時を掛ける暗殺者 【オール】
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「別れようぜ」
「…え?」
「お前みてーな周りに男はべらす女より、もっとお淑やかな女の方がよくなった。ギャングの女なんてよーく考えれば面倒くせェだけだしな。それに、やっぱお付き合いなんてこのイルーゾォには合わないぜ。自由に色んな女と遊んだほうが楽しいに決まってる。…だからもう俺とは別れよーぜ」
「……そ、そう…分かったわ…今までごめんなさい…イルーゾォ」
「…っ!」
「えっと…あはは、じゃあこれからは仲間としてよろしく、ってことかしら…」
眉を下げながら笑って見せるカーラに、イルーゾォは拳を握りしめた。…もっと泣いて纏ってくれれば俺は…。情けない考えに死にたくなりながら、イルーゾォは下手くそながらも意地の悪い笑みを浮かべた。
「…っ、つ、次に良い男が出来たら…一番に俺に教えろよ…分かったな?」
「…しばらく恋人なんて出来そうにないわ。仕事も忙しくなってきたしね!…それじゃあもう帰るわ。おやすみなさい、イルーゾォ」
「………ああ…、おやすみ…」
「…死にてえ」
「…だからなんで毎度俺なんだ?」
「なんで俺は生きてるんだろう…」
「カーラ振るなんて羨ましい男だよなァ、アンタ」
「振りたくて振った訳ねーだろ!!ギアッチョに言われたんだよ!!カーラのために別れろって!クソ…っ!やっぱり別れようなんて言わなきゃよかった!ああ、もう死にたい…誰か俺を殺してくれ…」
「俺が殺してやろうか?カーラをイルーゾォが抱いてたの、普通にキレそうだぜ…」
「……最高だった…甘くて柔らかくてえろくて可愛くて…一生抱いてたいくらいで…もう他の女抱けねーよ!」
「あああ俺の女神…やめてくれないかイルーゾォ…」
「…他の男と付き合うなんて許せねえ…カーラに男ができたらそいつをぶっ殺してやる…」
会話が成り立たないイルーゾォに、メローネは自分のことを棚に上げて気持ち悪いな、と呟いた。…気になるところがあるとすればギアッチョについてか。
「なあ、ギアッチョになんて言われたんだ?」
「…カーラが倒れたのは俺のせいだって…無茶させてたのは事実で…カーラは別れたいなんて俺に言える性格じゃねえって」
「…そうか?カーラは普通にアンタに言いそうだけどな。飽きたら」
「飽きるとか言うなぁぁ…」
…ふむ。これはギアッチョが何か仕組んだな。
まさかアイツがそんな行動に出るとは思わなかった。メローネは顎に手を当てて考える。
相手のことばかり考えそうなお子様な恋愛しか出来ないと踏んでいたが…意外と肉食獣らしい。ベタベタのイルーゾォに自ら別れを言わせたのはかなりのやり手だ。
「…流石だギアッチョ」
「あ?なにがだよころすぞてめー」
「…落ち着けよアンタ。はあ、そろそろ俺も動くかな…」
「よしカーラ!今日は祝い酒だッ!私の奢りだからどんどん飲めよ!」
「嬉しそうねぇ、ダン」
「当たり前だろう!お前とイルーゾォがついに!ついに別れたんだぞ!?これを喜ばずになにを喜べって言うんだ!」
「…」
少し複雑な気持ちになりながらカーラはウイスキーの入ったグラスを持ち上げた。
丸い氷がきらきらと光る。
「私がお子ちゃまだったのかな…」
「どこがだ。こんなにえろい顔と体して」
「…えろい…だからかな」
「…淫乱とでも言われたのか?どれ、俺が確かめて」
「ダンって紳士の顔がもうぼろぼろよね…」
「うっ、…仕方ないだろ。お前と…もう長い付き合いになりかけてる。いつまでも気取ってられるか」
ダンが少し照れ臭そうに酒を飲む。カーラはそれを見て少しだけ嬉しそうに目を細めた。
そのままダンの頭をふわふわと撫でる。
ダンは顔を真っ赤にして固まった。
「…いいこいいこ〜」
「………な、んだカーラ…」
「ふふ…だって…うれしい。それくらい、気をゆるしてるってことだもんね…」
「…!ち、違う!俺は…!私は油断している訳じゃあないぞ。ただ…お前に気取っても仕方ないというか…」
