魔法って言っていいかな?
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無機質な部屋。漂う薬品の香りが時々鼻につく。何度ここに通っただろう。この部屋で彼女の涙も怒りも悲しみも全部受け止めて、時にはすれ違いながら辛いこと、苦しいこと全部乗り越えてきた。全てボクにとっては忘がたい思い出になっている。ここに来るのは最後。
彼女はただただ静かに眠っているようだった。それくらいいつも通り綺麗だ。
彼女の両親に会釈してから彼女に向き直る。
出会った日のことを思い出していた。
1年前の大晦日。
今にも雪が降りそうな寒空の下今日は自分の誕生日だと言うのに、あてもなくふらふら歩いていた。お店の3人と夜一さんに朝からそれはそれは手厚いお祝いを頂いて、日本酒でいい具合に酔って、外の空気を吸いに来たのである。あてもなく歩くのは昔から好きだ。答えの出ないことを永遠と考えたり、新しい研究について色々と頭の中で想像を膨らませている時間が好きだった。そんな時はいつも時間を忘れてしまう。
ふと我に返ったので口寂しくなり、閑静な住宅街から大通りに出る。ファミマによって赤マルを買うと、ちょうど出たところの喫煙所で早速火をつける。ここ何年かで、タバコは喫煙所で吸わないといけなくなったので、困っている。喫煙所があったときに吸わないと。
壁によりかかりふぅーと一息ついて、煙の行く末を見守りながらまた考えを巡らせた。いつの間にか空が藍色に変わっている。寒さに身を縮めていると、視界に入った人影。誰かがすぐ側の歩道橋に手をかけ足をかけ震えている。
ただ長い黒髪が綺麗だった。ただ出で立ちや顔が好みだった。それだけ。
刹那、やはり飛び降りようとする彼女の肩を掴み、そのまま引き寄せた。細いな。細いし白い。彼女と目が合い、驚いたような、安心したような涙が切なかった。ドクン、いつもより確かにしっかりと鼓動が鳴って、確信した。それは、科学者が言うものではないと思うが運命だったと思う。
それが彼女との出会いだった。
「りんサン、早いッスよ...」
次に会えるのは何年後だろう。
確かにここ数日は調子が悪そうだった。ボクの誕生日を一生懸命祝ってくれて、綺麗な朝焼けの中、2人で寄り添いながら新年を迎えた。だが、自分が帰って程なくして発作が起き、そのまま意識が戻らず数週間がすぎて。
毎日かかさず行っていた彼女とのやり取りは、
"喜助さん、今日は楽しかったよ〜またすぐ会いたいな。"
"また明日行きますよ♪"
という自分のメッセージで止まっていた。
そのメッセージの数時間後、彼女は1人で苦しい思いをしたのかと思うとそばに居てやれなかった自分が悔やまれる。否、今そんなことを思っても仕方がないと彼女は笑うだろう。
彼女は家元を離れて一人暮らしをして好きな人を作って働いて...そんなありふれた生活がしたかったはずだった。
『毎日大切に生きられればそれでいいんだ。明日死ぬかもしれないって思って喜助さんと過ごすの。それが私の幸せなんだよ。』
そう、事ある事に伝えられていた。喜助さんに出会って私の世界は輝いた。近頃毎日のようにそう言ってくれていて、もう死期が近い事は分かっていたのだろうな。どんな結果であれ自分で歩いてきた道には、満足しているといいなと思う。
それに、自分が霊的存在であること、彼女は薄々気付いていただろう。いつか話そうと思っていたのだが、なかなか話せずにいた。
『喜助さん』
嬉しそうに名前を呼んでくれた笑顔が懐かしい。早く会いたいなぁ。尸魂界には彼女が西流魂街に行き着くように手配してある。自分に出来ることはそのくらいだ。そのうちフラっと訪れて驚かしてやろうと思う。
すぐ会えますから。
