第一章 妖と暗殺者
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「なあリゾットよォ。最近どうしたんだ?」
「…なにがだ?」
「いや…なんか悩んでるみてぇだからよ。仕事もボスが変わってから良くなったっつーのに、顔が浮かれてねェし」
最近妙に暗い顔をするリゾットにプロシュートは意を決して声を掛けた。仕事に関係のないことで悩んでいるのだろうが、気になって仕方がなかったのだ。
「…一ヶ月前に会った女が忘れられねぇ」
「…アンタが女!?」
「…ああ。悪いな、情けない悩みで」
「いや…待て。そいつに会いにいきゃいいじゃねーか。暗殺者だからって理由か?」
「……、俺は頭がおかしくなった訳じゃないってことを前置きで言うが…そいつは人間じゃない」
「………は?」
思わずぽかんと間抜けな顔を晒してしまった。
…人間じゃねぇだと?
ついに頭が、と思ったが今リゾットはあらかじめ前置きをしていた。
自分でもおかしなことを言っていると言う自覚はあるらしい。
「人間じゃないィ?リーダー、幽霊にでも恋したのか?」
「…イルーゾォ」
イルーゾォの野朗がにやにやとしながら問いかける。リゾットはそれにぐっ、と眉を寄せながら狐だ、と呟いた。…狐?
「…妖と言っていた。俺が死にそうになっていたところを、そいつに助けられた」
「はァ!?いつの話だよ、まさかあんたが遅く帰ってきた時か!?」
「ああ」
「言えよ!!ったく…で、その妖サンはどこにいんだよ。俺にも見せろ」
「…もう二度と会わないと言われた。色々と、まずいらしい」
「…なんか詐欺じゃねェのか?それ。金取られてねーよな?」
「違う」
「壺買わされてねーよなリーダー?」
「違う」
妖…ジャポネーゼの本で読んだことがある。
あれはフィクションであって存在しないものだったんじゃあねぇのか?と思ったが、リゾットが下らねえ嘘をつくとは思えない。
気になるが、俺は今から任務でここを出なきゃならねえ。重い腰を上げて玄関に向かった。
…フィクションの筈だよな。
俺の目の前には尻にふさふさとした尻尾をはやした女が立っている。きらきらとした銀の美しい髪に、宝石のような瞳。
この世のものとは思えねえくらい、綺麗な女だ。俺が情けなく床とキスしそうになったところを、この女がいきなり現れて俺を支えた。
「…大丈夫か。…ん?お前…あいつの匂いがする」
「…あ?おい…俺ァ今血だらけだ…触るんじゃねえ」
「……これも運命か。全く、人間を軽はずみに助けるもんじゃあないな。お前、名はなんという」
「…プロシュートだ。いいから…離れろ、汚れんだろ…」
クソ。俺が準備万端ならこの美しい女を口説いていたっつーのに。今はそれすら出来ない。
体力がほぼゼロに近いのだ。
「…お前は責任を持って私が送ろう。狐火、こいつをリゾットのところまで連れて行け」
「!!…お前…まさかリゾットが言ってた妖か!?あいつは…ぐ、いてぇ、なに、しやがる!」
「……喚くな。今騒ぐと死ぬぞ。傷を治してやるから騒ぐんじゃない。坊や」
「ぼ、坊やだと!?」
ぺしりと扇子のようなもので頭を叩かれる。そうこうしてる間に、ふわりと何かが飛んできて俺の体の周りにそれがひっついた。
…なんだこれ、炎…?いや、熱くねえ。
「そのまま姿を消して、リゾットの元まで連れて行け。くれぐれも人間にバレるようなヘマはするんじゃない」
