時を掛ける暗殺者 【オール】
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「う、ぐすっ、ひぐっ、…っひ、」
「……」
「う、うぅ…っ、もうしにたいっ」
「待て待て待て。…頼むからもう泣くな!」
「やっ、さわらないでっ!」
「……!」
ざああ、と顔を青くさせるディオにカーラは更に涙を零す。抱かれてぐったりと寝ていたカーラは、起きた瞬間泣き始めたのだ。
「わたしっ、でぃおに、おこられる、すじあいっ、ないっ」
「…貴様は…僕の下僕、だろう」
「〜っもう嫌い!二度と会わないわっ!」
「待てッ!!カーラ!」
スタンドを使って消えたカーラに、ディオは目を大きく開いて固まった。
……もう自分は二度と彼女に会えない?
今まで味わったことのない絶望感に、ディオは固まることしか出来なかった。
「……おいカーラ?お前、大丈夫か?」
「………」
「…カーラ?」
「………初めてじゃ、なくなっちゃったの」
「………は?」
「っ…わたし、もう、処女じゃないわ…これからは、りっぱな、大人の女ね…」
イルーゾォを見上げて下手糞な笑顔を見せるカーラにイルーゾォは絶望に似た感情を覚えた。すぐにそれが怒りに変わったが、ふと、違和感を覚える。…これは好きな男に抱かれた女のする顔か?いや、むしろ…まるで犯されて傷付いた女のような…。…!
…嘘だ。
嘘だ、カーラが、他の野朗にヤられたのか?
「いる、「誰だ?」
「誰に…犯されたんだ!?俺がぶっ殺して来てやるッ!!ふざけやがって…クソッ、クソ!!ちくしょう…!」
「いる、ぅ、ぞぉ…っ」
「…っ!カーラ!教えろ、誰にヤられたんだよ!?」
「それは、言えないわ…っ」
「なんでだよ!!好きでもねーんだろ!?だった、ら…」
「……今は、なぐさめてほしい。だめ?」
ちゅ、と可愛らしいキスを唇にされて、イルーゾォは顔を真っ赤にして固まる。
初めて、カーラからキスをされた。震える手で抱きつかれて、抱き返していいものか悩んだ。
「抱いて…イルーゾォ…。わたし、貴方に抱かれたい」
「…え…」
「…犯されてるとき…思い浮かんだの。貴方の顔」
「っ!」
「思わずイルーゾォの名前を呼んじゃって…」
「…嘘だろ…カーラが、俺を?」
「…ん」
「〜っくそ…いいか?お前は俺が初めてだ。分かったな?」
「うん…」
「は、ぁう♡や、やっ…」
「…っ、カーラ…っ!愛してる、すきだ、好きだ…ッ!!」
「あ、あぅ♡あ、…っ!おく、おく、だめっ」
「ここ、か…?ああ、わかった、たくさんついてやるからな…ッ」
「ぁぁあぁっ♡いやぁっ♡いくぅっ、いっちゃ、ぁんん!」
「う…!だす、だしていいか、カーラ…!」
「っだ、ぁめっ!やぁぁ♡あか、ちゃん、できる、からぁっ♡」
「っああ、そだてよう、な…!一緒に…ッ!お前の子なら、ぜってー、かわいい…ッ」
「やらぁ♡だめっ、だめぇぇ!」
「ぐ…ッ!」
大量に吐き出された精液がこぽりと溢れる。
…また中出しされちゃった…とぼんやり考えるカーラは瞳から光を失っていた。
普段なら好きでもない男を誘うなんて真似は絶対にしないカーラは、自暴自棄になっていたのだ。いつか、好きな男の人と…と思っていたバージンを奪われ、もうどうでもよくなった。
カーラはギャングなんてやっているが、その奥に潜めた心はただの乙女だったのだ。
それが今回、踏みにじられた。
男なんて所詮欲の塊でしかないんだわ。女はただの道具…カーラはイルーゾォに出された欲望を見て自嘲気味に笑った。
「ありがとう…イルーゾォ…もう、いいわ…」
「っ、カーラ…?」
「もういいの…」
「待て、カーラ…どうした?お前、」
「触らないで!!!」
「っ」
「あ…ご、めんなさい。少し…休みたいの。…ごめんなさい…」
タオルをさっと巻いて部屋から出ようとするカーラを、イルーゾォが背後から抱きしめる。
カーラは顔を青くさせた。…まだ、抱かれるのか。
「…好きだ。愛してる。俺と結婚してくれ」
「っ、な、に言って…!」
「結婚しろよ、俺と。一生幸せにする。ギャングなんか辞めてさ、俺と二人でどっか他の国にでも行こうぜ」
「イルーゾォ…?」
「………本気だって言ったら笑うか?俺みたいなクズが」
「…、ううん。嬉しい」
「!なら、」
「…でも、私はギャングを続ける。もう今更…明るい世界で生きられないわ。汚れきってる」
