言い訳はしないから
俺はサカズキと付き合ってる。勿論エッチなこともする。
周囲…ボルサリーノとかセンゴクさんとかガープさんとかおつるさんとか、海軍上層部は俺たちのことを知ってるし、認めてくれてる。偏見もないし、いい職場だわ~、ホント。
まあそれもこれも、サカズキが魅力的だからなんだけど。
上層部の人は、俺も含めてみんなサカズキのことが好きだ。
ほとんどは部下とか上司的な意味での「好き」なんだけど、俺とかボルサリーノとかはソッチ系の意味で「好き」だ。
いや別に男なら誰でもいいってわけじゃない。サカズキだから、だ。
そんだけ人気なサカズキだけど、本人に好かれてる自覚がないから厄介。
俺がサカズキと現在の関係になれたのは、そりゃあもう大変な道のりを苦労して進んできたからだ。主に俺がだけど。
数多の妨害を受けつつ! 時には部下に命を狙われつつ!
あるときは任務の隙間を縫って逢いに行き! またあるときは遠征先から電伝虫で愛を囁き!
笑いあり涙あり、一晩じゃ語り切れないほどの純粋な愛の物語…… 別に聞きたくない? あ、そう。
とにかく、途方もない苦労の末にやっと手に入れた愛しい恋人、俺のサカズキ。
だけど、まあお互いに海軍大将だし多忙だから、中々都合もつかなくて…最近ご無沙汰だったわけ。
俺はサカズキのこと抱きたくて仕方ないのに、サカズキは俺のことなんてほったらかしで任務を優先するし…
無理やり襲ったら殴られるだけじゃ済まないし…
そういう訳で、俺は…まあその、アレだ。我慢できなくなっちまったのよ。
……娼館に行っちまったのよ、俺。
そりゃー俺だって人間だしー、大将とか言われてもそれ以前に一人の男だしー…
ボインねーちゃん大好きだしー。
だってさ…もう一か月もエッチしてねぇもん!! そりゃサカズキが忙しいのも分かるし、真面目なのも知ってるけど!!
一か月!! 一か月もご無沙汰ってどうよ!!??
我慢できるかっつーの!!
でも一応ちゃんと気を遣ってこっそり行ったんだぜ? しかも俺突っ込んでないし! 手だけで我慢した!!
娼館のおねーちゃんも苦笑いしてたわ!「アタシがやる意味あるの?」って!
悪いことはすぐバレちまうもんで。悪事千里を何とやらって。
電伝虫がかかってきて。相手はサカズキで。
俺が娼館に入ってたのをサカズキの部下が見てたみたいで。風のうわさでサカズキの耳に入ったらしくて。
怒ったような声で『…娼館に行っとったっんか?』だって。
溜まってたし、俺もイライラしてたから、つい言っちまった。「…俺が女抱いちゃダメなわけ?」って。実際には抱いてないけど、そう言っちゃったの。
そしたら、『……そうか、お前は女の方がええんか』って返事。
俺、キレちゃってさ。
「元はと言えば、アンタが相手してくれないからでしょうが! 一か月もご無沙汰で、他の男に股開いてたわけ?」って、言っちゃったの。
言った瞬間後悔した。あ、まずい、って。
慌てて言いなおそうと、謝ろうと思ったんだけど、『そんなわけ無かろうが!!! っ、わしは…!!!』って怒鳴られて、つい条件反射ってやつ?
「どうせ俺のことなんて丁度いいバイブぐらいにしか思ってないんだろ? 淫乱ビッチ野郎が!!」って、俺も怒鳴っちまったの。
全然、そんなこと思ってないのに。サカズキがそんなこと思ってるわけないのに。
『………もう、ええわい』
電伝虫が切れた。切れる瞬間の電伝虫の表情は、一瞬だったけど凄く泣きそうな顔だった。
謝らなきゃ。
ツー、ツー、としか言わない受話器を持ったまま、俺は呆然と立ち尽くした。
サカズキに謝らなきゃ。
俺が今持ってる電伝虫は私用のやつだから、どこから掛けてきたかは確実だ。
サカズキの自宅からに決まってる。
走った。そりゃもう何年かぶりに本気で走った。
マリンフォードの街中を。
青雉大将が血相変えて本気で疾走してるわけだから、道行く人や海兵がみんなギョッとした顔で何事か、って顔で見てくるけど、今はそれはどうでもいい。
「クザン大将!? どうかされましたか!!?」とか、「き、緊急事態だぁー!!」とか聞こえた気がするけど、知るか!!
