時を掛ける暗殺者 【オール】
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「リロード!ミスタ、そっちはあと何人!?」
「十人程度だな。おいカーラ、お前弾は足りてるか!?」
「大丈夫よ!銃がないなら、」
ミスタの目の前にいた敵を鮮やかにナイフで殺すカーラに、ミスタは一瞬見惚れてしまった。
慌てて銃で敵を殺してカーラを抱き寄せる。
「おっ前はよォ〜…!あぶねーだろうが!俺の後ろに居ろ!」
「ふふ、貴方より暗殺は得意よ。ミスタ♡」
「ッ、可愛いく言っても駄目だっつーの!お前に怪我でもさせたら俺は死ぬことになるんだぞ!?」
「なら私が守るわ。貴方のこと」
ミスタの目を覗き込んで笑うカーラに、今度こそ目が離せなくなった。
…男守るっつー女はお前くらいだぜ、カーラ。
呆れたフリをして銃を動かすミスタに、カーラは分かっているような笑みでナイフを構えた。
「意外と照れ屋なのね」
「誰が照れ屋だよ。お前こそ、意外と純情じゃあねーの?」
「……っへ?」
「ギアッチョから聞いたぜェ?お前、処女なんだって?」
「っ、あ、ぇ、」
バランスを崩してナイフを落とすカーラの前にいる敵をミスタが撃つ。
カーラの耳元で囁いた。
「こいつで最後だ。…詳しく聞かせろよ。カーラちゃん?」
「ひっ」
「ほんとにほんとよ!どうしてみんなわたしをびっちだとかいうのかしらぁ、ぎあっちょも、ひどいわっ、みすたにいうなんて、」
「あいつもかなり酔っ払ってたからな。つーかそろそろ水飲めよ、お姫様」
「しょじょがわるいの!?みすたぁ!」
「い、いや…お前みてーな女が外で言わないほうがいいぜ。すぐに喰われちまうよ」
俺みたいな男に、とミスタが笑ってカーラの唇を奪った。…冷たい水をカーラに流し込んでやると、気持ちよさそうに目を細める。…エッロ。こいつ本当に処女なのか?
「…きすは、すき。きもちい、から…」
「……ならセックスもしてみるか?気持ちよくさせる自信ならあるぜ、俺」
「…んやよ。みすたを、すきに、なっちゃうもん…」
「グゥッ」
喉から獣の様な呻き声が漏れてしまった。
…天然でエロくて可愛いくて綺麗で小悪魔ってこいつもう閉じ込めたほうがいいんじゃねーのかな、などと脳内で考えながらミスタは深く息をつく。
……危ねぇ危ねぇ危うくこの手練れのミスタ様が処女の小娘に落とされるところだったぜ。
「…?みすた?どうしたの?きらいになった?」
しゅん、と眉を落として俺の手を両手で引くカーラに何かが落ちていく音がした。
あ、俺無理だわ。この女のこと、すげー好きだ。可愛すぎる。
「…それで抱かずに家まで送り届けたっつーわけか。ミスタ」
「おう。言っとくが俺は不能じゃあねーぞッ!?ただ…!あいつの意識があるときに抱きてえだけだっ!」
「すげえ落とされてんじゃねえかお前」
「お前もあってみれば分かる…あいつをすきにならない男は男じゃねえ…っ!」
「……へえ。随分イイ女だな。俺も会ってみたくなっちまった」
「いやアバッキオ。やっぱお前はだめだッ」
「任務?財団から?」
「ああ…私もお前に頼むのは気が引けたがな。仕方ない。この男を連れて来てほしい」
「…これは…スティーリー・ダン?DIOの手下だった…。確か貴方がぼこぼこに伸した筈じゃあ」
「ああ。再起不能にさせた。その後は知らねえが…財団の上で働いている女性がこの男と会いたいと喚いていてな」
「まさか奥さん…とか?」
「…結婚はしてねえだろうがな。なんでも言いたいことが山程あるらしい。資料整理の時にダンの資料を見つけて騒ぎ出した」
「ええと…重要度の高い任務ではないってことでいいのね?」
「ああ、私情に近いな。私にぼこぼこにされた後のダンを拾って仗助に治させる。それで彼女に会わせれば私達はもうやることはなくなるだろう」
