた状態で錆びたゲートのようなものをくぐり抜けた。その日の記憶で私が覚えているのはそこまでだった。
どうやら私は謎の支配者が創り出した妙ちくりんな世界に連れてこられたらしいこと、この世界では延々と鬼ごっこのようなことをさせられること、ここから逃げ出す方法は今のところないことなど、私は短期間に様々な絶望を知ることとなった。私よりも先にこの世界に連れてこられた、あの時助けてくれた二人を含む"一般人”たちが、この世界のすべてを教えてくれた。
この世界で何度か儀式を行ううちに、自分自身で学んだこともある。
そのひとつは、この世界は私が元いた世界とは違い人種や国籍等の垣根は存在しないこと。人も、殺人鬼も、儀式の間も、あらゆる文化的要素が入り交じっている。
だからだろうか。初めての儀式で飛ばされたあの日本家屋がある空間と、そこで出会った巨躯の日本人らしき殺人鬼の存在が、他の何よりも強く印象に残っているのは。
こちらに武器を向け、食肉のようにフックに吊るしてくる殺人鬼に安堵に似た感情を覚えるなんて、自分でもおかしいとは思う。それでも、常に緊張状態な上に己のルーツを意識せずに済む場面が少ないこの世界では、馴染みのあるあの場所が恋しいと感じてしまう。
また会いたい……いつしか私はそう願うようになっていた。
どうせなら、他の人よりも目立つ目印みたいなものが欲しい。私があの場所や彼に特別な感情を抱いているのと同じように、向こうにも私の印象が強く刻まれてほしいから。
とはいえ、この世界で個人が手に入れられるものといえば、独自通貨と交換できる衣服くらいしかない。私は今までほとんど使わずに保管していた通貨を握りしめ、この世界の"神"にお願いした。暗闇すらも彩れる、ひときわ目立つ衣服をくださいと。
瞬きをすると手の中の通貨は消え、いつの間にか私は真っ赤なワンピースに白のカーディガンを羽織っていた。鮮血を思わせるような赤に、闇を照らす光のような眩しい白は、他のどの色よりもこの世界に映える気がして嬉しくなった。
*
会いたいと思ったひとに会えるほど、行きたいと思った場所に行けるほど、この世界は単純ではないらしい。"晴れ着”に身を包んで儀式に挑むようになってから、どれくらい無駄足を踏んだだろうか。
あまり動きやすいとは言えないこの服装で、私は何度も何度もあなたのいない戦場を駆け抜けた。もはや斬られた時の出血なのか元々の布の色なのかすら分からなくなるくらいに、このワンピースは血を吸った。
そんな無意味な日々を何度か繰り返したあとのこと。身体にまとっていた靄が晴れ、見覚えのある竹の塊が目に入った時、私の心はこれ以上ないほどに高揚した。
この世界にいるはずのない善神に祈りが通じたのだろうか。はたまた、私の心理状況を面白がったエンティティの気まぐれか。
いや、今はそんなことどうだっていい。またここに来ることができたのだから。
懐かしの縁側に足を乗せる。大きな音を立てて軋んだ床が、あの日の記憶をよみがえらせる。奥の部屋を覗いてみると、あの時と同じ不似合いな発電機が今日も壁際に鎮座していた。
あとはまたここであのひとを待つだけ。早く言葉を交わしたい。自分たちが慣れ親しんだ、共通の言語で。
待ちに待ったその瞬間は案外すぐに訪れた。古びた箪笥の上の埃を手の甲で払っていたら、縁側の奥の方から大きな足音が聞こえてきたのだ。
咄嗟にふり向くけれど、まだ姿は見えない。でも間違いない。あの人間離れした獣のような豪快な足音は、一般的な体格の人間からは出るはずのないものだから。
一秒でも早く姿が見たくて部屋の入口まで駆け寄った。私が足を止めるのと同時に引き戸の陰から現れた真紅の瞳は、紛れもなく彼のものだ。
「あの、私――」
ザク。
鼓膜を揺らしたのは言葉ではなく、肉を切り裂く鈍い音だった。胸元に感じる強い痛みと、花火のように飛び散る赤い鮮血。あの時の惨状を再現したかのような光景に、それ以上思考を続けることができなくなった。
なんで? 何が起きてるの? 畳の上に蹲りながら困惑する。でもそんな混乱はすぐに解けて、いやに冷静な思考が戻ってきた。
そうだ、違うよ。違うじゃないか。おかしな思い込みに囚われていたのは、独りよがりな勘違いをしていたのは私の方だ。同じルーツを持っていようと、同じ言語を知っていようと、かれらからすれば私は単なる加害対象の一人だ。
相手は私たちを殺すためだけに解き放たれている凶悪な殺人鬼なんだ。分かり合うことなんてできるはずがない。
どうしてそんな簡単なことを忘れてしまっていたんだろう。心細さを埋められるかもだなんて、どうして思ってしまったんだろう。馬鹿だな、私。
