時を掛ける暗殺者 【オール】
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カーラが自分の物になったのはいいが、イルーゾォはどうしようもなく不安だった。
なんせ相手はあの美しいカーラだ。いつ他の男に取られるのか分からない。
…首輪でもやりたいが、きっとカーラは嫌だと言うだろう。それにカーラは自由な猫のような雰囲気がある。そこも彼女の魅力だ。
「あ、ダン!ここの書類文字抜けてたわよ」
「ん〜?ああ、悪いな。おっと、少し立ちくらみだ」
「きゃあぅっ!や…!ばかっ、なにしてるのよ変態ッ」
「うぐっ!イイ蹴りだな…ッ」
「やぁぁっ、きもちわるい!」
カーラの胸を背後から揉んだダンが蹴り飛ばされている。顔を赤く染めるカーラにむかついて、イルーゾォがダンを殴り飛ばした。
「いってェな!なんだ、貴様」
「こいつはもう俺のもんだ。二度と触るな」
「…はァァ?ついにイカれたのかイルーゾォ!妄言は程々に…、え?嘘だろ…?」
「…〜っイルーゾォ…」
「…カーラ…」
思わず抱きしめると、カーラはほっとした顔でイルーゾォの胸にこつりと額を当てた。
それに立ち上がりそうになる自身をおさえながらカーラの頬にキスを落とす。首筋にもちゅう、と吸い付いてやった。
「ん…、いたい、」
「…痛い?」
「うん…」
「なら、治してやらないとな。今日たっぷりベッドの上で慰めてやるから…ハァ、俺の天使…」
「て、天使じゃない、わっ」
「ああわかってる。可愛くて泣き虫なギャングだもんな?」
「…っ、可愛いは余計よ!」
「あー可愛い可愛い」
「もう…!」
「おいやめろ貴様ら!!嘘だ、嘘だろ!?カーラ…!」
「ぅ…ほんとよ。私はっ、むぐぐ」
「やめろ…聞きたくない」
青ざめるダンに、イルーゾォが抑えきれない笑みを浮かべる。ふん、ざまあみろ。
こいつはもう一生俺の女なんだ。誰にも渡さない。死んでも渡すもんか。
「永遠に俺のもんだ…」
「…イルーゾォ?」
「…なんでもない。カーラ、お前そろそろ書類整理だろ?行くぞ、俺も手伝う」
「なっ、待て!私だぞ!今日は!」
「ああ。お前なら任務だぞ、プロシュートと。変更だって」
は!?と叫ぶダンを背後に、カーラの手をとって部屋に入る。ちゅ、ちゅ、とキスを落とすとカーラが恥ずかしそうに目を伏せた。
可愛すぎる…ああ、夜まで待てない。
「なあ、ダメか…?」
「へぅ、だ、だめよ。こんなところで、いや…っ」
「どうして。もうアジトはダンだけだぜ。あいつもじきに出るし。…昨日は抱いてないだろ?」
「ま、毎日するの!?」
「20前半の男を舐めるんじゃあないぜ、カーラ」
がぶりと唇にキスをすればカーラもしょうがないというように身体をイルーゾォに寄せた。
それに興奮してカーラをデスクの上に押し倒す。
「一回だけよ…?お馬鹿さん」
「っ、ああ。一回だけ…な」
「ねえイルーゾォほんとに?すごく目が怖いんだけど…っ」
「お前は黙って俺に愛されてればいいんだよ、カーラ」
その言葉を合図に、カーラから甘い悲鳴が上がった。…何回抱いても飽きそうにない。むしろ、どんどん欲が湧いてくる。
カーラの美しい身体に触りながら、イルーゾォは幸せだと目を細めた。
「ん…」
目が覚めると、そこは書類部屋の中だった。
カーラは慌てて時計を見る。時刻はもう夕方で、イルーゾォに抱き潰されてしまったことを悟った。思わず涙目になりながら立ち上がる。
…ふと違和感を覚えた。
「ここ…鏡の中だわ」
どうりで目が覚めないわけだ。
いつもなら物音一つで起きれるカーラは、何故だろうと疑問に思っていたのだ。
この静かな世界なら納得がいく。鏡をこんこん、とノックした。
「イルーゾォ、だして?」
「…ん。おかえり、カーラ」
「ただいま。ねえ、どうしてもう夕方なのかしら?イルーゾォくん」
「う…悪かったよ。今日の夜は一回だけにするから…」
「よ、夜もするのっ…?」