走って走って、ちょいちょい躓いたりぶつかったりしたけど、とにかくサカズキの自宅まで辿り着いた俺。
玄関は…良かった、開いてる。
勝手知ったる人の家、寝室を覗いたら…いた。
白いシーツが丸く盛り上がってて、わずかに上下してるのが分かる。
寝てんのかな、と思って忍び足で近づこうとしたら、シーツの中から「それ以上近寄るな」って言われた。起きてるのか。
「……女の方がええんじゃろうが」
ボソッと聞こえた呟きが、あまりにも弱弱しくてビックリした。
「…わしなんかより、若い女の方が良かったんじゃろ」
まさか今、サカズキ、嫉妬してんの?
「サカズキ…」
「言い訳なんぞ聞きとうないわい」
「…怒ってんの?」
「怒っちょらん」
「怒ってんじゃん」
「怒っちょらん!」
「…ごめんね」
一歩だけ、ベットに近寄る。
「わしなんぞ放っといて娼館で女に相手してもらえばええじゃろうが」
「ごめんね、サカズキ」
二歩、近寄る。
「言い過ぎた。ごめん。」
「………」
「忙しかったのは知ってたけど、相手してくれなかったから、イライラしてた。」
「………」
「娼館に行ったのはホントだけど、女の子は抱いてない。マジで。」
「………」
ベットのすぐ傍まで近寄る。ぎゅっと丸くなったシーツを撫でると、もぞもぞと動いて、サカズキの顔が出てくる。
あらら、酷い隈作っちゃって…
「ごめんね、愛してる。」
触っても拒まれなかったから、口づけた。
物足りなくて舌を入れようとしたら肩を押し返されたから、渋々離れる。
「…女の方が、ええんじゃろ」
「あらあら、まだ言う? それ」
可愛い嫉妬につい吹き出したら、むっとしたように眉を顰められた。
「サカズキが相手してくれるんだったら、あんなとこ二度と行かないんだけど」
「…わしじゃって、好きで一か月も断ったわけじゃないわい……」
ぼそぼそ言いながらシーツの中に引っ込んでいくサカズキ。
あれだけ仕事が入ってたんだから、しょうがないっていうのは分かってたけど…
今の言葉はつまり、サカズキも俺と同じ気持ちだった、ってこと?
「…サカズキ」
呼びかけると、シーツがもぞもぞ動く。
中から顔を探り当てて、掘り出す。
「愛してる。大好き。」
今度は最初から深いキス。肩は押し返されなかった。
「明日は? 休み貰ったの?」
自宅にわざわざ帰ってきてるってことは、休みなんだろうけど、一応聞いておく。
頷くサカズキ。
本音を言えばちょうどベットの上だし、一か月ぶりだからこのままエッチしたいとこなんだけど…
いつから碌に眠れてないんだろう、ってぐらい酷い隈をこのままにしておくわけにはいかないし。うーん、実に勿体ないけど。
「じゃあ今日は、とりあえず寝ますか」
あらら、不満そうな顔してる。俺だってシたいっつの。
でも流石にこのままやったらアンタ明日ツラいでしょうが。
「…サカズキ、もう怒ってない?」
二人で一緒のベットに入る。もうウトウトしてるのか、サカズキの返答は曖昧だ。
俺も疲れてんのかな。久々に走ったし…
「……クザン…わしも、愛しちょる…」
「っ……!!!!!」
慌ててサカズキの方を振り向いたけど、もう寝ちゃってるし。
(そりゃあ…反則でしょうが…)
明日起きたら覚えときなさいよ、ホント。
てかこの状況、これが世に言う「据え膳」ってやつか…くそぅ……
1/1ページ
