第1部
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かつて世界の中心にマナを生む大樹があった。
ヒトはそれを大樹カーラーンと呼んだ。
マナは全ての源。大地も空も木も風も人も全てはマナで出来ていた。
しかし争いで樹は枯れ、
それを嘆いた女神は、天へ消えた。
女神の嘆きを聞いた勇者は世界を二つに分け、樹の残した種子、大いなる実りの僅かなマナを搾取し合うことで世界の均衡を保つことにした。
搾取をはじめてから4000年あまり。
世界再生の旅へと出た神子たちが、二つの世界を一つへ統合し、大いなる実りから新たにマナを生み出す樹を誕生させ世界を平和に導いた。
神子達は新たな樹に大樹ユグドラシルと名をつけ、その樹を護る精霊と守人が誕生した。
だが、それから2年後、魔界ギンヌンガ・ガップの扉が開き世界に混沌が訪れる。
かつての大樹、カーラーンの精霊ラタトスクによれば 、元々この世界にはマナが存在しておらず、彗星デリス・カーラーンの恵みと大樹カーラーンが移されたことでマナが命の源となった。
だから、世界を構成するものからマナを取り上げ、それをギンヌンガ・ガップの封印とすることにした。
1人のハーフエルフが人柱となり幾1000年もの時間をかけ、世界はマナから切り離された。
そしてマナは全てを構築する元素ではなくなり、エルフやハーフエルフが使う魔法や魔科学を使うためのエネルギーと化した。
そんな世界に、彗星デリス・カーラーンから大いなる実りを求めた魔王がやって来きたのであった。
だか、この世界の樹を見た魔王は絶望した。
戦争のために人間やハーフエルフが多くの魔科学兵器を生み出し、大量のマナを消費し、大樹は再び枯渇の危機に陥っていたからだ。
魔王は大樹の元で守人と出会い、2人は魔科学研究をしていたミッドガルズ王国へ魔科学の使用停止を訴えに行く。
だが、2人の話は受け入れて貰えず、魔王と守人は魔物を引き連れ魔科学を使う人間たちへと戦争を仕掛けたのだった。
この戦争は後にヴァルハラ戦役と呼ばれ、この戦争の最中に守人は永きの眠りにつき、1人残された魔王も逃走し戦争は終結したのだった…。
遥か未来でグリンウッドと呼ばれる事になる世界、ウェイストランド。
中央に大陸が広がっており、この大陸と海を越えて幾つかの島を統治しているのがミッドガンド聖導王国である。
そして、そのミッドガンドの地図には乗らない北西の海に、大きな紅き帆船が浮かんでいた。
「副長!見えてきましたよ!!」
帆船の甲板で海賊帽の上にヒナを乗せた金髪の青年が声をあげると、側にいた黒いスーツの様なコートをきた体格のいい男が、嗚呼と頷いた。
「あれが探索船が見つけてきた島か」
「なんつーか、島ってより神殿っぽいですね」
「ああ。とりあえず行くに越したことは無いな」
男の言葉に、ですね、と青年が頷く。
「総員、上陸準備!」
男の大きな掛け声と共に、船内の至るところからアイ・サー!という声が響いた。
男達は船を着岸させ、島ならぬ遺跡へと上陸した。
「こりゃあ、すげぇ。島のように見えてた部分全部建物で出来ていやがる」
船乗り達は、海に沈みきっていない遺跡の屋上部分を歩いて進む。
「どっかからこの遺跡の中に入れたりしないんですかね」
「入れても中まで海に浸かってんじゃねーか?」
「だとしたら副長は探索できねーな」
「泳げねーからな」
ガハハと笑い声上げながら船乗りたちは遺跡の上を見て回る。
「おい、お前ら」
「おっ、なんだよ副長、怒ったか??」
「怒ってはない。泳げないのは事実だしな」
それより、と副長と呼ばれる男が足元にある、ある部分を指した。
「ここから中に入れそうだ」
副長が指したのは大きな石版。その横には何かで擦ったような跡が残っている。
その跡がある方へズリズリと石版を押してずらせばポッカリと空いた空洞とそれに梯子がかけて合った。
「おお、流石副長。目敏いな」
そう言った船乗りの1人が先行して梯子を降りていく。
「大丈夫だ!業魔もいねーし、中は浸水してねーぜ!」
下から聞こえた声に、他の船乗りたちも続々と梯子を下りた。
「すっげぇな、神殿か何かか??」
