プロローグ
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「男子校にやってきた新入生が実は女の子で、しかも異世界からやって来たってこれなんのラノベ?」
「凄いね兄さん!僕、異世界から来た人なんて初めて会ったよ」
「うん僕も。いや、そうじゃなくてどうすんのこれ……」
どうしたらいいんだ、と悩んでいると、ゾロゾロと複数の足音が聞こえてきた。
「と、というわけで案内は終わりで……。ここからは部屋割りを決め……あ、居なくなってた新入生。も、もしかしてシュラウド氏が保護を……」
寮長が先頭で入ってくるなり、私と喋っていた2人を見てそう言った。その後ろからゾロゾロと、寮を見て回っていたであろう1年生たちが付いて談話室へ入ってきた。
「ひっ…、せっかく居ない時見計らって出たのに、結局遭遇するなんて……!」
無理なんですが、そう言って彼はこの場から逃げて行った。
「あ、兄さん。待ってよ」
オルトくんも浮きながら、彼の後を追いかけて行ってしまった。
「う、シュラウド氏は相変わらずでごさるな……。とりあえず、部屋割り決めるから君もこっちに」
「え、あ、はい」
寮長に呼ばれて、他の1年生たちの方へよる
「……パニーさま、いいんですか」
コソコソと小声でニックが聞いてくる。
「だって、どうやってティル・ナ・ノーグに帰ればいいかわかんないし……とりあえずここに入れば、衣食住は確保できそうだし」
確かに、と耳元でニックが頷いた。
「じゃあ、君と君はこの部屋ね」
そう言って寮長が、寮内の地図の書かれた、少し厚みのある板を渡してきた。
「これは……?」
「イグニハイド寮の支給品のタブレット。入学祝いってやつですぞ。その代わりうちの寮は、他所みたいな歓迎会とかはやらないってことですな」
ありがとうございます、と部屋が一緒になった男子が隣で喜んでいる。
「地図にしては随分と分厚いですね……って、うわ、え?真っ黒になって地図が消えちゃいましたよ!?」
受け取ったタブレットとかいう地図をまじまじ見ていたら、真っ黒になってしまった。
「え、君……」
「お前、タブレット、知らないのか……?」
寮長も、周りの1年生達もありえないと言うような顔をこちらに見せた。
「お前、さすがにスマホは知ってるよな…」
「スマホ?」
首を傾げれば、ええー!?と更に驚かれた。
「君、スマホもタブレットも知らないとか、今までどうやって生きて……」
「スマホ、というのがないと生きれないのですか?」
「オタクにとっては死活問題……!いや、それ以前に一般人でも、連絡手段として普通使うでしょうよ」
「連絡手段…?ああ、もしかして通信機ってことですか?それなら私は
そう言って懐から1枚、薄い鏡を取り出した。
「え、鏡?」
「はい。こちらの鏡を使って遠くの方と連絡を取り合ってます」
ああ、そうか。これを使えば、元の世界と連絡が取れるのでは!後で試してみよう。
「魔道具って……コト…?」
「今どきそんな魔道具使って連絡取り合うって、まさか茨の谷出身……?」
「妖精連れてるもんな」
周りがザワザワとしだした。
「えーと」
「と、とりあえず、これもその通信機で、地図だけじゃなくて、連絡取ったりネットしたりとか、色々な事に使えるから……まあ、詳しい事は同室に聞いて」
「えっ、俺ですか!?」
なんでっ、と同室に選ばれた子が、寮長を見た。
「いやぁ……ほら、この子ちょっと抜けてるっぽいし、同室のよしみで面倒見てあげてよ」
「ええー」
「なんか、すみません。よろしくお願いします」
「はあ……とりあえず部屋で教えるわ。歓迎会とかないんならもう行っていいんですよね、寮長」
「ああ」
寮長の返事を聞いて、同室の子がこっちと部屋までの案内をしてくれるのについて行く。
「ここが俺らの部屋な。右と左どっちがいい?」
部屋の中は左右に別れベッドと勉強机と椅子が本棚にクローゼットと2つずつあった。
「どちらでも」
「じゃあ俺左もらうわ。とりあえず式典服着替えて、それからタブレットの使い方教える」
そう言って彼は、紫色のフードを脱ぎながらクローゼットを開けている。
自分も同じように右側のクローゼットを開けてみれば、中に黒い学生服と、先程イデア先輩?が着ていたのと同じ青いライダースーツのような衣装が入っていた。これもタブレットってやつと同じ支給品なのか。
しかし、着替えか……。参ったな……。男の子の前で着替えるのはさすがにな……。そもそもここ男子校だし、女だとバレたら追い出されるのでは?そしたら確実に確保できる予定の衣食住が……。
「パニーさま。アイツの目を私が潰してきましょうか?」
コソコソと耳元でニックが、なかなかおっかない提案をしてきた。
「いや、ダメでしょ。目潰しなんて……せめて目隠し……あっ、」
「着替え終わったかー?」
「え、いやまだ。えーっと、これどっち着てもいいの?」
「授業もないのに制服着るのか?さすがに寮服だろ」
ほー。こっちの青いのは寮できる服なのか。
「まー、部屋着ならこんなかっちりした服じゃなくてTシャツとか着たいよな。まあ家から荷物届くまでの辛抱。早かったら明日にはつくだろ」
「あー」
なるほど、そういうこと。
「パニーさま。アイツ着替え終わりましたよ。どうするんですか?」
「ああ、うん。大丈夫」
ポン、とニックの頭をひと撫でし、一呼吸おく。
「あなたの望む姿を映しだして」
そう小さく呟く。フードの中で髪に付けたバックルがキラリと光った。
「─
私が鏡士として使える魔境技の1つ、幻覚だ。
相手の目を潰せないのなら、目を惑わせてしまえばいい。
今、私の見た目は幻術で男に見えているはず。
ゆっくりと式典服を脱いで、自分の身体を確認する。
「お前っ、凄いなその筋肉」
同室の彼が驚いたような顔を上げた。
私が使った術はあくまでも幻覚。上からホログラムで出来た着ぐるみを着ているようなものなので中身の姿が変わった訳では無い。
例えば、もっと男らしく身長を高く見せることもできるが、そうするとご飯を食べる時など、口よりもはるか下に運んでるように相手には見えるし、頭を撫でられるなんてことは男子校ではないだろうけど、触られた際にすり抜けるというおかしな事になる。
そうなることを避けるべく、身長は変えなかった。しかしながら問題は胸で、自慢じゃないが大きい方であるが故に、万が一相手にぶつかった時やハグをした時など、絶対に違和感を持たれる。だから、あえてめちゃくちゃ胸筋が発達した男性の姿にしてみた。
「三角形じゃねーか!すげえな。お前ももしかしてマジフト部希望か?俺もなんだけど!」
マジフト部……ってなんだ?
「いや、これは……体質でこうなってるだけだよ」
「はー、うやらましいぜ。俺は見ての通りヒョロガリだからさ」
まあ、とにかく上手く姿を誤魔化すことには成功したらしい。
下着も幻覚で男物に見えてるだろうし、大丈夫だろう、と思いつつも、クローゼットの扉で隠すようにしながらぱぱっと寮服へ着替えるのだった。