でも、とカーラは眉を寄せた。
あまり別の時代の人間と今の時代の人間を会わせることは良くないことなのだ。
それに、会わせたあとはダンとその女性が幸せに、なんて上手くいくのだろうか。
ダンはかなりのゲスだったと承太郎も忌々しげに言っていたし。
「ちょっと待って。今、ダンは生きているの?」
「さあな。あの男を調べる労力が勿体ない」
「それなら探す?」
「いや、なんでも昔のダンに会いたいらしい。よく分からねえが」
よく分からなすぎる。
それにしてもその女性は承太郎たちと同じくらいの歳なんじゃあないだろうか。
一体なにを昔の彼に伝えたいのだろう。
まあ、たまには殺伐としたこと以外でスタンドを使うのも悪くないか。まして、それで幸せになる人がいるなら尚更。
「若い承太郎達とは会わないほうがいいかな。面倒くさくなっちゃうし」
路地裏で倒れている男を見下ろしながらカーラは呟く。…この男、顔はなかなか良かっただけ少し可哀想になってしまう。まあ仗助に治してもらえればまた女の子を口説くことも可能になるだろう。
「…大丈夫?生きてる、わよね」
「……ごほッ…、く、そ…!あの、野朗…ッ」
「貴方大丈夫?私はざい、…ギャングよ。イタリアのギャングなんだけど、今は事情があって貴方に来て欲しいの。立てる?」
「……なんだあんた…天使か、なにか、か?」
「えっ、えーと…そうかもね。とりあえず立って…」
肩を貸して近くのホテルに入る。
とりあえず応急処置をしてやるためだ。だが、ダンはなにを思ったのかカーラの肩を掴んで動きを止めた。
「待て…い、まの、わた、しじゃあ、あんたを、だけねえ、」
「……はあ。承太郎に聞いていたからよかったわ。筋金入りのおばかさん」
「ぐッ、きさま…」
ベッドに背中を押してやると呆気なく気絶した。相当痛かったらしい。血を拭って止血してやる。そしてスタンドを発動させた。
「バイカートリップ…仗助達がいる時代へ」
「起きた?おはよう」
「……誰だ?」
「私は貴方を助けた天使、カーラよ」
「天使?まあそれくらい美しいが…。傷を治したのはアンタか」
「いいや。クレイジーダイヤモンドだ。久しぶりだな」
承太郎が帽子のつばをもちあげながらそう言った。その瞬間、ダンが情けなくひぃ、と呻き声を漏らす。そうだ、このダンは僅か数時間前に承太郎にぼこぼにされたばかりだった。
「ここは貴方がいた時代より少し先の未来なのよ。貴方に頼みがあって傷を治して連れてきた」
「はあ!?未来!?たっ、頼みだと!?わたしはDIO様についているんだぞ!か、勝手なことは」
「DIOはもう死んだわ。承太郎達に倒された。正確には、とどめをさしたのは承太郎だけど。で、貴方がつく人は居なくなった。これで頼みは聞けるわよね。貴方に会いたいって人がいるの」
「な…」
ありえない、そう目を見開くダンにカーラが少し面倒くさそうな顔をする。
承太郎はやべぇな、と思った。カーラがこの顔をする時はかなり『生かすのが面倒くさい』と感じている時だ。
可愛いくて美しいカーラは天使なんかじゃあない。パッショーネに身を置いたギャングなのだ。
「ふざけるんじゃあない!わたしが貴様らに手を貸すだと!?誰がそんなことをするんだ、馬鹿め」
「…承太郎。またボコボコにしてくれる?今度は原型を留めないくらいに」
「な、な…ッ!?」
「いい?一度しか言わない。アンタには選択肢なんかはない。…私はギャングなのよ。アンタより人を殺すのに慣れてるわ。分かったらさっさと肯け、ゲス野朗」
やれやれ、と承太郎は首を振った。カーラの悪い『癖』だ。説明が面倒な時、彼女はこうしてギャングの面を出して乗り切ろうとする。
相手がクズな場合、それがひどい。
説明せず相手に欲求をつきつけて頷かせようとするのだ。流石ギャング。
「わ、わかった、わかった!やる、やればいいんだろう!」