「そのようだが・・・・・・。聖主信仰の神殿とは違うようだな」
「ほー、もしかしたら暗黒時代って奴の代物かもしれねーな」
船乗りたちは会話をしながら、ずんずんと遺跡の通路を進んでいく。
しばらく進むと、一郭の広い空間へ出た。
奥には祭壇があり、どうやらここが神殿の要のようだ。
祭壇には金の装飾が施された5センチ位のサイズの赤い宝石が飾ってあった。
「この宝石を祀ってたんすかね?」
「そのようだな」
「キレーな石だな」
そういってヒナを海賊帽に乗せた青年が宝石を手に取った。
「おいおい、ベンウィック触って大丈夫かよ?罰当んじゃねーか」
「んなもん怖くて海賊なんかできねーつの!」
「ははっ、確かにな!」
先輩船乗りに茶化された、ベンウィックと呼ばれた青年は、手に取った宝石を上に掲げた。
「石も周りの装飾も見た事ない鉱石だな。副長はこれなんの石か分かります?」
「見せてみろ」
そう言って差し出した副長の手に、ほい、っとベンウィックは宝石を乗せた。
すると、石から強い光が放たれ、その眩さに船乗りたちは思わず瞳を閉じたのだった。
ゴチン、と音がして船乗りたちは眩さから閉じていた瞳を薄らと開く。
「な、んだ・・・??」
「えっ・・・?」
目を開くと、副長と呼ばれる男が床に倒れ、その身体の上に蒼き髪の女が、それも背中に光り輝く青紫色をした羽が生えた女がいた。
「聖隷、か・・・?」
船乗り達はその美しい姿に目を奪われ息を飲んだ。
「ッ、」
「あ、副長!大丈夫か?」
「・・・ああ」
おそらく倒れた時にぶつけたのであろう頭を擦りながら、副長は自分の上に乗っかった女を見つめる。
「石に触れた途端、全身の霊力が抜け、石が光って女が現れた・・・?」
「え、どういうことだよ」
「また副長の呪いのせいか?」
「分からん」
副長が眉を潜めると、上でもぞり、と女が動いた。
『ん・・・』
「起きた・・・!」
船乗りたちは興味深々といった感じで、女の様子をまじまじと見つめる。
女はぼーっとした様子で副長にもたれ掛かっていた上半身を起こした。
『んー・・・、ここは・・・?』
女は目を擦ったあとキョロキョロと顔を動かして船乗りたちを見つめた。
『あら・・・?ずいぶんとギャラリーが多いわね』
「おい、起きたなら降りろ」
副長の声に女は、自分の下を見る。
『まあ、ごめんなさい』
そう言って女は副長の上から降りて、それから彼に手を差し伸べた。
『輝石から蘇るのに貴方の《マナ》をずいぶんといただいてしまったみたいね。大丈夫?起き上がれるかしら?』
「ああ。(・・・《真名》をいただく?どういうことだ・・・?吸われたのは霊力だと感じたが・・・)」
副長は女の差し出した手には掴まらず、自身をゆっくりと起き上がらせた。
『うーん。貴方、ずいぶんと不思議なマナの持ち主ね。ヒトなのに精霊やセンチュリオンに近いマナの流れを感じるわ』
「俺は《
『あら、そうなの?でも、今まで逢った《
女は頬に手を当てて、うーん、と悩み始める。
「そもそもお前がマナと言っているのはなんだ。
『古代語の名?いいえ、マナは魔法や魔科学を使うためのエネルギーの様なもの。あとは精霊などの一部の生命の源でもあるわ』
「俺達聖隷はそれを霊力と呼んでいるが?」
んんん?と女は首を傾げ、ブツブツと呟き出す。
『もしかしたら、私が眠りについてる間に名称が変わったのかしら・・・・・・古代語があるとも言っていたし・・・。幾数年もの時が経てば言語が変わっていてもおかしくはないか・・・・・・』
「あのさ、」
小さくひょいと片手を上げてベンウィックが割り込む。
「アンタはいったいなんなんだ?聖隷じゃないのか?」
『ん?ええ、そうね。私はハーフ・・・・・・』
女は途中で言葉を区切り、ぐるり、と船乗りたちを見回す。
「(ハーフ・・・?なんだ・・・?)」
『精霊くん以外はみんな《人間》なのね・・・』
「そうだけど・・・質問の答えになってないぜ」
『あら、ごめんなさい。そうね、私は・・・・・・、種族的には天使・・・といった感じかしら? 』
「天使・・・!?」
一同から驚きの声が上がり、人間たちはざわざわとした。
「それは聖隷と同じではないのか?」
副長の問に、ふるふると頭を横に振った。
