第1部
夢小説設定
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「ふぅ……」
「お見事!」
無事に降りてきたベルベットと聖隷くんにベンウィックが声をかけた。
「まずは命の恩人への感謝が欲しいのう?」
魔法使いの子が近付いてきてそう述べれば、ベンウィックは怒った様子で彼女に詰めた。
「いやいや、触るなっていったのに大砲いじって暴発させたんでしょ」
「そ〜じゃが、あれはいい暴発じゃよ〜」
『ええ。いい暴発だったわ。ありがとう』
「お、おおう。素直に褒められると照れるのぉ〜」
「レシ、褒めるなよ!」
こういうのは野放しにするとまたやるんだからとベンウィックは怒る。
『で、どうして業魔に近づいたの?』
ベンウィックを適当にあしらって聖隷くんの方を見る。
「…………ごめんなさい」
その両手には、落としたはずの羅針盤があった。
なるほど、それを拾いたかったのか。
落ち込んだ様子の聖隷くんにベルベットは同じ目線になるようにしゃがんだ。
「ちゃんともってなさい。そんなに大事なら」
『…………ふっ、』
やっぱり、優しいのね。
「貸せ。進路を出す」
ベルベットと聖隷くんを微笑ましく見ていれば、空気の読めない男が聖隷くんへと手を伸ばした。
聖隷くんは一瞬アイゼンの方を向いたが、怒ったようにぷいと身体ごとアイゼンに背を向けた。
それを見てアイゼンは驚いたような顔をした後、小さく笑った。
「……なら、お前が羅針盤を見ろ」
「うん!」
聖隷くんは笑顔で振り返った。
「ただし、読み間違えたらサメの餌にするからな」
「!?」
「しっかりね」
悪い顔するアイゼンにビビった様子の聖隷くんに、ベルベットは優しい声色でそう言った。
そんな彼女を聖隷くんは不安そうに見上げる。
「あの……《ライフィセット》って?」
その質問にベルベットは罰が悪そうな顔をした。
「……名前よ。あんたの」
「僕の名前…………ライフィセット」
聖隷くん、もといライフィセットは嬉しそうな顔をする。
「いい名前じゃないか」
「マギルゥほどじゃないがのー」
なるほど。魔法使いの子はマギルゥという名らしい。それにしても彼女の耳は……。
「海峡を抜けるぞ。進路をとれ、ライフィセット!」
「うん!進路は……ローグレス!」
そう言って真っ直ぐ、ライフィセットは海の先を指さすのであった。
「いやぁ、新鮮だな!まもとに港に着けた」
船を降りるなりロクロウがそう言った。
今までどんな航海してたんだろうか。
「坊や。よかったのー。サメのエサにならずにすんで」
「うん。よかった」
マギルゥが面白半分に構えば、ライフィセットは本当にほっとしているようだった。
「いいの?海賊船がこんなに堂々と」
ベルベットが私にそう聞いてきた。
『知らないわ』
「知らないってアンタ……」
そんな会話をする私とベルベットの横をアイゼンは歩いていって、船着場に寄ってきた男の所へ行った。
『乗組員じゃないのよ、私』
「じゃあ、なんでこの船に……」
『それはおいおいね』
それよりも、とアイゼンの方を見やる。
「北の海はいかがでしたか、アイゼン副長?」
「へラヴィーサと
「それは耳寄りな。早速手を打たせていただきます」
「船長の手がかりがあったと?」
海賊団のみんなが探しているという行方不明の船長か。
「はい。大分前の噂ですが、アイフリード船長はタイタニア島に送られたとか」
「対魔士が管理する監獄島だな。わかった、行ってみよう」
「いつも通り、我社の商船として停泊届けを出しておきましたが、お気をつけて。ローグレスで盛大な式典があるせいで、ここも人目が多くなっておりますので」
「なるほど。情報が
2人のやりとりに納得したようにロクロウが呟く。
「情報が……見返り?」
「最新情報をいち早く教えてやれば、商人は儲ける機会を得られるでしょう」
ライフィセットはベルベットの言葉を聞いて、分かった!と言うような表情になった。
「だから、海賊でもかばってくれる」
『上手くやるわよね、人間って』
「アイゼン達はあちこちの港にこういうコネをもってるんだろうな」
「聖寮の規律でも、人の"欲"までは縛りきれんということじゃ」
「…………そうなんだ」
商人と話を終えたアイゼンが戻ってくる。
「監獄島へ行っても無駄よ。アイフリードはそこにはいない」
戻ってきたアイゼンにベルベットはハッキリと言い切った。
「なぜそれを?」
「あたしは監獄島から脱走してきたの。監獄の囚人が言ってた。この島から生きて出られたのはアイフリードだけ。メルキオルというジジイの対魔士が連れ出したって」
「メルキオル様は、特等対魔士で聖寮の長老。いつもは本部にいるはずだよ」
同じ聖寮の対魔士に使われていたからから詳しいね。意志を封じられていた間の記憶もあるようだ。
尚更過去の自分と似ている。
「"様"はいらない」
ベルベットの言葉にライフィセットは、えっ、と驚いた顔をしている。
『習慣づいたものは中々抜けないわよね』
よしよし、と後ろからライフィセットの頭を撫でる。手を離せば不思議そうな顔をして見上げられた。
「……海賊バン・アイフリードは、俺たちの船長だ。あいつの失踪には、聖寮の上層部が絡んでいるようだな」
「その本部とやらは王都にあるのかの?」
「うん。王都ローグレスの離宮に。行ったことないけど」
「ベルベットの目的も"そこ"にいる男だろう?」
「目的は同じというわけだな」
「謝らないわよ。巻き込んでも」
「それは
それで、とベルベットの目が私に向いた。
「あんたの目的は?」
『世界樹の捜索』
「世界樹って、御伽噺なんじゃないの?」
『私が知る限りでは実在したわ。ただ、現存しているかは分からないけれど……。それを知る為に、この世界の事、神話や御伽噺、そういったことを調べたくて……』
「離宮には、大きな図書室があるって聞いたことがあるけど」
「王宮の図書室ともなれば、珍しい本がわんさかあるじゃろうなぁ〜」
マギルゥの言うように、一般には出回らないような歴史的な本が王宮には置いてある可能性が高い。街の本屋に行くよりもこの世界についての情報は深く得れそうだ。
『それは調べ物にピッタリね』
「……つまりあんたも離宮に行くと?」
『迷惑になるなら行かないわ。代わりに世界樹に関係しそうな本だけ取ってきて欲しいけれど』
「……自分で取りなさいよ」
『ついて行ってもいいって事かしら?』
「好きになさい」
そう行ってベルベットは先陣を切って港を歩いていくのだった。