愛の分からない僕たちは【暗殺・護衛チーム】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おめーまた怪我したのか?」
「…ミスタ。うん…怪我っていうか、思わずね」
「フーゴ!テメェジョアに怪我させてんじゃあねーよ!」
「僕だってさせたくないですよ。でもジョアは聞かないんです、僕の静止を」
「あはは…フーゴは悪くないよ。つい頭に血が上ってさ…。相手の敵がすっごく気持ち悪くて」
「まーたセクハラかァ?美人なのも大変だな」
ミスタは言いながらジョアを見下ろした。
ジョアは美しい漆黒の髪に、蒼い海のような大きな瞳、唇は水分を保っているかのように潤っている。そういえば暗殺チームにはこいつとは全く似ていない姉がいるんだっけ。あのクズでどうしようもない姉が。
「お前の姉貴はブロンドの金髪だよなァ?」
「…姉さんは元は茶色なんだ。染めてるだけ。…あと血は繋がってない」
「あーそうだっけ。俺アイツのこと嫌いなんだよなァ」
「護衛チーム全員嫌いですよ、あの女のこと」
理由は単純。ジョアに嫌がらせじみたことをするからだ。それ以外にも理由があるとするなら極度のアバズレだということか。
護衛チームの男全員あの女に一度は誘われている。もちろんお断りしたが。
「…ごめん。姉さんが迷惑をかけて。でももう私も少しずつ距離を置こうと思ってるから」
「…ふーん。やっとかよ。理由は?」
「…私、最後の『月の一族』でしょう?姉さんは血が繋がってないから。だから、一族を残すには私が潰れる訳にはいかないからさ…」
ジョアは小さく笑ってシャツを引っ張ってみせる。首筋に三日月のタトゥーのようなものが入っていた。これはジョアの一族全員があるものらしい。
「…君に似合ってるよ。そのあざ」
「そう?…ありがとう、フーゴ」
「…ああ。その…君さえよければなんだが僕と今夜…」
「おーーーっとォ。手が滑ったァァ」
「ッあ、危ないだろーがッ!なにすんだミスタッ!!」
なにやら騒いで楽しそうなミスタとフーゴに目を細める。…私の居場所はここだ。ここを守るためにはなんだってしてみせる。
みんなが楽しそうにしているとそう思わずにはいられない。
「…空条さん!イタリアに来るなら事前に言って頂ければいいのに…」
「君を驚かせたかった。相変わらず美しいな」
「……っ、そういうことを言うのはやめてください」
「……まだ先祖が言っていることを気にしているのか」
「…っ、月の一族と星の一族が混じり合うことは許されない…私は本当に信じてるんです。だってジョースターの血とムーンの血を継いだ私は周りの人間をおかしくする。これは真実なんです空条さん」
一息でそう言い切ってジョアは瞳を閉じた。
承太郎とは本当に薄くだが血が繋がっている。それなのにも関わらず会うたびに口説いて来る承太郎が、ジョアには信じられなかった。
空条さんには子供もいるはずだ。
「…君の魅力は血によるものなのか?」
「そうです。禁忌を犯した罰なんです、私の父と母が」
「それは違うと思うぜ。…周りの奴らをおかしくさせるのは君自身の魅力だ。違うか?」
「……そんなこと、言われたら…私、もう嫌です…何のせいにすればいいのか…」
「怯える必要も嫌悪する必要もないぜ。…悪いのは君じゃなくて君を魅力的に作りすぎた神だ」
するりと髪を撫でられて羞恥で頭が混乱する。
やめて、私の中に入ってこないで!
