書きかけ小説

 マーロックの決死の攻撃により辺りは瓦礫とかしていた。中央の台座へと続いていた橋は何本かは途中で折れて渡れなくなり壁側で垂れ下がっていた長い旗は焼け焦げて煙があがり中央の台座は砕け散っていた。

 メイシーは瓦礫を登り上の瓦礫をどかすと飛び越えた。

 アーロンはライトアローでクレイの手枷を外した時から長い旗に掴まっていたがその旗は落ちなかったものの半分は焼けて焦げていた。爆発のあと煙を吸い込んだのか咳き込んだ。
じいちゃんすげぇ~なと言うと手を離し下へと飛び降りる。

 ランスは先に武器とシールドを滑らせて瓦礫の外に出すと壊れた中央の台座から這い出てきた。立ち上がり周りを見渡しながらアクセル?とアクセルに声をかけた。

 すると大きな瓦礫が動いた。大きな瓦礫を持ち上げて横にどかしてアクセルが立ち上がりここだよと返事が返ってくる。

 中央の台座に繋がれていたクレイは爆発の衝撃で壁側の方に飛ばされていたためボロボロで咳き込みながら立ち上がろうとしていた。それに気付いたメイシーとジェストロはクレイに駆け寄って二人で左右に分かれて支えた。クレイの右手に繋がっていた鎖は爆発の際に外れていた。クレイは立ち上がるとジェストロに気づき声をかけた。

「ジェストロ……戻ったんだね」

 その言葉の通りジェストロの姿は極悪の書を持つ前の姿、青と紫色の服に戻っていた。

「友達を残して逃げるなんて出来なかった……君はいつも……僕を……助けてくれたろ?」

 それを聞いてクレイは今度はメイシーの方を向いた。

「メイシーありがと君こそ真のナイツだ」
「あら?ナイツの心得に従ったまでよ?」
「うわぁ!見て!」

 メイシーが笑顔で言うとジェストロはなにかに気付き地面に落ちていた何かを拾い上げた。それは脱け殻となったモンスターの書だった。あれだけ分厚かったモンスターの書は中のページが消えて無くなり薄くなっていた。あの怖い顔や口もなくなっていた。

「完全に脱け殻になってるみたい」
「だといいけど」

 ジェストロの言葉にメイシーは不安そうにそうかえした。
 ブラックナイツのコックピットの蓋を開けて中からロビンが顔を出し辺りを見渡した。

「マーロック!」

 ロビンは辺りを見回してデータカリバーを探す。見つけると急いでブラックナイツから飛び出し落ちていたデータカリバーに近づいた。

「マーロック?」

 声をかけながら持ち上げようとする。その声にマーロックの反応はない。ナイツとジェストロは駆け出しロビンはデータカリバーを持ち上げた。その周りにナイツとジェストロが集まる。

「まただ……マーロックが自分を犠牲にして僕らを助けた」

 クレイの言葉の後データカリバーは何度か短い点滅をした。これを見たロビンは少し考えた。

「みんなごめん!僕先にフォートレックスに戻ってる!」

 ロビンは何かを思い付いたのか急いでブラックナイツに乗り込むと走りフォートレックスに戻った。

「ねぇ……この本どうしよう?」

 ジェストロは脱け殻となったモンスターの書をどうしようかと悩んでいた。脱け殻になった今、誰かの手に渡ったとしても、何も起きないが、こんなところに、置いといても、いいのかと、それに……色々な悪いことを一緒にしてきた仲だった……最後は裏切られたが、まさかモンスターの書が、最強最悪のモンスター、モンストロックスだったとは考えもしなかった。
 モンスターの書と一緒に王国中で悪さをしたが全部はモンストロックスの企み。それに利用されたのだと、最後の最後で、気付かされた。脱け殻となったこの本をどうするかナイツ達に聞いてみた。

「そんな本その辺に捨てとけばいいのよ持っていたとしてもいいことなんてないわ」

 メイシーはこれまでこの本には、散々な目にあってきた。ジェストロも色々とあった。やっぱり持ってない方がいいと思い始める。

「せやなどうせこんなとこ来たがる奴もおらんし」

 アーロンの言う通り、確かにメガマグマ神殿に、来たがる人なんて、居るわけない。居るとすればそれは…物好きな金持ちぐらいだ。

「僕もそれに賛成」
「おいらも」

 ランスもアクセルもそれに賛成だった。ジェストロもそう思い最後にクレイに聞いた。

「クレイは……どう思う?」
「僕もそれがいいと思うよ。確かにもしかしたら危険かもしれない。だけど、その時は僕らがまた戦えばいいだけだ。僕らはナイツだからね」

 クレイの言葉を聞いてジェストロは本をこのままにしておくと考えを決め足下に置くと考えるのをやめた。

「さてと、こんなとこさっさと出で、お風呂に入りたいよ。僕の自慢の顔が汚れてる。それに鎧もデニスに綺麗に拭かせないと」

 綺麗だった鎧は所々黒く汚れていた。ランスだけではないみんなさっきまでの戦いで汚れていた。

「そうね。こんなとこ早く出ましょ」
「せやな」
「おいらは腹が減った」

 ランスのその言葉にみんな賛成しそれぞれ歩きだした。ジェストロも歩き出そうとしたが、クレイが中央の台座の方を見ていた。

「どうかしたの……クレイ?」
「あ、ごめんみんな先に行ったんだね」

 言葉をかけるとクレイはこっちを向いて少し微笑みながら返事をした。ジェストロはそれを見て自分も少し笑うが何故だか、クレイのその笑みが少しだけほんの少しだけぎこちない気がした。いつも見ていた笑顔と同じだと思いながら何故だか違うと思う自分がいた。