「当たり前だろ?嫌なのか?」
「うっ、ううん!でも、体力が持たなくなっちゃうんじゃあないかって…」
「そうなったら俺がお前の分の任務をやってやるよ。カーラ、可愛いな…」
「…い、るーぞぉ、それは、だめよ…」
「…どうして」
「私はギャングだもの。それに、リゾットの負担を減らしてあげた、んんっ」
「他の男の名前を口にするな」
ち"ゅう、と首筋に強く吸いつかれ目を見開く。
ほ、他の男って…カーラにとってリゾットは紛れもない上司だ。まるで嫉妬めいたことを言われて軽く困惑する。
「ねえ…恋人ってそういうもの?」
「そういうって?」
「その…嫉妬とかたくさんするべきなのかしら…?」
「……お前は俺が他の女と歩いてたらどうなんだよ」
「え…」
イルーゾォが他の女の子と歩いている姿を想像する。…。あれ…そこまで嫌でもないかも。
特に何も思わない。だが、それをイルーゾォに言ったらなにか恐ろしいことが起きる気がして、カーラは嫌だわ、と言った。
「…なんだ。カーラもちゃんと嫉妬してるじゃあないか」
「そ、そうね」
「大体嫉妬はしようとするもんじゃねえだろ。したくなくても、しちまうのが嫉妬。分かったか?鈍感カーラ」
「鈍感だなんてひどいわ!今日は夕飯作りに行くのやめちゃおうかしら?」
「あー嘘だよ悪かった。カーラは聡明で鋭い女だよなァ」
「ふふ、そうそう。分かってるじゃない」
イルーゾォとの会話は、楽しい。
恋人になってから二人でよく会話をするようになってわかったことだった。でも…セックスは少し苦手だと思う。
カーラにとって、イルーゾォと話せればセックスはあまり必要のないものに思えていた。
「ドルチェも買ってこうな。カーラの好きなやつ」
「カーラ」
「きゃっ。イルーゾォ!」
背後から抱え込むように抱きしめられて思わず悲鳴を上げる。今は会議中で、どうしたの?と問いかけると何でもないと言われた。
カーラは眉を下げて言おうか迷った。
…最近、仲間の前でこういうことが多すぎる気がする。イルーゾォの腕の中で言おうか迷っていると、ギアッアチョからおい、と低い声で名前を呼ばれた。
「…カーラが嫌がってんだろーがよォ。付き合ってるのか知らねェけど、やめろよ」
「フン、嫉妬かよ?ギアッアチョ」
「な…ッ!ちげーよッ!!仲間の前でやめろって言ってんだよ!!」
「別に会議の邪魔してる訳じゃねーしいいだろ」
「〜ッ気に触るんだよ!クソ!」
ギアッアチョの怒鳴り声にカーラがしゅんと身をすくめる。イルーゾォと付き合うようになって、ギアッアチョはカーラにあまり話しかけて来なくなった。話したと思ったらイルーゾォとの関係について否定され、カーラは落ち込んでいたのだ。
それはメローネ、プロシュート、ホルマジオ、ダンもだった。唯一変わらないのはリゾットとペッシとソルベとジェラートだけだ。
その内のリゾットとペッシも、少しだけ余所余所しい気がするが。
「ねえイルーゾォ…だめよ。今はプライベートじゃないもの。お仕事中よ?」
「……。側に居たいだけだ」
「でも、」
「いいからほら。話を続けようぜ。来月のパーティーだっけ?」
「…ああ。そのパーティーだが、俺とカーラで行くことにした。潜入には持って来いのスタンドだからな」
「はあ!?俺が行く!あんたに任せられるか!」
「ちょっとイルーゾォっ」
おおよそリーダーに言っていい言葉じゃない。
カーラはぺしりとイルーゾォの腕を叩くが、意味はない。イルーゾォは眉をしかめて更に強くカーラを抱き締めた。
「…嫌だ。パーティーってことは男も来るんだろ?カーラなんてすぐに襲われて終わりだ。そんなのぜってー許さねえ!」
「いい加減にしろヤキモチ野朗!カーラが仕事でしくったことねーだろうが!」
「っあるかもしれないだろ!?これから!」
「おいいい加減にしたらどうだ?カーラに捨てられるのも時間の問題かもな」
