シスロディア
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『うわ、寒っ』
岩窟の外に出ると、外は真っ白な雪に覆われて居て空気が冷えきっていた。
「ここがシスロディア………」
私と同じく初めてカラグリアの外へでたアルフェンがぼんやりと景色を眺めて呟く。
「首府まではどのくらいだ?」
「まだ、だいぶ先だよ。ズーグルもカラグリアとは違うから気をつけて」
ジルファが問えばリンウェルが答えた。
「分かった。これは離れず進んだ方がいいな」
ジルファの言葉に素直に、ああ、と頷いたアルフェンとは反対にシオンは隊から離れようとした。
「おい、シオン!」
「密集して襲われても銃では反撃しにくいでしょ。あなたたちの後を追うわ」
「そうか、分かった」
「……なんだよ、カラグリアじゃだいぶ打ち解けてたじゃないか」
頷くジルファの横でアルフェンがムッとしたように言うとシオンはイライラとした様子て組んた腕に触れていた指をトントンとさせた。
「あのね、ここは敵地よ。いつまでも浮かれ気分に浸ってもらっては困るの」
そう言って彼女は離れて行く。
「気にするな。あいつなりのけじめってやつだろう。それに考えてもみろ。《茨》のあるあいつに関わろうとする人間が過去にそういたとは思えん」
『あ〜、そうね』
気絶するほどの痛みを放つ《茨》を制御出来ない彼女は同じレナからも化け物のような扱いを受けていてもおかしくない。
「そんな相手に痛みを感じないからって、お前は近づきすぎたのさ」
「そういうもの……か?」
よく分からないとアルフェンは首を傾げる。
「あいつはひとりでダナに来たんだ。だが一度でも故郷を想う素振りを見せたか?」
「いや……」
私とは真逆だ。だから困っている。
彼女がレナに帰る気があるのであれば、同乗してレナに行き、そこから私の星へ帰る方法を探ることが可能かもしれないのに。
生まれ育った星を離れ、同胞に仇をなしてまでシオンが何をしたいのか、皆目検討もつかない。
今のところ分かっているのは
白銀高原を北東に進み、途中の小屋で食事休憩を挟んだ後、更に北へと歩いて行った。
大きな崖があり、その崖と向かい側を繋ぐ石製の橋を渡りながらアルフェンがチラチラと振る雪の先に何かを見つけた。
「あんなところに家が……人が暮らしているのか?」
「メザイ224。ありふれた小さな村だよ」
『224…地名ではなく番地。つまりは管理下の土地というわけだね』
そう考えを口にすれば、睨むようにリンウェルが見つめてきたが、事実である以上言い返す事が出来ないようで何も言っては来なかった。
そんな空気を壊すようにアルフェンが口を開いた。
「……何か聞こえる。争っているような」
「執行隊……。《蛇の目》が来てるんだ」
リンウェルの顔がいっそう険しくなる。
「迂回した方がいいと思う。どのみちあんたたちは目立つからそのつもりだったけど」
「住人に密告されかねないから?」
「……やらせてるのはレナだよ」
「そう?抗わないなら、嘆くのもやめるべきね」
リンウェルもシオンも互いに言葉の端々がトゲトゲしくなっていく。
「ずっと私たちを押さえつけてきた《光の眼》のくせによくそんなことが………」
遂に、怒りを爆発させたリンウェルに、よせ、とジルファが静止に入った。
「だって、こいつ……!」
シオンが言うことは正論ではあるが、リンウェルからすればどの口が言うって話だ。
怒りを抑えられないのも無理は無い。
「300年分の恨みをひとりに負わせるのは公平とは言えん。お前もだ、シオン。経緯を無視して今だけで語るな」
「「………」」
ジルファは大人だねぇ。
私なら、リンウェルの気持ちがわかるからシオンだけを怒った。
ジルファだってダナ人なのだからレナに恨みはあるだろうに。それでも彼はちゃんと双方を諭した。
「それで今、あの村で何が起きているんだ?」
ジルファが話を戻すようにリンウェルに尋ねた。
「……多分、通報を受けて《蛇の目》が誰かを連行しようとしてるんだと思う」
「まさか助けるなんて言い出さないでしょうね。私は
ジルファとアルフェンを睨むように見たあと、シオンがぷいとそっぽを向くのを見て、ハイ、と手を上げる。
『私もわざわざリスクを負う意味無いと思うし、リンウェルの当初の予定通り迂回したほうが良いと思うけど?』
ねえ?とリンウェルを見れば彼女は困った顔をして俯いた。
まあ、要するに見捨てて行こうよって案だしね。
リンウェルの隣に立つジルファは、私とシオンを見たあと、アルフェンの方を向いた。
「アルフェン、お前は何をしにここに来た」
「何って……」
助けたいかどうか、という質問じゃないジルファの問に私も、質問をされたアルフェンも首を傾げる。
「この国の奴隷たちを助けるためじゃないのか」
アルフェンのその返答に、ああ、と察する。
どうやらこれは助けることになりそうですよ、とシオンを見れば彼女も察したのかイライラとした様子だった。
「お前はまだ奴隷か?」
「そんな、違う!」
「なら、奴隷じゃない、自由に生きるってのはどういうことだ」
分からない、というようにアルフェンは黙り込む。
「覚えておけ。奴隷じゃないっていうのはな、自分の主人は自分。自分で考えて自分で決めて、その結果を受け入れる覚悟を持つってことだ。分かるか?」
「……分かる、と思う」
「よし、ならやれ」
やれ、じゃないが!
「シオン。ヴィアベル」
「聞いてなかったの?私はやらないわよ」
「分かっている。ここで、リンウェルとヴィアベルと待っていてくれ」
おや、てっきり手伝ってくれと説得させるかと思っていたが……。
「……炎の剣なしで行くつもり?」
「ああ。これは俺のわがままだからな」
なるほど。先程のジルファの言葉もあり、私達の考えを尊重してくれたわけか。
「わがままって………あなたね」
シオンは呆れたような、怒ったような顔をして振り返った。
「いいこと?私にはあの炎の剣の使い手が必要なの。こんなところで死なれては迷惑なのよ」
そう言ってつかつかとアルフェンの元へ歩み寄って行く。
『シオンも手伝うのなら、しょうがない。人数多い方が生存確率も上がるか……』
やれやれと、彼らに近寄り協力する意志を見せる。
「シスロデンまで無事にたどり着いてもらわないといけないのに……」
どうしようと言うようにリンウェルが呟く。
「何かのために誰かを犠牲にする。俺たちはそれを止めさせに来たんだ」
「前に……犠牲にしたことがあるの?」
「終わるまで隠れてろ。いいな」
リンウェルの問にジルファは答えず、そう言って村の方へと歩いて行くのだった。
メザイ224へ
分厚い雲の覆った薄暗い夜の中、我々は村へと侵入したのだった。