「こんなとこ早く出ようよ」

 気のせいだと思いながら先に行ったみんなを追いかけるために走った。
 ジェストロがみんなを追いかけた後もクレイはまだ笑っていた……でもその笑みはさっきまでの優しい笑みではなくなっていたが前を向いて走ってるジェストロには、その顔は見えなかった────





 ナイトン王国に戻ったナイツ達を待っていたのは、お祝いムードとなった王国だった。王国の民や他の町や村から人々が集まり王国は賑わっていた。

「すごかったねよね~アリスまたしてもネックスナイツが王国を魔の手から救ってくれました!勇敢なヒーロー達に感謝です」

 ハーブとアリスはスタジオでお祝いムードの王国を中継していた。





「そして王国が暗闇に包まれることはなかった!魂を潰されるような。目を背けたくなる暗闇が――」
「もうみんなわかってますよあなた」

 ハルバート王は今度こそちゃんと言おうとしたが王妃に言われ気づいて言うのをやめた。

「ああそうか、そこでナイトン王国の守護者の勲章をネックスナイツの諸君に授けようと思う……クレイ・モーリントン」

 ハルバート王が名前を言うとクレイは笑顔で手を振りながら前に少し出た。

「メイシー・ハルバート」

 メイシーも同じく手を振りながら少し前に出た。

「ランス・リッチモンド」

 かっこよく決めながら手を振り少し前に出た。

「アーロン・フォックス」

 みんなに見えるように手を振りながら少し前に出た。

「そしてアクセル」

 笑顔で手を振りながら少し前に出た。

「5人の勇敢なナイツ達。そして忘れてはならぬ。王国の魔術師マーロック2.0に」

 装置を4人の家来ビットに担がれてマーロックが現れる。マーロックは笑顔でみんなに手を振っていた。

「それからジュニアナイツのアヴァとロビンにもだ」

 二人も観客に手を振っていた。

「データカリバーのバッテリーを交換しただけで直るとはね」

 あのあと急いでフォートレックスに戻りデータカリバーのバッテリーを交換したところ直り台座に差し込むとマーロックが現れた。
 もしかしてと思ったロビンも含めてみんなこれには驚いていた。

「手のかかる人だけど……居てくれた方が楽しいわ」

 おっどろおっどろと踊りながら可笑しくなったりフリーズしたりと色々と手のかかる魔術師。だけど居るのと、居ないのでは全然違う。居てくれないと楽しくないとアヴァは思っていた。

「もうスピーチはその辺にしてパーティーを始めるとしようじゃないか《ドカントアラヒィレオイワイポーン》」

 目立ちたがりやのマーロックはスピーチを切り上げると魔法の呪文を唱えながら杖を回して上に向け魔法を放つとシールドが消えて空に盛大な花火が打ち上がり観客は歓喜の声をあげ喜んだ。

「わ~い!戻れてよかった!」

 そこへジェストロが3つの色の違う玉を持ちながら床で一回転して現れ続けざまに3つの色の違う玉をジャグリングした。

「い痛い…痛い、痛い!もう!」

 最初はよかったが直ぐに失敗して玉が3つとも頭に落ちてきた。上を向いて空を見上げる。そこには青い空に後ろに大きな雲そこに花火が綺麗に打ち上がっていた。

「ジェストロ大丈夫?もしかしてお化けでも見た?」
「えっ?あぁうん大丈夫平気さ……ただ綺麗だと思ってへへ」

 ジェストロとクレイ、他のネックスナイツ達も王様と王妃様もアヴァとロビンもこの光景に見とれ笑顔で笑いあっていた。
 マーロックは楽しくなりどんどん魔法の花火を打ち上げていた。

「どおぉいいぞもっとじゃ!ハハハハハ~いやっぱり魔法は最高じゃろう…ほれ!」








 未だに沢山の花火を打ち上げているマーロック。それを見てクレイとジェストロは笑いあっていた。二人の話し声はみんなには聞こえてなかった。みんなマーロックの魔法を夢中で見ていたからだ。

「流石目立ちたがりやの魔術師だね」
「確かに…僕もあれくらい出来ればよかったのに…」

 昔、少しの間だけマーロックの弟子になったがジェストロは、ダメダメだった。マーロックに、教えてもらった。《フワフワポン》を使ったところ、どうゆうわけか、フワフワと浮く筈が消してしまうか豚に変わってしまった。それを見てマーロックは、これじゃ《ブタブタポン》じゃなと言っていた。緊張するとジャグリングをしてしまう。でもそれが、あったからマーロックが、道化師になれるかもと言ってきたのだろう。笑われるのは嫌だっただけど、王室道化師は、笑われるのではなく笑わせるのが仕事だとマーロックに言われてやってみた。王様も王妃様もすごく喜んで誉めてくれたから王室道化師になった。

 でも、王室道化師になったものの芸を見せようとして失敗。物を壊しそうになったりあげくのはてにはあの日は電気メイスで王国を停電にしてしまった。その時、観客にすごく笑われた。すごく落ち込んでクレイが励まそうとしてたけどジェストロはそこから逃げ出した。そのあとモンスターの書と出会って悪の道に走った。だけど、利用されてたのだと最後の最後でわかったけど……モンスターの書との一緒にした悪事……すごく楽しかったって言ったらクレイ怒るかな。