もう一人の私がそう叫ぶ。私は、本当は空条さんのことが気になっていた。
でも、一族で言い伝えられていた禁忌を私も破ったら私の子供も普通じゃなくなる。
私みたいに、周りの人間をおかしくする。
「離して、ください。空条さん…こういうことはもうやめて」
「…私と君は惹かれあってる。何故私を拒むんだ、ジョア」
「……一族の名を護ります。もう禁忌は犯さない」
ジョアはそう言って踵を返した。
イタリアに仕事で来た空条さんともうこれ以上会うのはやめよう。空条さんとは恋人にも友人にもなれない。
だって空条さんは『星』で私は『月』だから。
星と月が重なり合うなんて許されない。
「…空条さんなんか、きらい。だいきらい」
自分の心に嘘をついて、大切なものを守るのだ。それが私の小さな覚悟だった。
「悪いなジョア。暗殺チームからお前に派遣要請が来た。明日から行けるか?」
「ええと…ブチャラティ。私でいいんですか?ミスタやフーゴのほうが適任の気が」
「リゾットがお前を指名したんだ、ジョア。胸を張れ」
ぽん、と頭を撫でられて小さく頷く。
派遣…かあ。しばらくみんなとは会えなくなるのかな。寂しい、と思ったがブチャラティとジョルノの期待を破るわけには行かない。
私はがんばろう、と自分を鼓舞した。
…でも憂鬱だ。
イルーゾォくんと姉さんとはかなり気まずい思いをするだろう。ああ…あと姉さんと関係を持ってる三人の顔をまともに見れそうにない。
「はあ…」
「…不安か?」
「あ、いえ。その…プライベートで彼らと少し問題があって。実はブチャラティにだけ言いますけど、私暗殺チームが少し苦手なんです」
「それはまたどうして。お前は誰からも好かれるだろう」
「…そうですか?そんなこと初めて言われました。でも彼らとは…仲良くなれそうな人もいるんですけど、私のことが嫌いな人もいて…少しやりづらいところではあります」
「そうか。…まあお前は良い意味でも悪い意味でも人を惹きつけるからな…。本当に嫌なら俺に言ってくれ。代わりに行く」
「…!ブチャラティ…。私、貴方の部下で幸せです。頑張ろうって今思えました。だから行ってきます。護衛チームの代表として」
ブチャラティの目を真っ直ぐ見てそう言う。
私がやる気になったのを見たのかブチャラティも微笑んでくれた。また頭を撫でられて嬉しくなる。…ブチャラティは私のお兄ちゃんみたいな存在だ。
「ジョア…怪我をしたらお仕置きだからな?」
「ふふ…ブチャラティ。少しいやらしく聞こえちゃいますよ」
「…俺としてはそっちでもいいんだがな。まあ今日はもう早めに寝ろ。おやすみベッラ」
「おやすみ、ブチャラティ」
「…という訳で今から一ヶ月ほど暗殺チームへ派遣することになりました。もう知っているかと思いますが、ジョア・ジョーラです。護衛チームとしての技術を生かして皆さんのお役に立てれば幸いです。よろしく」
「ジョアはわざわざ本部から来てくれた助っ人だ。くれぐれもちょっかいをかけたり不快な思いをさせるな。あと何か困っていたら助けてやってくれ。勿論俺も頼ってくれて構わない」
「リゾットさん。ありがとうございます。なるべく迷惑はかけないようにしますから」
ひとしきり自己紹介が終わって姉と目が合う。
姉さんはなにを考えているかいまいち分からない。まあ仕事として来たんだし問題は起きないことを祈ろう。一番苦手じゃないギアッチョくんに話しかけることにした。
「ええと…ギアッチョ。任務ってやっぱり大変だよね?暗殺チームは」
「当たり前のことを聞いてんじゃあねーぜジョア。つーかお前任務は誰と行くんだ?」
「うんん…私としては君がいいんだけど、だめかな」
「!…別に?いいぜ、守ってやる」
「守られるのは困るかな…派遣で来たんだし」
苦笑いをしながらそう返せばギアッチョがふん、と笑った。おお…なんだか本当に友達みたい。今までチーム以外の男性と仲良くなったことはなかったから新鮮だった。
ギアッチョと最近できたカフェなんかの話をしていると、後ろから髪をくい、と引っ張られた。う、少しいたい…。
「ジョア。お前ついにボスから見限られたか?」
「イルーゾォくん…あの、髪を引っ張るのはどうかと思うんだけど」
「引っ張りたくなる髪してるお前が悪いだろ?」
「……またぼこぼこにされたいの?」
