第一章 妖と暗殺者
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桜が散る。
ひらひら、ひらひら。
まるで儚い命の様に、散っていく。
「…くそ…」
任務に失敗した。
ターゲットを見つけて殺す筈が、逆に返り討ちに遭ってしまった。情けないことに腹から血が止まらず、意識が朦朧としている。
くらくらと揺れる視界の中で見つけたのは、大きな木だった。見たことのないピンクの花弁に幻覚か、と目を凝らす。
「…死ぬのか、俺は…」
もう駄目だ。ここで、俺は死ぬ。
暗殺者として、死ねるなら本望だが。
…だが、死ぬ前に、何故かあの花の名前が気になった。
「…ぅ、ここは…」
「ああ。起きたか」
「お前は…?」
「…まず人間。お前が名乗るべきだろう?」
妖しげな笑みを浮かべながら俺の瞳を覗き込む女に息を呑む。…綺麗だ。こんな女、初めて見た。銀色の艶やかな長い髪に、紅い血の色のような大きな瞳、水分で出来ているのかというように潤った唇、そして何より…頭に猫のような耳がついていた。
思わず触れる。
柔らかくて、艶々としていた。
撫でるように、愛撫するように指で擦り付けると女は目をとろりとさせて睨んできた。
思わず喉が鳴る。
……、こんなことをしている場合じゃねぇ。
「っ…ンっ、な、にをする」
「…悪い。触りたくなった。それはスタンドか?」
「すたんど?なんだそれは」
「…スタンドじゃないのか?ならそれは…」
「待て。私の質問に答えろ。スタンドとはなんだ。人間」
「スタンドは…自分の精神の擬人化のような物だ。人によって違う能力がある。…お前のそれはなんだ」
「私は妖だ。狐の妖怪。もう五百年近く生きている」
「…妖?」
…そんなものがいるのか。
妙に信じられてしまうのは、スタンドという有り得ない物がこの世にあるからということと、この女が美しすぎるからか。
俺よりも何倍も歳上の女を、少しだけ観察する
。
…やはり人間とは思えないほど、綺麗だ。
「何故、俺を助けた」
「…気まぐれさ。何百年も生きていれば気まぐれで怪しい男も助けてしまうようになる」
「…俺は暗殺者だ。俺のことを知ったからには死んでもらう」
「…」
俺の言葉にぽかんとした様子の女に、俺もぴたりと動きが止まる。…なんだ。
じっと女の次の言葉を待っていると、次の瞬間にはけらけらと笑われた。
「人間が私を殺せる訳なかろう。お前、面白いことを言うな」
「…殺せる」
「…ほう?どうやって?人間にやられていたお前が、妖の私を?さあ、殺してみろ」
ころんと俺の横に寝転がる女は、にやにやと俺を見上げている。
ジャポネーゼの浴衣というものを着ている女は白い肌がかなり露出していて、卑猥な格好で寝転んでいる。…場違いな欲求が胸をかすめた。ぐっ、と喉を鳴らして女を見つめる。
「いいのか?…殺すぞ」
「…ああ。私ももう生きるのに飽きてきたところだ。ちょうどいいかもしれん」
「…そうか」
白い細い首に指を絡める。
ぐっ、と力を入れると女は幸せそうに目を細めた。…何故そんな顔をする。死にたくないと泣き喚かれたほうがまだマシだ。
すると、女の瞳からぽろりと涙が流れた。
それを見た瞬間、首から手を離して女を抱き締めていた。……意味がわからない。女も混乱しているようだ。…俺も分からないのだから、女はもっと混乱しているだろう。
ただ、この女の涙が物凄く俺を不快な気分にさせたのだ。
「…泣くんじゃねぇ。不快だ」
「…不快?なぜ?」
「…わからない」
「…」
「…お前の名前は…いや、あの木の名前が知りたい。俺が意識を失う前に見たあの木の名前だ」
「……桜だ。私の名前も桜という」
「…そうか」
「俺の名前は、リゾット・ネイロだ」
