αなんてだいきらい【暗殺チーム】
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「…美味い」
「ふふん。やっぱり?」
「こんな料理美味いならもっと早くから作っとけよ」
「いやいや安くは売らないんですぅ、やっぱり私って美人で可愛くて料理も出来るしαなんかな〜?」
「…やれやれだぜ。そういうのは自分で言うもんじゃあないんだ」
「へへへ」
こんな会話を私は幼少期に誰かとしていた。
幼少期といっても中学生のころの記憶だ。
だが相手はうまく思い出せない。顔に霧がかかったように、ぼんやりとしているのだ。
あの頃は楽しかったなあ。
何も考えず、ただ毎日を謳歌していた。
「それが今となってはギャング…しかも暗殺チームと来たもんなぁ。人生なにがあるか分からないや」
「さっきからうるせーぞアリス」
「むむっ。その声は…愛しの親友!ギア〜ッチョ!」
「うおっ、だ、抱きつくんじゃねー!!!」
「えーなんでなんで?親友に抱きついちゃいけないの?ねえ、な、ん、で?ギアッチョくんのえっち♡」
「ッ、へ、変な声出すな犯すぞて、てめぇ…っ」
離れろ!とベリっと剥がされて私はへへへと笑う。犯すだなんてこわい。
「私はβだもん、フェロモン出てないでしょ?」
「それ以前に男と女だろうがよォ〜!馬鹿女ッ」
「…それもそっか!ごめんね、ギアッチョ」
「〜そういう素直なとこすげーむかつくんだよッ!」
「可愛いの間違いじゃなあーい?」
「…ッ、うっせえバーカ!!」
アジトで任務の前にこうしてギアッチョと話すのは楽しい。彼との会話は昔を思い出させてくれるからだ。ギャングになる前の私を。
そして、自分がΩであることも忘れさせてくれる。
「…ギアッチョはいいなあ、αで」
「βもαも大して変わんねーだろォがよ。まあΩじゃないだけマシだと思えばか女」
「…そうだね!βで充分かー」
「……まァオメーがΩじゃなくてよかったよ」
「…………え、なんで?」
いつもの軽い声を出したつもりだ、私は。
でも微かに震えたのはバレたかもしれない。いつも通りを意識しながらギアッチョを見る。
まるで死刑宣告をされているみたいだった。
「Ωとは仲間になれねェだろ。どう頑張っても」
「うぇ…」
「おいおい、しょうがねぇなァ〜…おめー飲み過ぎだアリス」
「えっへへ…嫌なことがあって〜」
「嫌なことォ?」
「ホルせんぱぃ、もうだいじょぶそう」
「ったく…酔っ払いが」
ぐい、と抱っこされて首に腕を回す。
…あったかい。あったかい…。
ホル先輩の首にすりすりと頭を擦り付ける。
ホル先輩が私を強く抱えるように力を入れた。
「…猫かおめーはよ」
「んん…ホル先輩の猫です…」
「……お前それ誘ってる?」
「んーん。さそうわけない」
「はぁあ〜マジで抱くぞコラ」
ゆらゆらと揺られながら街並みを眺める。
私がΩなのはお父さんお母さんのせいでもない。この世とアダムとイヴを作った神様のせいだ。だから、人は悪くない。
本能のままに人を犯しても悪くないの?
ううん、悪いよ。
それじゃあ矛盾してる。
性のせいにしたいくせに人間も悪いってこと?