「うっ、お、お前女だろ!?なんでそんな喧嘩っ早いんだよ!」
「君にだけだよ」
「…!!!へ、へェ〜?俺にだけかよ。ふぅん、そうか。そうかよ…俺だけな…」
なにやらにやにやしだしたイルーゾォくんが気持ち悪くてそっとギアッチョの後ろに隠れる。
するとギアッチョがイルーゾォくんを威嚇していて少し笑ってしまった。その瞬間、二人が勢いよくこちらを見るのでびっくりする。
「…なに?」
「「…な、なんでもねーよ!!」」
「…?」
「くそ、可愛いなァ…おい、腹立つぜ…」
「いつも俺には笑わねーくせに…ッ!」
「???」
二人とも訳が分からなくて首を傾げる。
すると、また背後から引っ張られて困惑した。
次は誰だろう。
「よォ、ベッラ。お前が来てくれて最高な気分だぜ、俺は」
「ぷ、プロシュートさん…」
「相変わらず可愛いなァ〜お前。今日飯でもどうよ?」
「ほ、ホルマジオくんも…」
思わず固まってしまう。…うう、顔を見れない。だってこの二人は姉さんと…私は顔を苦くして俯いた。……はあ、気が重い。
私の名前を呼んでそういうことをしていたことも気になるが、触れたら少し危険な気がして一刻も早く忘れたい気分になった。
「ちょっと!ジョア、アンタがここで使い物になるとは思えないわよ!?」
「姉さん…まぁ死なないように頑張るよ。ブチャラティの期待に応えたいし」
「…あのおかっぱね。アンタアイツとデキてないわよね?許さないわよ」
「……姉さんって私のこと好きなの?」
「…は、ハァ!?なんでそうなるのよ!気持ち悪いッ、私はアンタなんか好きじゃあない!」
…傷付くが姉さんと分かり合えることはないのだろう。姉さんはずっと私が嫌いと公言しているし、仕方ない。私は私なりに姉さんと向き合っていくしかないんだ。
唯一の兄妹なんだから、いがみ合う必要はない…適度な距離感で接すればきっと。
「…私は姉さんのこと嫌いじゃあないよ。えっと…リゾットさんと話してくる」
「は…?」
「リゾットさん。任務はギアッチョと同行してもよろしいですか?」
「ああ。構わない…お前がそれでいいのなら」
「あの…どうして派遣してくれたんですか?私を」
「……単純に欲しいと思った。お前の能力がきっとここで役に立つ」
「そ、うですか…」
なんだかこの人に褒められると照れる。
本物のアサッシーノに能力を求められるのは物凄い光栄だ。照れた顔を隠すように礼をした。
そのまま扉から出ようとすると、リゾットさんに待て、と静止される。
「泊まるところはあるのか?」
「あ…近場のホテルに行こうかなと」
「ここらのホテルは治安が悪いからやめておけ。これをやる。好きに使え」
「!…仮眠室の鍵…ですか?」
「ああ。キッチンや風呂も自由に使って構わない。…少しの間だがお前は俺の部下だ。頼れ」
不器用ながらもリゾットさんの優しい言葉に嬉しくなる。ありがとうリゾットさん、と笑いかけると少しだけ瞳を柔らかくしてくれた。
それから、とリゾットさんは少しだけ気まずそうに言う。
「…鏡は布か何かで隠しておけ。アイツはお前に執着している」
「…はい。リゾットさんにそんな忠告させちゃって申し訳ないです。気をつけます」
「……万が一なにかされそうになったら俺の名を呼べ。俺がお前を守ると誓おう」
「…は、はい…っ」
う…この人、すっごくストレートだ。
なんだか熱い告白のような台詞に汗が出てくる。私は目を閉じて深呼吸した。
落ち着け、この人にそんな思惑はない!
「そ、それじゃあまた後で。リゾットさん」
「…ああ、また後で」
「……あの。なんでここにいるの」
「あ?ここはアジトだろ。自由に使っていいはずだぜ。ジョア」
「ならリビングに行けばいいじゃない。仮眠室は私の部屋になったんだからでてって、イルーゾォくん」
「なあ鏡は隠すなよ。出入り出来ねえ」
「……」
会話を成り立たせようとしないイルーゾォくんに腹が立つ。…ほんとにこの男は苦手だ。
睨み付けてからコーヒーをカップに注ぐ。俺のも、という声に眉を寄せながらコーヒーを入れてやった。
「おい砂糖は入れるなよ。お前のお子様舌とは違うんだ」
「…はいはい」
「なんだよその面倒そうな返事。許可しねーぞ」
「君に許可してもらわなくて結構。これ飲んだら出ていって」
「…ちっ、可愛くねーな」
「いや、可愛くなくていいし…」
可愛い?いきなりなんでそんな話?