「……ねーダン…」
「…なんだ?」
「私って…結婚とか出来るのかなあ。愛されたこともないのに…子供を愛せるのかしら…」
「……俺をぼこぼこに殴ったことを忘れたとは言わせないぞ。知らねえ子供のために怒るお前なんだ、楽勝だろ」
「…!…へへ、ふふ…そう、かな?」
「ああ。…俺も、自分の子供なら愛せると思うぜ。……好きな女とのガキなら」
ぎゅう、と手を握られてカーラは首を傾げた。
視界がふわふわとしていて気持ちいい。
思わず笑みが溢れた。ダンはごくりと喉を鳴らしてカーラの瞳を覗き込む。
「…俺じゃあ駄目か?あの男より幸せに出来るぜ…なんでも言うこと聞いてやるし、与えてやる」
「…だん…?」
「…お前のためなら死ねると思えるんだ…笑えるだろ。…なあ、カーラ…俺と、」
ダンがカーラに顔を近づけた瞬間、背後に物凄い殺気が現れた。慌てて立ち上がって背後を振り向く。イルーゾォがぎらぎらとした目で拳を握っていた。
「…テメェ…!ぶっ殺してやるッ!!」
「おいイルーゾォ!アンタ酔いすぎだぞ」
「離せ変態マスクッ!この野朗を今すぐ殺さねーと…!」
「頼むから落ち着いてくれ…ここは俺のお気に入りのバーなんだよ」
「……は、もうテメーの女じゃねェだろう?」
「!!…そうかよ。ぶっ殺す」
イルーゾォから冷たい殺気が溢れ出した。
思わずメローネがぞっとして手を緩める。その瞬間、イルーゾォは拳を振りかぶってダンを思い切り殴りつけた。
「ぐぁっ、き、貴様…っ!」
「……立て。まだ終わってない」
「は…が、っ…!はは…イルーゾォ…アンタ相当やべェな…」
「…」
「いるーぞぉ…?イルーゾォ、なにしてるの!?」
カウンターに顔を伏せていたカーラが驚いた顔をする。ふらふらとした危ない足取りで立ち上がった。バーに居た客やマスターも居ない。
ここはイルーゾォの鏡の中だ。
いつから?と混乱していると、イルーゾォが再びダンを殴り付けた。
「やめて!イルーゾォ!」
「…っお前は黙ってろ…!」
「ダンは私を慰めてくれてたの!やめて、イルーゾォ…殴るなら私を殴ればいいじゃない…!」
「なんでお前を殴らねーといけねーんだ!」
「…じゃあやめて!鏡の中に私を入れたのは止めてほしいからでしょ!?ならだめ!殴っちゃだめ!イルーゾォ…!」
ぎゅう、とイルーゾォに抱きついて止める。
カーラは必死だった。イルーゾォがどんな顔をしているのか気にする暇も無かったのだ。
抱きつかれたイルーゾォは顔を歪めてカーラの顎を掴んだ。
「…お前、俺のこと本当に好きだったのかよ…!俺に付き合ってただけなんだろ?楽しかったかよ、お前に夢中な馬鹿な男見るのは」
「…イルーゾォ、酔ってるでしょ?落ち着いて…」
「どうせお前は俺なんて遊び…ってぇ、」
パシン、と頬を打たれたイルーゾォはカーラを睨みつけようと顔を上げた。が、カーラの顔を見て思わず目を驚いたように見開いた。
カーラがぼろぼろと涙を流して悲しそうな顔をしていたからだ。そこでようやくイルーゾォはまた自分がカーラを傷つけたことを悟った。
「…私、貴方のことを好きになりたかった」
「遊びなんかじゃない…真剣だった。貴方のこと、愛したいって思えた…」
「…でも確かに無駄だったのかもね…私、貴方が女の子と歩いてるの想像して…嫌だと思えなかったの。何も…でも恋人は違うのよね。異性と歩いてたら普通は怒って悲しむモノ…」
「きっと無理だっんだわ。私に恋とか愛なんて。とうにそんな感情残ってない。貴方がそれに気付かせてくれた」
「だからもういいの…もうやめて、イルーゾォ…もうちゃんと元に戻ろう?」
「カーラ…待て、待ってくれ…俺は、俺はお前がまだ好きなんだ。さっきのは、ギアッチョにお前が俺に無理させられてんじゃねえかって言われて…だから…!」
「もうやめて、イルーゾォ」
これ以上は惨めになる、私が。
カーラはそう呟いてダンのそばにしゃがんだ。
タオルで殴られた場所の血を拭っている。
その後ろ姿を見て、イルーゾォは人生で一番後悔と絶望をした。