「そうそう。それでいいのよ。もちろん報酬は無しでいいわよね?傷を治したんだもの」
「治したのは仗助だがな…」
「仗助には後でたっぷりお礼をしてあげるわ♡(ケーキでも作ろうかしら?)」
「…、わたしもそのお礼とやらでいいぜ?お嬢さ、「無いと言ったのが聞こえなかった?」
ごくりとカーラを見て喉を鳴らすダンにカーラが絶対零度の視線を浴びせる。
普段彼女は敵以外に冷たく当たることはないのだが、ダンは別のようだ。何故だ?と承太郎が疑問に思っていると、カーラと目が合う。
「覚悟の無いクズは嫌いなのよ」
「…フッ、そういえばお前は熱い奴だったな。見た目によらず」
「んもう、余計な一言が入ってるわ!」
「ダンッ!!!」
部屋に入ってきた女性に三人の視線が集まる。
承太郎より少し上くらいの歳の女がダンを見つめていた。カーラはすっ、とダンから離れて様子を見守る。ダンがなにか妙な真似をしないように。
「ダン…っ、ああ、ダン!ずっと会いたかった…っ!バーに来なくなってから私、ずっと寂しくて…っ!貴方をずっとずっと待ってたのよ…!」
「……?なんだ?この女は。おい、カーラ」
「…貴方の恋人じゃあ」
「はあ!?わたしはこんな趣味の悪い女は選ばない!大体ババアじゃあないかッ!」
「「……」」
このゲスめ、と承太郎とカーラが胸の中で呟く。そして、目をそらした。何故なら女の怒り狂った顔が見えたからだ。修羅場を見たい人間ではない。
「…なんですってェェ!?アンタが私を抱いてやるって口説いて来たんじゃあないのよ!!それから何年も他の男とやらなかったのに!」
「…おい、カーラ。大丈夫か?」
「えっ、ええ…。他人のそーいうのは、少し、慣れてない、だけよ…」
頬を赤らめて目をそらすカーラに承太郎が思わず見惚れる。…可愛い。こんなに美人で美しい体の癖に、こんなにもウブな反応を見せている。承太郎は堪らなくなったが、ダンもそうだった。カーラの表情に見惚れている。
それに女が気付いて怒鳴った。
「なに他の女に見惚れてるのよええ!?私よりあの人がいいの!?」
「は、百人中百人がそう言うだろう。…ん〜?同じ女には見えないな、あんたと彼女じゃあ」
「な、な…っ」
「おい。そこまでにしときな。テメェ、ゲスだとは思っていたがここまでとはな…」
「同意するわ承太郎。貴方はゲス以下のゲロ野朗よ。…彼女に謝って」
「何故カーラが怒る?わたしはお前を褒めてるんだぜ、カーラ」
「ちっとも嬉しくないわ。早く謝りなさい」
「いいな、強気な女は屈服させがいがあ、ぐはっ!?」
カーラが平手打ちをする。
先程まで怒鳴っていた女がぽかんとカーラを見た。カーラはそれに優しく微笑んで女の頬に触れる。もちろん殴っていない方の手で。
「貴女は美しいです。どうかこんなゲス、忘れて下さい。きっと素敵な人のほうが貴女には合う」
「え、あ、あの…」
「ふふ、大丈夫。この男は私が責任を持って処罰致しますから」
美しすぎる笑みでそう言うカーラに女は頬を赤く染めて頷いた。ぼうっとしているところを見るに完全に落ちている。承太郎は眉を顰めたが、ダンを見てぎょっとした。…おいおい、お前もか。
ダンはカーラを見て瞳に熱を宿していた。
舌舐めずりをしてカーラを眺めている。どうやらゲスでさえ彼女は虜にしてしまうらしい。
女が去るとすぐ様ダンはカーラの腰を抱き寄せた。
「えらく熱烈なビンタをくれるじゃないか、ええ?」
「…怒ってるの?貴方にそんな資格ない」
「別にあの女ならどうでもいいさ。それよりわたしはお前が欲しい」
「………呆れるわ。離して。承太郎、スタープラチナしまって。貴方も酷い顔してる」
物凄い殺気を出している承太郎の頬を背伸びして撫でてダンの腕を払う。カーラはため息を吐いて承太郎の目を見た。
「任務完了。ダンはもういい?」
「ああ。相変わらずゲスなだけだったな」
