第1部
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それぞれのボトルも空になったところで、明日もあるしお開きにするかということになった。
闇ギルド
それぞれ椅子から立ち上がって、階段の方へと歩き始めたのだが……。
『あっ』
フラフラとした様子のレシがつんのめった。
前に転けそうになった所を腕を伸ばして抱きとめる。
『あらぁ』
なんとも呑気な声を上げたレシは、俺の方を見上げた後、ごめんなさいねぇと呟いた。
『私、二足歩行にはなれていなくって……』
確かにこれまでも何度か転けた姿を見た。
だが、今回のはそれだけでなく、明らかに酔いが回ったからだろう。
飲んでいる最中は、俺やロクロウの話を顔色を変えずニコニコと笑って聞いている様子だったから、天使と言うのは酔わない者かと思っていたが、どうやら違うらしい。
『元々飛んでいることが多かったから……って、そうよねぇ飛べばいいのよね』
「待て待て、こんな所で羽を出すな」
恐らく血翅蝶なら、広場でこいつが飛んだあの一瞬の姿でさえ知っている可能性があるが、俺たちの後に入ってきた一般の客が見たら大騒ぎになる。
『でも、上まで登るの面倒くさいわ』
「しょうがない」
軽くため息を吐いて、レシを支えていた状態からより自分の方へ寄せて小脇に抱えようとして思い返す。
以前、酔った船員を運ぶのに小脇に抱えたら吐かれた事があった。
それを思い出したアイゼンは左手をレシの背中に回し、右手を膝の後ろに入れて抱えあげた。
『わっ』
「おお。お姫様抱っこか!やるなぁアイゼン」
レシは小さく驚きの声をあげ、酔っぱらいのロクロウは笑いながらそう茶化す。
「しっかり掴まっておけ」
ロクロウを無視してレシに声をかければ、遠慮なく肩に腕が回され柔らかな感触が胸に当たる。
あまりに無防備な様子に、船の上では飲まさない方がいいなと考えながら、アイゼンはレシを運び階段を登った。
食事を終えたあと、休むと行ったベルベットとライフィセットは右の部屋を使うと言っていたのでそちらの部屋のドアを軽く叩くが返事がない。
流石に寝ているか、とドアノブに手を伸ばし回してみるが、ガチャガチャと音を立てるだけでドアは開かない。
どうやら鍵をかけているようだ。こちらはレシとは真逆で警戒心が強い。
ベルベットの隣にでも転がして置けばいいと思っていたが、そうはいかなくなった。
仕方がないと、俺とロクロウにと宛てがわれた左の部屋へ入れば、やはりベッドは2つ。
どうするんだ?と言うようにロクロウがこちらを見た。
「一緒に寝るのか?なんなら俺がレシと一緒でも構わんぞ!抱き心地が良さそうだ!」
「ロクロウ、お前は奥を使え」
カッカッカッと笑う酔っぱらいに、この無防備な女を任せるわけにはいかないだろうと、とりあえず手前側のベッドの縁にレシを降ろす。
『あら、私は眠る必要がないわよ。天使だから』
そう言われてみれば、拾ってから一度も寝ている姿を見たことがない。船の上で夜に様子を見に行った事が数度あったが、その時も起きてこの世界の文字の勉強をしていた。
「ほう、天使というのは寝なくていいのか。それは便利でいいな」
純粋な感想を呟きながらロクロウは奥のベッドへ向かい、その上に寝転んだ。
『ええ。本来は食事も必要はないわ』
「俺たち聖隷と同じか」
そう呟けば、きょとんとした様子でレシは俺を見あげた。
『そうなの?』
「ああ。睡眠も食事も必要とはしない。嗜好として取るものも少なくは無いがな」
『ふぅん。やっぱり聖隷は精霊ってことなのかしら……』
レシとは言語がほとんど同じで会話が可能だが、時折同じ発音の単語の意味が異なる場合がある。
今も前者の"せいれい"と後者の"せいれい"では違いがあるのだろう。
レシが目を開けたかと思うと、俺の手をとった。
『うーん。大精霊程の力は感じない……。所謂下位精霊に近いのかしら。だけれど下位精霊はほとんど実体を持たないというし……センチュリオンに近い気も……』
俺の霊応力を感じ取りながら何やらブツブツつぶやいて考察しているが、探られているような感覚が好ましくなく掴まっていない方の手でレシの頭に手を置いた。
「お前も俺たちと近い存在なら、状態異常にはなるだろう。というか、既に酔っ払ってるだろう」
同じ酔っぱらいのロクロウは、既にイビキを立てて眠ってしまっている。
「寝ろ」
睡眠の必要はなくとも、異常回復の為に寝ろとベッドに押し倒す。そのまま離れる予定が、レシによって崩された。
俺の手を握ったままだったレシが強い力で引き寄せ上に覆い被さる形になった。
「おい」
『聖隷も状態異常になるんでしょう?だったらアイゼンくんも飲んだんだから寝ないと』
ふふふと笑いながらレシが両腕を俺の背中に回してがっちりとホールドされる。
はあ、とでかいため息を吐き、真上だと重いだろうと横にズレる。
「今後、船の上では飲みすぎるなよ」
『どうして?楽しいのに』
うふふと、レシは少し赤い顔で笑っている。
野郎ばかりの海賊船で、こんな状態の女がいれば好き放題されるに決まっている。
「どうしてもだ」
『んー、どうしてもかぁ。なら、覚えておくわ』
そう言ってレシは目を瞑った。
酔っぱらいの言葉だから本当に覚えているかは謎だか、まあいい。
それにしても抱きしめられたままというのは癪だ。
空いた手をレシの背に回し、昔妹にしていたようにトントンと軽くリズムを叩きながら、アイゼンもまた目を瞑るのであった。