ひらひら、ひらひら。
まるで儚い命の様に、散っていく。
「…くそ…」
任務に失敗した。
ターゲットを見つけて殺す筈が、逆に返り討ちに遭ってしまった。情けないことに腹から血が止まらず、意識が朦朧としている。
くらくらと揺れる視界の中で見つけたのは、大きな木だった。見たことのないピンクの花弁に幻覚か、と目を凝らす。
「…死ぬのか、俺は…」
もう駄目だ。ここで、俺は死ぬ。
暗殺者として、死ねるなら本望だが。
…だが、死ぬ前に、何故かあの花の名前が気になった。
「…ぅ、ここは…」
「ああ。起きたか」
「お前は…?」
「…まず人間。お前が名乗るべきだろう?」
妖しげな笑みを浮かべながら俺の瞳を覗き込む女に息を呑む。…綺麗だ。こんな女、初めて見た。銀色の艶やかな長い髪に、紅い血の色のような大きな瞳、水分で出来ているのかというように潤った唇、そして何より…頭に猫のような耳がついていた。
思わず触れる。
柔らかくて、艶々としていた。
撫でるように、愛撫するように指で擦り付けると女は目をとろりとさせて睨んできた。
思わず喉が鳴る。
……、こんなことをしている場合じゃねぇ。
「っ…ンっ、な、にをする」
「…悪い。触りたくなった。それはスタンドか?」
「すたんど?なんだそれは」
「…スタンドじゃないのか?ならそれは…」
「待て。私の質問に答えろ。スタンドとはなんだ。人間」
「スタンドは…自分の精神の擬人化のような物だ。人によって違う能力がある。…お前のそれはなんだ」
「私は妖だ。狐の妖怪。もう五百年近く生きている」
「…妖?」
…そんなものがいるのか。
妙に信じられてしまうのは、スタンドという有り得ない物がこの世にあるからということと、この女が美しすぎるからか。
俺よりも何倍も歳上の女を、少しだけ観察する
。
…やはり人間とは思えないほど、綺麗だ。
「何故、俺を助けた」
「…気まぐれさ。何百年も生きていれば気まぐれで怪しい男も助けてしまうようになる」
「…俺は暗殺者だ。俺のことを知ったからには死んでもらう」
「…」
俺の言葉にぽかんとした様子の女に、俺もぴたりと動きが止まる。…なんだ。
じっと女の次の言葉を待っていると、次の瞬間にはけらけらと笑われた。
「人間が私を殺せる訳なかろう。お前、面白いことを言うな」
「…殺せる」
「…ほう?どうやって?人間にやられていたお前が、妖の私を?さあ、殺してみろ」
ころんと俺の横に寝転がる女は、にやにやと俺を見上げている。
ジャポネーゼの浴衣というものを着ている女は白い肌がかなり露出していて、卑猥な格好で寝転んでいる。…場違いな欲求が胸をかすめた。ぐっ、と喉を鳴らして女を見つめる。
「いいのか?…殺すぞ」
「…ああ。私ももう生きるのに飽きてきたところだ。ちょうどいいかもしれん」
「…そうか」
白い細い首に指を絡める。
ぐっ、と力を入れると女は幸せそうに目を細めた。…何故そんな顔をする。死にたくないと泣き喚かれたほうがまだマシだ。
すると、女の瞳からぽろりと涙が流れた。
それを見た瞬間、首から手を離して女を抱き締めていた。……意味がわからない。女も混乱しているようだ。…俺も分からないのだから、女はもっと混乱しているだろう。
ただ、この女の涙が物凄く俺を不快な気分にさせたのだ。
「…泣くんじゃねぇ。不快だ」
「…不快?なぜ?」
「…わからない」
「…」
「…お前の名前は…いや、あの木の名前が知りたい。俺が意識を失う前に見たあの木の名前だ」
「……桜だ。私の名前も桜という」
「…そうか」
「俺の名前は、リゾット・ネイロだ」
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