「なんだと?承太郎お前こそ随分お上品になったじゃないか。似合ってるぜ」
下世話な笑みを浮かべて馬鹿にするダンに承太郎はガキは寝な、とだけ言う。ダンは顔を怒りに染めた。それをカーラがやめなさい、と止める。
「元の時代に帰るわよ。ダン」
「なっ、ちょっと待て!DIOは死ぬんだろう!?それなら、戻る必要はない、なんなら戻ったら殺されるだろう!」
「それがどうしたっていうの」
「お、お前…」
驚いた顔をするダンにカーラは首を傾げる。
本気で分からないのだ。カーラは意地悪をあえて言ったのではなく、本当にそう思っているのだ。これがギャング。恐ろしいな、と承太郎は少しだけ思った。本当に少しだけ。
「殺されるのは貴方が弱いからだわ。嫌なら覚悟して戦えばいい。それをする覚悟もないでDIOの下についたのなら浅はかだわ。私なら絶対に戦う。覚悟が出来る人間になったほうがいいわよ」
「ッ、女が知ったような口を」
「女じゃない。ギャングよ」
「っ…」
黙ったダンに、なにを思ったのかカーラが背伸びをしてダンの頭をわしわしと撫でた。ぽかんとするダンと承太郎に、カーラは美しい笑みではない悪戯っこのような笑みで笑った。
「私が拾ってあげてもいいわ。覚悟が出来る人間に育ててあげる。少なくともみっともない戦い方はしないようにね」
「………アンタにか?」
「ええ、私に」
「おいカーラ。お前、本気か?」
「承太郎…パッショーネは人手不足なのよ。特に暗殺チームはね」
「あ、暗殺チーム?」
「そう。私が所属してるのは暗殺チームよ。死亡率はかなり高いわ。でも誰一人死んでない」
それが何故か分かる?覚悟があるからよ、とにやり笑うカーラに今度こそダンは自分が落ちた気がした。自分とはかけ離れた生き方をしているこの女こそ、自分が信じていける場所なんじゃあないかと思ったからだ。
それはダンらしい甘ったれた考えだった。
だが、今はまだそれでいいのかもしれない。
彼女の側に居たいと思ったのだから。
「という訳で、新しく入るダンです。うふふ…よ、よろしく〜」
「「「「カーラ、ちょっとこっちに来なさい」」」」
「十人程度だな。おいカーラ、お前弾は足りてるか!?」
「大丈夫よ!銃がないなら、」
ミスタの目の前にいた敵を鮮やかにナイフで殺すカーラに、ミスタは一瞬見惚れてしまった。
慌てて銃で敵を殺してカーラを抱き寄せる。
「おっ前はよォ〜…!あぶねーだろうが!俺の後ろに居ろ!」
「ふふ、貴方より暗殺は得意よ。ミスタ♡」
「ッ、可愛いく言っても駄目だっつーの!お前に怪我でもさせたら俺は死ぬことになるんだぞ!?」
「なら私が守るわ。貴方のこと」
ミスタの目を覗き込んで笑うカーラに、今度こそ目が離せなくなった。
…男守るっつー女はお前くらいだぜ、カーラ。
呆れたフリをして銃を動かすミスタに、カーラは分かっているような笑みでナイフを構えた。
「意外と照れ屋なのね」
「誰が照れ屋だよ。お前こそ、意外と純情じゃあねーの?」
「……っへ?」
「ギアッチョから聞いたぜェ?お前、処女なんだって?」
「っ、あ、ぇ、」
バランスを崩してナイフを落とすカーラの前にいる敵をミスタが撃つ。
カーラの耳元で囁いた。
「こいつで最後だ。…詳しく聞かせろよ。カーラちゃん?」
「ひっ」
「ほんとにほんとよ!どうしてみんなわたしをびっちだとかいうのかしらぁ、ぎあっちょも、ひどいわっ、みすたにいうなんて、」
「あいつもかなり酔っ払ってたからな。つーかそろそろ水飲めよ、お姫様」
「しょじょがわるいの!?みすたぁ!」
「い、いや…お前みてーな女が外で言わないほうがいいぜ。すぐに喰われちまうよ」
俺みたいな男に、とミスタが笑ってカーラの唇を奪った。…冷たい水をカーラに流し込んでやると、気持ちよさそうに目を細める。…エッロ。こいつ本当に処女なのか?