イルーゾォからカーラを取り上げて自分の背後にやるダンは、いつもと違って瞳にぎらぎらとした殺意を浮かべている。
「…私はカーラの仕事に対する姿勢を尊敬してる。今まで人間を尊敬したことがなかった私がだぜ。…それを邪魔すんならイルーゾォ、アンタをぶっ殺す」
「…へえ。いい度胸じゃねぇか。いつからそんなに覚悟できる男になったんだ?お前。お前こそ今すぐその手を離さねえとぶっ殺すぜ」
バチバチと火花を散らす二人に、カーラは目の前が暗くなっていくのを感じた。
それは比喩表現ではなく、実際にだ。
カーラはふらりと倒れそうになる。慌ててギアッチョがカーラを抱き締めた。
「おい、おいカーラ!?」
「!!どうした、カーラ!」
「リゾット、やべえ、こいつ…意識ねえぞ!」
全員が驚きに目を見開く。まさかスタンド攻撃か!?と思ったが暗殺チームのアジトに攻撃をしかけるやつがいるならそれは大馬鹿ものだ。
しっかり観察すると、ただの貧血のようだった。ギアッチョがカーラを抱き上げて仮眠室に向かう。イルーゾォも後に続いた。
「…冷やしてやるか。おい、イルーゾォ。こうなったのはテメェに原因があんじゃねぇのか?」
「っはあ!?ふざけるな、俺は…!…!」
毎日毎日カーラを抱き潰していることを思い出したイルーゾォはハッとする。
…まさか、それで…。
どんどん顔が青ざめていくイルーゾォに、ギアッチョは目つきを鋭くさせた。
「やっぱりテメェかよ!ふざけんなッ!カーラは、お前のもんじゃあねえ!少しは考えられねえのかよ!」
「…!お前…」
ギアッチョが目に薄く涙の幕を張らしていることに気付いたイルーゾォは絶句する。
…ギアッチョは確かにカーラにベタ惚れだった。それでも今までなにもしてこなかったコイツは、内心泣きたいほどに悔しかったのかもしれない。
「…今すぐこいつと別れろ。…それすら出来ねーならテメェはこいつを愛しちゃなんかいない。テメェはテメェのことしか考えてねえクズ野朗ってことだ」
「…!!な…っ、ふ、ふざけんな…!そんなこと出来る訳ねえだろ!やっと、やっと手に入ったっつーのに…!」
「じゃあこのままカーラに無理させんのか!?テメェに一生付き合わされて!分かるだろ、こいつからは別れたくても別れようなんざ言えねー性格だってこと!」
「…!!」
イルーゾォは微かに震えながらカーラを見た。
…カーラ。俺は…お前を手放すなんて嫌だ。
だがギアッチョの言っていることも充分理解出来た。
拳を握りしめて目を強く閉じる。
「……分かった。起きたら俺から伝える。今は…二人にさせてくれ。もうこんなことは二度と起きねえから」
イルーゾォの絞り出すような声に、ギアッチョは微かに笑った。
ギアッチョにとって、カーラは全てだった。
人を愛したことのない自分が唯一愛してると思える相手。可愛いくて美しくて男を虜にするカーラ。
男がカーラにべったりとしているのを見ると殺してやりたくなる。実際、チームメンバー以外でカーラに近付く男たちを、裏で死ぬ寸前まで叩きのめすこともあった。
それくらいギアッチョはカーラを愛していた。
なのにカーラはギアッチョではなく、イルーゾォを選んだ。
それはカーラがイルーゾォを愛している訳ではないことをギアッチョは知っていた。
何故ならカーラは愛を知らない。愛されることが得意でも、人を愛することはなかったのだろう。
なら、イルーゾォに付き合ってやっているだけじゃあねぇか。
そう考えついた時、ギアッチョは酷く安心した。ならカーラはイルーゾォと別れても少し落ち込みはすれど悲しみはしないだろう。
カーラの悲しむ顔だけは見たくなかった。
そこでカーラの飲み物に睡眠薬を入れた。
計画でもなんでもない。それに、カーラは実際最近寝不足だと言っていたし、悪いことではないだろう。
すやすやと眠るカーラの頬を人なでしてからギアッチョは立ち上がった。
「…起きたらカーラに伝えろよ。カーラを解放してやれ」
「…ッ!ああ…分かってる…」
…カーラは誰にも渡さねえ。