『で、ですが桜様!このような人間を助けて我々にはなにも得はございません!放っておいたほうが』
「…狐火。私の言うことが聞けないか?ン?」
『う…ッ。そ、そのようなことは!くそ、人間、桜様に感謝するがいい!!』
「…お前スタンド使いか?」
「…リゾットも言っていたが…そのスタンド使いとやらではない。私は妖だ。お前ら人間とは根本的に違う」
それだけ言うと桜…は手をふわりと宙に向かって一振りした。その瞬間、風が舞い込んで何も見えなくなる。目を開けたときにはいつものアジトの前だった。
「…ではこれで。傷はもう治しておいた。もう会うことはないが達者でな」
「待ちな。逃す訳ねェだろ」
「…離せ。貴様、なにをする気だ?」
「妖かなんだか知らねーが…アンタみたいな綺麗な女、ここでハイサヨナラなんて出来る訳ねーだろ。中に入れよ。妖とやらについても知りてェ」
「はぁ。…私は人間と深く馴れ合うつもりはない。はな、せ…!?な、んだ、これは…」
「おーババアになっても綺麗だな、アンタ」
「う…、これが、スタンドとやら…。人間が、こんな力を…!狐び、んぐっ」
「おっと。アレ呼ばれちゃあ逃げられちまうだろーが。しばらく眠ってろよ。お嬢ちゃん」
さっきの仕返しに耳元でそう囁いてやると、女はがくりと意識を失った。それを見届けて若い姿に戻してやってから、玄関にあったロープで桜の腕と足をしばる。
それから抱き上げてソファに横たえた。それを見ていたギアッチョが飲んでいた水を噴き出す。汚ねぇ。
「なッ、なななななにしてんだジジィ!!その女…ッ、どこで、対象か!?」
「プロシュート、女引っ掛けて来たのかァ?ほォ、随分綺麗だな」
「こいつがあの妖とやらだ。リゾット呼べ。あいてぇんだろ?」
「はァ!?マジかよ!!」
イルーゾォが驚いて桜をまじまじと観察する。
それから下世話な笑みを浮かべて女の顎を掴んだ。桜がんん、と声を上げる。
「…へ〜。こんな綺麗な女リーダーにやるの惜しくなっちまうな。…俺も味見したい」
「馬鹿野郎。んなつもりで連れてきたんじゃねェ!触んな!」
「…なーに怒ってんだよプロシュート。まさかアンタもこいつのことが気になっちまった質か?」
「お前らなんか知ってんのかよォ〜…!さっさと教えろ、クソ!!」
「いいから早くリゾット呼べ!イルーゾォ!」
「チッ、なんで俺なんだよ…」
イルーゾォの背中を軽く蹴って桜から離す。
…たく。これだから脳内猿の男どもが集まると面倒だぜ。その点、ギアッチョなんかは女の顔を見て顔を赤らめるだけ、まだ可愛げがある。
「…っこ、こいつ…ただの一般人だろ!?連れてきてなにすんだよ!」
「なんもしねぇ。ただ知りてェことがあんだよ。いいか?俺は今から他の連中も集めてくるが手は出すんじゃあねーぞ。マンモーニ」
「誰がマンモーニだジジィ!!て、手なんか出す訳ねーだろーよ!死ねッ!」
一気に寒くなった部屋から出て他の連中を探しに行く。…まァギアッチョなら大丈夫か。
「…アジトに連れてきて…この女一体なんなんだよ〜!?クソッ!大体人間なのに尻尾生えてるってどーいうこったよ!?人間か動物どっちかにしろッ!クソッ、クソッ!」
「…人間じゃない、妖、だ…」
「!!てめ…いいか。逃げようとなんてすんなよ!?」
「……さむい…」
「…!わ、わりィ。今解除する」