困惑しながらそう返すとイルーゾォくんはしまった、というように頬を染めた。どうやら口が滑ったらしい。特に何も思わなかったが、イルーゾォくんからすると失言らしかった。
「おっ、女は男立ててなんぼだろ!?生意気な女は可愛くねーんだよッ」
「…そう?私はリゾットさんみたいな男女対等な関係でいてくれる男の人のほうがいいと思う」
「……なんだお前。リゾットのことが気になんのかよ」
急にすん、と静かな顔になるイルーゾォくんに少したじろぐ。…なに考えてんだろう。
怖くなって目をそらしてコーヒーのカップを持った。
「…例として言ったの」
「…本当かよ。どうせ気に入られようと媚び売ってんじゃあねぇのか?」
「イルーゾォくんには関係ないでしょ。もういいから…」
「こっち見ろよ。なあ」
ぐい、と顔を掌で挟まれて困惑する。
…イルーゾォくんの瞳が怖い。飲み込まれそうな色の赤にぞくりとする。震える手で胸を押し返した。
「離れて…声出すよ」
「いいぜ。出してみろよ。お前の悲鳴、聞いてみたい」
「……なにが目的なの?私に話しかけてきて…嫌いなら無視すればいいのに…!」
「嫌いじゃねえ」
「…え…」
「…だから嫌いじゃねえって言ってる」
「じゃあ、なに…?」
「……俺だけ見てろよ。他の男なんて見んじゃねえ」
「…ねえ、それ告白みたいだよ…やだ、離して…っ」
「告白だろ。こんなもん」
その言葉と同時に唇に固いような、柔らかいようなものが当たった。驚いて力が抜ける。
それを狙っていたように更に口の中になにか暖かいものが入ってきた。…きす、されてる。
なんで、どうして…?
「んぅ…っ、や、ん、やめ、っ」
「…っ、した、出せよ…!」
「ぁ、んん…!んーー…っ!」
ベッドに押し倒されてめちゃくちゃに口の中を犯される。涙がぽろぽろと溢れてシーツにシミをつくる。なに、これ。やだ、こわい。助けてお姉ちゃん…!お母さん、お父さん、
だけど口から出たのはリゾットさんの名前だった。
「…いやぁっ、リゾットさん!リゾット、リゾット助けてえ!」
「!お前…」
イルーゾォくんが本当にキレた顔をした。
服をまくられて下着に手をかけられる。いや、いや、と首を振りながら身を捩るとふとももをぺし、と掌で打たれた。大した痛みもないのにびくりと体が跳ねる。
「…お仕置きされたくねーだろ?」
「ひっ、ぅ、うぅ、やだ、リゾットさん…っきて、きてよぉ、」
「ッ…てめえいい加減にしろよ…ッ!俺以外の名前を呼ぶんじゃねえ!」
そのままブラを上にずらされて胸を揉まれる。
イルーゾォの大きな手に収まってしまった胸にきゃ、と悲鳴を上げる。
触られたくなくて身を捩るとイルーゾォくんが更に力を込めた。ぁ、と声が出てしにたくなる。
「やだ…イルーゾォくん、やめて…っ」
「嫌だね。今からたっぷりお前を犯してやるよ…」
「っぁあ!やだぁ!はなして…っ、」
「イルーゾォ。やめろ」
突然大きな音と共に、体にのしかかっていた重みがなくなった。
見ると、イルーゾォくんはリゾットさんに殴られたのか壁の側で気絶している。
震えながら見上げると、リゾットさんはゆっくりと私を抱き上げてくれた。
「…悪い。来るのが遅れた。外に少し出ていたんだ…怪我はねぇか」
「…え、と…ない、です…っ、あの、リゾットさん…!」
「なんだ」
「……服、きても、いいです、か」
「っ…悪い!見てねえから、すぐに着てくれ、本当に、わざとじゃないんだ」
「…〜っ、大丈夫です。助けてくれたし、その、リゾットさんなら、ああ、そういう意味じゃあなくって!」