俺のものにもならねえなら誰のものにもなるな。ギアッチョは薄暗く微笑んだまま仮眠室の扉を閉めた。
なんせ相手はあの美しいカーラだ。いつ他の男に取られるのか分からない。
…首輪でもやりたいが、きっとカーラは嫌だと言うだろう。それにカーラは自由な猫のような雰囲気がある。そこも彼女の魅力だ。
「あ、ダン!ここの書類文字抜けてたわよ」
「ん〜?ああ、悪いな。おっと、少し立ちくらみだ」
「きゃあぅっ!や…!ばかっ、なにしてるのよ変態ッ」
「うぐっ!イイ蹴りだな…ッ」
「やぁぁっ、きもちわるい!」
カーラの胸を背後から揉んだダンが蹴り飛ばされている。顔を赤く染めるカーラにむかついて、イルーゾォがダンを殴り飛ばした。
「いってェな!なんだ、貴様」
「こいつはもう俺のもんだ。二度と触るな」
「…はァァ?ついにイカれたのかイルーゾォ!妄言は程々に…、え?嘘だろ…?」
「…〜っイルーゾォ…」
「…カーラ…」
思わず抱きしめると、カーラはほっとした顔でイルーゾォの胸にこつりと額を当てた。
それに立ち上がりそうになる自身をおさえながらカーラの頬にキスを落とす。首筋にもちゅう、と吸い付いてやった。
「ん…、いたい、」
「…痛い?」
「うん…」
「なら、治してやらないとな。今日たっぷりベッドの上で慰めてやるから…ハァ、俺の天使…」
「て、天使じゃない、わっ」
「ああわかってる。可愛くて泣き虫なギャングだもんな?」
「…っ、可愛いは余計よ!」
「あー可愛い可愛い」
「もう…!」
「おいやめろ貴様ら!!嘘だ、嘘だろ!?カーラ…!」
「ぅ…ほんとよ。私はっ、むぐぐ」
「やめろ…聞きたくない」
青ざめるダンに、イルーゾォが抑えきれない笑みを浮かべる。ふん、ざまあみろ。
こいつはもう一生俺の女なんだ。誰にも渡さない。死んでも渡すもんか。
「永遠に俺のもんだ…」
「…イルーゾォ?」
「…なんでもない。カーラ、お前そろそろ書類整理だろ?行くぞ、俺も手伝う」
「なっ、待て!私だぞ!今日は!」
「ああ。お前なら任務だぞ、プロシュートと。変更だって」
は!?と叫ぶダンを背後に、カーラの手をとって部屋に入る。ちゅ、ちゅ、とキスを落とすとカーラが恥ずかしそうに目を伏せた。
可愛すぎる…ああ、夜まで待てない。
「なあ、ダメか…?」
「へぅ、だ、だめよ。こんなところで、いや…っ」
「どうして。もうアジトはダンだけだぜ。あいつもじきに出るし。…昨日は抱いてないだろ?」
「ま、毎日するの!?」
「20前半の男を舐めるんじゃあないぜ、カーラ」
がぶりと唇にキスをすればカーラもしょうがないというように身体をイルーゾォに寄せた。
それに興奮してカーラをデスクの上に押し倒す。
「一回だけよ…?お馬鹿さん」
「っ、ああ。一回だけ…な」
「ねえイルーゾォほんとに?すごく目が怖いんだけど…っ」
「お前は黙って俺に愛されてればいいんだよ、カーラ」
その言葉を合図に、カーラから甘い悲鳴が上がった。…何回抱いても飽きそうにない。むしろ、どんどん欲が湧いてくる。
カーラの美しい身体に触りながら、イルーゾォは幸せだと目を細めた。
「ん…」
目が覚めると、そこは書類部屋の中だった。
カーラは慌てて時計を見る。時刻はもう夕方で、イルーゾォに抱き潰されてしまったことを悟った。思わず涙目になりながら立ち上がる。
…ふと違和感を覚えた。
「ここ…鏡の中だわ」
どうりで目が覚めないわけだ。
いつもなら物音一つで起きれるカーラは、何故だろうと疑問に思っていたのだ。
この静かな世界なら納得がいく。鏡をこんこん、とノックした。
「イルーゾォ、だして?」
「…ん。おかえり、カーラ」
「ただいま。ねえ、どうしてもう夕方なのかしら?イルーゾォくん」
「う…悪かったよ。今日の夜は一回だけにするから…」
「よ、夜もするのっ…?」
「当たり前だろ?嫌なのか?」
「うっ、ううん!でも、体力が持たなくなっちゃうんじゃあないかって…」