「…きすは、すき。きもちい、から…」
「……ならセックスもしてみるか?気持ちよくさせる自信ならあるぜ、俺」
「…んやよ。みすたを、すきに、なっちゃうもん…」
「グゥッ」
喉から獣の様な呻き声が漏れてしまった。
…天然でエロくて可愛いくて綺麗で小悪魔ってこいつもう閉じ込めたほうがいいんじゃねーのかな、などと脳内で考えながらミスタは深く息をつく。
……危ねぇ危ねぇ危うくこの手練れのミスタ様が処女の小娘に落とされるところだったぜ。
「…?みすた?どうしたの?きらいになった?」
しゅん、と眉を落として俺の手を両手で引くカーラに何かが落ちていく音がした。
あ、俺無理だわ。この女のこと、すげー好きだ。可愛すぎる。
「…それで抱かずに家まで送り届けたっつーわけか。ミスタ」
「おう。言っとくが俺は不能じゃあねーぞッ!?ただ…!あいつの意識があるときに抱きてえだけだっ!」
「すげえ落とされてんじゃねえかお前」
「お前もあってみれば分かる…あいつをすきにならない男は男じゃねえ…っ!」
「……へえ。随分イイ女だな。俺も会ってみたくなっちまった」
「いやアバッキオ。やっぱお前はだめだッ」
「任務?財団から?」
「ああ…私もお前に頼むのは気が引けたがな。仕方ない。この男を連れて来てほしい」
「…これは…スティーリー・ダン?DIOの手下だった…。確か貴方がぼこぼこに伸した筈じゃあ」
「ああ。再起不能にさせた。その後は知らねえが…財団の上で働いている女性がこの男と会いたいと喚いていてな」
「まさか奥さん…とか?」
「…結婚はしてねえだろうがな。なんでも言いたいことが山程あるらしい。資料整理の時にダンの資料を見つけて騒ぎ出した」
「ええと…重要度の高い任務ではないってことでいいのね?」
「ああ、私情に近いな。私にぼこぼこにされた後のダンを拾って仗助に治させる。それで彼女に会わせれば私達はもうやることはなくなるだろう」
でも、とカーラは眉を寄せた。
あまり別の時代の人間と今の時代の人間を会わせることは良くないことなのだ。
それに、会わせたあとはダンとその女性が幸せに、なんて上手くいくのだろうか。
ダンはかなりのゲスだったと承太郎も忌々しげに言っていたし。
「ちょっと待って。今、ダンは生きているの?」
「さあな。あの男を調べる労力が勿体ない」
「それなら探す?」
「いや、なんでも昔のダンに会いたいらしい。よく分からねえが」
よく分からなすぎる。
それにしてもその女性は承太郎たちと同じくらいの歳なんじゃあないだろうか。
一体なにを昔の彼に伝えたいのだろう。
まあ、たまには殺伐としたこと以外でスタンドを使うのも悪くないか。まして、それで幸せになる人がいるなら尚更。
「若い承太郎達とは会わないほうがいいかな。面倒くさくなっちゃうし」
路地裏で倒れている男を見下ろしながらカーラは呟く。…この男、顔はなかなか良かっただけ少し可哀想になってしまう。まあ仗助に治してもらえればまた女の子を口説くことも可能になるだろう。
「…大丈夫?生きてる、わよね」
「……ごほッ…、く、そ…!あの、野朗…ッ」
「貴方大丈夫?私はざい、…ギャングよ。イタリアのギャングなんだけど、今は事情があって貴方に来て欲しいの。立てる?」
「……なんだあんた…天使か、なにか、か?」
「えっ、えーと…そうかもね。とりあえず立って…」
肩を貸して近くのホテルに入る。
とりあえず応急処置をしてやるためだ。だが、ダンはなにを思ったのかカーラの肩を掴んで動きを止めた。
「待て…い、まの、わた、しじゃあ、あんたを、だけねえ、」
「……はあ。承太郎に聞いていたからよかったわ。筋金入りのおばかさん」
「ぐッ、きさま…」
ベッドに背中を押してやると呆気なく気絶した。相当痛かったらしい。血を拭って止血してやる。そしてスタンドを発動させた。
「バイカートリップ…仗助達がいる時代へ」
「起きた?おはよう」
「……誰だ?」