「ジェストロは…このあとどうするか決めているの?また王室道化師に戻る?」
「コントタウンでみんなを笑わすのが楽しいと思ったからそれもいいかなって……」
「ジェストロなら出来るよ。僕は信じてるから」
「ありがとう……すごく嬉しいよ」

 最後の魔法の書、裏切りの書を探してコントタウンに探しに来たジェストロ達はその際ジェストロとモンスターの書はコンビを組んで観客を笑わせた。少しの間だったけどそれでも観客を笑わすことが嫌だとは思わなかった。

 元々は村人を悪の軍団にいれようとモンスターの書が考えたこと。だけど、ジェストロはモンスターの書とのお笑いがむしろすごく楽しかった。そのあと、モンスターの書が盗まれ。ステージに立てなくなった時、クレイに励まされ一人でショーに出た。最初は直ぐにステージから降りようとしていた。けれども観客が励ましてくれたおかげで一人でも出来た。

 そんなこともあったからそれもいいかとジェストロは考えていた。あと小さい時の夢のお天気お兄さんもいいかなとジェストロは考えていた。

「コントタウンか、あの時のジェストロすごく面白かったよ。最初は何が何だかわからなくて村人全員を人質にして自分と同じ格好させてるのかと思ったよ」
「ほんとは襲う筈だったんだ。だけどジョークス・ナイトリーのお笑いを見てて襲う気が無くなったんだ」
「そうだったんだ」

 元々はコントタウンをモンスターの書とマグマモンスターと共に襲おうとしたが村人は誰一人、外に居なかった。何故だと思いながらジェストロ達が探すとコントクラブで、すごく面白くなったジョークス・ナイトリーのお笑いを見てた。でも本当は裏切りの書を使って他のお笑い芸人からギャグを盗んで自分のものにしていただけだった。

 そんな話をしながら二人で笑いあってた時、反対側のゲートから招かれざる者達が現れた。

「おやおやこれはすごい賑わいのようだ平和になったことに浮かれているようだ……」

 ナイツ達はその声の主の方を向いた。そこにいたのはマグマー将軍ひきいるマグマモンスターの大群だった。

「マグマモンスター。でもいったいあの爆発でやられたんじゃそれにどうやって入って」
「あんなことでやられる我々ではない。それと門が開いていたのでな。そのまま普通に通ったまでだ」

 その疑問にマグマー将軍は答えた。そもそも前に髭を着けただけのラバリアとモルターが激辛チリ祭りに参加していたのに誰も気付かない程だった。マグマモンスターはやっつけられたからと開けっぱなしでも大丈夫だと思ったか、あるいは門番が仕事をしていなかったのだろう。

「門番はなにをしておる!」
「多分。みんな祝いに加わってんとちゃう?」

 マグマー将軍の言葉に王様は門番に怒っていたがこの賑わいようだ。アーロンの言う通り門番もお祝いに加わって居ても可笑しくない。

「あなた達まだやるつもりなの?大人しくしてればいいのに」
「我々がそう簡単に大人しくなると思うな。さぁ皆の者モンストロックス様の為に奴らを倒すのだ!」

 ため息をつきながらメイシーが言うと、すかさずマグマー将軍が反論した。確かにメイシーの言う通りもう、モンストロックスは居ない筈それなのに何故戦うのか、ジェストロは疑問に思うがマグマー将軍の掛け声と共にマグマモンスターがいっせいに走り出してきた。ナイツ達は武器とシールドを構え、走りだし台から飛び降りた。アーロンはシールドに飛び乗り勢いよく飛び出した。

「モンストロックスはもう居ないのよさっさと諦めて降参しなさい!」

 メイシーはグロブリンの攻撃を避けるとメイスでぶっ飛ばし続けざまに近くの数体のスカリーをメイスでぶっ飛ばした。

「……果たしてそれはどうかな……」

 いったいどうゆう意味なんだと思うがそんなことを考えてる暇はない。

 メイシーはラバリアにメイスで、殴りかかるが、避けられ蹴られる。だが直ぐに立ち上がりお返しよと言わんばかりにメイスでぶっ飛ばした。

 アーロンはシールドで、飛びながら、ウィパレラを見つけて、おばはん呼ばわりして、ウィパレラを怒らせ注意を、引き付け。空中からライトアローで攻撃した。

 ビーストマスターは、ランスを見つけて、鎖付きグロブリンで攻撃するが、ランスはかわして、槍で攻撃をしたあとビーストマスターの反撃をバックステップでかわしていた。

 アクセルはバーンジーとスパークスの攻撃をアックスで防ぐと押し返しアックスを横に振りはらって吹っ飛ばした。

「みんな頑張れ~」

 ジェストロは戦えないから応援する事しか出来ない。マグマモンスターは一緒に悪いことをしてきた仲だったが今の自分は前の悪いことをする前の自分そもそもマグマモンスターはモンストロックスの手下。
 だからジェストロはネックスナイツを応援していた……それでも頑張ってほしいと思う自分が居たり居なかったりとしていた。
 ジェストロが応援しながらナイツ達の戦いを見ているとクレイはマグマー将軍と戦っていた。
 二人は剣と剣をぶつけ合いながら時にかわし時に防ぎ弾き返していた。
 ジェストロは一番にそこを応援していた。

「なんかさっきまでの勢いと違くないかい?」
「俺もそれ思ってたところや」

 ビーストマスターと戦ってるランスの呟きに直ぐ近くに居たアーロンは返す。
 確かにさっきまでのマグマモンスターと何かが違う。マグマモンスターの中にさっきの戦いからいる悪の信者も居る。
 まるでさっきよりも更に力を出さなければと言うような勢いだった。