「そうなったら俺がお前の分の任務をやってやるよ。カーラ、可愛いな…」
「…い、るーぞぉ、それは、だめよ…」
「…どうして」
「私はギャングだもの。それに、リゾットの負担を減らしてあげた、んんっ」
「他の男の名前を口にするな」
ち"ゅう、と首筋に強く吸いつかれ目を見開く。
ほ、他の男って…カーラにとってリゾットは紛れもない上司だ。まるで嫉妬めいたことを言われて軽く困惑する。
「ねえ…恋人ってそういうもの?」
「そういうって?」
「その…嫉妬とかたくさんするべきなのかしら…?」
「……お前は俺が他の女と歩いてたらどうなんだよ」
「え…」
イルーゾォが他の女の子と歩いている姿を想像する。…。あれ…そこまで嫌でもないかも。
特に何も思わない。だが、それをイルーゾォに言ったらなにか恐ろしいことが起きる気がして、カーラは嫌だわ、と言った。
「…なんだ。カーラもちゃんと嫉妬してるじゃあないか」
「そ、そうね」
「大体嫉妬はしようとするもんじゃねえだろ。したくなくても、しちまうのが嫉妬。分かったか?鈍感カーラ」
「鈍感だなんてひどいわ!今日は夕飯作りに行くのやめちゃおうかしら?」
「あー嘘だよ悪かった。カーラは聡明で鋭い女だよなァ」
「ふふ、そうそう。分かってるじゃない」
イルーゾォとの会話は、楽しい。
恋人になってから二人でよく会話をするようになってわかったことだった。でも…セックスは少し苦手だと思う。
カーラにとって、イルーゾォと話せればセックスはあまり必要のないものに思えていた。
「ドルチェも買ってこうな。カーラの好きなやつ」
「カーラ」
「きゃっ。イルーゾォ!」
背後から抱え込むように抱きしめられて思わず悲鳴を上げる。今は会議中で、どうしたの?と問いかけると何でもないと言われた。
カーラは眉を下げて言おうか迷った。
…最近、仲間の前でこういうことが多すぎる気がする。イルーゾォの腕の中で言おうか迷っていると、ギアッアチョからおい、と低い声で名前を呼ばれた。
「…カーラが嫌がってんだろーがよォ。付き合ってるのか知らねェけど、やめろよ」
「フン、嫉妬かよ?ギアッアチョ」
「な…ッ!ちげーよッ!!仲間の前でやめろって言ってんだよ!!」
「別に会議の邪魔してる訳じゃねーしいいだろ」
「〜ッ気に触るんだよ!クソ!」
ギアッアチョの怒鳴り声にカーラがしゅんと身をすくめる。イルーゾォと付き合うようになって、ギアッアチョはカーラにあまり話しかけて来なくなった。話したと思ったらイルーゾォとの関係について否定され、カーラは落ち込んでいたのだ。
それはメローネ、プロシュート、ホルマジオ、ダンもだった。唯一変わらないのはリゾットとペッシとソルベとジェラートだけだ。
その内のリゾットとペッシも、少しだけ余所余所しい気がするが。
「ねえイルーゾォ…だめよ。今はプライベートじゃないもの。お仕事中よ?」
「……。側に居たいだけだ」
「でも、」
「いいからほら。話を続けようぜ。来月のパーティーだっけ?」
「…ああ。そのパーティーだが、俺とカーラで行くことにした。潜入には持って来いのスタンドだからな」
「はあ!?俺が行く!あんたに任せられるか!」
「ちょっとイルーゾォっ」
おおよそリーダーに言っていい言葉じゃない。
カーラはぺしりとイルーゾォの腕を叩くが、意味はない。イルーゾォは眉をしかめて更に強くカーラを抱き締めた。
「…嫌だ。パーティーってことは男も来るんだろ?カーラなんてすぐに襲われて終わりだ。そんなのぜってー許さねえ!」
「いい加減にしろヤキモチ野朗!カーラが仕事でしくったことねーだろうが!」
「っあるかもしれないだろ!?これから!」
「おいいい加減にしたらどうだ?カーラに捨てられるのも時間の問題かもな」
イルーゾォからカーラを取り上げて自分の背後にやるダンは、いつもと違って瞳にぎらぎらとした殺意を浮かべている。