違うよ。αが悪いんだ。Ωをいじめる、αが。
αなんて大っ嫌いだ。
犬の糞を踏んでトラックに轢かれちまえ。
…言ってることが支離滅裂だよ、アリス。
「うるさい、お茶会にでもいけば…」
「お茶会?」
「……せんぱい、今日はもう眠たいよ…」
「…ならアジト行くぞ。俺んちじゃ我慢きかねェ」
「我慢…?」
「俺が俺でいるための、我慢」
…なにそれ。かっこいい。すきになっちゃいそう、せんぱい。αじゃなかったら。
「ん…あさ?」
「おそよう」
「リゾット…あさからいやみ?」
「当たり前だろう。お前は危機感がなさ過ぎる」
「……βだもの、だいじょ、「お前は」
「Ωだろう。違うか?」
「……違う」
「………さっさと顔を洗ってこい。ベッラ。可愛い顔が眠そうだ」
…リゾットには気付かれてるかもしれない。
私がΩだってこと。こわくてこわくて不安だってこと。いつもふざけてるのは恐怖の裏返しだってこと。αが大嫌いだってこと。
みんなのこと、あまり好きになれないこと。
「…あの目がなんでも分かってるみたいで、きらいなこと…」
ばしゃり。
今日も水道の水は冷たい。
「これ…メローネがくれるの?」
「ああ。嬉しいだろ?アンタに似合うと思って」
「わーい!って喜ぶかい!こんなえっちなの着れないよ」
「え〜頼むよ。アンタがそれ着てるところで抜きたいんだ」
「本人前にしてやめてよ、変態っ、獣め!」
「ははは、じゃあ夜までに着といて」
メローネに押し付けられたワンピースを見る。
それは深くスリットが刻まれていて『女』というものを酷く主張したものだった。
それを指だけでつまんで眺める。
……こんなの着たくない。
だって私Ωなんだよ。こんなの着て歩いたらいつαにバレるか…ぞっとする。
「…一番性に囚われてるのは、私」
「あっ、兄貴!どーしたんですー?今日は非番でしょ?」
「女にフラれたから暇になったんだほっとけ」
「ぶははっ、ばっかでー」
「おめーは非番か?今日」
「うん。書類だけ渡しに来た」
「休みの日に寂しいやつだな」
「いやん。運命の人が現れるまで私は休日空けてるだけよん!」
「……運命の人、な」
…あれ?
運命って普通に使う言葉だよね?Ωとαの番のことを言ったんじゃあない…だけど不安になる。少しのことで疑われるんじゃあないかって…ああ、もうΩの自分がいやだ。
こんなことで不安になる私が。
「…あは、そんなの現れないよねぇ。αとΩの運命の番なんて、βには関係ないんだし」
「まあな。それにここのやつらはお前以外αだが、番なんて出来ねーだろ」
「どうして?」
「暗殺者なんてやってたらΩ守れねえだろうが。まぁギャングのαなんてΩにとっちゃβより無価値なのかもしれねぇが」
じゃあギャングのΩは?
無価値より下ってなに?
「そういうもんかぁ」
「そういうもんだぜ。うし、酒飲み行くぞ。俺様の奢りだ後輩」
「わーいありがたやー」
「退けよβ」
「…あ、すいませーん」
「なあアリス。お前リゾットと出来てんのか?この間執務室に長い時間居ただろ」
「あれは書類製作を手伝ってただけだよ。それじゃあ」
「まあ待てって。お前って俺の前だと笑わねえよな。他の男には色目使ってる癖に」
その言葉に拳を握り込んだ。
色目を使ってるだって?むしろ逆だ。
絶対に女を感じさせないように振る舞っているつもりだった。女の格好はしない、シャツとズボンを履いて髪も肩の長さにして。
化粧は口紅だけにして、それから、それから…。
「…そう見えたなら謝るよ。でも君の軽いお花畑の脳味噌に乾杯したい気分だな」
「…は?」
その瞬間、イルーゾォからαの威圧みたいなものが溢れた。思わずひっ、と息を呑み座り込む。イルーゾォが馬鹿にしたように笑って私と目を合わせた。
「αには敵わないもんなァ、アリス」
「あ、は、は…て、手厳しいね。な、仲間でしょ?解いてよこれ…」
「そのへらへらした顔やめろよ。…マジで犯したくなるから」
「私はΩじゃあないッ!!!馬鹿にするのもいいかげ、」
「怒るなよ。美人が台無しだぜ」
『まるで』Ωにするように首を撫でてくるイルーゾォに私はもう我慢出来なくなった。
ナイフを取り出してイルーゾォに向ける。
だけど刃はがたがたと震えていて役に立つかすら怪しかった。
「…はっ、はぁっ、はあ…!やめろやめろやめろ!ぶっ殺してやるクソ野朗!」
「おーおー言葉が汚ねえ女は嫌われるぜ。まあ俺はお前なら大歓迎だけどな」
「やめろ…!頼むから、もうやめて…普通に接してよ!馬鹿にするな、性を感じさせるな…っ」
「嫌だ。俺はお前が好きなんだよ、アリス」
「………は?」
「αでもΩでもない弱くて馬鹿なお前を愛してる。めちゃくちゃに抱き潰してぇってな」
「ーーーッ!!!殺してやる!!」
今度こそ本気でナイフを向けた。
その瞬間、後ろから抱きしめるように止められる。後ろにいたのはリゾットだった。黒い目で見下ろされて頭が冷えていく。
「…なんの騒ぎだ」
「なんでもないッ!なんでもないからさ…きにしないで…」
「……イルーゾォ。あまりこいつにちょっかいを出すな。これ以上やるようならお前とアリスを完全に離すことも考える。任務も二度と合わないようにな」
「…悪かったよ。少しふざけただけだ。アリス、また飯に行こうぜ」
去り際にぽん、と肩を撫でたその手を切り落としたかった。だけどリゾットがいる手前笑うことしか出来なくて吐き気がする。
飯なんて行ったこともないくせにあのクソ野朗…!
