シスロディア
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リンウェルの案内で街の中を歩いていると、奥にある1番高い塔に、それを囲う四方の塔のてっぺんにある半円形の機器から光が射出し集められていた。
『投光器送りって言われてたのはこれかぁ』
「あれは……光を作り出しているのか?」
「そう。
「ジルファもあの中にいるんだろうか?」
そう呟いて、アルフェンは投光器を見上げた。
メネックは投光器は危険な作業だと言っていた。
カラグリアでダナ人に過酷な労働を強いて彼の手に付けられた
「あの光が集まる場所を見てみたいわ。案内して」
そう言って進んでいくシオンも恐らく私と同じく、あれを集霊器と踏んだのだろう。
カラグリアでも集霊器のある所を、
コソコソした方が疑われると、堂々と歩いていくシオンに追いついて、皆で塔の方を目指す。
アルフェンが蛇の目がいるのに意外と街の外に人が出ている事に驚いたり、それは中にいたらいたでなにか企んでると思われるからとリンウェルが説明したりして中央広場へ歩いて行けば、やっと塔の全容が見えてきた。
『ああ─』
「やはり─」
やっぱり城だったか。光が集まる塔になっているのは城の中央部。
「集霊器。光を注いでいるんだわ」
「光……星霊力か!」
アルフェンはようやく気がついたようだ。
「そうか。だからこの国は昼でもこんなに暗いんだな。闇に覆われて」
「闇というより光の欠如というべきでしょうね」
「光の欠如?」
ふむ。カラグリアが灼熱の地で火の星霊力を集めていたから、この豪雪地帯のシスロディアは氷の力を集めているのだと思っていたけど、そういえばこの星は地水火風光の五属性だったな。
光を失ったから雪が解けることなく凍てついた大地になった、というわけか。
「光が無くなれば暗くなるでしょう?」
「どう違うんだ?」
「星霊力としての光があるように、闇もあるということよ。……知らないの?」
『アルフェンは記憶喪失って言ってなかった?』
そうフォローを入れれば、ああ、とシオンは思い出したように呟いた。
そして、私がネアズに教えて貰ったのと同じようなことをザッとアルフェンに説明し始めた。
「いいこと?星霊力には属性がある。それが地水火風。それに光と闇の六つ。ただ、闇はレナにしかないし光はダナにしかないから、
「……本当だよ。だから私は闇の精霊力を扱えないし、反対にレナは光を扱えない」
でもレナに光が無いのなら、宙に浮かぶあの星はここのように暗いのだろうか。
それか、ダナからレナが見えるようにレナからもダナが見えるだろうからダナの星が光を放っていてそれによりレナにも昼夜があるのかもしれない。
詳しく聞きたいけど、そう言った話をシオンはしてくれなさうだなぁ。
「例外があるとするならば、光の
「……とにかくカラグリアで火を集めていたようにここでは光を集めているってことか」
「大昔はシスロディアにも昼と夜があったんだって。でも300年かけてシスロデンから国中にあの暗闇が広がったんだって言われてる」
「昼と夜……そんなものすら奪ったのか、レナは」
『とんでもないねぇ』
光がなければ多くの作物は育たないだろうし、雪は振り積もったままだしで、散々だな。
「長居は無用よ。気取られる前に離れましょう」
中央広場前通りに戻り長い階段を下る。
「闇雲に回っても埒が明かないな。といって〈蛇の目〉に尋ねる訳にもいかないし……。思い切って奴らの本部に忍び込むか?」
「そんな芸当ができるなんて初耳だわ」
『〈銀の剣〉の中に〈蛇の目〉の格好をした人達がいたから、彼らが情報を持ってきてくれるの待った方がいいんじゃない?』
勇んで飛び込んで、ジルファが居なかった時にただただ身を危険に晒しただけになるし。
どうしたものか、と思っていた所だった。
「あ、ねえあそこにいるのって…………」
そう言ってリンウェルが遠くを指さした。
なに?と彼女の指さす先を見る。
そこには〈蛇の目〉の格好をした少年が下を向いてとぼとぼと歩いていた。
『あの子、』
「ジルファの息子の……確かロウだったな。なんだか様子が変だ」
「何言ってるの。手間が省けたじゃない」
「あ、おい」
アルフェンが止める間もなく、シオンは階段を下り、とぼとぼ歩き路地裏へ入っていくロウを追った。
『いつもあの行動力には感心するわ〜』
「そんなこと言ってないで追うぞ!」
はーい、とアルフェンに返事をして追いかければ、ちょうどシオンがロウの背中に銃口を突きつけていた。
「お前ら確か──」