「……俺は…」
「ごめんなさい、イルーゾォ。もう寝るわ。…さっきのことは忘れて、おやすみなさい」
ぱっとイルーゾォから離れて部屋から出て行くカーラに、腕を伸ばしかけてイルーゾォは下ろす。…しつこすぎてもっと避けられたら、俺は今度こそ立ち直れない。
そう思った。そう思って…きつく目を閉じることでしか、今の無気力感を耐えれそうになかった。
「おい。アンタ大丈夫か?」
「……あ?話しかけんなよ。お前は書類仕事だろ」
「いや、そうだが…カーラもおかしいしなんかあったのかよ」
「だからお前には関係ねーよ。カーラは…あれだ。生理だ、うおっ!?」
「イルーゾォくん?なにを言おうとしたのかしら?」
イルーゾォの髪の毛を背後からぐんっと引っ張って怒りを露わにするカーラに、ダンはほっとする。
よかった、カーラはいつも通りに『見せている』。それが出来るなら本当にやばくはないということだ。
だがイルーゾォは切羽詰まった様子でカーラの手を取った。
「……カーラ。俺も汚れてるんだ。だけどお前と一緒に居たいと思う。それはそんなにいけないことなのか?」
「!…ダンが居るわ、イルーゾォ。その話はまたあと、「俺は」
「お前を愛してる。どんなに汚ねえ世界にいても、それだけは確かだ。明るい世界に行かなくてもいい。どんな世界でもお前が居れば俺は生きていける」
「…っ、や…!」
「…俺のもんになってくれ、カーラ」
「っ、やめて…!」
「そこまでにしとけよ。イルーゾォ。アンタは今相当参ってる。ここは職場で仕事中だぜ。手を離せ。離さないならスタンドを使う」
「……、邪魔するなよ。お前には分からねーだろうがッ!俺が今どんなに後悔してるかッ!!」
「後悔だと?後悔なら今まさにしてるぜ、アンタに一歩遅れを取ったことにな。大体、カーラは貴様を迷惑に、」
「思ってない!!!…それだけは…違うわ。ごめんなさい…イルーゾォ。今夜貴方の家に行くわ。それで…今は堪忍して」
「……ああ」
イルーゾォが一瞬、苦しそうに眉を寄せて、部屋から出て行った。ダンはカーラと書類仕事で今日2人きりだが、今日程それを気まずく思ったことはなかっただろう。いつもは内心大喜びなのに。
ふとした時に見れるカーラの微笑んだ顔や、甘いコーヒーを飲んで一息つく瞬間の顔、疲れたように笑う顔、私をからかって悪戯気に笑う顔…。
そのどれもがさっきイルーゾォに壊されたと思うとむかつかずにはいられなかった。
ダンはずかずかと俯くカーラに近づいて、両手でその白くてまろい頬を包み込む。
上をむかせてカーラの唇にキスを落とした。
「…、ダン…?」
「…あの馬鹿を想って落ち込むのは、この私が許さない。なにがあったのかは知らねぇが、アンタとあいつになにかあったのは確かだ。だが…私と居るときはあいつのことを考えるんじゃあないぜ」
「…ふふ、なぁにそれ。やきもち?」
「ああ。…嫉妬だ」
「…っ、ダン…やめて…」
「なぜ?…あいつには触らせたのか?」
「…ちがうの…自暴自棄になってて…正気じゃなかった」
「触らせたのか!?」
こくりと小さく頷くカーラにダンは一瞬にして頭が真っ白になった。
…嘘だろう…カーラが、他の男に。
それもあのイルーゾォに!ダンは何故か情けなくも涙が出そうになって思わずカーラを抱き締めた。
「…っ私は傷付いたカーラを犯すほど非紳士じゃあないからな。今はこれで…っ!勘弁してやる!」
「ダン…?泣いてる…?」
「うるさい!泣いてなど…っ、居ない!!」
「…泣いてるのね。ごめんなさい、であってる、のかしら…」
「……おいカーラ、なにしてる…」
「なでなで…よ?私が泣かせちゃったんだもの…」
「う…ッ、くそ、可愛いぞお前…ッ!おいこらもっと他の場所を撫で撫でしろよ。頭だけじゃあなんにも妄想出来ないだろうがッ!」
「ちょっと!げ、下品なことは言わないでっ」
「なにがだ!?私のモノは撫で撫で出来ないと、ぐはァっ」
「いい加減にしてっ、この変態!」
すっかりいつもの空気に戻ったことに、カーラはどこか安心した。それを狙ってしてくれたダンに感謝しながら、カーラは殴ったダンの頬を撫で撫でしたのであった。
「あの女…可愛すぎるんだよッ!!くそっ、だからあのイルーゾォにもヤられちまったんだ!!なんだあの女は!天使か淫魔なのか!?いや、小悪魔か!?」
