芽吹 kwkm×kwmr
それは、まだ春だというのに日差しが強く、必要以上に暑く感じられる日のことだった。
「初めまして、拓哉さんですか?」
「あ、はい、初めまして…」
駅前で待っていた僕の目の前に現れたのは、写真で見た通りの好青年。
明るい髪色が日差しを綺麗に反射していて、眩しい。一目見るだけで彼だとわかった。
「お昼時なので人多いですね、見つけられて良かったです。」
優しそうににっこりと微笑む笑顔に、一瞬目眩を起こすかと思った。
爽やかすぎる。今日のような眩しい日差しですら似合わない僕が、爽やかな彼の隣を歩くのはなんだか気が引けてくる。
「…あぁ、よく分かりましたね、僕のこと。」
SNSで知り合った人と会う、なんてことは人生の内で初めてのことだ。
こういう形での初対面の挨拶ほど気まずく、ぎこちなくなるものはない。
あまりコミュ力のない僕は特にSNSでもぎこちない返答ばかりしていたはずなのだが、なぜか彼は僕と絡み続けてくれていた。
趣味で繋がって話していくうちに同じ大学に通っているということが分かり、試しに会ってみようという事になったのだ。
「拓哉さんは、すぐ分かりましたよ。なんというか、オーラがあったので。」
オーラ?
そんなものは君の方があるだろう。と思うが口に出すのは慎む。
まだ会って数分だ。僕の場合、喋れば喋るほどにきっとボロが出てしまうだろう。
「なんか緊張、しますね。とりあえずお昼だし、何か食べに行きますか?」
「あ、はい、」
きっと僕の反応が必要以上に川上くんを緊張させてしまっているのだろうが、僕は自分のことで精一杯だ。
こんなに話せないとは、自分でも驚いている。
隣で、どこへいきましょうか、と考えてくれている川上くん。僕はそういうお店などには本当に疎いので、全く力になれない。もどかしい。
間をつなぐ程度に話せるくらいのコミュ力が僕にもあれば良かった。と悔やむがどうしようも、ない。
ああ、せめて酒でも飲んでくれば良かった、
「お酒、ですか?」
「え、?!」
不意に心を読まれて面食らう。
驚いている僕を見ながら彼はクスクスと笑った。
「心の声が口に出てますよ。笑」
「…聞かなかったことにしてくれ、」
「お酒飲みに行きますか?僕は、昼からでも全然いいですよ。」
なんなら、居酒屋の方が詳しいです。と、僕の失言(?)に対して引かないどころかフォローまでしてくれる。彼はなんて優しい。
圧倒的陽キャ感のある見た目に反して、僕にもこんなに優しく接してくれるとは。
ギャップ萌えとはこういう瞬間を言うのだろう。きっと。
川上くんオススメの居酒屋へ着いて、少しお酒を入れると、僕も並の人間くらいには話せるようになってくる。
趣味の話や、大学での話を聞いているうちに、僕も川上くんも打ち解けて来たようで、とても楽しくなってきた。
歳が近いということもあり、敬語は無くそう。という提案を僕からしてみると、川上くんも快く受け入れてくれた。
お酒の力とは、これ絶大なり。
「でも、良かった、拓哉さんがちゃんと話してくれて。」
「ごめん、コミュ障すぎて初め全然ダメだったよね。」
「目がめちゃくちゃ泳いでた。あれはあれで面白かったけど。」
クスクスと思い出したように笑う川上くんに、何だか恥ずかしくなってくる。
心の声を漏らすとは、なんて失態。
まぁそのおかげで今こうして打ち解けられているのは良かったわけだが。
「そういえば、待ち合わせ場所に着いた時、拓哉さん1人だけすごいオーラだった。」
「それ、さっきも言ってたけど、オーラってなんなの。僕にオーラなんてないでしょう。」
「自覚ないんですか?その、なんて言うか、神々しいというか、輝いてるっていうか、」
うーん、と、適切な表現を探すように首を傾げた川上くん。
自覚ないのか、と言われたって、見た目に対してほとんど褒められたことの無い僕にとっては、こんなむず痒い経験初めてだった。
「そんな、無理に褒めなくていいよ、」
恥ずかしくなって話を切り上げようとすると、
「いや無理にというか僕、拓哉さんの顔、めちゃくちゃタイプなんで。」
と、心底真面目な顔でとんでもないことを言う川上くん。
「え、?」
あまりにも唐突なので、驚いて声が掠れてしまう。なんて?僕の顔がタイプ?