「…私はカーラの仕事に対する姿勢を尊敬してる。今まで人間を尊敬したことがなかった私がだぜ。…それを邪魔すんならイルーゾォ、アンタをぶっ殺す」
「…へえ。いい度胸じゃねぇか。いつからそんなに覚悟できる男になったんだ?お前。お前こそ今すぐその手を離さねえとぶっ殺すぜ」
バチバチと火花を散らす二人に、カーラは目の前が暗くなっていくのを感じた。
それは比喩表現ではなく、実際にだ。
カーラはふらりと倒れそうになる。慌ててギアッチョがカーラを抱き締めた。
「おい、おいカーラ!?」
「!!どうした、カーラ!」
「リゾット、やべえ、こいつ…意識ねえぞ!」
全員が驚きに目を見開く。まさかスタンド攻撃か!?と思ったが暗殺チームのアジトに攻撃をしかけるやつがいるならそれは大馬鹿ものだ。
しっかり観察すると、ただの貧血のようだった。ギアッチョがカーラを抱き上げて仮眠室に向かう。イルーゾォも後に続いた。
「…冷やしてやるか。おい、イルーゾォ。こうなったのはテメェに原因があんじゃねぇのか?」
「っはあ!?ふざけるな、俺は…!…!」
毎日毎日カーラを抱き潰していることを思い出したイルーゾォはハッとする。
…まさか、それで…。
どんどん顔が青ざめていくイルーゾォに、ギアッチョは目つきを鋭くさせた。
「やっぱりテメェかよ!ふざけんなッ!カーラは、お前のもんじゃあねえ!少しは考えられねえのかよ!」
「…!お前…」
ギアッチョが目に薄く涙の幕を張らしていることに気付いたイルーゾォは絶句する。
…ギアッチョは確かにカーラにベタ惚れだった。それでも今までなにもしてこなかったコイツは、内心泣きたいほどに悔しかったのかもしれない。
「…今すぐこいつと別れろ。…それすら出来ねーならテメェはこいつを愛しちゃなんかいない。テメェはテメェのことしか考えてねえクズ野朗ってことだ」
「…!!な…っ、ふ、ふざけんな…!そんなこと出来る訳ねえだろ!やっと、やっと手に入ったっつーのに…!」
「じゃあこのままカーラに無理させんのか!?テメェに一生付き合わされて!分かるだろ、こいつからは別れたくても別れようなんざ言えねー性格だってこと!」
「…!!」
イルーゾォは微かに震えながらカーラを見た。
…カーラ。俺は…お前を手放すなんて嫌だ。
だがギアッチョの言っていることも充分理解出来た。
拳を握りしめて目を強く閉じる。
「……分かった。起きたら俺から伝える。今は…二人にさせてくれ。もうこんなことは二度と起きねえから」
イルーゾォの絞り出すような声に、ギアッチョは微かに笑った。
ギアッチョにとって、カーラは全てだった。
人を愛したことのない自分が唯一愛してると思える相手。可愛いくて美しくて男を虜にするカーラ。
男がカーラにべったりとしているのを見ると殺してやりたくなる。実際、チームメンバー以外でカーラに近付く男たちを、裏で死ぬ寸前まで叩きのめすこともあった。
それくらいギアッチョはカーラを愛していた。
なのにカーラはギアッチョではなく、イルーゾォを選んだ。
それはカーラがイルーゾォを愛している訳ではないことをギアッチョは知っていた。
何故ならカーラは愛を知らない。愛されることが得意でも、人を愛することはなかったのだろう。
なら、イルーゾォに付き合ってやっているだけじゃあねぇか。
そう考えついた時、ギアッチョは酷く安心した。ならカーラはイルーゾォと別れても少し落ち込みはすれど悲しみはしないだろう。
カーラの悲しむ顔だけは見たくなかった。
そこでカーラの飲み物に睡眠薬を入れた。
計画でもなんでもない。それに、カーラは実際最近寝不足だと言っていたし、悪いことではないだろう。
すやすやと眠るカーラの頬を人なでしてからギアッチョは立ち上がった。
「…起きたらカーラに伝えろよ。カーラを解放してやれ」
「…ッ!ああ…分かってる…」
…カーラは誰にも渡さねえ。
俺のものにもならねえなら誰のものにもなるな。ギアッチョは薄暗く微笑んだまま仮眠室の扉を閉めた。