「…おい、まーたこんなとこで本読んでんのかよォ。目ェ悪くすんだろーが」

「……ギアッチョ」

「立て。もう寝るぞ。今日は逃がさねえからな。ベッドで眠れ」

「…嫌だと言ったら？」

「無理矢理寝かせるぜ。テメェもこいつのこと覗き見してねェで止めろ、イルーゾォ！」

「なッ、み、見てねェよ！誰がそんな女…っ」



月明かりに照らされて、今まで見えなかった少女の顔がはっきりと見えた。
金色の輝く髪に青の混じった黒い瞳。長い睫毛をぱちりとさせる少女に、イルーゾォは思わずその美しさに息を呑んだ。こうなったのはもう片手では数え切れないが。



「…は、寝れねーなら俺が抱いてやろうか？それなら嫌でも眠るだろ」


イルーゾォが赤くなった頬を隠すように下品な悪態をつくと、ギアッチョが死ね、と呟く。
それを無視してイルーゾォが彼女をじっと見つめれば、ダイヤはゆっくりとイルーゾォの鏡の近くまで歩いてぴたりと止まった。


「…貴方も眠れないの？」

「…、はァ？俺はお前と違って弱くないんでな。不眠症なんかにこのイルーゾォがかかるかよ！」

「…じゃあ、貴方は私のために、抱いてやると言ったということ？貴方は、眠れるのに…」

「な…ッ」

「ぶはッ！」



確かに！と珍しく年相応のにやけた笑顔で笑うギアッチョに顔が熱くなっていく。
くそ、生意気な女だな、相変わらず！
ぎろりと彼女を睨めば、わからないといった風に首を傾げられてすぐに目を逸らした。



「…寝ろよ！もう！」

「…うん。おやすみ、イルーゾォ」

「…っ、ッ、お、おや、…じゃあなッ！」

「…アイツほんとに俺らより歳上かよ？情けねェぜ、全くよォ！なァお前も思うよなァ？ダイヤ」

「…イルーゾォは、つんでれというやつだって、プロシュートが言ってた。仕方ない」

「…っく、はははッ！似合わねェ！なんか、お前が最近の言葉言うの似合わねェ…！」

「…ふふ。ギアッチョは、私の前だと、よく笑う。貴方もつんでれ？」

「…ちげーよッ！！クソ！誰がツンデレだ阿保！」

「ふふふっ」



ギアッチョはお前も俺の前だとよく笑うじゃねェか、と呟いてダイヤの髪をくしゃりと撫でた。
すると鏡からガン！！と音が聞こえた後、触んな！とイルーゾォの怒鳴り声が聞こえてダイヤが困ったように目をぱちりとさせる。


「ハッ、男の嫉妬は醜いぜェ〜！全くよォ！」

「嫉妬…」

「…おい。お前にじゃねェからな！？あいつはお前が好きだから俺に嫉妬したんだぜ？誤解すんなよ！？」

「…わたし？」

「当たり前だろーがよ！気持ち悪ィ！」

「……」

「だーァらお前に言ったんじゃねェ…！クソ、面倒くせェな！」

「…今の面倒くさいはわたし？」

「ああお前だよ馬鹿！」

「ふふ…もう寝たい…ギアッチョ」

「…ッくそ、我儘な女だな！」