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オーデンセという小さな島国で
早くこの鏡を破壊しなければ。そう思ったはずなのに、なぜだか鏡から伸ばされた手を掴んでしまった。
そして、鏡の中に引きずり込まれる。
光魔の鏡の中はティル・ナ・ノーグとこの世界に具現化された他の世界の狭間にある虚無だと聞いていたのに、黒い空間のそこには、黒い馬車が1台あった。
そこで意識が途絶え、次に目を開けた時はまたも真っ黒な視界で、何やら箱の中にいるような狭い空間にいた。
不安から、自身の心の分身とも呼ばれる
そうすれば紫と金のグラデーションの髪と水色の羽を持った人型の小さな生き物が現れる。
「パニーさま。ここは一体……」
私の鏡精は、ぷるぷると小さく震えた。
「私にも何がなんだか……。暗くてよく見えないし身動きも取れないし。ニック、どういう状況か調べてもらえないかな」
「分かりました。任せてください」
そう言って小さな彼は狭い空間の隙間を、飛んで回る。
「箱の中のようですね。真ん中に空気穴のようなものがありますよ?」
そう言ってニックは私の腰辺りにある箱の天井を見上げている。
「外の様子が見える?」
「はい……ってこれは……!」
「どうかした?」
「……ひぇ」
ニックは、またぷるぷると小さな身体を震わせた。
「何が見えた?」
「…それが……その……」
言い淀む彼の頭を少しだけ動かせる腕を動かして撫ぜた。
「……棺です。それも沢山の棺が並んでます」
「棺!?えっ、私死んだの!?」
驚きで身体を動かそうとしてしまい、ゴンッ、と鈍い音と共に額をぶつけた。
「うわっ、びっくりした」
外からそんな男の人の声が聞こえた。
「今年の生徒は随分と寝相が悪い子がいるようですねぇ」
そんな声のあとクスクスと幾人かの男の声がした。
「コホン、では、これよりナイトレイブンカレッジの入学式を始めます」
その声のあと拍手の音が聞こえてきた。
入学式っていったい……困惑しているうちに、ガチャガチャ、と鍵を回すような音が立て続けに聞こえた。
「パニーさま来ます!」
慌てたようにニックは覗いていた穴から離れて、私の首元にしがみついた。
ガチャと穴に鍵が刺されぐるりと半回転した後、ぎぃ、と音を立てながら蓋が外れた。
「ここは……」
ニックから聞いた通り、部屋の中にはいくつもの棺が浮かんでいて、中央には楕円形鏡があり、紫色のフードを被った少年達が数十人も居る。
そして自分も、彼らと同じ衣装を身にまとっていることに気づく。少し私には大きくブカブカで、被っているフードは首に張り付いたニックはまですっぽりと隠している。
「これはいったい……」
「ほら、あなたで最後ですよ。ぼんやりしていないで闇の鏡の元へ」
寝相が悪いだの言っていた男と同じ声の鴉の仮面を付けた男がそう言って背を押した。
「えっと……」
鏡に近づくと、白い顔が浮かび上がった。
「汝の名を告げよ」
「え?えっと、パニー・ペイジです…?」
「汝の魂の形は………死者の国の王の勤勉な精神に基づく寮イグニハイド」
そう鏡が言えば周りから拍手が送られる。
なに?と困惑するのもつかの間先程の仮面の男が、鏡の前に立つ。
「これにて入学式は閉会です。各寮長は新入生を連れて寮へ戻ってください」
男の声を皮切りに、寮長という人達が、付いてこいと言ってゾロゾロとフードの少年達が後ろに続いていく。
「イグニハイド寮生は、拙者に付いてくるでごさるよ」
ふひふひ、と言いながら猫背の怪しい男がそう言う。
「イグニハイド……、パニーさまもそう言われてましたよね。あの方に付いて行くのですか?」
「……よく分からないけど、郷に入っては郷に従えって言うし」
そう言って、人に流されやすい彼女は、そのままイグニハイド寮へ付いて行ってしまったのだった。