力なくうずくまる私の視界に、踏み込まれた大男の足先が映る。
ああ、どうして私はこんな目に遭わなければいけなかったのだろう。今さらながらそんなことを思う。今まで必死に抑え込んできた悲しみや怒りが、最後の希望が潰えたことによって感情の蓋を押し上げ、溢れ出す。
極限に達したストレスのせいか、身体がカタカタと震え、次から次へと涙が出た。
「……っ、うっ……時間を、時間を戻したい……やり直したい……」
ほとんど無意識にうわ言のような言葉を口にしていた。
直後、頭上から微かに聞こえていた鎧の擦れる音がぴたりと止んだ。
「私は、……私は、いったいどこで間違ってしまったの……?」
「…………」
「どうすれば、こんなことにならずに済んだの……誰でもいい……誰か私に教えてよ、お願い……っ」
「…………」
カラン、カランと畳の上を転がる金属の音が、静寂を切り裂く。
うずくまっていた私の肩が掴まれる。同じ展開、同じ景色。ただ一つ違うのは、あの日のような力任せの鷲掴みではなく、労わるような優しい手つきだったこと。
涙で歪む視界の中で赤い眼光が近づいてくる。気がつくと私は、目の前の青白くて大きな身体に静かに抱きしめられていた。
「え……、」
一瞬、何が起きたのか分からなかった。数秒前まで自分を殺そうと武器を振り上げていた存在に抱きしめられるなんて、そんな展開、どんなに頭を回転させても理解が追いつかない。
肌の感触と鎧の冷たさが、私の心をぐちゃぐちゃにかき乱す。
「あ、の……」
恐る恐る、震える声で問いかけると、自分から抱き寄せたはずの大男が驚いたように跳ね退いた。そのまま何も言わずに刀を拾い上げ、くるりとこちらに背を向けてしまう。
待って。
言葉が声になるのを待たないまま去っていく大きな背中を、私はただ呆然と見つめることしかできなかった。
*
あの時の儀式を最後に、くだらない勘違いはすべて捨てるつもりでいた。例え同郷だろうと殺人鬼は殺人鬼。心を寄せるなんてことがあってはいけない。
でも、無理だった。人間離れした殺人鬼の人間らしさに触れてしまったことで、期待を捨て切ることが叶わなくなった。それどころか、より一層強い親しみを感じるようになってしまっていた。
抱き締められたあの瞬間、知ってしまったから。冷酷な殺人鬼である彼の身体にも血は通い、温もりを感じるのだということ。武器を握り蹂躙するだけでなく、壊さないように優しく包み込むこともできるのだということを。
会いたい気持ちと会いたくない気持ちが拮抗していた。次に会ってしまったらきっと、私はあの日の抱擁の意味を確かめてしまう。そんなことをしたら、いよいよ後戻りができなくなる。
頭では分かっていても、ここでキッパリ諦めるという選択ができないのが私の情けないところだ。
明確な答えが出せないまま悶々と考え続けているうちに、気がつくと私はまた彼の根城に立っていた。
会いたい会いたいと必死になっていた時はたどり着くのにあんなに苦労したというのに、あの苦労はいったい何だったんだろう。
しかも今回は、あの日本家屋の薄汚れた畳の上に飛ばされた。やっぱり私は暇を持て余したエンティティに弄ばれているとしか思えない。
ここから出て行くべきだろうか。この特徴的な建物の中を、殺人鬼が一度も巡回しないとは考え難い。ここにいたら確実に彼と会うことになる。
「あ、……」
噂をすれば、遠くの方からズカズカと大きな足音が近づいてきた。
今すぐに逃げ出して隠れてしまえばまだ何とかなったかもしれないけれど、結局私は最後まで未練を捨てきれず、その場に立ち尽くした。
赤い眼光と白髪を揺らめかせた殺人鬼が、刀を構えた体勢のまま大股で駆け寄ってくる。直前になって相手が私だということに気づいたのか、一瞬だけ動きが鈍り、けれど勢いを殺し切ることはできずに控えめな切り傷を胸元に走らせた。
「うっ……」
控えめだろうと切り傷は切り傷だ。痛いことには変わりない。
私は生温かいものが流れ出る胸元を押さえながら、崩れ落ちそうな膝にめいっぱい力を入れて何とか立っていた。
崩れ落ちてしまったら、きっとここに捨て置かれてしまう。それでは私たちの関係は永遠にこのままだ。
でも、このまま立ち続けているのにも限界がある。先日のことを尋ねるのなら今しかない。咄嗟にそう思った。
「あの時、どうして私を吊らなかったんですか……」
お面の奥で瞳がぎょろりと動いた気がした。
「……知らぬ、覚えがない」
初めてまともに言葉を返してもらえたことへの高揚を押し殺し、冷静に言葉を続ける。