「おいおい勘弁してくれないか。アンタと飲むのは初めてなのに初回からハード過ぎる」
「『もうえっちなことは言っちゃやぁよ』なんて言って頬を撫でてくるが…お前のその手つきの方がエロい!なんなら私はまだマシだ!言葉でしかあいつを辱めてないんだからな!あの顔とエロい身体を惜しげもなく俺に近付けるカーラのほうが危険だ!!」
「待てカーラの話だったのか!?」
「ああそうだ!そうでなくて欲しいがなァ!」
バーで騒ぐ男二人に、マスターは迷惑そうな顔をしながらコップを磨いている。それを気にもせずぎゃんぎゃんと喚くダンに、メローネは少しだけ気まずくなった。そして先程のダンの言葉を思い出してカウンターに突っ伏せる。
「はぁぁぁ…嘘だ…俺の女神様…」
「…おい気色悪いぞ」
「アンタのほうがやばかっただろう…それに、カーラは俺の心臓なんだ…彼女のためなら俺は死ねる…なのにカーラは気付いてもくれないんだぜ…」
「…ああ…あいつは少し鈍いところがあるからな」
何故かカーラへの想いを語る会になっていることに二人は気づかないまま、朝を迎えたのであった。
その頃、イルーゾォの家。
「あー…飯、食べたか?」
「う、ううん。その…お腹すかなくて。だから…タルトを焼いてきたの。ほら、イルーゾォはいつもブルーベリーのタルトを好きって言ってくれるから…」
「あ、ああ!俺はカーラの作るもんなら何でも好きだけどな…!」
「そう…」
お互い顔を赤くしてしどろもどろ話す様子に、イルーゾォは中学生かよと頭の片隅で思った。
だが相手がカーラなら仕方がないだろう。
なんせ初めて本気で愛している女だ。
「その…座れよ。なにもしない」
「ううん…すぐ終わるから」
「……それは悪い返事だから?」
「…ええ。…ごめんなさい。貴方の気持ちは受け取れない…イルーゾォ…」
そう言って頭を下げるカーラを、イルーゾォはどこかぼんやりとしながら眺めていた。
視界に薄い膜が張ったように、ぶれている。
数秒経って自分が泣きそうになっていることに気付いて情けなくなった。
…カーラと出会ってからずっとカーラだけを見てきたのに。どうして報われないんだ。
どうしてカーラは俺を選んでくれないんだ。
カーラのためならなんでもするのに。渡すのに。俺の命でさえ、アンタになら渡せるのに。
手に入らないのなら、俺の手で…。
「…イルーゾォ?」
「!!!…カーラ…」
自分がカーラの首に手をかけていたことに、ぞっとした。慌てて距離を取って水の入ったコップをあおる。少しだけ落ち着いてソファに身を沈めた。
「どうすればお前を俺のものに出来るんだよ…?」
「ごめ、なさい…ッ!ふ、ぅう…っ、なく、だなんて、ひきょ、よね…っ!でも、わたし、わからないの…っ、いま、まで男の人を、好きになったこと、なくて…っ、」
「…え…」
「こわいの…っ、あなたをかんがえると、おかしくなる…っ!ふあんで、どきどきして、なきたくなるの…っ!こんなの、恋じゃ、ないわ…っ」
「……カーラ。それは恋っていうんだぜ。なんだよ…お前…っ、ほんと…」
イルーゾォは立ち上がってカーラを抱きしめた。きつくきつく抱きしめて目を閉じる。ぼろぼろと溢れる塩水がうっとおしかった。
「愛してる…」
「っ、ふ、ぇえ…っ!わか、んないっ、わかんないわ、イルーゾォ…!」
「俺が教えてやる…お前は黙って俺に愛されてろよ…馬鹿カーラ…」
カーラが愛を分からないのに、いつかの愛を夢見る理由は、悲劇とも言える過去に原因があった。
イタリアの貧しい場所で生まれたカーラは、幼い頃から常に独りだったのだ。母は男に入れ込み、父は暴力を振るい薬に手を出す。
地獄とも言える環境で育ったカーラは愛を知らなかった。
だが、カーラは愛を知らないかわりに、とてつもなく美しい容姿を持っていたのだ。
さらさらと流れる美しい絹のような髪に、大きく輝いた宝石のような瞳。唇はまるで水分を保ったように潤っていた。
だが、カーラにとってそれは最悪ともいえる美点だった。何故なら母がそれに目をつけたからである。来る日も来る日も男たちに裸を見せ、はしたないショーに出されるようになった。
カーラは毎日泣きながら母を殺す想像だけで生きながらえていた。その時には父は薬物による中毒でこの世から居なくなっていたので、本当にカーラは孤独ともいえる存在であった。
そんなある日、カーラが仕事終わりに夜中に家に帰ると、母が見知らぬ男に犯されていた。