「…あいつはどこに行った…?私をやった男だ…あいつに一発入れないと気が済まない。人間にまさかやられるとは…油断していた。お前のそれもスタンドとやらか?ここはどこだ?お前らはなにを知りたい」
「いっぺんに喋るんじゃねェよッ!!…ジジイのことか?あいつならリゾット呼びに行った。寒くなったのは俺のスタンドだ。あー…ここは俺らのアジトで、俺らっつーかジジイらはなんか知りてえみてえだな」
「…そうか。ありがとう」
まるで花が咲く様に笑う女に心臓が大きく跳ねる。…なんだ、これ。すげえあちぃし…この女から香る甘い香りが頭をくらくらとさせる。
つ、つーかなにを素直に全部喋ってんだ俺は。
「…お前、なんかしたか?」
「なんか、とは?」
「い、いやなんでもねー!おいッ!イルーゾォ!テメーなにをにやにやしてやがんだ!リゾット呼べよ!!」
「リゾットなら後少しでくる。それにしても…マジで綺麗な女だなァ。ギアッチョが惚れるのも分かるぜ?」
「はァ!?惚れてねーよ気色悪りぃこと言ってんなクズ!!」
「どれ。俺が本当に人間じゃねーのか確かめてやるよ」
「テメェ!触んじゃね…ッ」
「ふふ」
イルーゾォが近付いて女の耳を掴もうとした瞬間、女はくすりと笑った。
その笑みがどうにもいやらしいもので俺とイルーゾォは思わず瞬きもせずにその笑みを見る。
「…お前ら…随分とイイ精気を持ってるな。ふむ。これがスタンド使いとやらか…興味がある」
「…?なに言ってる。おい、勝手に動くんじゃあ…なッ!?」
「!?なんだ!?炎か!?」
女を囲む様にして現れた青い炎に俺とイルーゾォはスタンドを発現させる。…クソッ!!やべェ、どうすんだよ!?
「…狐火。家に帰るぞ。興味があるが、そろそろ帰らぬと私の主人が煩いんでな」
「主人〜!?け、結婚でもしてんのか!?」
「…?結婚…?…ああ。違うぞ。私の飼い主のようなものだ。人間に飼われているのはかなりの屈辱だがな」
「……飼い主…」
イルーゾォがごく、と喉を鳴らしてそう呟いた。…こいつぜってー変な妄想してやがるぜッ!ぶっ飛ばしてやりたいのを我慢して女の腕を掴む。絶対に離さねえ。
「…っ、痛い…」
「あ、わ、悪りぃ!」
「馬鹿野朗!離すんじゃあね…ッ!!おい、待てッ!」
俺が離した瞬間花びらが部屋に舞った。
女がその花びらの中で優雅に笑っている。人間に興味が湧いた、と笑うその女に柄にもなく美しいな、と思った。…じゃねェ!逃がさねェッ!!
死に物ぐるいで女を抱きしめる。眼鏡に花びらがくっついたのに苛ついて眼鏡を床に放り投げた。女の腰を掴んできつく拘束する。
「…!お前…?」
「んだよッ!うおッ!?」
「っ、こら、なにをして、んぅっ」
「…ッ」
………は?
……すげえ、柔らかい…
「狐火ッ!!やめろ!」
『ですが桜様!!守護の契約が新たに更新された今!旧主人には消えて頂かなくてはならない決まりです!!』
「まて、狐火ッ!!ちがう、これは任意じゃない!!待て、待ってくれ…!!!いやだ!やめろ!!」
「お、おい、どうした!?」
『桜様…旧主人が今お亡くなりになりました』
「………おい。離せ」
「ッまた逃げようと、」
「……もう帰る家はなくなった。離せ!!」
俺の腕を振り解いてソファにどかりと座る女…桜は不機嫌そうに、悔しそうに顔を歪めている。さっきから意味のわからない話を炎としていたが、それと関係があんのか?