「…大丈夫か」
「……あ、う、ん」
「あまり組ませないようにはするが…何かあったら俺に頼れ。いや、何かある前に」
「…ありがとうリーダー」
そう言って私は俯いた。
どうして私はΩなんかに生まれたんだろう。
どうしてイルーゾォに馬鹿にされてへらへら笑ってられるんだろう。
誰が悪いの?
私が悪いの?Ωに生まれた私が?ううん、そんなの言い訳だ。Ωに生まれて『覚悟をしない』私が悪いんだ。
βだのなんだの嘘をついていつまでもΩと向き合わない私が。
「…リゾット。私がギャング抜けたいって言ったら…どうする?」
「……協力しよう。俺に出来ることがあれば」
「……どうして、いつも…優しくしてくれるの?…リゾット…」
「…さあな。お前には幸せになってほしいだけだ。できるなら太陽の下で」
ぽん、と頭を撫でてリゾットは執務室へ入っていった。その後ろ姿をぼんやり眺める。
とくとく鳴る心臓の音色が、酷く耳にこびりついた。
「ふふん。やっぱり?」
「こんな料理美味いならもっと早くから作っとけよ」
「いやいや安くは売らないんですぅ、やっぱり私って美人で可愛くて料理も出来るしαなんかな〜?」
「…やれやれだぜ。そういうのは自分で言うもんじゃあないんだ」
「へへへ」
こんな会話を私は幼少期に誰かとしていた。
幼少期といっても中学生のころの記憶だ。
だが相手はうまく思い出せない。顔に霧がかかったように、ぼんやりとしているのだ。
あの頃は楽しかったなあ。
何も考えず、ただ毎日を謳歌していた。
「それが今となってはギャング…しかも暗殺チームと来たもんなぁ。人生なにがあるか分からないや」
「さっきからうるせーぞアリス」
「むむっ。その声は…愛しの親友!ギア〜ッチョ!」
「うおっ、だ、抱きつくんじゃねー!!!」
「えーなんでなんで?親友に抱きついちゃいけないの?ねえ、な、ん、で?ギアッチョくんのえっち♡」
「ッ、へ、変な声出すな犯すぞて、てめぇ…っ」
離れろ!とベリっと剥がされて私はへへへと笑う。犯すだなんてこわい。
「私はβだもん、フェロモン出てないでしょ?」
「それ以前に男と女だろうがよォ〜!馬鹿女ッ」
「…それもそっか!ごめんね、ギアッチョ」
「〜そういう素直なとこすげーむかつくんだよッ!」
「可愛いの間違いじゃなあーい?」
「…ッ、うっせえバーカ!!」
アジトで任務の前にこうしてギアッチョと話すのは楽しい。彼との会話は昔を思い出させてくれるからだ。ギャングになる前の私を。
そして、自分がΩであることも忘れさせてくれる。
「…ギアッチョはいいなあ、αで」
「βもαも大して変わんねーだろォがよ。まあΩじゃないだけマシだと思えばか女」
「…そうだね!βで充分かー」
「……まァオメーがΩじゃなくてよかったよ」
「…………え、なんで?」
いつもの軽い声を出したつもりだ、私は。
でも微かに震えたのはバレたかもしれない。いつも通りを意識しながらギアッチョを見る。
まるで死刑宣告をされているみたいだった。
「Ωとは仲間になれねェだろ。どう頑張っても」
「うぇ…」
「おいおい、しょうがねぇなァ〜…おめー飲み過ぎだアリス」
「えっへへ…嫌なことがあって〜」
「嫌なことォ?」
「ホルせんぱぃ、もうだいじょぶそう」
「ったく…酔っ払いが」
ぐい、と抱っこされて首に腕を回す。
…あったかい。あったかい…。
ホル先輩の首にすりすりと頭を擦り付ける。
ホル先輩が私を強く抱えるように力を入れた。
「…猫かおめーはよ」
「んん…ホル先輩の猫です…」
「……お前それ誘ってる?」
「んーん。さそうわけない」
「はぁあ〜マジで抱くぞコラ」
ゆらゆらと揺られながら街並みを眺める。
私がΩなのはお父さんお母さんのせいでもない。この世とアダムとイヴを作った神様のせいだ。だから、人は悪くない。
本能のままに人を犯しても悪くないの?