「まあでも、このイケメンな僕にかかればこんなの楽しょうわっと!」

 最後まで言いかけた時、ビーストマスターの鎖付きグロブリンに噛みつかれそうになり咄嗟に避けた。

「なんやイケメンな僕にかかれば楽勝なんやろ?」
「すぐ蒸し返すかなそれ」
「そこ!遊んでないでこいつら倒すわよ!」

 メイシーは殴りかかるがラバリアはかわす。何度か繰り返すその行動にメイシーはイライラしていた。

「ちゃんと戦いなさいよ!」
「戦っているわよ。ちゃんとね……」

 ラバリアはふてきに返すだけだった。それを見てメイシーは再びハンマーで殴りかかった。

 ナイツ達の戦いを見ていたマーロックはこれは速くネックスパワーの準備をしなければと考えていた。

「アヴァ、ネックスパワーを送るのじゃが」
「マーロック。この装置でネックスパワーを送るならフォートレックスに戻った方がいいですよ。パワーが安定していない分電力が足りないんですよ」

 最初の装置は一人にしか送れなかったり、ゲームをしてダウンしたり声が変わったりと安定しなかったりと不具合が出た。だが装置をバージョンアップすることにより問題はなくなったかと思われたが直ぐにマーロックが可笑しくなり突然おっどろおっどろと踊り出したりとそれでも安定しなかったがフォートレックスに移ることでその問題は一時的に解決していたがその装置に入ると言うことは同じことである。バッテリーが持たなければ1回しか送れない。取り替えられるバッテリーがあれば話は別だがそれでも何度も変えていたらきりがない。ならフォートレックスに戻った方が得策だろうとアヴァは結論付けた。

 だが敵がそう簡単に行かせるわけもなくマーロックは悩んでいた。バッテリーが持つのは多分一人分。全員に送ればバッテリーが持たない。つまり送れるのは一人に限られる。

「敵が行かせてくれるとは限らん。フォートレックスに戻るよりもここでパワーを渡すの方が得策じゃ」

「…わかったわ…」
「大丈夫なの?」
「やるしかないわ」

 ロビンの言葉にアヴァは決め少しでも安定させようとタブレットと装置をいじっていた。

 クレイとマグマー将軍はまだ戦っていた。マグマー将軍が剣で斬りかかるがクレイはシールドで防いで押し返し直ぐに横に斬りかかる。だけどマグマー将軍はそれを跳んでかわす。

 周りの観客も王様も声援を送っていた。でも何故かジェストロは途中から違う意味で見ていた。それはまるで……何かを待っているかのようにジェストロには何故かそう見えた。

 メイシーはグロブリンをメイスでぶっ飛ばしたあと、近くのスカリーを蹴り飛ばす。そこへフレイマの火の玉が飛んでくるが横に跳んで避けメイスを回して投げ、フレイマにぶつけて吹っ飛ばした。

 モルターがランスに殴りかかるが槍を縮めて下に向け一気に伸ばして上にかわすとモルターの後ろに着地して槍でなぎ払った。

 アクセルはアックスを縦に振り下ろしバーンジーを地面に倒すとその上に跳び乗り踏みつけスパークスをアックスを横にして斬ると跳び引いた。

 クレイはマグマー将軍を剣で横に斬り吹っ飛ばすとマーロックに声をかけた。

「マーロック!パワーを!」
「よしネックスパワーの準備じゃ!」
「了解」

 マーロックの周りをネックスパワーが回り始める。
アヴァはタブレットを構えて準備をする。

 その時マグマー将軍が動いた。突然走りだし台の方を目指した。それをクレイが追うように走る。

 台は上がっている為登れない筈どうするのかとジェストロは見ながら考えるとアクセルと戦っていたバーンジーが台の下に着く。ジェストロがアクセルを見るとスパークスがアクセルを押さえてる為追うことが出来ない。

 それを見たアーロンが止めようとシールドの向きを変えてクレイ達の方を向いた瞬間、隙とみたウィパレラがムチを振りシールドに当てた。それによりシールドが弾かれアーロンは地面に落ちて止めることができなくなった。

 台の前に着いたマグマー将軍は走りながら跳び上がりバーンジーを足場にして再び跳んで台の上に跳び乗った。

「うわっ!」

 ジェストロは飛び乗ってきたマグマー将軍に驚いて尻餅をついた。

 クレイも追うようにかけるがそれに気付いたバーンジーが殴りかかる。クレイは攻撃をかわして頭に跳び乗り足場にして再び跳んで台に跳び乗る。

「クレイ止めて!」

 メイシーは両親が危ないと感じクレイに叫んだ。ジェストロはまだ座っている。
 続けてクレイが飛び乗ってジェストロの横を走り抜けようとする。
 ジェストロが立ち上がろうとして上を見た時にまたメイシーが叫ぶ声が聞こえた気がする。
 ジェストロはその時ある一点を見ていた。
 クレイがジェストロの横を通りすぎようとした時ジェストロは見た気がする。
 見てはいけないものをそんな筈は無いものを……見た気がする。
 クレイの目が一瞬だけ──金色に変わった瞬間を──その時間だけ何故かスローモーションのように少しずつ動くかのようにジェストロの横をクレイが通る。
 一瞬だけそう見えると直ぐに目は元の黒色に戻りクレイはジェストロの横を通りすぎていった。