「……はぁ。ジョア。お前は…本当に」
可愛いな、と目を優しく細めたリゾットさんに、私は本当に一瞬呼吸が止まった。
…え、なんだろう、これ。
ばくばくと鳴る心臓に怖くなる。震えながらリゾットさんの胸に抱きつくと、困ったように頭を撫でられた。…ああ、だめだ私、
リゾットさんが好きだ、
「…ミスタ。うん…怪我っていうか、思わずね」
「フーゴ!テメェジョアに怪我させてんじゃあねーよ!」
「僕だってさせたくないですよ。でもジョアは聞かないんです、僕の静止を」
「あはは…フーゴは悪くないよ。つい頭に血が上ってさ…。相手の敵がすっごく気持ち悪くて」
「まーたセクハラかァ?美人なのも大変だな」
ミスタは言いながらジョアを見下ろした。
ジョアは美しい漆黒の髪に、蒼い海のような大きな瞳、唇は水分を保っているかのように潤っている。そういえば暗殺チームにはこいつとは全く似ていない姉がいるんだっけ。あのクズでどうしようもない姉が。
「お前の姉貴はブロンドの金髪だよなァ?」
「…姉さんは元は茶色なんだ。染めてるだけ。…あと血は繋がってない」
「あーそうだっけ。俺アイツのこと嫌いなんだよなァ」
「護衛チーム全員嫌いですよ、あの女のこと」
理由は単純。ジョアに嫌がらせじみたことをするからだ。それ以外にも理由があるとするなら極度のアバズレだということか。
護衛チームの男全員あの女に一度は誘われている。もちろんお断りしたが。
「…ごめん。姉さんが迷惑をかけて。でももう私も少しずつ距離を置こうと思ってるから」
「…ふーん。やっとかよ。理由は?」
「…私、最後の『月の一族』でしょう?姉さんは血が繋がってないから。だから、一族を残すには私が潰れる訳にはいかないからさ…」
ジョアは小さく笑ってシャツを引っ張ってみせる。首筋に三日月のタトゥーのようなものが入っていた。これはジョアの一族全員があるものらしい。
「…君に似合ってるよ。そのあざ」
「そう?…ありがとう、フーゴ」
「…ああ。その…君さえよければなんだが僕と今夜…」
「おーーーっとォ。手が滑ったァァ」
「ッあ、危ないだろーがッ!なにすんだミスタッ!!」
なにやら騒いで楽しそうなミスタとフーゴに目を細める。…私の居場所はここだ。ここを守るためにはなんだってしてみせる。
みんなが楽しそうにしているとそう思わずにはいられない。
「…空条さん!イタリアに来るなら事前に言って頂ければいいのに…」
「君を驚かせたかった。相変わらず美しいな」
「……っ、そういうことを言うのはやめてください」
「……まだ先祖が言っていることを気にしているのか」
「…っ、月の一族と星の一族が混じり合うことは許されない…私は本当に信じてるんです。だってジョースターの血とムーンの血を継いだ私は周りの人間をおかしくする。これは真実なんです空条さん」
一息でそう言い切ってジョアは瞳を閉じた。
承太郎とは本当に薄くだが血が繋がっている。それなのにも関わらず会うたびに口説いて来る承太郎が、ジョアには信じられなかった。
空条さんには子供もいるはずだ。
「…君の魅力は血によるものなのか?」
「そうです。禁忌を犯した罰なんです、私の父と母が」
「それは違うと思うぜ。…周りの奴らをおかしくさせるのは君自身の魅力だ。違うか?」
「……そんなこと、言われたら…私、もう嫌です…何のせいにすればいいのか…」
「怯える必要も嫌悪する必要もないぜ。…悪いのは君じゃなくて君を魅力的に作りすぎた神だ」
するりと髪を撫でられて羞恥で頭が混乱する。
やめて、私の中に入ってこないで!
