シスロディア
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
シスロディアの首府であるシスロデンへは抜け穴を使って入ることができた。
外からは自然の洞口のような穴だったが、中を進んで行けばレンガを積み上げた遺跡になっていて、リンウェルの話では忘れ去られたこういう場所が幾つかあるという。
遺跡の奥のハシゴを登ってマンホールの様な蓋付きの穴から出てシスロデンの裏路地に出る。
付近にいる人たちはリンウェルと同じ〈銀の剣〉の者ようで、見つかる前に早く行けと促された。
防寒着を着込んでいない私達は、この寒い地域からは明らかに浮いて見えるし急いでリンウェルたちの隠れ家へ向う。
道中には露店があり商売をしている者達がいるのが、カラグリアとはまた奴隷の扱い方が違いそうだと感じる。
「リンウェル!」
小声で彼女の名前を呼んだ男が近づいて来た。
「プレゴン!」
知り合いと会えた喜びからかリンウェルの声が大きくなり、プレゴンと呼ばれた男性は人差し指を口の前に置いて、しっ、と合図した。
「よく戻った。そちらの3人は?」
「大丈夫」
蛇の目じゃないよ、と言うようにリンウェルは頷いた。
「よし、中でメネックが待ってる。話はそこで聞こう」
そう言ってプレゴンは、彼の後ろにある建物の中に入るよう促した。
建物の中に入ればかなり広い空間が広がっていた。
だが、大きな暖炉があるおかげか、部屋の中はとても暖かい。
そこには10名前後の人達が居た。
「私が〈銀の剣〉代表のメネックだ」
後ろで団子状態にした髪以外は剃りあげているイカつい髪型で、メガネをかけた男性はニコリと笑って見せた。
初対面の人相手に失礼かもしれないが、なんかめちゃくちゃ胡散臭いな。
いやいや、人を見かけで判断したらダメだよね。
「カラグリアからよく来てくれた、と言いたいところだが」
メネックは顎に手を置いて鋭い目つきで我々を見た。
「私の目に狂いがなければそちらの女性達はレナではないかね?」
着ている物の質が奴隷である彼らとは明らかに違う。手入れされた髪や肌なんかでも、違いが分かるだろう。
まあ、私はレナ人はないんだけれど。
「捕虜を連れ歩いてるにしても、随分自由にさせているようだが」
「別に捕虜じゃない」
「どうか気を悪くしないでもらいたいのだが、我々としては神経質にならざるを得ないのだ。ただでさえ同胞の裏切りに警戒しなければならないのに、レナ人とは」
「何度も危険な目に遭いながら一緒ににここまで来た。彼女たちを追い出すなら俺もここにはいられない」
アルフェンが意志を曲げないと言うように腕を組めば、メネックは視線をリンウェルに向けた。
彼は、リンウェルとアイコンタクトを取った後、ため息を吐いた。
「分かった。この常闇の国では信用ほど軽い言葉もないが……信じよう。遠路来てくれたのに失礼な事を言った。許してほしい」
『いいよ〜』
私もさっき失礼な事思っちゃったし。
「ありがとう。早速だが、力を貸して欲しい。我々は〈蛇の目〉の摘発強化のために、息も絶え絶えの有様だ」
そう言ってメネックは腕を組む。
「使いを送ったのも、窮状に耐えかねた末の決断だった」
「俺たちもそのつもりで来た。 そのための手段もある。ただ、その前にやらなければならないことがある」
そう言ってアルフェンはかくかくしかじかと道中の出来事を説明した。
「──なるほど、君たちの指導者を助け出したいと」
「こちらの事情なのはわかっている。だが………」
「いや、元はといえば我々の要求で来たのが原因だ。やれることはしよう。その上で力を貸してもらえれば文句はない」
『よかったわ。そんなヤツ見捨てろなんて言うようだったら、私は降りさせてもらうとこだった』
私がそう言って笑えば、メネックは真面目な顔のまま、その大きめの口を開いた
「流石に仲間を見捨てろとは言えんさ。それに力になってくれる者は1人でも多いほうがいい」
まあ、そりゃあそうだ。
「しかし、〈蛇の目〉に捕まったとなれば、やつらの本部で厳しい尋問を受ける可能性がある」
メネックは再び顎に手を置いた。
「あるいは投光器での危険な労働か……。いずれにせよ居場所を掴む必要があるな」
メネックがそう言えば、分かったと言うように頷いたプレゴンがドアの方に向かって行く。
敵がジルファがカラグリアの解放組織だと知れば尋問の方だろうけど、ジルファの息子がその事を黙っていたらどちらかは分からないな。
「君たちも行くならリンウェルに案内させよう。ただくれぐれも目立たないように気をつけたまえ。敵は〈蛇の目〉だけでなくダナの住人の中にも潜んでいる」
怪しい人を報告すれば報酬がもらえるとリンウェルは言ってたっけ。
賢いやり方だ。
俺たちも行こうとドアの方を向くアルフェンに、メネックが声を投げかけた。
「君の態度から察するに、そのジルファというのは大した人物らしいな。それに、レナ人にまで必要とされている」
メネックは今度は私の方を見た。
その目は何を考えているか分からない。
私も会ってみたくなった
そう言ったメネックの言葉は本心のように聞こえたが……
5/5ページ