 その時にジェストロが感じていた違和感の正体に気付いた。確かにあれはあの笑顔はクレイがしている笑顔。だけどあの時の笑顔はぎこちないと感じた。
 それは誰かがクレイの笑顔を真似して自分に向けたのだと無意識のうちにわかったから。だからいつもしているクレイの笑顔であってもいつもの笑顔と違うと思った。
 それがぎこちないと思った理由だったのだとこの時始めて気付いた。そしてこのままでは不味いと思った。
 クレイではあってクレイではない相手とマグマー将軍はハルバート王と王妃の所に向かっている。
 このままじゃネックスナイツは終わりだ。

 それにマーロックがネックスパワーを送ろうとしている。もし送ったら誰もクレイにかなわなくなる。そもそもみんなよりクレイは飛び抜けて強い。このままでは不味い、どうすればどうすればいいんだと、頭では考えるがどうすることも出来ない。あと少しでクレイはハルバート王の元に着く。ハルバート王の慌てる声、クレイとマグマー将軍の足音。自分の心臓の跳ねる音。もう時間がない。ジェストロは息を吸い込み勢いよく叫んだ。


「マーロック!ネ~ックスn──」
「ダメーー!!」

クレイが言い終わる前にジェストロの言葉に遮られた。それにより辺りは静まり返る……いち速くその言葉に反論したのは──メイシーだった。

「ジェストロ!何で止めるのよ!このままじゃ、パパとママが危ないのよ!」

 ジェストロはメイシーの言葉を聞いてない。いや聞こえてない。その目は真っ直ぐにクレイを見ていた。
 クレイもジェストロを見ていたがその目はまるでこっちを睨んでいるかのようだった。

「ジェストロなにか言いなさいよ!」

メイシーが叫ぶ、その声が聞こえジェストロは心を決めた。

「──君は──誰なの──」

 それを聞いた観客達はいっせいに笑い出した。何言っているんだ。やっぱりあの道化師は笑わせてくれる。頭でもおかしくなったか。クレイに決まっているじゃない。そんな風に観客達は言い始める。
 でも今のジェストロは笑われても構わない。今はその答えが知りたい。結論は出ている。あとはその答えを聞くだけ。

「また頭が可笑しくなったのかな?」
「ジェストロ大丈夫やろかマグマモンスター見て、おかしくなったんやろか?」
「ジェストロ何言ってるのよ!」
「お腹が空いて可笑しくなったのかな?」

 ランスは呆れアーロンは心配しメイシーは叫んでアクセルはお腹が空いて可笑しいのかと心配でアヴァとロビンは不思議に首をかしげマーロックは静かに聞いていた。

「君は……クレイじゃない君は誰なの……」
「……何でそう思うの…ジェストロ……?」

 クレイは静かに聞いた。でもその目はさっきと変わらない。
 それでもジェストロは意を決して言った。答えを知るために。

「クレイの……クレイの目は金色には光らないそれに……僕にそんな目を向けたこと一度だってない。だから君はクレイじゃない!」

 最後の方はいつものジェストロなら言わない力強く言っていた。
 周りの観客はまだ笑っている。ナイツ達は心配してハルバート王と王妃は困惑し、マグマモンスターはじっと動かず、マグマー将軍はハルバート王に剣を向けながらこっちを見てる。

 するとクレイは小さく笑いだしその笑いはだんだんと大きくなり最後には大きな声で笑っていた。
 でもその笑い方はいつものような笑い方じゃなく相手を見下すかのようなクレイなら絶対にやらない笑い方。
 その笑いにさっきまで笑っていた観客は一瞬で静まり返った。
 ナイツ達は何が起こったのかわからないと言う顔をしていた。
 笑い終わるとクレイはこっちを向いていつもの笑顔でジェストロに言った。

「──よくわかったなジェストロ──」

 その声はさっきまで聞いていたクレイの声ではなく別の声に変わっていた。
 でもジェストロは知っている声だった。
 何度も一緒に悪いことをしてマーロックの魔法で死んだと思っていた。
 もう聞くこともないと思っていたあの声を聞いてジェストロは鳥肌がたった。

「老いぼれマーロック、さえ騙せれば問題ないと思っていたがまさか最後の最後で吾輩がへまをしてしまうとはないや貴様らの仲のせいか……」

 クレイなら絶対に言わない言葉や言葉遣いに観客はざわめき出した。
 まさかあの最強最悪のモンスターが復活したのか?そんなわけないあいつはネックスナイツが倒したんだ!でもクレイがあんなしゃべり方なんかしないそんな話が会場にこだまする。

「観客は信じてないようだがジェストロが正しい……そうだ。吾輩は最強最悪のモンスター、モンストロックスだ」

 薄笑いを浮かべながらモンストロックスが言い終わると観客は本当なんだとわかるやいなや会場全体から悲鳴や叫び声があがり我先にと逃げ始めた。観客席に沢山居た観客は誰一人として残っていない。残っているのはスタジアムに居るジェストロ、四人のナイツ、マーロック2.0、アヴァとロビン、ハルバート王と王妃、沢山のマグマモンスターそしてモンストロックスだけだった。ついでにスタジオにいたアリスはじゃあねと言いながら逃げて、ハーブだけが残っていた。

 目の前の相手がいったい誰なのかわかった。でも聞かずにはいられなかったのだろうメイシーは声が震えながら聞いていた。

「そんな、そんな筈ない!だってマーロックが!」

「そうだな、確かに吹っ飛ばされた。だが我輩は悪の魔導師、体の形は好きに変えられる。それにあの時は儀式の最中、あの好機を逃すわけがない。爆発の勢いに乗じクレイの体を奪ったのだ。貴様らはマーロックの魔法のせいで吹っ飛んで見ていなかったのが運のつきだな。老いぼれは老いぼれでバッテリーを変えるまで出てこれなかったからな」