カーラは思わず悲鳴をあげかけたが、慌てて息を殺して物陰に潜んだ。
『なあ、いつになったら、あの娘をっ、くれるんだっ!?あんな上等な娘は、何億以上のッ、価値がある!』
『あ、ああっ、もう少しっ、もう少しよ…!あのガキは、まだ、ショーで、出したいの!金が湧くように、入ってくるんだもの…!』
高揚とした声でカーラを語る母親に、カーラは嫌に冷静に、殺さなくては、と心から思った。
まるでそれが常識のように、そう思ったのだ。
「私が殺さないと…」
ナイフを手に取って立ち上がる。
カーラは母に覆いかぶさっている男の首をナイフで掻き切った。倒れた男に何度も何度もナイフを突き立てる。男が悲鳴をあげながら動かなくなって、カーラはゆっくりと母親を見た。
化け物を見るかのような顔でこちらを見る母親に、面白くなって笑いが溢れた。
今更、そんな顔。もうおそい。
「…後処理は…まあいいか…今はやらないと…」
「ひ、ひぃぃぃい…ッ、あ、あんたなに、なに、して…!」
「バラバラにすれば…いいんだっけ…たしか、本だとバラバラにしてから海に流してた。運べるかな…車を盗むのは危険だから…ああそうだ。トイレに流そう。それで、他の国に行こう。最悪、顔を変えれば生きてける…あはは…!最高!最高だよっ、お母さん!」
そう言いながらまず母の足を潰した。
ナイフで一本ずつ指を切っていく。
母が情けない顔で悲鳴を上げて助けを乞うのが面白くて堪らなかった。鼻歌を歌いながら今度は手を切る。ふと、歌っている歌詞が愛だのなんだのを語っている歌だということに気付いて、カーラは母親に質問した。
「ねえ愛ってなに?」
「ぁ、あ"…じぬ"…だずげでぇ"ッ!!」
「ねーえ!愛ってなに!?」
「ぁ"あぁあぁああ"!!」
答えない母に苛立って思わず腹をナイフで突き刺した。カーラは慌ててナイフを抜く。
殺しちゃ、だめ。まだ殺しちゃ!
ごめんね、と笑うカーラに母はこの悪魔、と叫んだ。
「悪魔を産んだのはあなたじゃないの?」
「ぅ、う"みだぐでうんだんじゃなぃ!」
「ふーん。もういっかなぁ。質問にも答えてくれないし。母親はさ、子供の質問に答えなきゃ駄目でしょ?答えない母親は居る?」
「ああああああ!!!あいしてる!あなたを、あいしてるッ!」
「うるさいなぁ…いらないよそんな言葉。あ、ならさ。愛してるって言うならこのナイフで死んで見せて。いつも言うじゃない。お母さん、『私は貴女を信じてるのよ。出来るわよね?』って!」
満面の笑みを浮かべてナイフを差し出すカーラに、母親が汚らしいぐちゃぐちゃの顔でナイフを受け取る。十あった指は残り僅か三本しかなかった。
「はやく愛をちょうだい、お母さん」
「ひ、ああああああ!!」
ナイフを胸に突き立てて死ぬ母親を上から眺める。何故か目から涙が溢れてきて、カーラは首を傾げた。
「めんどくさいわねぇ。片付け二人分…」
その日だけ、質素なパンではなく大好きなパスタを食べた。新しい、生まれ変わった自分へのご褒美だ。
それから、カーラは殺し屋として働いてパッショーネに入った。スタンドを得たのもその時だ。
「…あいしてる…って」
「!」
「ほしかったのは…お母さんからの愛…だったのね…」
「…カーラ」
「ああ…イルーゾォ。私をどうか許さないで…人殺しで、悪魔の私を…」
「俺はっ、俺はお前が悪魔でもなんでもいい!俺と出会う前のお前なんか知るか…俺が愛してんのは、今のお前だ。今のお前は悪魔なんかじゃねえ、ただの泣き虫の馬鹿女だろ!?」
ぎゅう、と抱きしめられてカーラはイルーゾォを抱きしめ返した。
愛してると言われて嬉しかった。イルーゾォの愛してるが欲しくなったのだ。そして、カーラも愛してるをあげたくなった。
「愛してる、イルーゾォ…」
「……」
「う、うぅ…っ、もうしにたいっ」
「待て待て待て。…頼むからもう泣くな!」
「やっ、さわらないでっ!」
「……!」
ざああ、と顔を青くさせるディオにカーラは更に涙を零す。抱かれてぐったりと寝ていたカーラは、起きた瞬間泣き始めたのだ。
「わたしっ、でぃおに、おこられる、すじあいっ、ないっ」
「…貴様は…僕の下僕、だろう」
「〜っもう嫌い!二度と会わないわっ!」
「待てッ!!カーラ!」
スタンドを使って消えたカーラに、ディオは目を大きく開いて固まった。
……もう自分は二度と彼女に会えない?
