魔法って言っていいかな?
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泣きながら走って走って家に帰るなり玄関に倒れ込んだ。嗚咽とも言えない情けない声が狭い1kに響き渡る。
決まっていた昇進が白紙に戻された。4月からは異動して新生活がはじまる予定だったのに。
持病がバレた。
途端にこう。
私の人生相場が決まってる。
悲しくて悲しくてもうどうにでもなれと思った。毎日欠かさず飲んでいた薬をゴミ箱に投げ捨て、買い物袋から糖分塩分脂肪の塊を出した。コンビニで目につくもの全部買ってやったのだ。泣きながら頬張るドーナツは全然味がしないし鼻水と痰とヨダレと、、、とにかく自分が汚くて汚くて汚い。消えてしまいたい。ふと目に入った彼の煙管。この前うちに来たのはいつだったっけ。これまた病気のせいで喧嘩別れになってしまって、返せずにいたのだ。彼は今どこで何をしているだろう。おもむろに掴んで火をつけた。
「...っげほ...っごほっ............ぅう"、、、」
やっぱりむせて苦しい。自分が情けなくなりうずくまる。こんなはずじゃないのに。消えたい。もうやめたい。死んでしまいたい。
「...ぅうう"......ぁああぁ........」
もう一度、煙管を強く握り直した。
「......すけ...さ......き、すけさん...」
会いたい。こんな時でも会いたい人はただ1人だ。大きな手で抱きしめて欲しい。あのゴツゴツした手が恋しい。頭を撫でて欲しい。声が聞きたい。
風が吹いたと思ったら、ガチャンと扉の閉まる音。
「りんサン...」
一瞬夢かと思った。辛うじて頭だけあげるとそこには作務衣に下駄を履いていつもの帽子をかぶった彼がたっていた。目が合うなり身体を抱き起こし、まるで壊れ物を扱うようにゆっくりと優しく抱きしめてくれた。
「...会いたかった。」
喜助さん。喜助さん。
「どうして..」
「当たり前ッスよ。守るって決めたんス。」
吐息がうなじにかかって熱い。身体が熱を帯びて頭がぼーっとする。大好きな喜助さんの香り。全部包み込まれるような甘いお日様の匂い。
「わたし...っ」
病気のせいにしたり喜助さんのせいにしたり、たくさん困らせた。弱くて情けなくて、顔向けできない。隣にいる資格なんてない。
「ん。...りんサン、よしよし。」
ゴツゴツした手で髪を撫でてくれる。
「汚いよ」
「そんなことない...綺麗だ。」
「やだっ.....ん...っ」
優しいキスで口を塞がれる。幾度となく落ちてくる甘いキスは優しすぎてくすぐったい。その優しさが苦しくて涙がこぼれ落ちた。しょっぱくて、熱くて、甘くて。
「...これで仲直りッスよん♪」
次に目が合った時にはいつもの喜助さんに戻っていた。
部屋を見渡した喜助さんは
「なんか飲み物買ってきます」
と言って、近くの自販機で暖かいお茶を買ってきてくれた。無骨な手が伸びてきて、一挙手一投足ドキドキしてしまう。暗い部屋で喜助さんは女神のような笑みを浮かべていた。
「りんサン〜?...落ち着きましたか」
「.....」
「これからのこと話しましょ。」
「私には、これからなんて...。」
喜助さんだっていつ居なくなるか分からない私といたって仕方ないだろう。未来の話ができる人のほうがいいに決まってる。
「喜助さん。もう今日で終わりにしよ」
絞り出した言葉がこれだ。わなわな震えて膝から崩れ落ちた。笑って終わりにしたいのに。
「りんサン」
「私といちゃダメだよ。...分かるでしょ」
「......。」
喜助さんは頭がいいから、言葉を選ぶ。私を傷つけないように。本当は死ぬまでそばに居たい。好きで好きでたまらない。あなたが微笑む度に、あなたの名前を呼ぶ度に、あなたのそばに居たくなる。
「だからもう来ないで。」
「りんサン。」
名前を呼ぶ声が強まった。
「喜助さんといると辛いの。」
「......強がらなくていいッスよ。」
再び彼が抱き締めた。今度は強く、強く。2人の心を繋ぎ止めるように。存在を確かめるように。
甘い言葉の数々、あなたの仕草も声も全て私を弱くさせる。
「...っ...死にたくないよぉ...」
大好きな彼にすがりついて泣きじゃくって、そのまま世界に2人だけみたいに朝を待った。
