オルブス・カラグリア
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「ドク、ココル、無事でいてくれ」
祈るようにそう言って、鉄仮面がモスガルを封鎖している門を押し開ける。
「逆らいよって!!」
入るなり、怒声と剣が肉を割く音が聞こえた。
「よくも、お前らああああああ!!」
すぐ近くに居たレナの装甲兵に向かって鉄仮面が走り出す。
装甲兵の足元には血溜まりと共に2人が転がっている。
「っ……!」
『……、本当に』
無抵抗の人達を虐殺して行ってるのか。
「ヴィアベル、援護するわよ」
『ええ』
シオンの言葉に頷いて、2人とも詠唱に入る。
「火の星霊術よ──」
『光よ──』
「魔神剣!」
鉄仮面の剣先から繰り出した衝撃波が、装甲兵にダメージを与える。
『─フォトン!』
「─バーンストライク!」
光が爆散し、装甲兵の動きを止めた所に3連の炎が追撃し、装甲兵を焼き切った。
「おい、しっかりしろっ!」
倒れている人に鉄仮面が駆け寄って声をかけるが返事はない。
「……おいっ!くそっ…………!」
『……こちらもダメね……』
もう1人の方も見てみるが既に事切れている。
「向こうに生きてる人がいるわ」
シオンが指した方には、線路の上に座り込んでいる2人の男性と1人の女性だった。
「だから言ったんだ奴らに逆らうなと……勝ち目があるわけなかろう」
「俺たちは何もしちゃいない!なのにどうしてこんな目に……」
「見たろう、紅の鴉の連中を。何もかも奴らのとばっちりだ!」
聞こえてくる男2人の話に、何も言えなくなる。
……私たちがした事で此処が襲われているのだから。
「彼らが悪いっていうの?」
一緒にいる女性がそう言った。
「あの人達私たちを助けようとしたのよ!?」
確かにそうだが、そのせいで人が殺されるなら元も子もない……。
「……ここにはもうレナは居ないみたいだ。奥に進もう」
「そうね……」
うん、と頷いて、この地にどうやら詳しいらしい鉄仮面を先頭に進んでいく。
「俺は……遅すぎたのか……」
進む先々に死体が転がっている。
「やめてくれ!子供には手を出さんでくれ!」
何処かから、少ししゃがれたお年寄りの声が聞こえた。
「今のは……!くっ、間に合ってくれ!」
鉄仮面が一目散に走り出す。
その後を慌てて追いかけて行く。
階段を登り上の階層へ着くと、子供を庇うように前に立つお爺さんと、剣を構えた装甲兵がいた。
「ドク!ココル!」
鉄仮面の知り合いの用で彼は名を叫ぶ。
「やめろおおお!!」
剣を抜き装甲兵へ向かっていく鉄仮面に続く。
流石の装甲兵も敵対してくるものを放置する訳にも行かず、子供とお爺さんを置いて、鉄仮面と対峙する。
『2人とも私の後ろに』
「お前さん達は……」
お爺さんは鉄仮面とそれから少し離れた場所取りから銃で戦うシオンを見つめた。
『鉄仮面の知り合い。とにかく戦闘に巻き込まれたくなければ私の後ろに』
「あ、ああ。ココル」
おいでとお爺さんは子供の手を引いて私の後ろに回った。
防御用にテルクェスを周囲を旋回する様に飛ばし、詠唱に入る。
『更なる力を──チアリング!』
攻撃力増強の爪術を鉄仮面に掛ける。
「うおおおおおお!飛燕刃!!」
鉄仮面の剣が、装甲兵の身体を真横に2回切りつけ、相手は倒れた。
「無事か!」
そう言って鉄仮面は私の後ろにいる2人の元に駆け寄った。
「他のみんなは?やつらはまだいるのか!?」
「落ち着け、鉄仮面。もう、大丈夫だ」
お爺さんが窘めるようにそう言えば、鉄仮面は少し冷静になったようだった。
「多くは逃げ延びたはずだし、わしらも生きとる。抵抗組織が現れた後にしては幸運な方じゃ」
「幸運ってこの有様がか!?」
この地でこの歳まで生きてるって事は、今までに過去にあった惨劇も色々見てきたのだろう。
「これもまたダナの、奴隷の宿命よ」
諦めて、受け入れているから、この方はこの歳まで生きてこれたんだろうな……。
「歯向かえば命はない。大人しく従っておれば生き残れるかもしれん。命あっての物種だ。だから……」
「時節を待てって言うのか!?」
鉄仮面が感情的に言葉を放つ。それにお爺さんは冷静にそうだ、と頷いた。
「それは生き残るために誰かを見殺しにする。そう言うことじゃないのか、ドク!?」
…………きっつい事いうなぁ。
私は正直、ドクの気持ちも分かる。
私もあの狭い檻の中で…………、似たような事を思っていたから。
「みんなの行く末を差し出した上に、人を犠牲にして生き残ったところで、結局待つだけならなんになるっ!!」
『…………!』
待つだけ、か……。本当にキツいことを言ってくれる。
「……抗ったら何が起こると思っとる?抗った本人が死ぬだけなら本物であろう。だがな、その責めはその1人の死では許されん」
そうだ。そうして向けられる矛先は同じ種族なのだ。
「その結果がお前の目の前に広がっている惨状だ……耐えて待つことに意味はないか、鉄仮面?」
「それは…………。止めたいはずの死を広げる。それは愚かだろうさ。でも待つことに慣れ、いつか抗おうとする心さえ失う。そんな自分になってしまう方が怖い…………。俺はもう出会ってしまったから」
鉄仮面は真っ直ぐドクを見据えて告げる。
「支配に抗うと命を賭けて生きる人。例え命が尽きようと、次に託そうと戦う人たちに……。同じ命を賭けるなら、彼らのようにありたいんだ」
人としての意思
彼はもう奴隷では居られない。
それでも尚、まだ彼を奴隷だと言うのなら、あの頃の私も………。