もう一人の私がそう叫ぶ。私は、本当は空条さんのことが気になっていた。
でも、一族で言い伝えられていた禁忌を私も破ったら私の子供も普通じゃなくなる。
私みたいに、周りの人間をおかしくする。
「離して、ください。空条さん…こういうことはもうやめて」
「…私と君は惹かれあってる。何故私を拒むんだ、ジョア」
「……一族の名を護ります。もう禁忌は犯さない」
ジョアはそう言って踵を返した。
イタリアに仕事で来た空条さんともうこれ以上会うのはやめよう。空条さんとは恋人にも友人にもなれない。
だって空条さんは『星』で私は『月』だから。
星と月が重なり合うなんて許されない。
「…空条さんなんか、きらい。だいきらい」
自分の心に嘘をついて、大切なものを守るのだ。それが私の小さな覚悟だった。
「悪いなジョア。暗殺チームからお前に派遣要請が来た。明日から行けるか?」
「ええと…ブチャラティ。私でいいんですか?ミスタやフーゴのほうが適任の気が」
「リゾットがお前を指名したんだ、ジョア。胸を張れ」
ぽん、と頭を撫でられて小さく頷く。
派遣…かあ。しばらくみんなとは会えなくなるのかな。寂しい、と思ったがブチャラティとジョルノの期待を破るわけには行かない。
私はがんばろう、と自分を鼓舞した。
…でも憂鬱だ。
イルーゾォくんと姉さんとはかなり気まずい思いをするだろう。ああ…あと姉さんと関係を持ってる三人の顔をまともに見れそうにない。
「はあ…」
「…不安か?」
「あ、いえ。その…プライベートで彼らと少し問題があって。実はブチャラティにだけ言いますけど、私暗殺チームが少し苦手なんです」
「それはまたどうして。お前は誰からも好かれるだろう」
「…そうですか?そんなこと初めて言われました。でも彼らとは…仲良くなれそうな人もいるんですけど、私のことが嫌いな人もいて…少しやりづらいところではあります」
「そうか。…まあお前は良い意味でも悪い意味でも人を惹きつけるからな…。本当に嫌なら俺に言ってくれ。代わりに行く」
「…!ブチャラティ…。私、貴方の部下で幸せです。頑張ろうって今思えました。だから行ってきます。護衛チームの代表として」
ブチャラティの目を真っ直ぐ見てそう言う。
私がやる気になったのを見たのかブチャラティも微笑んでくれた。また頭を撫でられて嬉しくなる。…ブチャラティは私のお兄ちゃんみたいな存在だ。
「ジョア…怪我をしたらお仕置きだからな?」
「ふふ…ブチャラティ。少しいやらしく聞こえちゃいますよ」
「…俺としてはそっちでもいいんだがな。まあ今日はもう早めに寝ろ。おやすみベッラ」
「おやすみ、ブチャラティ」
「…という訳で今から一ヶ月ほど暗殺チームへ派遣することになりました。もう知っているかと思いますが、ジョア・ジョーラです。護衛チームとしての技術を生かして皆さんのお役に立てれば幸いです。よろしく」
「ジョアはわざわざ本部から来てくれた助っ人だ。くれぐれもちょっかいをかけたり不快な思いをさせるな。あと何か困っていたら助けてやってくれ。勿論俺も頼ってくれて構わない」
「リゾットさん。ありがとうございます。なるべく迷惑はかけないようにしますから」
ひとしきり自己紹介が終わって姉と目が合う。
姉さんはなにを考えているかいまいち分からない。まあ仕事として来たんだし問題は起きないことを祈ろう。一番苦手じゃないギアッチョくんに話しかけることにした。
「ええと…ギアッチョ。任務ってやっぱり大変だよね?暗殺チームは」
「当たり前のことを聞いてんじゃあねーぜジョア。つーかお前任務は誰と行くんだ?」
「うんん…私としては君がいいんだけど、だめかな」
「!…別に?いいぜ、守ってやる」
「守られるのは困るかな…派遣で来たんだし」
苦笑いをしながらそう返せばギアッチョがふん、と笑った。おお…なんだか本当に友達みたい。今までチーム以外の男性と仲良くなったことはなかったから新鮮だった。
ギアッチョと最近できたカフェなんかの話をしていると、後ろから髪をくい、と引っ張られた。う、少しいたい…。
「ジョア。お前ついにボスから見限られたか?」
「イルーゾォくん…あの、髪を引っ張るのはどうかと思うんだけど」
「引っ張りたくなる髪してるお前が悪いだろ?」
「……またぼこぼこにされたいの?」