喜助さんの秘密を知るのはまだ先の話。
決まっていた昇進が白紙に戻された。4月からは異動して新生活がはじまる予定だったのに。
持病がバレた。
途端にこう。
私の人生相場が決まってる。
悲しくて悲しくてもうどうにでもなれと思った。毎日欠かさず飲んでいた薬をゴミ箱に投げ捨て、買い物袋から糖分塩分脂肪の塊を出した。コンビニで目につくもの全部買ってやったのだ。泣きながら頬張るドーナツは全然味がしないし鼻水と痰とヨダレと、、、とにかく自分が汚くて汚くて汚い。消えてしまいたい。ふと目に入った彼の煙管。この前うちに来たのはいつだったっけ。これまた病気のせいで喧嘩別れになってしまって、返せずにいたのだ。彼は今どこで何をしているだろう。おもむろに掴んで火をつけた。
「...っげほ...っごほっ............ぅう"、、、」
やっぱりむせて苦しい。自分が情けなくなりうずくまる。こんなはずじゃないのに。消えたい。もうやめたい。死んでしまいたい。
「...ぅうう"......ぁああぁ........」
もう一度、煙管を強く握り直した。
「......すけ...さ......き、すけさん...」
会いたい。こんな時でも会いたい人はただ1人だ。大きな手で抱きしめて欲しい。あのゴツゴツした手が恋しい。頭を撫でて欲しい。声が聞きたい。
風が吹いたと思ったら、ガチャンと扉の閉まる音。
「りんサン...」
一瞬夢かと思った。辛うじて頭だけあげるとそこには作務衣に下駄を履いていつもの帽子をかぶった彼がたっていた。目が合うなり身体を抱き起こし、まるで壊れ物を扱うようにゆっくりと優しく抱きしめてくれた。
「...会いたかった。」
喜助さん。喜助さん。
「どうして..」
「当たり前ッスよ。守るって決めたんス。」
吐息がうなじにかかって熱い。身体が熱を帯びて頭がぼーっとする。大好きな喜助さんの香り。全部包み込まれるような甘いお日様の匂い。
「わたし...っ」
病気のせいにしたり喜助さんのせいにしたり、たくさん困らせた。弱くて情けなくて、顔向けできない。隣にいる資格なんてない。
「ん。...りんサン、よしよし。」
ゴツゴツした手で髪を撫でてくれる。
「汚いよ」
「そんなことない...綺麗だ。」
「やだっ.....ん...っ」
優しいキスで口を塞がれる。幾度となく落ちてくる甘いキスは優しすぎてくすぐったい。その優しさが苦しくて涙がこぼれ落ちた。しょっぱくて、熱くて、甘くて。
「...これで仲直りッスよん♪」
次に目が合った時にはいつもの喜助さんに戻っていた。
部屋を見渡した喜助さんは
「なんか飲み物買ってきます」
と言って、近くの自販機で暖かいお茶を買ってきてくれた。無骨な手が伸びてきて、一挙手一投足ドキドキしてしまう。暗い部屋で喜助さんは女神のような笑みを浮かべていた。
「りんサン〜?...落ち着きましたか」
「.....」
「これからのこと話しましょ。」
「私には、これからなんて...。」
喜助さんだっていつ居なくなるか分からない私といたって仕方ないだろう。未来の話ができる人のほうがいいに決まってる。
「喜助さん。もう今日で終わりにしよ」
絞り出した言葉がこれだ。わなわな震えて膝から崩れ落ちた。笑って終わりにしたいのに。
「りんサン」
「私といちゃダメだよ。...分かるでしょ」
「......。」
喜助さんは頭がいいから、言葉を選ぶ。私を傷つけないように。本当は死ぬまでそばに居たい。好きで好きでたまらない。あなたが微笑む度に、あなたの名前を呼ぶ度に、あなたのそばに居たくなる。
「だからもう来ないで。」
「りんサン。」
名前を呼ぶ声が強まった。
「喜助さんといると辛いの。」
「......強がらなくていいッスよ。」
再び彼が抱き締めた。今度は強く、強く。2人の心を繋ぎ止めるように。存在を確かめるように。
甘い言葉の数々、あなたの仕草も声も全て私を弱くさせる。
「...っ...死にたくないよぉ...」
大好きな彼にすがりついて泣きじゃくって、そのまま世界に2人だけみたいに朝を待った。
喜助さんの秘密を知るのはまだ先の話。
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