 確かにあの時マーロックの魔法でみんな吹っ飛ばされ瓦礫の下に埋もれてたり倒れていたりした。旗に掴まっていたアーロンやブラックナイツの中に居たロビンでもあの様子じゃ見ていなかったとわかる。

「じゃ、じゃあ、あれ全部あなたが言った事なの!ジェストロや私に言ったことやマーロックを心配してかけた言葉も!あれ全部…!」

 メイシーは叫んでいた。心の底から叫んでいた。モンストロックスを許せないが自分も許せない。仲間が自分が知らない間に乗っ取られていたことに、気づかないで一緒に居たことに、怪しいと微塵にも思っていなかった自分に、心の底から自分に怒っていた。

「そうだ。なかなかの名演技だったろ。いい子ちゃんなら絶対に言うだろと思った言葉をかけてやったまでだ」

 そしてその様子をまるで嘲笑うかのようにただ淡々と答える。

 みんなどうして気づかなかったのかと後悔していた。あのランスでさえ後悔していた。
 その様子を見てどうして速く気づかなかったのかと後悔するジェストロ。

「さて、無駄話はこれくらいにナイツども大人しくしろ。さもなくばこの二人の命はないと思え」

 マグマー将軍はハルバート王と王妃に剣を向けていた。周りには多くのマグマモンスター、そしてクレイが抜けた今ナイツに勝ち目はない。ナイツ達は大人しく、マグマモンスターに拘束される。

「マグマ戦車は持ってきてあるんだろうな」

「はっ!仰せつかった通りに持ってきてありますモンストロックス様」

「ならいい。ナイツどもの武器を取り上げマグマ戦車に入れておけハルバート王と王妃もだ。吾輩はあの老いぼれに用があるからな」

「マグマー!」
「いい返事だ」

 モンストロックスは言い終わると体の向きをマーロックの方に向けた。

 マーロックはまるで苦虫を噛み潰したように苦い顔をしていた。

「今回は貴様より吾輩の方が一枚上手だったようだな。マーロック」

「モンストロックス。クレイの体から今すぐ出ていくのじゃ!」

「それは出来ないな。もうこの体は吾輩のものだ。さてさっさと…貴様には消えてもらおうか」

 クレイはいやモンストロックスはこっちに歩いてくる。アヴァとロビンはマーロックの後ろに隠れ家来ビットは逃げ出したいのを我慢して必死に耐えてる。

 その時モンストロックスの前に出てこれ以上進ませないように飛び出した者が居た。

「邪魔をするなジェストロ。貴様には吾輩を止めることなど出来はしないだろ」

 それはジェストロだった。震えながらもそれでも必死にモンストロックスの前に立ちふさがる。

「確かに僕には止められないでも時間稼ぎぐらいなら──」
「邪魔だ」

 でも呆気なく盾でマーロックの所まで吹っ飛ばされる。

「ジェストロ、もう少し頑張りなさいよ」

 その様子を見たアヴァは吹っ飛んできたジェストロに呆れた。

「そう言わないでよ。これでも頑張ったんだからね」

 ジェストロは立ち上がるとマーロックの横に隠れるように立った。モンストロックスは再び歩き出す。

「3人ともわしにしっかり掴まるのじゃ」

 小声でそう言うと杖を構えてモンストロックスに向ける。アヴァとロビンは後ろから掴まりジェストロは横から掴まった。

「これで終わりだなマーロック」

 言いながらマーロックの前に立つと剣を構える。

「まだ……終わりではない!」

 マーロックの杖から光が溢れ出した目の前で杖を回し勢いよく振り下ろした。すると杖から強い閃光が放たれた。マーロック達以外はあまりの眩しさに腕で顔を覆った。

 閃光が消えるとそこにマーロック達の姿は無かった。
 逃げられたとわかったモンストロックスは怒り、マグマモンスターに直ぐ様命じた。

「吾輩は先に奴らを探す!そいつらを急いでマグマ戦車に放り込んで奴らを探せ!ジェストロはほっといていいが老いぼれとガキ二人は必ず見つけろ!ウィパレラとスパークスは残ってそいつらを見張っていろ!いいか奴らを必ず見つけろ!さもなくば恐ろしいことが待っているからな!」

 モンストロックスの怒号が響く。言い終わると直ぐにマーロック達を探し始めた。マグマモンスター達は慌てて探し始める。
 バーンジーとスパークスはナイツ達の武器を取り上げマグマ戦車の上に取り上げた武器をのせるとナイツ達とハルバート王と王妃をマグマ戦車の檻に放り込んだ。スパークスは残りバーンジーは探し始めた。
 その時先に投げ入れられたアクセルがみんなの下敷きになっていたのは置いといて直ぐにみんな退いて座り込んだ。