「うっ、お、お前女だろ!?なんでそんな喧嘩っ早いんだよ!」
「君にだけだよ」
「…!!!へ、へェ〜?俺にだけかよ。ふぅん、そうか。そうかよ…俺だけな…」
なにやらにやにやしだしたイルーゾォくんが気持ち悪くてそっとギアッチョの後ろに隠れる。
するとギアッチョがイルーゾォくんを威嚇していて少し笑ってしまった。その瞬間、二人が勢いよくこちらを見るのでびっくりする。
「…なに?」
「「…な、なんでもねーよ!!」」
「…?」
「くそ、可愛いなァ…おい、腹立つぜ…」
「いつも俺には笑わねーくせに…ッ!」
「???」
二人とも訳が分からなくて首を傾げる。
すると、また背後から引っ張られて困惑した。
次は誰だろう。
「よォ、ベッラ。お前が来てくれて最高な気分だぜ、俺は」
「ぷ、プロシュートさん…」
「相変わらず可愛いなァ〜お前。今日飯でもどうよ?」
「ほ、ホルマジオくんも…」
思わず固まってしまう。…うう、顔を見れない。だってこの二人は姉さんと…私は顔を苦くして俯いた。……はあ、気が重い。
私の名前を呼んでそういうことをしていたことも気になるが、触れたら少し危険な気がして一刻も早く忘れたい気分になった。
「ちょっと!ジョア、アンタがここで使い物になるとは思えないわよ!?」
「姉さん…まぁ死なないように頑張るよ。ブチャラティの期待に応えたいし」
「…あのおかっぱね。アンタアイツとデキてないわよね?許さないわよ」
「……姉さんって私のこと好きなの?」
「…は、ハァ!?なんでそうなるのよ!気持ち悪いッ、私はアンタなんか好きじゃあない!」
…傷付くが姉さんと分かり合えることはないのだろう。姉さんはずっと私が嫌いと公言しているし、仕方ない。私は私なりに姉さんと向き合っていくしかないんだ。
唯一の兄妹なんだから、いがみ合う必要はない…適度な距離感で接すればきっと。
「…私は姉さんのこと嫌いじゃあないよ。えっと…リゾットさんと話してくる」
「は…?」
「リゾットさん。任務はギアッチョと同行してもよろしいですか?」
「ああ。構わない…お前がそれでいいのなら」
「あの…どうして派遣してくれたんですか?私を」
「……単純に欲しいと思った。お前の能力がきっとここで役に立つ」
「そ、うですか…」
なんだかこの人に褒められると照れる。
本物のアサッシーノに能力を求められるのは物凄い光栄だ。照れた顔を隠すように礼をした。
そのまま扉から出ようとすると、リゾットさんに待て、と静止される。
「泊まるところはあるのか?」
「あ…近場のホテルに行こうかなと」
「ここらのホテルは治安が悪いからやめておけ。これをやる。好きに使え」
「!…仮眠室の鍵…ですか?」
「ああ。キッチンや風呂も自由に使って構わない。…少しの間だがお前は俺の部下だ。頼れ」
不器用ながらもリゾットさんの優しい言葉に嬉しくなる。ありがとうリゾットさん、と笑いかけると少しだけ瞳を柔らかくしてくれた。
それから、とリゾットさんは少しだけ気まずそうに言う。
「…鏡は布か何かで隠しておけ。アイツはお前に執着している」
「…はい。リゾットさんにそんな忠告させちゃって申し訳ないです。気をつけます」
「……万が一なにかされそうになったら俺の名を呼べ。俺がお前を守ると誓おう」
「…は、はい…っ」
う…この人、すっごくストレートだ。
なんだか熱い告白のような台詞に汗が出てくる。私は目を閉じて深呼吸した。
落ち着け、この人にそんな思惑はない!
「そ、それじゃあまた後で。リゾットさん」
「…ああ、また後で」
「……あの。なんでここにいるの」
「あ?ここはアジトだろ。自由に使っていいはずだぜ。ジョア」
「ならリビングに行けばいいじゃない。仮眠室は私の部屋になったんだからでてって、イルーゾォくん」
「なあ鏡は隠すなよ。出入り出来ねえ」
「……」
会話を成り立たせようとしないイルーゾォくんに腹が立つ。…ほんとにこの男は苦手だ。
睨み付けてからコーヒーをカップに注ぐ。俺のも、という声に眉を寄せながらコーヒーを入れてやった。
「おい砂糖は入れるなよ。お前のお子様舌とは違うんだ」
「…はいはい」
「なんだよその面倒そうな返事。許可しねーぞ」
「君に許可してもらわなくて結構。これ飲んだら出ていって」
「…ちっ、可愛くねーな」
「いや、可愛くなくていいし…」
可愛い?いきなりなんでそんな話?