『精霊は自然から産まれる者でしょう?私たち天使は人工的に造られたモノ、よ』
そう言ってどこか悲しそうに目を伏せた女を見て、副長は眉を潜めた。
「おい、お前達。1度船に戻るぞ」
副長の言葉に、船乗りたちはえ?と驚きの声を上げる。
「副長!?この天使サマはどうするんだ?」
「連れていく」
「「『は??』」」
船乗りたちと女の声が綺麗にハモった。
「コイツの話に興味があるが、いつまでもここで話し込むのはなんだからな」
「ええー、得体の知れないヤツを船に乗せるんっすか!?」
「危険があるなら既に起こってるはずだろう。俺がいるんだ」
副長の言葉に女以外が、嗚呼と、どこか納得したように頷いた。
『えっと、よくわらないのだけれど?貴方たちの船に私を連れていくって事、でいいのかしら?』
「望むなら、ここに置いて行っても構わんが・・・こんな異界の沈んだ遺跡には何もないし誰も来ないぞ」
『え、ここ沈んだ遺跡の中なの?・・・それは長いこと石から目覚められないはずだわ・・・』
はあ、と女はため息を吐く。
『よければ、一緒に連れて行ってちょうだい』
「ああ」
すっ、と女が副長に向かって右手を差し出す。
『レシ・カーフェイよ』
「アイゼンだ」
そう返して、今度は差し出された手をしっかりと取った。
船へと向かう男たちの後ろを付いて遺跡を出ると海上に大きな赤い帆船が泊まっていた。
『まあ、ずいぶんと大きな船。これが貴方たちの船なの?』
「そうさ!俺達アイフリード海賊団のバンエルティア号さ!」
先ほど遺跡を移動しながら名前を教えてくれたベンウィックがへへん!と胸を張った。
『アイフリード海賊団!?』
レジは大きく目を見開いて大きな声を上げた。
「え、なんだ!?知ってんのか??」
『知ってると言うか・・・私の知るアイフリード海賊団は過去の世界再生時に、大樹の暴走に巻き込まれて壊滅したと聞いたから、おそらく全くの別物なんでしょうけど・・・。聞いたことのある名だったからちょっと大袈裟に反応しちゃったわね』
「・・・世界再生?大樹の暴走?」
『あー・・・えっと、アセリア歴よりも古い時代の話よ』
「アセリア歴??」
こてん、と首を傾げたベンウィックを見てレシは、まさか、と呟く。
『アセリア歴って分からない?』
「聞いたことねーな。なあ副長はアセリア歴って聞いたことあるか??」
「いや、ないな」
アイゼンが首を振ると、レシは頭を抑えた。
『歴史が残ってないくらい先の未来まで私は眠ってたわけね・・・。これは言語や種族が変わっててもおかしくないわね』
「まじかよ、それ少なくても5000年くらいは眠ってたってことじゃねーのか?」
『そういうことになるわよね』
気が遠くなるような時間の話に、ベンウィックはうげぇと舌をだす。
「お前達、とりあえず話は中だ」
そういってアイゼンが、船から遺跡へと掛けられた板橋を渡って甲板へと進んで行く。
うっす!と返事をしたベンウィックが後に続いて橋を渡り、レシは背の羽を使いふよふよと船の甲板まで飛んだ。
共に船へと戻ってきた人たちからはおおーという謎の歓声が上がり、船に残ってたであろう方々からはなんだなんだ!?と驚きの声をいただいた。
『とりあえず、船長さんにご挨拶した方がいいわよね?』
「あー、それが・・・」
ベンウィックは参ったように頬をかいた。
「アイフリード船長は、行方不明なんだよ」
『行方不明?』
そうなの?とアイゼンに訊ねると、ああ、と頷いた。
「奴の行方を調べているところだ。だが、アイフリードが居なくなった場所とそこに落ちていたペンデュラムしか情報がなくてな」
「ペンデュラム使いの情報も入ってこないし手詰まり。そんな状態に、この船とは別に探索船ってのがあるんだけど、それがここの島・・・ってか遺跡を見つけたってんで、気分転換がてら探索に来たってわけ」
『なるほどね』
「ま、とりあえず話は奥でしよーぜ」
そう言ってベンウィックが船室へと案内してくれた。
アイゼン達と話をした結果分かったことがいくつか。
一つ、自分がとてつもなく長い間眠りについていたこと。
一つ、この世界はウェイストランドと呼ばれ、統治しているのがミッドガンド聖導王国であること。