「マーロック達は大丈夫かしら……」

 メイシー心配だった。それを察したのかアーロンが励ますた。

「だいじょぶやろ、じいちゃんすげぇ~しな」
「確かにそうよね」

 その言葉を聞いて少し安心するメイシー。だがこのあとのアーロンの発言でまた少し心配になった。

「アヴァやロビンそれにジェストロがおるしなんとかなんやろ」
「ジェストロ……大丈夫かしらそれも心配よね……」
「なんや余計なこと言ったか……」

 励ましてたつもりが逆にまた心配させてしまったと慌てて気づいたアーロン。そこにまたランスの余計な一言がはいる。

「確かにね。また悪にならないとは限らないからね」

 ますます心配になってきたナイツ達に、とどめと言わんばかりの一言がそこにはいる。。

「このままでは王国が闇に覆われてしまう」
「あなた!」
「す、すまんつい……」

 だがハルバート王の言う通りだった。このままでは王国が闇に覆われる。何とかしなければならなかったが今のナイツ達にはどうすることも出来なかった―――











 その頃会場からなんとか逃げたマーロック達はお城の中に居た。ジェストロが窓から外を見るとそこにはマーロック達を探しているマグマモンスターの姿が見える。

「マグマモンスター、そこらじゅうで僕達の事探してるよ」

 ジェストロは震えながら伝えた。言い終わるとアヴァは聞きたかった事をマーロックに聞いた。

「マーロック、なんでフォートレックスに逃げなかったんですか」

 それを聞いてジェストロは確かにその通りだと思った。アヴァの言う通り何故お城に逃げたのかわからなかった。それについてマーロックは直ぐに答えた。

「と、とっさでまちごうたじゃ。しょうがないじゃろうが」

 ただ単にマーロックが間違えただけであった。

「あとでメモリーの確認をしましょうね」
「わ、わかっておる。じゃが、今はとにかく。どうにかしてマグマモンスターをフォートレックスの周りから退かさないと逃げようもないじゃろう」

 マーロックの言う通り、このままではフォートレックスで逃げることもできない。
 ナイツ達を助けるにもここから一旦逃げなければならない。

「でもどうやって武器はあるとしてもネックスパワーがないとマグマモンスターは倒せないよ」

 ロビンの言葉にアヴァやマーロックは考えていた。
 そしてアヴァは一つの案を導きだした。

「……誰かがお取りになって注意を引き付けなければならない……」
「それしか方法がないじゃろう。わしはこの通りデジタルじゃからおとりは出来ぬ」

家来ビットに装置を持ってもらっているマーロックにはおとりは無理。

「そうですね。家来ビットの体力が持ちませんしね」

 お祝いの時からずっと家来ビットは持ち続けている。その為家来ビットはそろそろ限界が来ている。三人のうち誰かがなるしかない。

「ここはやはりロビンにおとりになってもらうしか……」
「ぼ、僕が……やる……」

 マーロックはロビンにやってもらおうとしたがそこにジェストロは震えながらも自分がやると言った。

「ジェストロ、お前さんには無理じゃ。ここはやはりロビンに頑張ってやってもらった方が」

 マーロックは止めようとするがジェストロが言葉を遮った。

「うんん僕がやる……僕がやりたいんだ」
「大丈夫なの?」

「大丈夫じゃないけど、元はと言えば僕がもっと速く気づけてればよかったんだ……だから僕がやる……クレイを助けたいから……」

 それを聞いてもロビンはまだ少し心配だった。
 マーロックはジェストロの言葉を聞いて小さくため息をはいた。

「…わかった。頼んだぞジェストロ」
真剣な目をしていたジェストロにマーロックは駄目だと言えなかった。

「僕に任せて……で、どうすればいいの?」

 おとりと言っても相手を引き付けてうまく相手を誘導しながら逃げなければならない。

「それなら、隠れてフォートレックスの周りまで行ってどうにかしてマグマモンスター達を引き付けフォートレックスとは反対側まで引き離して敵をこっちに来ないようにさせといて、ジェストロが引き付けて周りにマグマモンスターが居なくなったら、近くで隠れていた、私達が中に入って、壊されてないか確認したら門の前まで移動するからそこまで走って逃げて」

 それを聞いてジェストロは大丈夫かと心配になってきた。

「僕そこまで体力持つかわからないんだけど……」
「やってもらうしかないわね。じゃないと逃げ切れそうにないから」

 そもそもフォートレックスのスピードでは敵のメカの方が速く直ぐに追い付かれてしまう。

「確かあの時もそうだったよね」

 ジェストロと裏切りの書を守るためにナイツ全員でマグマモンスターとカーチェイスを繰り広げた。
 最初は順調だったが敵の作戦に、ハマり裏切りの書はジェストロのおかげで奪われずにすんだがジェストロは捕らえられた。

「あの時とは訳も違う。逃げられなければ……その時点で私達の負けよ。クレイを助けたいのなら頑張ってもらうしかないわ」

 その言葉を聞いてジェストロは覚悟を決めた。

「……わかったでもどうやって引き付けるの?」
「一人飛び出して引き付けられたらいいけど駄目なら怒らせるしかないわね」
「怒らせるか……やってみる」

 ジェストロはそう言うと足音をたてないように歩きながらフォートレックスの方に向かった。

「私達も動きましょう」

 ジェストロが向かって少したったあとマーロック達はジェストロと同じように足音をたてないように歩き出した。
 歩いて少したつとロビンは思い出したようにアヴァに聞いた。

「そうだ。マーロックのバックアップ大丈夫かな」
「大丈夫でしょ敵はそこまで頭が回るとは思えないわ」
「でももしマーロックのバックアップが敵に壊されでもしたら」
「……気付かれないことを祈るしかないわね……」

 マーロックの図書室にマーロックのバックアップを自動でされているがもしそれが破壊されれば大変なことになる。

「大丈夫かのう。ジェストロ…」

 マーロックはジェストロの方が心配だった。









「……」

 ジェストロは静かに物陰に隠れながらフォートレックスを目指していた。途中マグマモンスターが前からやって来た時、咄嗟に近くの置物の後ろに隠れたりしてやり過ごしていた。何度か見つかりそうになるが、なんとかフォートレックスの近くの草むらまでなんとかこれたがそこから動けずにいた。