「私は貴方を助けた天使、カーラよ」
「天使?まあそれくらい美しいが…。傷を治したのはアンタか」
「いいや。クレイジーダイヤモンドだ。久しぶりだな」
承太郎が帽子のつばをもちあげながらそう言った。その瞬間、ダンが情けなくひぃ、と呻き声を漏らす。そうだ、このダンは僅か数時間前に承太郎にぼこぼにされたばかりだった。
「ここは貴方がいた時代より少し先の未来なのよ。貴方に頼みがあって傷を治して連れてきた」
「はあ!?未来!?たっ、頼みだと!?わたしはDIO様についているんだぞ!か、勝手なことは」
「DIOはもう死んだわ。承太郎達に倒された。正確には、とどめをさしたのは承太郎だけど。で、貴方がつく人は居なくなった。これで頼みは聞けるわよね。貴方に会いたいって人がいるの」
「な…」
ありえない、そう目を見開くダンにカーラが少し面倒くさそうな顔をする。
承太郎はやべぇな、と思った。カーラがこの顔をする時はかなり『生かすのが面倒くさい』と感じている時だ。
可愛いくて美しいカーラは天使なんかじゃあない。パッショーネに身を置いたギャングなのだ。
「ふざけるんじゃあない!わたしが貴様らに手を貸すだと!?誰がそんなことをするんだ、馬鹿め」
「…承太郎。またボコボコにしてくれる?今度は原型を留めないくらいに」
「な、な…ッ!?」
「いい?一度しか言わない。アンタには選択肢なんかはない。…私はギャングなのよ。アンタより人を殺すのに慣れてるわ。分かったらさっさと肯け、ゲス野朗」
やれやれ、と承太郎は首を振った。カーラの悪い『癖』だ。説明が面倒な時、彼女はこうしてギャングの面を出して乗り切ろうとする。
相手がクズな場合、それがひどい。
説明せず相手に欲求をつきつけて頷かせようとするのだ。流石ギャング。
「わ、わかった、わかった!やる、やればいいんだろう!」
「そうそう。それでいいのよ。もちろん報酬は無しでいいわよね?傷を治したんだもの」
「治したのは仗助だがな…」
「仗助には後でたっぷりお礼をしてあげるわ♡(ケーキでも作ろうかしら?)」
「…、わたしもそのお礼とやらでいいぜ?お嬢さ、「無いと言ったのが聞こえなかった?」
ごくりとカーラを見て喉を鳴らすダンにカーラが絶対零度の視線を浴びせる。
普段彼女は敵以外に冷たく当たることはないのだが、ダンは別のようだ。何故だ?と承太郎が疑問に思っていると、カーラと目が合う。
「覚悟の無いクズは嫌いなのよ」
「…フッ、そういえばお前は熱い奴だったな。見た目によらず」
「んもう、余計な一言が入ってるわ!」
「ダンッ!!!」
部屋に入ってきた女性に三人の視線が集まる。
承太郎より少し上くらいの歳の女がダンを見つめていた。カーラはすっ、とダンから離れて様子を見守る。ダンがなにか妙な真似をしないように。
「ダン…っ、ああ、ダン!ずっと会いたかった…っ!バーに来なくなってから私、ずっと寂しくて…っ!貴方をずっとずっと待ってたのよ…!」
「……?なんだ?この女は。おい、カーラ」
「…貴方の恋人じゃあ」
「はあ!?わたしはこんな趣味の悪い女は選ばない!大体ババアじゃあないかッ!」
「「……」」
このゲスめ、と承太郎とカーラが胸の中で呟く。そして、目をそらした。何故なら女の怒り狂った顔が見えたからだ。修羅場を見たい人間ではない。
「…なんですってェェ!?アンタが私を抱いてやるって口説いて来たんじゃあないのよ!!それから何年も他の男とやらなかったのに!」
「…おい、カーラ。大丈夫か?」
「えっ、ええ…。他人のそーいうのは、少し、慣れてない、だけよ…」
頬を赤らめて目をそらすカーラに承太郎が思わず見惚れる。…可愛い。こんなに美人で美しい体の癖に、こんなにもウブな反応を見せている。承太郎は堪らなくなったが、ダンもそうだった。カーラの表情に見惚れている。
それに女が気付いて怒鳴った。
「なに他の女に見惚れてるのよええ!?私よりあの人がいいの!?」