困惑しながらそう返すとイルーゾォくんはしまった、というように頬を染めた。どうやら口が滑ったらしい。特に何も思わなかったが、イルーゾォくんからすると失言らしかった。
「おっ、女は男立ててなんぼだろ!?生意気な女は可愛くねーんだよッ」
「…そう?私はリゾットさんみたいな男女対等な関係でいてくれる男の人のほうがいいと思う」
「……なんだお前。リゾットのことが気になんのかよ」
急にすん、と静かな顔になるイルーゾォくんに少したじろぐ。…なに考えてんだろう。
怖くなって目をそらしてコーヒーのカップを持った。
「…例として言ったの」
「…本当かよ。どうせ気に入られようと媚び売ってんじゃあねぇのか?」
「イルーゾォくんには関係ないでしょ。もういいから…」
「こっち見ろよ。なあ」
ぐい、と顔を掌で挟まれて困惑する。
…イルーゾォくんの瞳が怖い。飲み込まれそうな色の赤にぞくりとする。震える手で胸を押し返した。
「離れて…声出すよ」
「いいぜ。出してみろよ。お前の悲鳴、聞いてみたい」
「……なにが目的なの?私に話しかけてきて…嫌いなら無視すればいいのに…!」
「嫌いじゃねえ」
「…え…」
「…だから嫌いじゃねえって言ってる」
「じゃあ、なに…?」
「……俺だけ見てろよ。他の男なんて見んじゃねえ」
「…ねえ、それ告白みたいだよ…やだ、離して…っ」
「告白だろ。こんなもん」
その言葉と同時に唇に固いような、柔らかいようなものが当たった。驚いて力が抜ける。
それを狙っていたように更に口の中になにか暖かいものが入ってきた。…きす、されてる。
なんで、どうして…?
「んぅ…っ、や、ん、やめ、っ」
「…っ、した、出せよ…!」
「ぁ、んん…!んーー…っ!」
ベッドに押し倒されてめちゃくちゃに口の中を犯される。涙がぽろぽろと溢れてシーツにシミをつくる。なに、これ。やだ、こわい。助けてお姉ちゃん…!お母さん、お父さん、
だけど口から出たのはリゾットさんの名前だった。
「…いやぁっ、リゾットさん!リゾット、リゾット助けてえ!」
「!お前…」
イルーゾォくんが本当にキレた顔をした。
服をまくられて下着に手をかけられる。いや、いや、と首を振りながら身を捩るとふとももをぺし、と掌で打たれた。大した痛みもないのにびくりと体が跳ねる。
「…お仕置きされたくねーだろ?」
「ひっ、ぅ、うぅ、やだ、リゾットさん…っきて、きてよぉ、」
「ッ…てめえいい加減にしろよ…ッ!俺以外の名前を呼ぶんじゃねえ!」
そのままブラを上にずらされて胸を揉まれる。
イルーゾォの大きな手に収まってしまった胸にきゃ、と悲鳴を上げる。
触られたくなくて身を捩るとイルーゾォくんが更に力を込めた。ぁ、と声が出てしにたくなる。
「やだ…イルーゾォくん、やめて…っ」
「嫌だね。今からたっぷりお前を犯してやるよ…」
「っぁあ!やだぁ!はなして…っ、」
「イルーゾォ。やめろ」
突然大きな音と共に、体にのしかかっていた重みがなくなった。
見ると、イルーゾォくんはリゾットさんに殴られたのか壁の側で気絶している。
震えながら見上げると、リゾットさんはゆっくりと私を抱き上げてくれた。
「…悪い。来るのが遅れた。外に少し出ていたんだ…怪我はねぇか」
「…え、と…ない、です…っ、あの、リゾットさん…!」
「なんだ」
「……服、きても、いいです、か」
「っ…悪い!見てねえから、すぐに着てくれ、本当に、わざとじゃないんだ」
「…〜っ、大丈夫です。助けてくれたし、その、リゾットさんなら、ああ、そういう意味じゃあなくって!」
「……はぁ。ジョア。お前は…本当に」
可愛いな、と目を優しく細めたリゾットさんに、私は本当に一瞬呼吸が止まった。
…え、なんだろう、これ。
ばくばくと鳴る心臓に怖くなる。震えながらリゾットさんの胸に抱きつくと、困ったように頭を撫でられた。…ああ、だめだ私、
リゾットさんが好きだ、
3/3ページ