今まで味わったことのない絶望感に、ディオは固まることしか出来なかった。
「……おいカーラ?お前、大丈夫か?」
「………」
「…カーラ?」
「………初めてじゃ、なくなっちゃったの」
「………は?」
「っ…わたし、もう、処女じゃないわ…これからは、りっぱな、大人の女ね…」
イルーゾォを見上げて下手糞な笑顔を見せるカーラにイルーゾォは絶望に似た感情を覚えた。すぐにそれが怒りに変わったが、ふと、違和感を覚える。…これは好きな男に抱かれた女のする顔か?いや、むしろ…まるで犯されて傷付いた女のような…。…!
…嘘だ。
嘘だ、カーラが、他の野朗にヤられたのか?
「いる、「誰だ?」
「誰に…犯されたんだ!?俺がぶっ殺して来てやるッ!!ふざけやがって…クソッ、クソ!!ちくしょう…!」
「いる、ぅ、ぞぉ…っ」
「…っ!カーラ!教えろ、誰にヤられたんだよ!?」
「それは、言えないわ…っ」
「なんでだよ!!好きでもねーんだろ!?だった、ら…」
「……今は、なぐさめてほしい。だめ?」
ちゅ、と可愛らしいキスを唇にされて、イルーゾォは顔を真っ赤にして固まる。
初めて、カーラからキスをされた。震える手で抱きつかれて、抱き返していいものか悩んだ。
「抱いて…イルーゾォ…。わたし、貴方に抱かれたい」
「…え…」
「…犯されてるとき…思い浮かんだの。貴方の顔」
「っ!」
「思わずイルーゾォの名前を呼んじゃって…」
「…嘘だろ…カーラが、俺を?」
「…ん」
「〜っくそ…いいか?お前は俺が初めてだ。分かったな?」
「うん…」
「は、ぁう♡や、やっ…」
「…っ、カーラ…っ!愛してる、すきだ、好きだ…ッ!!」
「あ、あぅ♡あ、…っ!おく、おく、だめっ」
「ここ、か…?ああ、わかった、たくさんついてやるからな…ッ」
「ぁぁあぁっ♡いやぁっ♡いくぅっ、いっちゃ、ぁんん!」
「う…!だす、だしていいか、カーラ…!」
「っだ、ぁめっ!やぁぁ♡あか、ちゃん、できる、からぁっ♡」
「っああ、そだてよう、な…!一緒に…ッ!お前の子なら、ぜってー、かわいい…ッ」
「やらぁ♡だめっ、だめぇぇ!」
「ぐ…ッ!」
大量に吐き出された精液がこぽりと溢れる。
…また中出しされちゃった…とぼんやり考えるカーラは瞳から光を失っていた。
普段なら好きでもない男を誘うなんて真似は絶対にしないカーラは、自暴自棄になっていたのだ。いつか、好きな男の人と…と思っていたバージンを奪われ、もうどうでもよくなった。
カーラはギャングなんてやっているが、その奥に潜めた心はただの乙女だったのだ。
それが今回、踏みにじられた。
男なんて所詮欲の塊でしかないんだわ。女はただの道具…カーラはイルーゾォに出された欲望を見て自嘲気味に笑った。
「ありがとう…イルーゾォ…もう、いいわ…」
「っ、カーラ…?」
「もういいの…」
「待て、カーラ…どうした?お前、」
「触らないで!!!」
「っ」
「あ…ご、めんなさい。少し…休みたいの。…ごめんなさい…」
タオルをさっと巻いて部屋から出ようとするカーラを、イルーゾォが背後から抱きしめる。
カーラは顔を青くさせた。…まだ、抱かれるのか。
「…好きだ。愛してる。俺と結婚してくれ」
「っ、な、に言って…!」
「結婚しろよ、俺と。一生幸せにする。ギャングなんか辞めてさ、俺と二人でどっか他の国にでも行こうぜ」
「イルーゾォ…?」
「………本気だって言ったら笑うか?俺みたいなクズが」
「…、ううん。嬉しい」
「!なら、」
「…でも、私はギャングを続ける。もう今更…明るい世界で生きられないわ。汚れきってる」
「……俺は…」
「ごめんなさい、イルーゾォ。もう寝るわ。…さっきのことは忘れて、おやすみなさい」
ぱっとイルーゾォから離れて部屋から出て行くカーラに、腕を伸ばしかけてイルーゾォは下ろす。…しつこすぎてもっと避けられたら、俺は今度こそ立ち直れない。
そう思った。そう思って…きつく目を閉じることでしか、今の無気力感を耐えれそうになかった。
「おい。アンタ大丈夫か?」