「は、百人中百人がそう言うだろう。…ん〜?同じ女には見えないな、あんたと彼女じゃあ」
「な、な…っ」
「おい。そこまでにしときな。テメェ、ゲスだとは思っていたがここまでとはな…」
「同意するわ承太郎。貴方はゲス以下のゲロ野朗よ。…彼女に謝って」
「何故カーラが怒る?わたしはお前を褒めてるんだぜ、カーラ」
「ちっとも嬉しくないわ。早く謝りなさい」
「いいな、強気な女は屈服させがいがあ、ぐはっ!?」
カーラが平手打ちをする。
先程まで怒鳴っていた女がぽかんとカーラを見た。カーラはそれに優しく微笑んで女の頬に触れる。もちろん殴っていない方の手で。
「貴女は美しいです。どうかこんなゲス、忘れて下さい。きっと素敵な人のほうが貴女には合う」
「え、あ、あの…」
「ふふ、大丈夫。この男は私が責任を持って処罰致しますから」
美しすぎる笑みでそう言うカーラに女は頬を赤く染めて頷いた。ぼうっとしているところを見るに完全に落ちている。承太郎は眉を顰めたが、ダンを見てぎょっとした。…おいおい、お前もか。
ダンはカーラを見て瞳に熱を宿していた。
舌舐めずりをしてカーラを眺めている。どうやらゲスでさえ彼女は虜にしてしまうらしい。
女が去るとすぐ様ダンはカーラの腰を抱き寄せた。
「えらく熱烈なビンタをくれるじゃないか、ええ?」
「…怒ってるの?貴方にそんな資格ない」
「別にあの女ならどうでもいいさ。それよりわたしはお前が欲しい」
「………呆れるわ。離して。承太郎、スタープラチナしまって。貴方も酷い顔してる」
物凄い殺気を出している承太郎の頬を背伸びして撫でてダンの腕を払う。カーラはため息を吐いて承太郎の目を見た。
「任務完了。ダンはもういい?」
「ああ。相変わらずゲスなだけだったな」
「なんだと?承太郎お前こそ随分お上品になったじゃないか。似合ってるぜ」
下世話な笑みを浮かべて馬鹿にするダンに承太郎はガキは寝な、とだけ言う。ダンは顔を怒りに染めた。それをカーラがやめなさい、と止める。
「元の時代に帰るわよ。ダン」
「なっ、ちょっと待て!DIOは死ぬんだろう!?それなら、戻る必要はない、なんなら戻ったら殺されるだろう!」
「それがどうしたっていうの」
「お、お前…」
驚いた顔をするダンにカーラは首を傾げる。
本気で分からないのだ。カーラは意地悪をあえて言ったのではなく、本当にそう思っているのだ。これがギャング。恐ろしいな、と承太郎は少しだけ思った。本当に少しだけ。
「殺されるのは貴方が弱いからだわ。嫌なら覚悟して戦えばいい。それをする覚悟もないでDIOの下についたのなら浅はかだわ。私なら絶対に戦う。覚悟が出来る人間になったほうがいいわよ」
「ッ、女が知ったような口を」
「女じゃない。ギャングよ」
「っ…」
黙ったダンに、なにを思ったのかカーラが背伸びをしてダンの頭をわしわしと撫でた。ぽかんとするダンと承太郎に、カーラは美しい笑みではない悪戯っこのような笑みで笑った。
「私が拾ってあげてもいいわ。覚悟が出来る人間に育ててあげる。少なくともみっともない戦い方はしないようにね」
「………アンタにか?」
「ええ、私に」
「おいカーラ。お前、本気か?」
「承太郎…パッショーネは人手不足なのよ。特に暗殺チームはね」
「あ、暗殺チーム?」
「そう。私が所属してるのは暗殺チームよ。死亡率はかなり高いわ。でも誰一人死んでない」
それが何故か分かる?覚悟があるからよ、とにやり笑うカーラに今度こそダンは自分が落ちた気がした。自分とはかけ離れた生き方をしているこの女こそ、自分が信じていける場所なんじゃあないかと思ったからだ。
それはダンらしい甘ったれた考えだった。
だが、今はまだそれでいいのかもしれない。
彼女の側に居たいと思ったのだから。
「という訳で、新しく入るダンです。うふふ…よ、よろしく〜」
「「「「カーラ、ちょっとこっちに来なさい」」」」