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点眼 kwmr×ymmt←sgi

「…まって、こわい、」

「いいから、じっとして。」

何故か嬉々とした表情を浮かべている河村さん。
あぁ、前から、この人にはこういう所があるんじゃないかって思ってたんだよなぁ。

そんな本質が、今発覚するなんて勘弁して欲しい。


__


今朝、目が覚めると左目に違和感を感じ、鏡を見てみると、思い切り腫れてしまっていた。

さすがに、この腫れた目のまま仕事へは行けない、と、朝一番から駆け込んだ病院では結膜炎だと診断され、眼帯と点眼薬を貰ったのは良いのだが、

僕は自分で目薬をするのがとても苦手だ。

眼帯をつけてオフィスまで来たはいいが、どうしようもない目の痒みに耐えきれず、とうとう観念して点眼をお願いすることになってしまった。

オフィスにはまだ河村さんしか来ておらず、仕方なく河村さんに頼むことになってしまったのだが、、


「世間では博識だと知られている成人男性が、自分で目薬をさせない上に、人にやってもらってるなんてな。」

クスクスと笑いながら、僕を見下ろすその顔はサディストそのものだった。


しかも、

河村さんにお願いしてすぐに、須貝さんが元気よく出勤してきたのを見て僕は、ちいさく絶望したところである。

「もっと早く来てよ須貝さん…、」

「はは、残念でした。大人しく上向きな。」


上を向いたらそこには悪魔だ。


「なになに、どしたの。」

と、優しい須貝さんが近寄ってくる。
今すぐ須貝さんに点眼を変わって欲しい。




「あーあ、可哀想。ドSの餌食になっちゃったのね。」

事情を話すと、苦笑しながらもそばの椅子に腰掛けて僕の手を緩く握ってくれる須貝さんは本当に優しいな。

「山本がかわいいからってあんまり虐めちゃだめよ。優しく入れてやりな。」

「こんなのに、優しいも厳しいもないだろう。」

と言いながら僕の顔に手を添える河村さんは相変わらず嬉々とした表情をうかべているけど、

指先で僕の目を優しく開きながら、いくよ?と低く囁くような声を出すのは…、それは、それで、ずるくないか。

「優しく、優しくお願いします…、」

怯えながらも、もう目の前で悪魔的微笑をたたえる河村さんに委ねるしかないとなると、思わず須貝さんの手を握るのにも力がこもる。

「角膜は、人体で一番過敏だからね、さすがに僕だって丁寧に扱ってあげるよ。」

河村さんが目の上に点眼薬の容器を構えた。

「ん…っ、ぅ、」

数滴、点眼薬が目に垂らされる。
反射的に目からは涙が溢れるし、身体は勝手にぴく、ぴく、と動いてしまう。はずかしい。大人が、目薬でこんなに醜態を晒すのは少し恥ずかしい気持ちになってしまう。

「びくびくすんなよ、変な気持ちになる。」

と笑いながら言う河村さんに思わず顔が熱くなる。

「そりゃ人に眼球預けんのは怖いだろうよ〜」

と優しい須貝さんに思わず抱きつきそうな気持ちをぐっと堪えながら

ありがとうございます、と河村さんにお礼を言うと綺麗な指先が顔の方へ伸びてきてまたびくっと反応してしまった。

怯えた身体に反して河村さんの指先は優しく溢れた涙と点眼薬を拭うと、

「な?目薬に怖いもないだろ。」

と、綺麗な顔をして鼻で笑う。



「山本はよく頑張ったよ〜。」

と頭を撫でてくれる須貝さんに安心感からかまた涙が一筋溢れた。


なぜだか鼓動は早まってしまっているけど、それがあのサディストの鋭い眼光のせいなのか、優しく頭に添えられた大きな手になのかは、とりあえず深く考えないことにした。
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