「……あ?話しかけんなよ。お前は書類仕事だろ」
「いや、そうだが…カーラもおかしいしなんかあったのかよ」
「だからお前には関係ねーよ。カーラは…あれだ。生理だ、うおっ!?」
「イルーゾォくん?なにを言おうとしたのかしら?」
イルーゾォの髪の毛を背後からぐんっと引っ張って怒りを露わにするカーラに、ダンはほっとする。
よかった、カーラはいつも通りに『見せている』。それが出来るなら本当にやばくはないということだ。
だがイルーゾォは切羽詰まった様子でカーラの手を取った。
「……カーラ。俺も汚れてるんだ。だけどお前と一緒に居たいと思う。それはそんなにいけないことなのか?」
「!…ダンが居るわ、イルーゾォ。その話はまたあと、「俺は」
「お前を愛してる。どんなに汚ねえ世界にいても、それだけは確かだ。明るい世界に行かなくてもいい。どんな世界でもお前が居れば俺は生きていける」
「…っ、や…!」
「…俺のもんになってくれ、カーラ」
「っ、やめて…!」
「そこまでにしとけよ。イルーゾォ。アンタは今相当参ってる。ここは職場で仕事中だぜ。手を離せ。離さないならスタンドを使う」
「……、邪魔するなよ。お前には分からねーだろうがッ!俺が今どんなに後悔してるかッ!!」
「後悔だと?後悔なら今まさにしてるぜ、アンタに一歩遅れを取ったことにな。大体、カーラは貴様を迷惑に、」
「思ってない!!!…それだけは…違うわ。ごめんなさい…イルーゾォ。今夜貴方の家に行くわ。それで…今は堪忍して」
「……ああ」
イルーゾォが一瞬、苦しそうに眉を寄せて、部屋から出て行った。ダンはカーラと書類仕事で今日2人きりだが、今日程それを気まずく思ったことはなかっただろう。いつもは内心大喜びなのに。
ふとした時に見れるカーラの微笑んだ顔や、甘いコーヒーを飲んで一息つく瞬間の顔、疲れたように笑う顔、私をからかって悪戯気に笑う顔…。
そのどれもがさっきイルーゾォに壊されたと思うとむかつかずにはいられなかった。
ダンはずかずかと俯くカーラに近づいて、両手でその白くてまろい頬を包み込む。
上をむかせてカーラの唇にキスを落とした。
「…、ダン…?」
「…あの馬鹿を想って落ち込むのは、この私が許さない。なにがあったのかは知らねぇが、アンタとあいつになにかあったのは確かだ。だが…私と居るときはあいつのことを考えるんじゃあないぜ」
「…ふふ、なぁにそれ。やきもち?」
「ああ。…嫉妬だ」
「…っ、ダン…やめて…」
「なぜ?…あいつには触らせたのか?」
「…ちがうの…自暴自棄になってて…正気じゃなかった」
「触らせたのか!?」
こくりと小さく頷くカーラにダンは一瞬にして頭が真っ白になった。
…嘘だろう…カーラが、他の男に。
それもあのイルーゾォに!ダンは何故か情けなくも涙が出そうになって思わずカーラを抱き締めた。
「…っ私は傷付いたカーラを犯すほど非紳士じゃあないからな。今はこれで…っ!勘弁してやる!」
「ダン…?泣いてる…?」
「うるさい!泣いてなど…っ、居ない!!」
「…泣いてるのね。ごめんなさい、であってる、のかしら…」
「……おいカーラ、なにしてる…」
「なでなで…よ?私が泣かせちゃったんだもの…」
「う…ッ、くそ、可愛いぞお前…ッ!おいこらもっと他の場所を撫で撫でしろよ。頭だけじゃあなんにも妄想出来ないだろうがッ!」
「ちょっと!げ、下品なことは言わないでっ」
「なにがだ!?私のモノは撫で撫で出来ないと、ぐはァっ」
「いい加減にしてっ、この変態!」
すっかりいつもの空気に戻ったことに、カーラはどこか安心した。それを狙ってしてくれたダンに感謝しながら、カーラは殴ったダンの頬を撫で撫でしたのであった。
「あの女…可愛すぎるんだよッ!!くそっ、だからあのイルーゾォにもヤられちまったんだ!!なんだあの女は!天使か淫魔なのか!?いや、小悪魔か!?」
「おいおい勘弁してくれないか。アンタと飲むのは初めてなのに初回からハード過ぎる」
