シスロディア
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私たちは食事休憩をする時に使った小屋まで避難して身を隠した。
シオンは銃を構えたまま、窓の傍に張り付き外の様子を伺っている。
私も一応通り道にテルクェスを置いてきたら、敵が近づいてきたらわかるはずなのだが、今のところ何も無い。
「……あれからだいぶ経つのに、誰も来ない」
「ジルファだけでなく、敵の追手もね。これからどうするつもり?」
「決まってる。ジルファを助け出さないと」
シオンの問にアルフェンは即答する。
『助けるったって、相手の足取りも分からないのにどうやって?』
「それは……」
「もし……」
ぽつり、とリンウェルが呟きみんなの視線が彼女に集まる。
「捕まったのなら、首府シスロデンに連行されたはずだよ。生きてればだけど……」
『向こうも私たちの事を見てる。誘き出すためにもむやみに殺したりはしないと思うけど』
普通ならジルファを餌にするはずだ。
『けど……。あの子が目を覚ましたら分からないわね』
彼にはジルファへの強い怒りがあった。
「まさか、ジルファに息子がいたなんて。〈紅の鴉〉の皆は知ってたんだろうか?」
……アルフェンって時々天然よね。今、紅の鴉が知ってるかどうかは重要じゃないでしょ。
「どうしてあの村にいたんだろう。あんな偶然あるのかな」
そう。リンウェルの言うようにそっちの方が重要。
そもそもなんでカラグリアのジルファの息子がシスロディアにいる?
アルフェンが壁を壊すまで国同士を簡単に行き来出来なかったはずだ。
スッ、とシオンの銃口がリンウェルへ向いた。
「あなたが見せたあの力……星霊術よね」
「シオン!?何をするんだ!」
『偶然じゃない、と言いたいんじゃない?』
「ええ。星霊術を使えるダナ人なんて聞いたことがない。実はレナ人なの?」
ジルファの戦意を削ぐため、予め用意された人員なのだとしたら……ジルファがここに来ると伝えられたのは、彼女しかいない。
「違う!」
「でしょうね。レナ人なら星霊術を使う時に目が光る。あなたが術を使った時、確かに光ってはいなかった。あなたは〈光り眼〉じゃない」
そう言ってシオンは銃を下ろし、窓の外への警戒に戻った。
「すまない」
とアルフェンが代わりに謝れば、リンウェルはフルフルと首を振った。
『レナじゃないし、私と同じような異世界人ってわけでもないでしょ?前に驚いてたし』
「うん」
髪が金ではないから水の民ではないのは確かだが、
「……あれは確かに星霊術だよ。レナがやってるのと同じ」
リンウェルは意を決したように話し始めた。
「私の……一族は、昔、魔法使いって呼ばれてたんだって」
「ダナの魔法使い ……そんなもの今まで噂ですら聞いたことないわ。この目で見た以上信じざるを得ないけど……」
「それは多分、私たちがレナが攻めてくるよりずっと前から隠れて暮らしてきたからだと思う」
ああ、なるほど。
「レナが来る前から?」
『ヒトは自分と違うものを受け入れられない』
水の民達も、爪術使いの数が少なかった頃は、不気味な力を持つものだと、同じ民同士での差別があったと聞く。
「うん。迫害されたり、狙われたり大変だったみたい」
「同じダナでも、か……」
「ずっとずっと隠れて生きてきたんだ。抵抗組織の人にも秘密にしてた。絶対に誰にも知られちゃいけないって、そう父さんにも母さんにも言われてたから」
そう言ってリンウェルは俯く。
「だがそれなら……どうして使ったんだ?」
「……分からない。あの人が死んじゃうって、そう思って気が付いたら……」
『そう……。危険なのに助けてくれてありがとう』
彼女の意思でジルファを助けたのだから内通者ではなさそうかな。
ぽんぽん、とリンウェルの頭を撫でると、彼女はビクリと肩を揺らした後、私の手から逃げた。
「ダナの星霊術……。レナにとって脅威なのは間違いないわ」
「おい」
「だからなに?わざわざ
シオンが内通者の線もなくはないが……。
疑うのはよそう。情報は外から出てるかもしらないし、仲間内を疑心暗鬼にさせる敵側の作戦かもしれないし。
「むしろ、そんな力を持ちながら使わずに隠れていたことが、私には理解できない。それで守れた仲間だっていたでしょうに」
『シオン、それは……』
酷だよ。
「……何にも知らないで勝手なこと言わないで!」
「よせって、ジルファにも言われただろう」
怒りで前のめりになったリンウェルと喧嘩腰のシオンをアルフェンが止める。
シオンは大きく息を吐いて、後ろを向いた。
「私はこの国の領将を倒せればそれでいい」
そう言って自分を落ち着かせた後、彼女はまた振り返った。
「彼女の仲間の目的だって同じはず。なら力を貸すのが道理じゃないの」
「それは俺たちの都合だ。それにまずはジルファだ。このままにしておけない」
「……いいよ」
その声に、え?とアルフェンはリンウェルを見た。
「あの人を助けるんでしょ?私……そのために使うよ。あの人に死んで欲しくない」
『本当にその理由なら私は止めないけれど、シオンへの反発でならおすすめしないわよ』
「大丈夫。本気だよ。私は、あの人に死んで欲しくない」
リンウェルの目はまっすぐに私を見つめていた。
『そう……。アルフェン』
振り返り顔を見れば、分かった、とアルフェンも頷いた。
「あの村に戻ろう。どうなったのかを確かめる」
まずは状況確認から
蛇の目が居ないか慎重に確認しつつ、4人は小屋から出るのであった。