「くそ…ッ!またこれで…!ふざけるなッ!!いつになったら私は妖子に戻れるんだ!!」
『桜様…気を確かに』
「落ち着いていられるか!!この人間が死ぬまで私はろくに術も使えないんだぞ!あいつらにまた馬鹿にされる…!!」
『桜様…もう少し貴女様には用心という言葉が必要なのでは…?』
「…狐火、貴様…ッ」
『ひぃぃい!桜様落ち着いて下さいまし!』
俺とイルーゾォがぽかんとしている最中、桜は美しい顔を歪めてどうすれば、と頭を抱えている。
「おいそこの…蒼の人間」
「!な、なんだよ!」
「今日からお前が私の主人だ」
「…は?」
「さっき契約を交わしただろう。大変不本意だが!」
「……は?」
「…なにがだ?」
「いや…なんか悩んでるみてぇだからよ。仕事もボスが変わってから良くなったっつーのに、顔が浮かれてねェし」
最近妙に暗い顔をするリゾットにプロシュートは意を決して声を掛けた。仕事に関係のないことで悩んでいるのだろうが、気になって仕方がなかったのだ。
「…一ヶ月前に会った女が忘れられねぇ」
「…アンタが女!?」
「…ああ。悪いな、情けない悩みで」
「いや…待て。そいつに会いにいきゃいいじゃねーか。暗殺者だからって理由か?」
「……、俺は頭がおかしくなった訳じゃないってことを前置きで言うが…そいつは人間じゃない」
「………は?」
思わずぽかんと間抜けな顔を晒してしまった。
…人間じゃねぇだと?
ついに頭が、と思ったが今リゾットはあらかじめ前置きをしていた。
自分でもおかしなことを言っていると言う自覚はあるらしい。
「人間じゃないィ?リーダー、幽霊にでも恋したのか?」
「…イルーゾォ」
イルーゾォの野朗がにやにやとしながら問いかける。リゾットはそれにぐっ、と眉を寄せながら狐だ、と呟いた。…狐?
「…妖と言っていた。俺が死にそうになっていたところを、そいつに助けられた」
「はァ!?いつの話だよ、まさかあんたが遅く帰ってきた時か!?」
「ああ」
「言えよ!!ったく…で、その妖サンはどこにいんだよ。俺にも見せろ」
「…もう二度と会わないと言われた。色々と、まずいらしい」
「…なんか詐欺じゃねェのか?それ。金取られてねーよな?」
「違う」
「壺買わされてねーよなリーダー?」
「違う」
妖…ジャポネーゼの本で読んだことがある。
あれはフィクションであって存在しないものだったんじゃあねぇのか?と思ったが、リゾットが下らねえ嘘をつくとは思えない。
気になるが、俺は今から任務でここを出なきゃならねえ。重い腰を上げて玄関に向かった。
…フィクションの筈だよな。
俺の目の前には尻にふさふさとした尻尾をはやした女が立っている。きらきらとした銀の美しい髪に、宝石のような瞳。
この世のものとは思えねえくらい、綺麗な女だ。俺が情けなく床とキスしそうになったところを、この女がいきなり現れて俺を支えた。
「…大丈夫か。…ん?お前…あいつの匂いがする」
「…あ?おい…俺ァ今血だらけだ…触るんじゃねえ」
「……これも運命か。全く、人間を軽はずみに助けるもんじゃあないな。お前、名はなんという」
「…プロシュートだ。いいから…離れろ、汚れんだろ…」
クソ。俺が準備万端ならこの美しい女を口説いていたっつーのに。今はそれすら出来ない。
体力がほぼゼロに近いのだ。
「…お前は責任を持って私が送ろう。狐火、こいつをリゾットのところまで連れて行け」
「!!…お前…まさかリゾットが言ってた妖か!?あいつは…ぐ、いてぇ、なに、しやがる!」
「……喚くな。今騒ぐと死ぬぞ。傷を治してやるから騒ぐんじゃない。坊や」
「ぼ、坊やだと!?」
ぺしりと扇子のようなもので頭を叩かれる。そうこうしてる間に、ふわりと何かが飛んできて俺の体の周りにそれがひっついた。
…なんだこれ、炎…?いや、熱くねえ。