「(…でも怒らせるたってどうすれば…)」

 どうやって怒らせるかで考えていた。怒りの書の時と違い、言葉で怒らせなければならないがなんと言えば怒って追いかけてくるかに悩んでいた。

「……ここで悩んでいてもしょうがない。飛び出して追いかけてくるならそのまま逃げればいいんだ」

 ジェストロは意を決して草むらから飛び出してみた。一瞬だけマグマモンスターがこっちを向いたが、またマーロック達を探し始めた。

「…あれ?」

 飛んだり跳ねたりしてみたが誰もこっちを見ない。

「…どうしよう…」

 その様子を少し離れた場所から見ていたマーロック達もどうしようか悩んだ。

「ジェストロは無視って言われてるのね」
「どうするのじゃ」
「ジェストロに何とかしてもらうしかないわね……ところでロビンは?」

 さっきまでそこにいたロビンがいつの間にか居なくなっていた。

「ロビンならちょっと相手のメカをいじりに行ってくるって行ってどこかに行ってしまったわい」

「ロビンらしいわね…でもそのおかげで少しは時間を稼げるわね。うまくやってちょうだいよロビン…」

 そう願いながらアヴァはジェストロを見守った。
 やはりここは怒らせて追いかけさせるしかないと考えるが何を言えばいいのかわからない。

「(う~ん……そうだ。モンスターの書じゃなかったモンストロックスをバカにすれば追っかけてくるかも……よし)」

 ジェストロは大きく息を吸い込んで叫んだ。

「モンストロックスのバ~カ!」

 マグマモンスターの足が止まる。

「(あ……聞いた…よし!)モンスターの書の時なんか口臭いし!」

 それでも止まるだけでマグマモンスター達は再びマーロック達を探し始めた。

「どうしよ……」

 諦めかけたその時、更に悪いことが重なった。

「……ジェストロなぜ貴様がここにいる」

 声のした方を向くとそこにはモンストロックがいた。後ろにはどこかで合流したのかマグマ―将軍もいる。

「ぼ、僕がどこにいようが勝手だろ。もう用がない筈だからね」
「ああ……確かにそうだな」

 うまくこの状況を切り抜けたいがいい案は浮かばなかった。何とかして反対側の方まで連れていきたいのに自分でも駄目で怒らせるのも駄目。後はもうどうすればいいのか分からなかった。
 でもそこにモンストロックの意外な言葉が投げかけられた。

「……ジェストロ貴様……奴等が何処に居るかしっている筈だ……奴等は何処に居る……」

 その言葉で一瞬慌てるがそこでふとジェストロは考えた。
 嘘を教えてそこまで案内すればここにいるマグマモンスターと一番厄介なモンストロックを反対側まで連れていくことが出来る。
 もし途中でバレたとしてもアヴァとマーロックの事だからうまくまいて門の前までかその先まで逃げられる筈だと。

「……し、知ってる……けど……」
「なら教えろさもなくばお前がどうなるか……」

 その目はあの時のにらみつけるような目だった。
 ジェストロは背中に寒気なようなものが走ったがそれでもそれを振り払うように返した。

「わかった。案内するから着いてきて……」

 ジェストロは歩きだした。でも問題があった。
 モンストロックは着いてくるとしてマグマモンスター達が着いてこなければマーロック達はフォートレックスに入れない。
 心のなかで着いてきてと願うジェストロ。
 それが叶ったのか、そこにいたマグマモンスターも含めて着いてきた。
 ジェストロは心のなかでほっとしたがそれでも気は引けなかった。なるべく速くに途中でバレないようにしないとと思いながらジェストロは歩いた。








「……これは何かあるわね」

 その様子を見て絶対に裏があると思ったアヴァ。しかしこのチャンス逃すわけにもいかなかった。

「じゃが今がチャンスじゃ」
「ええわかってます。これは急がないと……」

 アヴァは周りを見渡してマグマモンスターが居ないことを確認すると急いでフォートレックスえと走り扉を開けてマーロックと中に入った。
 メインコンピューターにアクセスすると壊れたところがないか調べた始めマーロックは台座に入った。








 ジェストロがフォートレックスの前からモンストロックとマグマモンスターを連れ出したその頃ロビンは敵のメカに細工をしていた。
 残るはひとつとなっていたがその最後のメカが問題だった。
 物陰からロビンが見ている先にあるのはマグマ戦車だった。
 ナイツやハルバート王が捕まっている為助け出せないようにウィパレラとスパークスがマグマ戦車の周りを歩いて見ていた。

「後はあれだけなんだけど……」

 どうしたら気付かれずに細工できるか考えていた。場所が場所だけに草に隠れて近づくこともできない。

「せめて車輪を動かなくさせるだけでもしておきたいのに…」

 マグマ戦車の檻の中にいたメイシーがふとゲートの方を見ると物影からこちらを見ながらどうすればと考えているロビンが見えた。


「……ねぇあそこにロビンがいるわ……」

 メイシーは小声でみんなにロビンが居ることを教えた。どうして小声なのかと知らないアクセルは大きな声で言いそうになりみんなに口を塞がれたのは別の話だがみんなバレないようにロビンがいる方を見た。








悪の魔導師体の形は好きに変えられる

モンストロックスの杖正しき者の手に渡れば強力な悪の手に渡れば

王国が闇に覆われてしまう
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