ロウは一瞬だけこちらを見たが、銃口を気にしないようでそのまま背を向けた。
「何の用だ?」
「危害を加えるつもりはない」
『キミが大人しかったらね〜?』
「静かに話がしたいだけだ。いいか?」
ロウの正面に回ってアルフェンが言えば、ロウは小さくため息を吐いた。
「話せよ」
抵抗する気力も無さそうなのを見てシオンは彼から銃口を離して、銃そのものを消した。
「ジルファの居場所を知りたい」
アルフェンがそう言えば、ロウは言葉を詰まらせ狼狽えた。
「助けたいんだ」
「……なんでだ?」
「なんで?お父さんなんでしょ?」
リンウェルが純粋な疑問を返せばロウは瞼を伏せた。
「……ああ、そうだ、親父だよ」
次に目を開けた時、彼は心底嫌そうな顔をした。
「……俺を捨てやがった、な」
「そんな……」
あの時の対応から見るに不仲というか、この子が一方的に嫌ってそうな雰囲気があったが、まさか……。
『あのジルファがねぇ』
そうは思えないけどと呟けばロウはキッと眉を釣り上げこちらを睨んだ。
「嘘なもんか。あいつは〈光り眼〉とやり合うことに夢中で、おふくろが死んだ時すら帰って来なかったんだ」
まあ、それは……幼い頃なら捨てられたと思ってもしょうがないか。
「だからって
「悪いか?あんただってそこのレナ女達とつるんでるじゃないか!」
『つるんでるのと手下になるのは違うことだと思うんだけど?』
少なくとも我々に主従関係はない。
「そうは言ったって、自分たちの都合の為に体良く利用してるだけだろ!」
『ふむ。それはそう』
実際、私もシオンもそれぞれの理由の為にアルフェンと手を組んでる。でもそれは逆にアルフェンだって私たちを利用してるんだけどなぁ。
ロウは淡々と答えたことが気に食わなかったのか、チッと舌打ちして、背を向けた。
「俺がこんな格好をしてるのは、 せめて……俺たちが受ける苦しみを最小限にするためた」
「詭弁ね」
シオンが呟けば、ロウはバッと振り返った。
「結局、戦わず逃げているだけじゃない。それを何?自分だけが辛いみたいに」
シオンの言葉にロウはカッと目を見開き拳を握った。
「てめえに何が分かるって──ぐあっ!?」
ロウは詰め寄ってシオンに拳を振るおうとした。瞬間バチバチと紫色の茨が伸びてロウを弾いた。
「く……ちくしょう…………」
茨でダメージを受けたロウは地に這い蹲る。
「いいこと、あなたみたいな──」
「やめろ!」
追い打ちをかけるような事を言おうとしたシオンにアルフェンが怒鳴る。
シオンはやれやれといったように背を向けてロウから離れる。
「……お前とジルファの間で何があったのか、 俺には分からない。だが、あの村で戦った時、 ジルファはお前には手を出さなかった」
「…………」
ロウは地面に座ったまま体を起こしたが口を開かない。
「あんなジルファを俺は見たことがない。あれはお前を傷つけたくなかったからじゃないのか?その後ひとり残ったのだって……」
アルフェンはロウの前にしゃがみ込んでまっすぐな目で彼を見つめる。
「俺にはジルファが意味もなく誰かを見捨てたりするとは思えない」
そうね。私も短い付き合いだけど、さっき自分の口から漏れた言葉が答えだと思う。
「知っていることがあるなら教えてくれ、頼む」
ロウは俯いたまま答えない。
『シオンは、戦わず逃げているだけって言ったけど、私もそう思うよ』
「おい、」
なんでほじくり返すんだ!と言うようにアルフェンが睨んできた。
『だって、キミにはその拳があるじゃない。怒りに任せてだったけどレナを殴ろうとする気概もある。だからそれを使わないのは勿体ない』
あの頃の私が羨ましかった力をこの子は持っているのだ。
『悩んでいるくらいなら利用すればいいじゃない、私達を』
そう言って、ロウの前へ行き、手を差し伸べる。
「………………。いい」
ロウは私の手を押し返して、ゆっくりとひとりで立ち上がった。
中腰結構辛かったんだけどな……。
「……親父が今どこにいるかは知らない。けど、近いうちに本部前の広場で見せしめに処刑するって聞いた」
処刑……とリンウェルは青い顔をする。
「わかった。ありがとう」
行こうとアルフェンは私たちに目配せをして歩き出す。
「……なんでそうまでして親父を助けようとするんだ?」
アルフェンは足を止めて振り返る。
「ジルファは俺に剣を取る機会をくれた。考えることを教えてくれた。俺はもっとあの人から学びたい」
『私はただ、助けてもらった恩を返したいだけ。それに、』
胸の前にグッと握った拳を当てる。
今はそれを出来る力を持っている
そのために