「だから初め顔を見た時、一目惚れとか本当にあるんだな、って思ったくらいで。」
僕の方こそ、そんなことあるわけがない世界線に今まで生きていたはずなのだから、唐突に横から銃で撃たれたような衝撃を受けている。戸惑う。何なら僕のようにあまり目立たない人間が、こんな優しくて爽やかでよく出来た彼に…、
一目惚れ、されるだなんて。
「……、いや、え、」
こういう時になんて返せばいいのかなんてことは、学んだ事がないので全くわからない。
みるみる自分の顔が赤くなっていることだけは自覚しているが、これが何故なのかも適切に説明出来ないくらいだ。
「引いちゃった…?それとも、照れてくれてます?」
そう問われてやっと、僕が引いている訳では無いことは分かる。ただこれが、何から来る動揺と赤面なのかは、わからない。
でも恐らく、川上くんが言うような2択なら、僕は、さっきの言葉に照れているということになる。
「…わから…ない、でも、引いてるわけじゃない、とおもう」
知らない境地に足を踏み入れている僕の心臓はバクバク。胸も少々苦しくなってきた。やっと、という感じで言葉を紡ぐと、優しかった川上くんの表情はどことなく意地悪な印象に変化した。
「そんなん…僕の都合のいいように受け取っちゃうけど、」
僕の顔を再度深く見つめると、ニヤリと口角を上げる川上くん。
ちょっと、そんな顔しないで下さい。僕はもう持ちません。
「拓哉さん。」
「……はい、」
「2軒目、行きません?」
だんだんわかってきた、川上くんは恐らく意地悪な男だ。今も、動揺し赤面している僕の肯定をあくまで待っている。
実際のところ僕が選択権を、与えられている、はずなのに。
もう僕には肯定する力しか残っていない。ずるいなぁ。
「いきます、」
そういった僕をみて一瞬、本当に嬉しそうな顔を見せる川上くんには、どう足掻いてもきっともう敵わない。
「初めまして、拓哉さんですか?」
「あ、はい、初めまして…」
駅前で待っていた僕の目の前に現れたのは、写真で見た通りの好青年。
明るい髪色が日差しを綺麗に反射していて、眩しい。一目見るだけで彼だとわかった。
「お昼時なので人多いですね、見つけられて良かったです。」
優しそうににっこりと微笑む笑顔に、一瞬目眩を起こすかと思った。
爽やかすぎる。今日のような眩しい日差しですら似合わない僕が、爽やかな彼の隣を歩くのはなんだか気が引けてくる。
「…あぁ、よく分かりましたね、僕のこと。」
SNSで知り合った人と会う、なんてことは人生の内で初めてのことだ。
こういう形での初対面の挨拶ほど気まずく、ぎこちなくなるものはない。
あまりコミュ力のない僕は特にSNSでもぎこちない返答ばかりしていたはずなのだが、なぜか彼は僕と絡み続けてくれていた。
趣味で繋がって話していくうちに同じ大学に通っているということが分かり、試しに会ってみようという事になったのだ。
「拓哉さんは、すぐ分かりましたよ。なんというか、オーラがあったので。」
オーラ?