「…え?」
「お前みてーな周りに男はべらす女より、もっとお淑やかな女の方がよくなった。ギャングの女なんてよーく考えれば面倒くせェだけだしな。それに、やっぱお付き合いなんてこのイルーゾォには合わないぜ。自由に色んな女と遊んだほうが楽しいに決まってる。…だからもう俺とは別れよーぜ」
「……そ、そう…分かったわ…今までごめんなさい…イルーゾォ」
「…っ!」
「えっと…あはは、じゃあこれからは仲間としてよろしく、ってことかしら…」
眉を下げながら笑って見せるカーラに、イルーゾォは拳を握りしめた。…もっと泣いて纏ってくれれば俺は…。情けない考えに死にたくなりながら、イルーゾォは下手くそながらも意地の悪い笑みを浮かべた。
「…っ、つ、次に良い男が出来たら…一番に俺に教えろよ…分かったな?」
「…しばらく恋人なんて出来そうにないわ。仕事も忙しくなってきたしね!…それじゃあもう帰るわ。おやすみなさい、イルーゾォ」
「………ああ…、おやすみ…」
「…死にてえ」
「…だからなんで毎度俺なんだ?」
「なんで俺は生きてるんだろう…」
「カーラ振るなんて羨ましい男だよなァ、アンタ」
「振りたくて振った訳ねーだろ!!ギアッチョに言われたんだよ!!カーラのために別れろって!クソ…っ!やっぱり別れようなんて言わなきゃよかった!ああ、もう死にたい…誰か俺を殺してくれ…」
「俺が殺してやろうか?カーラをイルーゾォが抱いてたの、普通にキレそうだぜ…」
「……最高だった…甘くて柔らかくてえろくて可愛くて…一生抱いてたいくらいで…もう他の女抱けねーよ!」
「あああ俺の女神…やめてくれないかイルーゾォ…」
「…他の男と付き合うなんて許せねえ…カーラに男ができたらそいつをぶっ殺してやる…」
会話が成り立たないイルーゾォに、メローネは自分のことを棚に上げて気持ち悪いな、と呟いた。…気になるところがあるとすればギアッチョについてか。
「なあ、ギアッチョになんて言われたんだ?」
「…カーラが倒れたのは俺のせいだって…無茶させてたのは事実で…カーラは別れたいなんて俺に言える性格じゃねえって」
「…そうか?カーラは普通にアンタに言いそうだけどな。飽きたら」
「飽きるとか言うなぁぁ…」
…ふむ。これはギアッチョが何か仕組んだな。
まさかアイツがそんな行動に出るとは思わなかった。メローネは顎に手を当てて考える。
相手のことばかり考えそうなお子様な恋愛しか出来ないと踏んでいたが…意外と肉食獣らしい。ベタベタのイルーゾォに自ら別れを言わせたのはかなりのやり手だ。
「…流石だギアッチョ」
「あ?なにがだよころすぞてめー」
「…落ち着けよアンタ。はあ、そろそろ俺も動くかな…」
「よしカーラ!今日は祝い酒だッ!私の奢りだからどんどん飲めよ!」
「嬉しそうねぇ、ダン」
「当たり前だろう!お前とイルーゾォがついに!ついに別れたんだぞ!?これを喜ばずになにを喜べって言うんだ!」
「…」
少し複雑な気持ちになりながらカーラはウイスキーの入ったグラスを持ち上げた。
丸い氷がきらきらと光る。
「私がお子ちゃまだったのかな…」
「どこがだ。こんなにえろい顔と体して」
「…えろい…だからかな」
「…淫乱とでも言われたのか?どれ、俺が確かめて」
「ダンって紳士の顔がもうぼろぼろよね…」
「うっ、…仕方ないだろ。お前と…もう長い付き合いになりかけてる。いつまでも気取ってられるか」
ダンが少し照れ臭そうに酒を飲む。カーラはそれを見て少しだけ嬉しそうに目を細めた。
そのままダンの頭をふわふわと撫でる。
ダンは顔を真っ赤にして固まった。
「…いいこいいこ〜」
「………な、んだカーラ…」
「ふふ…だって…うれしい。それくらい、気をゆるしてるってことだもんね…」
「…!ち、違う!俺は…!私は油断している訳じゃあないぞ。ただ…お前に気取っても仕方ないというか…」
「……ねーダン…」
「…なんだ?」
「私って…結婚とか出来るのかなあ。愛されたこともないのに…子供を愛せるのかしら…」