「今、あなたにつけられた、この浅すぎる傷が証拠です……何のしがらみもなければ、あなたは加減などしないはず……」
「…………」
「どうして……どうして、抱きしめてくれたんですか?」
「くだらん……忘れろ」
「くだらなくなんかありません! 私は、あの日のあなたの行動がずっと忘れられなくて、それで……ぐ、っ!」
伸びてきた大きな手のひらが私の首を鷲掴み、そのまま壁に押しつけられた。ギリギリと力が込められて、飲み込めなかった唾液が口の端を伝う。
また私は彼に拒絶され、孤独の日々を味わうことになるんだろうか。ようやく言葉で伝えることができたのに、それすらも届かずに終わってしまうのか。
身体に力が入らない。涙で視界がぼやけていく。輪郭の薄らいだ世界の中で、それでも彼の真っ赤な瞳だけはハッキリと捉えることができた。
強い怒りに燃えているように見えるけれど、もっと複雑な色を持っているような、悲しみを堪えているようにも見える不思議な瞳。
……ああ、そうか。初めて彼と視線を合わせた時から、私はそこに映る悲しみの色に気づいていたのかもしれない。だから目を離すことができなかったんだ。自分と似ているところがあると、直感的に思ってしまったせいで。
「ど、うして、そんなに……悲、しそう……なの……」
ほとんど空気のような囁きに、首を覆う手のひらがふっと緩んだ。
壁に沿ってズルズルとへたり込む。支えを失った今、もう立っているのは不可能だった。
止まっていた分を取り戻すように荒い呼吸を繰り返す。回らない頭を必死に回転させようとするけれど、失神寸前まで酸素を絶たれたせいか上手く思考することができない。
思い出したようにズキズキと痛む胸元に奥歯を噛みしめた時、目の前に大きな手のひらが迫ってきた。さっきまでの苦しさを思い出して反射的に身体を引いた瞬間、トン、と背中に壁が当たる。横に逸れようにも、身体を持ち上げる体力がもう残っていない。
再び訪れる苦痛に耐えようと瞼を伏せる。
けれど、直後に感じたのは斬られる痛みでも締め付けられる苦しみでもなく、胸元をなぞる少しざらついた肌の感触だった。
「え……?」
恐る恐る開いた視界に映ったのは、切り傷の周囲に触れる青白い指先。ペタペタと触れた部分についていた血液が、彼の指先に吸われていく。
「……一度しか話さない、聞き逃すな」
断片的ではあったけれど、彼は自分の過去を語ってくれた。ここに来る前のこと、ここに来たあとのこと。同じ言語を話す者どうしだからこそ享受できる喜びを、ようやく得ることができた。
私に対する様々な殺人鬼らしからぬ行動の理由は教えてくれなかったけれど、その答えは語られる昔話から推察することができた。
彼は憤怒の仮面の下に隠した永久に癒えることのない悲しみを、せめて誰かに知ってほしかったのかもしれない。奥の奥に秘めた感情に気づいてくれる存在を待ち続けた彼の孤独は想像を絶する。
気がつくと私の頬には涙が伝っていた。いくつか彼の指先にもこぼれたそのしずくに、彼は何も言わなかった。ただひたすら独り言のように過去を語りながら、私の傷口まわりと汚れた衣服を淡々と掃除した。
血を吸って赤を深めていたワンピースがすっかり軽くなるころ、彼は私のワンピースの裾を刀で裂くと、どうせゲートを出たら元通りになる傷口を丁寧に覆ってくれた。
「ありがとうございます」……巻かれたばかりの布切れに手を当てて頭を下げたけれど、返事をくれることはなかった。
やるべきことを済ませた私たちの間に、沈黙が流れる。彼はまたあの日のようにさっさと他の場所へ行ってしまうのだろうか。それは、少し寂しい。
うつむいたままだった頭を上げると、低い姿勢でいる彼とまた視線が繋がった。私の心配とは裏腹に、私たちはそのまましばらくお互いの瞳の奥を見つめあったまま動かなかった。
二人の間に流れる空気は、明らかに以前までのものとは異なっている。いくつかの秘密を共有しただけでこんなにも穏やかな雰囲気で向き合うことができるのなら、もっと早くこうなりたかったとも思うけれど、今はただこの幸福を噛みしめたい。
「あの……また抱きしめても、いい、ですか……」
尻すぼみになりながら、けれども目線だけはしっかりと合わせたまま控えめに手を伸ばす。やっぱり彼は言葉を返してはくれなかったけれど、畳に膝をついたままその場を離れようとはしなかった。
それを都合よく肯定と捉えて身を寄せてもいいものか、迷いながらもじりじりと距離を詰めると、触れられる位置まで近づいた私の背中が大きな手のひらに抱き寄せられた。
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