ううん、悪いよ。
それじゃあ矛盾してる。
性のせいにしたいくせに人間も悪いってこと?
違うよ。αが悪いんだ。Ωをいじめる、αが。
αなんて大っ嫌いだ。
犬の糞を踏んでトラックに轢かれちまえ。
…言ってることが支離滅裂だよ、アリス。
「うるさい、お茶会にでもいけば…」
「お茶会?」
「……せんぱい、今日はもう眠たいよ…」
「…ならアジト行くぞ。俺んちじゃ我慢きかねェ」
「我慢…?」
「俺が俺でいるための、我慢」
…なにそれ。かっこいい。すきになっちゃいそう、せんぱい。αじゃなかったら。
「ん…あさ?」
「おそよう」
「リゾット…あさからいやみ?」
「当たり前だろう。お前は危機感がなさ過ぎる」
「……βだもの、だいじょ、「お前は」
「Ωだろう。違うか?」
「……違う」
「………さっさと顔を洗ってこい。ベッラ。可愛い顔が眠そうだ」
…リゾットには気付かれてるかもしれない。
私がΩだってこと。こわくてこわくて不安だってこと。いつもふざけてるのは恐怖の裏返しだってこと。αが大嫌いだってこと。
みんなのこと、あまり好きになれないこと。
「…あの目がなんでも分かってるみたいで、きらいなこと…」
ばしゃり。
今日も水道の水は冷たい。
「これ…メローネがくれるの?」
「ああ。嬉しいだろ?アンタに似合うと思って」
「わーい!って喜ぶかい!こんなえっちなの着れないよ」
「え〜頼むよ。アンタがそれ着てるところで抜きたいんだ」
「本人前にしてやめてよ、変態っ、獣め!」
「ははは、じゃあ夜までに着といて」
メローネに押し付けられたワンピースを見る。
それは深くスリットが刻まれていて『女』というものを酷く主張したものだった。
それを指だけでつまんで眺める。
……こんなの着たくない。
だって私Ωなんだよ。こんなの着て歩いたらいつαにバレるか…ぞっとする。
「…一番性に囚われてるのは、私」
「あっ、兄貴!どーしたんですー?今日は非番でしょ?」
「女にフラれたから暇になったんだほっとけ」
「ぶははっ、ばっかでー」
「おめーは非番か?今日」
「うん。書類だけ渡しに来た」
「休みの日に寂しいやつだな」
「いやん。運命の人が現れるまで私は休日空けてるだけよん!」
「……運命の人、な」
…あれ?
運命って普通に使う言葉だよね?Ωとαの番のことを言ったんじゃあない…だけど不安になる。少しのことで疑われるんじゃあないかって…ああ、もうΩの自分がいやだ。
こんなことで不安になる私が。
「…あは、そんなの現れないよねぇ。αとΩの運命の番なんて、βには関係ないんだし」
「まあな。それにここのやつらはお前以外αだが、番なんて出来ねーだろ」
「どうして?」
「暗殺者なんてやってたらΩ守れねえだろうが。まぁギャングのαなんてΩにとっちゃβより無価値なのかもしれねぇが」
じゃあギャングのΩは?