「そのまま姿を消して、リゾットの元まで連れて行け。くれぐれも人間にバレるようなヘマはするんじゃない」
『で、ですが桜様!このような人間を助けて我々にはなにも得はございません!放っておいたほうが』
「…狐火。私の言うことが聞けないか?ン?」
『う…ッ。そ、そのようなことは!くそ、人間、桜様に感謝するがいい!!』
「…お前スタンド使いか?」
「…リゾットも言っていたが…そのスタンド使いとやらではない。私は妖だ。お前ら人間とは根本的に違う」
それだけ言うと桜…は手をふわりと宙に向かって一振りした。その瞬間、風が舞い込んで何も見えなくなる。目を開けたときにはいつものアジトの前だった。
「…ではこれで。傷はもう治しておいた。もう会うことはないが達者でな」
「待ちな。逃す訳ねェだろ」
「…離せ。貴様、なにをする気だ?」
「妖かなんだか知らねーが…アンタみたいな綺麗な女、ここでハイサヨナラなんて出来る訳ねーだろ。中に入れよ。妖とやらについても知りてェ」
「はぁ。…私は人間と深く馴れ合うつもりはない。はな、せ…!?な、んだ、これは…」
「おーババアになっても綺麗だな、アンタ」
「う…、これが、スタンドとやら…。人間が、こんな力を…!狐び、んぐっ」
「おっと。アレ呼ばれちゃあ逃げられちまうだろーが。しばらく眠ってろよ。お嬢ちゃん」
さっきの仕返しに耳元でそう囁いてやると、女はがくりと意識を失った。それを見届けて若い姿に戻してやってから、玄関にあったロープで桜の腕と足をしばる。
それから抱き上げてソファに横たえた。それを見ていたギアッチョが飲んでいた水を噴き出す。汚ねぇ。
「なッ、なななななにしてんだジジィ!!その女…ッ、どこで、対象か!?」
「プロシュート、女引っ掛けて来たのかァ?ほォ、随分綺麗だな」
「こいつがあの妖とやらだ。リゾット呼べ。あいてぇんだろ?」
「はァ!?マジかよ!!」
イルーゾォが驚いて桜をまじまじと観察する。
それから下世話な笑みを浮かべて女の顎を掴んだ。桜がんん、と声を上げる。
「…へ〜。こんな綺麗な女リーダーにやるの惜しくなっちまうな。…俺も味見したい」
「馬鹿野郎。んなつもりで連れてきたんじゃねェ!触んな!」
「…なーに怒ってんだよプロシュート。まさかアンタもこいつのことが気になっちまった質か?」
「お前らなんか知ってんのかよォ〜…!さっさと教えろ、クソ!!」
「いいから早くリゾット呼べ!イルーゾォ!」
「チッ、なんで俺なんだよ…」
イルーゾォの背中を軽く蹴って桜から離す。
…たく。これだから脳内猿の男どもが集まると面倒だぜ。その点、ギアッチョなんかは女の顔を見て顔を赤らめるだけ、まだ可愛げがある。
「…っこ、こいつ…ただの一般人だろ!?連れてきてなにすんだよ!」
「なんもしねぇ。ただ知りてェことがあんだよ。いいか?俺は今から他の連中も集めてくるが手は出すんじゃあねーぞ。マンモーニ」
「誰がマンモーニだジジィ!!て、手なんか出す訳ねーだろーよ!死ねッ!」
一気に寒くなった部屋から出て他の連中を探しに行く。…まァギアッチョなら大丈夫か。
「…アジトに連れてきて…この女一体なんなんだよ〜!?クソッ!大体人間なのに尻尾生えてるってどーいうこったよ!?人間か動物どっちかにしろッ!クソッ、クソッ!」
「…人間じゃない、妖、だ…」
「!!てめ…いいか。逃げようとなんてすんなよ!?」
「……さむい…」
「…!わ、わりィ。今解除する」
「…あいつはどこに行った…?私をやった男だ…あいつに一発入れないと気が済まない。人間にまさかやられるとは…油断していた。お前のそれもスタンドとやらか?ここはどこだ?お前らはなにを知りたい」