「……俺をぼこぼこに殴ったことを忘れたとは言わせないぞ。知らねえ子供のために怒るお前なんだ、楽勝だろ」
「…!…へへ、ふふ…そう、かな?」
「ああ。…俺も、自分の子供なら愛せると思うぜ。……好きな女とのガキなら」
ぎゅう、と手を握られてカーラは首を傾げた。
視界がふわふわとしていて気持ちいい。
思わず笑みが溢れた。ダンはごくりと喉を鳴らしてカーラの瞳を覗き込む。
「…俺じゃあ駄目か?あの男より幸せに出来るぜ…なんでも言うこと聞いてやるし、与えてやる」
「…だん…?」
「…お前のためなら死ねると思えるんだ…笑えるだろ。…なあ、カーラ…俺と、」
ダンがカーラに顔を近づけた瞬間、背後に物凄い殺気が現れた。慌てて立ち上がって背後を振り向く。イルーゾォがぎらぎらとした目で拳を握っていた。
「…テメェ…!ぶっ殺してやるッ!!」
「おいイルーゾォ!アンタ酔いすぎだぞ」
「離せ変態マスクッ!この野朗を今すぐ殺さねーと…!」
「頼むから落ち着いてくれ…ここは俺のお気に入りのバーなんだよ」
「……は、もうテメーの女じゃねェだろう?」
「!!…そうかよ。ぶっ殺す」
イルーゾォから冷たい殺気が溢れ出した。
思わずメローネがぞっとして手を緩める。その瞬間、イルーゾォは拳を振りかぶってダンを思い切り殴りつけた。
「ぐぁっ、き、貴様…っ!」
「……立て。まだ終わってない」
「は…が、っ…!はは…イルーゾォ…アンタ相当やべェな…」
「…」
「いるーぞぉ…?イルーゾォ、なにしてるの!?」
カウンターに顔を伏せていたカーラが驚いた顔をする。ふらふらとした危ない足取りで立ち上がった。バーに居た客やマスターも居ない。
ここはイルーゾォの鏡の中だ。
いつから?と混乱していると、イルーゾォが再びダンを殴り付けた。
「やめて!イルーゾォ!」
「…っお前は黙ってろ…!」
「ダンは私を慰めてくれてたの!やめて、イルーゾォ…殴るなら私を殴ればいいじゃない…!」
「なんでお前を殴らねーといけねーんだ!」
「…じゃあやめて!鏡の中に私を入れたのは止めてほしいからでしょ!?ならだめ!殴っちゃだめ!イルーゾォ…!」
ぎゅう、とイルーゾォに抱きついて止める。
カーラは必死だった。イルーゾォがどんな顔をしているのか気にする暇も無かったのだ。
抱きつかれたイルーゾォは顔を歪めてカーラの顎を掴んだ。
「…お前、俺のこと本当に好きだったのかよ…!俺に付き合ってただけなんだろ?楽しかったかよ、お前に夢中な馬鹿な男見るのは」
「…イルーゾォ、酔ってるでしょ?落ち着いて…」
「どうせお前は俺なんて遊び…ってぇ、」
パシン、と頬を打たれたイルーゾォはカーラを睨みつけようと顔を上げた。が、カーラの顔を見て思わず目を驚いたように見開いた。
カーラがぼろぼろと涙を流して悲しそうな顔をしていたからだ。そこでようやくイルーゾォはまた自分がカーラを傷つけたことを悟った。
「…私、貴方のことを好きになりたかった」
「遊びなんかじゃない…真剣だった。貴方のこと、愛したいって思えた…」
「…でも確かに無駄だったのかもね…私、貴方が女の子と歩いてるの想像して…嫌だと思えなかったの。何も…でも恋人は違うのよね。異性と歩いてたら普通は怒って悲しむモノ…」
「きっと無理だっんだわ。私に恋とか愛なんて。とうにそんな感情残ってない。貴方がそれに気付かせてくれた」
「だからもういいの…もうやめて、イルーゾォ…もうちゃんと元に戻ろう?」
「カーラ…待て、待ってくれ…俺は、俺はお前がまだ好きなんだ。さっきのは、ギアッチョにお前が俺に無理させられてんじゃねえかって言われて…だから…!」
「もうやめて、イルーゾォ」
これ以上は惨めになる、私が。
カーラはそう呟いてダンのそばにしゃがんだ。
タオルで殴られた場所の血を拭っている。
その後ろ姿を見て、イルーゾォは人生で一番後悔と絶望をした。
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