「『もうえっちなことは言っちゃやぁよ』なんて言って頬を撫でてくるが…お前のその手つきの方がエロい!なんなら私はまだマシだ!言葉でしかあいつを辱めてないんだからな!あの顔とエロい身体を惜しげもなく俺に近付けるカーラのほうが危険だ!!」
「待てカーラの話だったのか!?」
「ああそうだ!そうでなくて欲しいがなァ!」
バーで騒ぐ男二人に、マスターは迷惑そうな顔をしながらコップを磨いている。それを気にもせずぎゃんぎゃんと喚くダンに、メローネは少しだけ気まずくなった。そして先程のダンの言葉を思い出してカウンターに突っ伏せる。
「はぁぁぁ…嘘だ…俺の女神様…」
「…おい気色悪いぞ」
「アンタのほうがやばかっただろう…それに、カーラは俺の心臓なんだ…彼女のためなら俺は死ねる…なのにカーラは気付いてもくれないんだぜ…」
「…ああ…あいつは少し鈍いところがあるからな」
何故かカーラへの想いを語る会になっていることに二人は気づかないまま、朝を迎えたのであった。
その頃、イルーゾォの家。
「あー…飯、食べたか?」
「う、ううん。その…お腹すかなくて。だから…タルトを焼いてきたの。ほら、イルーゾォはいつもブルーベリーのタルトを好きって言ってくれるから…」
「あ、ああ!俺はカーラの作るもんなら何でも好きだけどな…!」
「そう…」
お互い顔を赤くしてしどろもどろ話す様子に、イルーゾォは中学生かよと頭の片隅で思った。
だが相手がカーラなら仕方がないだろう。
なんせ初めて本気で愛している女だ。
「その…座れよ。なにもしない」
「ううん…すぐ終わるから」
「……それは悪い返事だから?」
「…ええ。…ごめんなさい。貴方の気持ちは受け取れない…イルーゾォ…」
そう言って頭を下げるカーラを、イルーゾォはどこかぼんやりとしながら眺めていた。
視界に薄い膜が張ったように、ぶれている。
数秒経って自分が泣きそうになっていることに気付いて情けなくなった。
…カーラと出会ってからずっとカーラだけを見てきたのに。どうして報われないんだ。
どうしてカーラは俺を選んでくれないんだ。
カーラのためならなんでもするのに。渡すのに。俺の命でさえ、アンタになら渡せるのに。
手に入らないのなら、俺の手で…。
「…イルーゾォ?」
「!!!…カーラ…」
自分がカーラの首に手をかけていたことに、ぞっとした。慌てて距離を取って水の入ったコップをあおる。少しだけ落ち着いてソファに身を沈めた。
「どうすればお前を俺のものに出来るんだよ…?」
「ごめ、なさい…ッ!ふ、ぅう…っ、なく、だなんて、ひきょ、よね…っ!でも、わたし、わからないの…っ、いま、まで男の人を、好きになったこと、なくて…っ、」
「…え…」
「こわいの…っ、あなたをかんがえると、おかしくなる…っ!ふあんで、どきどきして、なきたくなるの…っ!こんなの、恋じゃ、ないわ…っ」
「……カーラ。それは恋っていうんだぜ。なんだよ…お前…っ、ほんと…」
イルーゾォは立ち上がってカーラを抱きしめた。きつくきつく抱きしめて目を閉じる。ぼろぼろと溢れる塩水がうっとおしかった。
「愛してる…」
「っ、ふ、ぇえ…っ!わか、んないっ、わかんないわ、イルーゾォ…!」
「俺が教えてやる…お前は黙って俺に愛されてろよ…馬鹿カーラ…」
カーラが愛を分からないのに、いつかの愛を夢見る理由は、悲劇とも言える過去に原因があった。
イタリアの貧しい場所で生まれたカーラは、幼い頃から常に独りだったのだ。母は男に入れ込み、父は暴力を振るい薬に手を出す。
地獄とも言える環境で育ったカーラは愛を知らなかった。
だが、カーラは愛を知らないかわりに、とてつもなく美しい容姿を持っていたのだ。
さらさらと流れる美しい絹のような髪に、大きく輝いた宝石のような瞳。唇はまるで水分を保ったように潤っていた。
だが、カーラにとってそれは最悪ともいえる美点だった。何故なら母がそれに目をつけたからである。来る日も来る日も男たちに裸を見せ、はしたないショーに出されるようになった。