「いっぺんに喋るんじゃねェよッ!!…ジジイのことか?あいつならリゾット呼びに行った。寒くなったのは俺のスタンドだ。あー…ここは俺らのアジトで、俺らっつーかジジイらはなんか知りてえみてえだな」
「…そうか。ありがとう」
まるで花が咲く様に笑う女に心臓が大きく跳ねる。…なんだ、これ。すげえあちぃし…この女から香る甘い香りが頭をくらくらとさせる。
つ、つーかなにを素直に全部喋ってんだ俺は。
「…お前、なんかしたか?」
「なんか、とは?」
「い、いやなんでもねー!おいッ!イルーゾォ!テメーなにをにやにやしてやがんだ!リゾット呼べよ!!」
「リゾットなら後少しでくる。それにしても…マジで綺麗な女だなァ。ギアッチョが惚れるのも分かるぜ?」
「はァ!?惚れてねーよ気色悪りぃこと言ってんなクズ!!」
「どれ。俺が本当に人間じゃねーのか確かめてやるよ」
「テメェ!触んじゃね…ッ」
「ふふ」
イルーゾォが近付いて女の耳を掴もうとした瞬間、女はくすりと笑った。
その笑みがどうにもいやらしいもので俺とイルーゾォは思わず瞬きもせずにその笑みを見る。
「…お前ら…随分とイイ精気を持ってるな。ふむ。これがスタンド使いとやらか…興味がある」
「…?なに言ってる。おい、勝手に動くんじゃあ…なッ!?」
「!?なんだ!?炎か!?」
女を囲む様にして現れた青い炎に俺とイルーゾォはスタンドを発現させる。…クソッ!!やべェ、どうすんだよ!?
「…狐火。家に帰るぞ。興味があるが、そろそろ帰らぬと私の主人が煩いんでな」
「主人〜!?け、結婚でもしてんのか!?」
「…?結婚…?…ああ。違うぞ。私の飼い主のようなものだ。人間に飼われているのはかなりの屈辱だがな」
「……飼い主…」
イルーゾォがごく、と喉を鳴らしてそう呟いた。…こいつぜってー変な妄想してやがるぜッ!ぶっ飛ばしてやりたいのを我慢して女の腕を掴む。絶対に離さねえ。
「…っ、痛い…」
「あ、わ、悪りぃ!」
「馬鹿野朗!離すんじゃあね…ッ!!おい、待てッ!」
俺が離した瞬間花びらが部屋に舞った。
女がその花びらの中で優雅に笑っている。人間に興味が湧いた、と笑うその女に柄にもなく美しいな、と思った。…じゃねェ!逃がさねェッ!!
死に物ぐるいで女を抱きしめる。眼鏡に花びらがくっついたのに苛ついて眼鏡を床に放り投げた。女の腰を掴んできつく拘束する。
「…!お前…?」
「んだよッ!うおッ!?」
「っ、こら、なにをして、んぅっ」
「…ッ」
………は?
……すげえ、柔らかい…
「狐火ッ!!やめろ!」
『ですが桜様!!守護の契約が新たに更新された今!旧主人には消えて頂かなくてはならない決まりです!!』
「まて、狐火ッ!!ちがう、これは任意じゃない!!待て、待ってくれ…!!!いやだ!やめろ!!」
「お、おい、どうした!?」
『桜様…旧主人が今お亡くなりになりました』
「………おい。離せ」
「ッまた逃げようと、」
「……もう帰る家はなくなった。離せ!!」
俺の腕を振り解いてソファにどかりと座る女…桜は不機嫌そうに、悔しそうに顔を歪めている。さっきから意味のわからない話を炎としていたが、それと関係があんのか?
「くそ…ッ!またこれで…!ふざけるなッ!!いつになったら私は妖子に戻れるんだ!!」
『桜様…気を確かに』
「落ち着いていられるか!!この人間が死ぬまで私はろくに術も使えないんだぞ!あいつらにまた馬鹿にされる…!!」
『桜様…もう少し貴女様には用心という言葉が必要なのでは…?』
「…狐火、貴様…ッ」
『ひぃぃい!桜様落ち着いて下さいまし!』
俺とイルーゾォがぽかんとしている最中、桜は美しい顔を歪めてどうすれば、と頭を抱えている。
「おいそこの…蒼の人間」
「!な、なんだよ!」
「今日からお前が私の主人だ」
「…は?」
「さっき契約を交わしただろう。大変不本意だが!」
「……は?」