無価値より下ってなに?
「そういうもんかぁ」
「そういうもんだぜ。うし、酒飲み行くぞ。俺様の奢りだ後輩」
「わーいありがたやー」
「退けよβ」
「…あ、すいませーん」
「なあアリス。お前リゾットと出来てんのか?この間執務室に長い時間居ただろ」
「あれは書類製作を手伝ってただけだよ。それじゃあ」
「まあ待てって。お前って俺の前だと笑わねえよな。他の男には色目使ってる癖に」
その言葉に拳を握り込んだ。
色目を使ってるだって?むしろ逆だ。
絶対に女を感じさせないように振る舞っているつもりだった。女の格好はしない、シャツとズボンを履いて髪も肩の長さにして。
化粧は口紅だけにして、それから、それから…。
「…そう見えたなら謝るよ。でも君の軽いお花畑の脳味噌に乾杯したい気分だな」
「…は?」
その瞬間、イルーゾォからαの威圧みたいなものが溢れた。思わずひっ、と息を呑み座り込む。イルーゾォが馬鹿にしたように笑って私と目を合わせた。
「αには敵わないもんなァ、アリス」
「あ、は、は…て、手厳しいね。な、仲間でしょ?解いてよこれ…」
「そのへらへらした顔やめろよ。…マジで犯したくなるから」
「私はΩじゃあないッ!!!馬鹿にするのもいいかげ、」
「怒るなよ。美人が台無しだぜ」
『まるで』Ωにするように首を撫でてくるイルーゾォに私はもう我慢出来なくなった。
ナイフを取り出してイルーゾォに向ける。
だけど刃はがたがたと震えていて役に立つかすら怪しかった。
「…はっ、はぁっ、はあ…!やめろやめろやめろ!ぶっ殺してやるクソ野朗!」
「おーおー言葉が汚ねえ女は嫌われるぜ。まあ俺はお前なら大歓迎だけどな」
「やめろ…!頼むから、もうやめて…普通に接してよ!馬鹿にするな、性を感じさせるな…っ」
「嫌だ。俺はお前が好きなんだよ、アリス」
「………は?」
「αでもΩでもない弱くて馬鹿なお前を愛してる。めちゃくちゃに抱き潰してぇってな」
「ーーーッ!!!殺してやる!!」
今度こそ本気でナイフを向けた。
その瞬間、後ろから抱きしめるように止められる。後ろにいたのはリゾットだった。黒い目で見下ろされて頭が冷えていく。
「…なんの騒ぎだ」
「なんでもないッ!なんでもないからさ…きにしないで…」
「……イルーゾォ。あまりこいつにちょっかいを出すな。これ以上やるようならお前とアリスを完全に離すことも考える。任務も二度と合わないようにな」
「…悪かったよ。少しふざけただけだ。アリス、また飯に行こうぜ」
去り際にぽん、と肩を撫でたその手を切り落としたかった。だけどリゾットがいる手前笑うことしか出来なくて吐き気がする。
飯なんて行ったこともないくせにあのクソ野朗…!
「…大丈夫か」
「……あ、う、ん」
「あまり組ませないようにはするが…何かあったら俺に頼れ。いや、何かある前に」
「…ありがとうリーダー」
そう言って私は俯いた。
どうして私はΩなんかに生まれたんだろう。
どうしてイルーゾォに馬鹿にされてへらへら笑ってられるんだろう。
誰が悪いの?
私が悪いの?Ωに生まれた私が?ううん、そんなの言い訳だ。Ωに生まれて『覚悟をしない』私が悪いんだ。
βだのなんだの嘘をついていつまでもΩと向き合わない私が。
「…リゾット。私がギャング抜けたいって言ったら…どうする?」
「……協力しよう。俺に出来ることがあれば」
「……どうして、いつも…優しくしてくれるの?…リゾット…」
「…さあな。お前には幸せになってほしいだけだ。できるなら太陽の下で」
ぽん、と頭を撫でてリゾットは執務室へ入っていった。その後ろ姿をぼんやり眺める。
とくとく鳴る心臓の音色が、酷く耳にこびりついた。
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