カーラは毎日泣きながら母を殺す想像だけで生きながらえていた。その時には父は薬物による中毒でこの世から居なくなっていたので、本当にカーラは孤独ともいえる存在であった。
そんなある日、カーラが仕事終わりに夜中に家に帰ると、母が見知らぬ男に犯されていた。
カーラは思わず悲鳴をあげかけたが、慌てて息を殺して物陰に潜んだ。
『なあ、いつになったら、あの娘をっ、くれるんだっ!?あんな上等な娘は、何億以上のッ、価値がある!』
『あ、ああっ、もう少しっ、もう少しよ…!あのガキは、まだ、ショーで、出したいの!金が湧くように、入ってくるんだもの…!』
高揚とした声でカーラを語る母親に、カーラは嫌に冷静に、殺さなくては、と心から思った。
まるでそれが常識のように、そう思ったのだ。
「私が殺さないと…」
ナイフを手に取って立ち上がる。
カーラは母に覆いかぶさっている男の首をナイフで掻き切った。倒れた男に何度も何度もナイフを突き立てる。男が悲鳴をあげながら動かなくなって、カーラはゆっくりと母親を見た。
化け物を見るかのような顔でこちらを見る母親に、面白くなって笑いが溢れた。
今更、そんな顔。もうおそい。
「…後処理は…まあいいか…今はやらないと…」
「ひ、ひぃぃぃい…ッ、あ、あんたなに、なに、して…!」
「バラバラにすれば…いいんだっけ…たしか、本だとバラバラにしてから海に流してた。運べるかな…車を盗むのは危険だから…ああそうだ。トイレに流そう。それで、他の国に行こう。最悪、顔を変えれば生きてける…あはは…!最高!最高だよっ、お母さん!」
そう言いながらまず母の足を潰した。
ナイフで一本ずつ指を切っていく。
母が情けない顔で悲鳴を上げて助けを乞うのが面白くて堪らなかった。鼻歌を歌いながら今度は手を切る。ふと、歌っている歌詞が愛だのなんだのを語っている歌だということに気付いて、カーラは母親に質問した。
「ねえ愛ってなに?」
「ぁ、あ"…じぬ"…だずげでぇ"ッ!!」
「ねーえ!愛ってなに!?」
「ぁ"あぁあぁああ"!!」
答えない母に苛立って思わず腹をナイフで突き刺した。カーラは慌ててナイフを抜く。
殺しちゃ、だめ。まだ殺しちゃ!
ごめんね、と笑うカーラに母はこの悪魔、と叫んだ。
「悪魔を産んだのはあなたじゃないの?」
「ぅ、う"みだぐでうんだんじゃなぃ!」
「ふーん。もういっかなぁ。質問にも答えてくれないし。母親はさ、子供の質問に答えなきゃ駄目でしょ?答えない母親は居る?」
「ああああああ!!!あいしてる!あなたを、あいしてるッ!」
「うるさいなぁ…いらないよそんな言葉。あ、ならさ。愛してるって言うならこのナイフで死んで見せて。いつも言うじゃない。お母さん、『私は貴女を信じてるのよ。出来るわよね?』って!」
満面の笑みを浮かべてナイフを差し出すカーラに、母親が汚らしいぐちゃぐちゃの顔でナイフを受け取る。十あった指は残り僅か三本しかなかった。
「はやく愛をちょうだい、お母さん」
「ひ、ああああああ!!」
ナイフを胸に突き立てて死ぬ母親を上から眺める。何故か目から涙が溢れてきて、カーラは首を傾げた。
「めんどくさいわねぇ。片付け二人分…」
その日だけ、質素なパンではなく大好きなパスタを食べた。新しい、生まれ変わった自分へのご褒美だ。
それから、カーラは殺し屋として働いてパッショーネに入った。スタンドを得たのもその時だ。
「…あいしてる…って」
「!」
「ほしかったのは…お母さんからの愛…だったのね…」
「…カーラ」
「ああ…イルーゾォ。私をどうか許さないで…人殺しで、悪魔の私を…」
「俺はっ、俺はお前が悪魔でもなんでもいい!俺と出会う前のお前なんか知るか…俺が愛してんのは、今のお前だ。今のお前は悪魔なんかじゃねえ、ただの泣き虫の馬鹿女だろ!?」
ぎゅう、と抱きしめられてカーラはイルーゾォを抱きしめ返した。
愛してると言われて嬉しかった。イルーゾォの愛してるが欲しくなったのだ。そして、カーラも愛してるをあげたくなった。
「愛してる、イルーゾォ…」