そんなものは君の方があるだろう。と思うが口に出すのは慎む。
まだ会って数分だ。僕の場合、喋れば喋るほどにきっとボロが出てしまうだろう。
「なんか緊張、しますね。とりあえずお昼だし、何か食べに行きますか?」
「あ、はい、」
きっと僕の反応が必要以上に川上くんを緊張させてしまっているのだろうが、僕は自分のことで精一杯だ。
こんなに話せないとは、自分でも驚いている。
隣で、どこへいきましょうか、と考えてくれている川上くん。僕はそういうお店などには本当に疎いので、全く力になれない。もどかしい。
間をつなぐ程度に話せるくらいのコミュ力が僕にもあれば良かった。と悔やむがどうしようも、ない。
ああ、せめて酒でも飲んでくれば良かった、
「お酒、ですか?」
「え、?!」
不意に心を読まれて面食らう。
驚いている僕を見ながら彼はクスクスと笑った。
「心の声が口に出てますよ。笑」
「…聞かなかったことにしてくれ、」
「お酒飲みに行きますか?僕は、昼からでも全然いいですよ。」
なんなら、居酒屋の方が詳しいです。と、僕の失言(?)に対して引かないどころかフォローまでしてくれる。彼はなんて優しい。
圧倒的陽キャ感のある見た目に反して、僕にもこんなに優しく接してくれるとは。
ギャップ萌えとはこういう瞬間を言うのだろう。きっと。
川上くんオススメの居酒屋へ着いて、少しお酒を入れると、僕も並の人間くらいには話せるようになってくる。
趣味の話や、大学での話を聞いているうちに、僕も川上くんも打ち解けて来たようで、とても楽しくなってきた。
歳が近いということもあり、敬語は無くそう。という提案を僕からしてみると、川上くんも快く受け入れてくれた。
お酒の力とは、これ絶大なり。
「でも、良かった、拓哉さんがちゃんと話してくれて。」
「ごめん、コミュ障すぎて初め全然ダメだったよね。」
「目がめちゃくちゃ泳いでた。あれはあれで面白かったけど。」
クスクスと思い出したように笑う川上くんに、何だか恥ずかしくなってくる。
心の声を漏らすとは、なんて失態。
まぁそのおかげで今こうして打ち解けられているのは良かったわけだが。
「そういえば、待ち合わせ場所に着いた時、拓哉さん1人だけすごいオーラだった。」
「それ、さっきも言ってたけど、オーラってなんなの。僕にオーラなんてないでしょう。」
「自覚ないんですか?その、なんて言うか、神々しいというか、輝いてるっていうか、」
うーん、と、適切な表現を探すように首を傾げた川上くん。
自覚ないのか、と言われたって、見た目に対してほとんど褒められたことの無い僕にとっては、こんなむず痒い経験初めてだった。
「そんな、無理に褒めなくていいよ、」
恥ずかしくなって話を切り上げようとすると、
「いや無理にというか僕、拓哉さんの顔、めちゃくちゃタイプなんで。」
と、心底真面目な顔でとんでもないことを言う川上くん。
「え、?」
あまりにも唐突なので、驚いて声が掠れてしまう。なんて?僕の顔がタイプ?
「だから初め顔を見た時、一目惚れとか本当にあるんだな、って思ったくらいで。」
僕の方こそ、そんなことあるわけがない世界線に今まで生きていたはずなのだから、唐突に横から銃で撃たれたような衝撃を受けている。戸惑う。何なら僕のようにあまり目立たない人間が、こんな優しくて爽やかでよく出来た彼に…、
一目惚れ、されるだなんて。
「……、いや、え、」
こういう時になんて返せばいいのかなんてことは、学んだ事がないので全くわからない。
みるみる自分の顔が赤くなっていることだけは自覚しているが、これが何故なのかも適切に説明出来ないくらいだ。
「引いちゃった…?それとも、照れてくれてます?」
そう問われてやっと、僕が引いている訳では無いことは分かる。ただこれが、何から来る動揺と赤面なのかは、わからない。
でも恐らく、川上くんが言うような2択なら、僕は、さっきの言葉に照れているということになる。
「…わから…ない、でも、引いてるわけじゃない、とおもう」
知らない境地に足を踏み入れている僕の心臓はバクバク。胸も少々苦しくなってきた。やっと、という感じで言葉を紡ぐと、優しかった川上くんの表情はどことなく意地悪な印象に変化した。
「そんなん…僕の都合のいいように受け取っちゃうけど、」
僕の顔を再度深く見つめると、ニヤリと口角を上げる川上くん。
ちょっと、そんな顔しないで下さい。僕はもう持ちません。
「拓哉さん。」
「……はい、」
「2軒目、行きません?」
だんだんわかってきた、川上くんは恐らく意地悪な男だ。今も、動揺し赤面している僕の肯定をあくまで待っている。
実際のところ僕が選択権を、与えられている、はずなのに。
もう僕には肯定する力しか残っていない。ずるいなぁ。
「いきます、」
そういった僕をみて一瞬、本当に嬉しそうな顔を見せる川上くんには、どう足掻いてもきっともう敵わない。
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