驚いた顔が容易に想像できる。なんて言って驚かしてやろうか。なんて、淡い期待を込めて彼女の額にキスをした。
「またすぐ会いましょ、りんサン。」
死は終わりでは無い。サヨナラを言うにはまだ早すぎるのだから。何度でもボクは君に恋をする。
彼女はただただ静かに眠っているようだった。それくらいいつも通り綺麗だ。
彼女の両親に会釈してから彼女に向き直る。
出会った日のことを思い出していた。
1年前の大晦日。
今にも雪が降りそうな寒空の下今日は自分の誕生日だと言うのに、あてもなくふらふら歩いていた。お店の3人と夜一さんに朝からそれはそれは手厚いお祝いを頂いて、日本酒でいい具合に酔って、外の空気を吸いに来たのである。あてもなく歩くのは昔から好きだ。答えの出ないことを永遠と考えたり、新しい研究について色々と頭の中で想像を膨らませている時間が好きだった。そんな時はいつも時間を忘れてしまう。
ふと我に返ったので口寂しくなり、閑静な住宅街から大通りに出る。ファミマによって赤マルを買うと、ちょうど出たところの喫煙所で早速火をつける。ここ何年かで、タバコは喫煙所で吸わないといけなくなったので、困っている。喫煙所があったときに吸わないと。
壁によりかかりふぅーと一息ついて、煙の行く末を見守りながらまた考えを巡らせた。いつの間にか空が藍色に変わっている。寒さに身を縮めていると、視界に入った人影。誰かがすぐ側の歩道橋に手をかけ足をかけ震えている。
ただ長い黒髪が綺麗だった。ただ出で立ちや顔が好みだった。それだけ。
刹那、やはり飛び降りようとする彼女の肩を掴み、そのまま引き寄せた。細いな。細いし白い。彼女と目が合い、驚いたような、安心したような涙が切なかった。ドクン、いつもより確かにしっかりと鼓動が鳴って、確信した。それは、科学者が言うものではないと思うが運命だったと思う。
それが彼女との出会いだった。
「りんサン、早いッスよ...」
次に会えるのは何年後だろう。
確かにここ数日は調子が悪そうだった。ボクの誕生日を一生懸命祝ってくれて、綺麗な朝焼けの中、2人で寄り添いながら新年を迎えた。だが、自分が帰って程なくして発作が起き、そのまま意識が戻らず数週間がすぎて。
毎日かかさず行っていた彼女とのやり取りは、
"喜助さん、今日は楽しかったよ〜またすぐ会いたいな。"
"また明日行きますよ♪"
という自分のメッセージで止まっていた。
そのメッセージの数時間後、彼女は1人で苦しい思いをしたのかと思うとそばに居てやれなかった自分が悔やまれる。否、今そんなことを思っても仕方がないと彼女は笑うだろう。
彼女は家元を離れて一人暮らしをして好きな人を作って働いて...そんなありふれた生活がしたかったはずだった。
『毎日大切に生きられればそれでいいんだ。明日死ぬかもしれないって思って喜助さんと過ごすの。それが私の幸せなんだよ。』
そう、事ある事に伝えられていた。喜助さんに出会って私の世界は輝いた。近頃毎日のようにそう言ってくれていて、もう死期が近い事は分かっていたのだろうな。どんな結果であれ自分で歩いてきた道には、満足しているといいなと思う。
それに、自分が霊的存在であること、彼女は薄々気付いていただろう。いつか話そうと思っていたのだが、なかなか話せずにいた。
『喜助さん』
嬉しそうに名前を呼んでくれた笑顔が懐かしい。早く会いたいなぁ。尸魂界には彼女が西流魂街に行き着くように手配してある。自分に出来ることはそのくらいだ。そのうちフラっと訪れて驚かしてやろうと思う。
すぐ会えますから。
驚いた顔が容易に想像できる。なんて言って驚かしてやろうか。なんて、淡い期待を込めて彼女の額にキスをした。
「またすぐ会いましょ、りんサン。」
死は終わりでは無い。サヨナラを言うにはまだ早すぎるのだから。何度でもボクは君に恋をする。