だが、大陸とその周囲の島々を治めているだけで、まだ見ぬ異海と呼ばれる先の地があるようだ。
一つ、文字は少し形が違うが大体の言語は私が使うものと同じであるようだ。だか、世界を構成する素養などの呼びかたや意味合いが違っていることがある。
ちなみに通貨はガルドで、回復アイテムのグミなどそういったものは私の生きた時代と変わらぬようだ。
一つ、住んでいる種族は人間と聖隷。
人間はまあそのまま人間の様だが、こちらの《聖隷》と言うのは私の知る《精霊》とはまた違うようで、《聖隷術》という我々でいう《魔法》や《長寿》だという話からどちらかと言えば《エルフ》や《ハーフエルフ》に近いように感じる。
が、まあ、元々は並の人間には姿の見えない存在で霊力の高い人間には見えていたということであるからやはり《精霊》にも近いのかもしれない。
ちなみにアイゼンによれば、聖隷であるアイゼンが現在アイフリード海賊団の皆に見えているのは、三年前の「降臨の日」と言うのを栄に人間たちの霊力が増し自分達聖隷が普通の人間にも見えるようになったのだとか。
以上の事から考えると、
《私が生きてきた遥か未来の世界》
《デリスカーランのように他の世界が私のいた世界とくっついて変わってしまった世界》
《私が他の世界へと流れ着いてしまった》
パターンがいつくか考えられる。
「飲めるか?」
『ええ。ありがとう』
考えをやめ、ベンウィックが淹れてくれたコーヒーを啜る。
「で、お前はこれからどうするんだ」
正面の席に座ったアイゼンに、そうねぇと返す。
『アイゼンくんは世界樹って知ってるかしら?』
「お伽噺か?」
怪訝そうな顔をするアイゼンに、まあ普通のヒトならそういう反応よね、と苦笑する。
『私のいた世界では世界樹は存在してたのよ。ただ、枯れかけていたけれど・・・』
「お伽噺や神話になっているくらいだ。今はどうか知らんが、昔は存在していたのかもしれんな。だが、1000年ほど生きてきたが、俺はまだ見たことがないな」
『そう。てか、アイゼンくんって1000歳なの。若いわねぇ・・・』
頬を付いてため息を吐く。
「1000歳が若いってあんた元々何歳だよ!?」
『さあ?5000歳位までは数えていたのだけれど・・・』
「はあ!?」
とんでもない桁にベンウィックは仰け反る。
「つまり下手したら10000歳は軽く超えてるかもしれねーんだろ!?こわっ!?見た目副長より若く見えんのに!こわっ!!」
『あら嬉しい。まあ、身体は25歳の状態で形成してるから若くて当然なんだけれどね』
「ひぇーー。天使ってやべーな!!」
『やばいわねぇ~』
コロコロと表情を変えるベンウィックが面白く笑ってみていると、アイゼンが、おい、と呟いた。
「話が脱線している」
『あら、ごめんなさい』
謝れば、いい、と返された。
「世界樹がなんなんだ? 」
『あー・・・、私は元々、世界樹の守り人なのよ』
守り人??とアイゼンとベンウィックが首を傾げる。
「レシは天使なんだろ??」
『天使で世界樹の守り人なの。世界樹とその樹の精霊を守るのが仕事』
「はー、まさにお伽噺みたいだな」
ベンウィックの言葉に確かにね、と頷く。
「つまりはお前は守り人として世界樹を守護するため世界樹を探すという訳か」
『そう。地形とか私が知るものとは全く違うから、まずはこの世界について調べることと、あとはお伽噺だとか神話だとかそういうのを頼りにするしか無さそうね』
骨が折れそう、と椅子の背もたれに頭を預ける。
まあ、ゆっくりやっていけばいい。自分には時間があるのだ。
「情報収集なら街だな」
『そうね』
「けど、その姿で街へ行くのか?」
ベンウィックが羽を指した。
「確かにその羽は目立つな」
『ああこれ?しまえるわよ?』
そう言って音も立てずに背の羽を消す。
「え!?しまえんのかよ!?」
『出し入れ自由でーす』
出したり消したりを繰り返して見れば、すげーっ!とベンウィックが目を輝かせた。
「なら、街へ行っても問題無さそうだな」
『ええ』
街へ行くまでしばらくはアイフリード海賊団にお世話になることにする。
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スキット01 エクスフィア神殿~