オルブス・カラグリア
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ここの世界に来て1週間以上たった。
この間の城での騒ぎを後から調べたら、なにやらレナの女の子が城に潜入し何かを盗んだらしい。そして彼女の話には必ず【茨】という単語がレナの装甲兵達の会話の端々で聞こえた。
ちなみに、最初はその少女の名かとも思ったが、少女の名はネアズが別に調べ、入手して違うということが分かっている。
そして、昨晩、その城から逃げ出したと言う少女が、モスガルという労働地区の周囲で捕まり、モスガルから早朝に、列車で運び出されるという話を聞いた。
『…茨ってなんなんだろうね』
茨と言えばバラなどの植物のイメージがあるが……。不思議な事に調査によると、レナの装甲兵達は、茨を盗んだ○○を捕まえた、などではなく、茨を捕まえたと言っていた。だから茨自体が少女を表しているものと言えよう。だけど、彼女の本名ではない。コードネームなのだろうか。
「さあな。それを知るために今ここにいる。そうだろう?」
そう言ってジルファは、今いる崖の下を覗き込んだ。
真下に見えるは、線路。
今からここを通るであろう列車に、奇襲を仕掛ける。そういう作戦だ。
「お前たち、準備はいいか?」
「ああ」
『おっけー』
私とガナルの返事を聞き、ジルファはよいしょと、大きな樽を抱えた。
『目標補足』
樽を上から落とした時の重力加速度、列車の速度は事前に調べてある。
そこから考えて落とすタイミングを間違えないように事前に、私のテルクエスを目印になるよう空中に待機させてある。
さん、
に、
『今!』
列車を引くズーグルの頭が、テルクエスの真下にきたタイミングで、私が合図を上げると、ジルファは抱えた樽を崖の下に投げ捨てた。
完璧なタイミングだった。
ズーグルを操縦していたレナの装甲兵の真下に樽は落ち、その衝撃で中の爆薬が爆発した。
列車も巻き込むほどの威力で、脱線させ、辺り一面煙で包まれる。
その隙に下に降りて、目的の貨物車へ駆け寄る。
「ガナル!ヴィアベル!」
ジルファの合図で倒れて扉の空いた貨物車の中に入る。
「は、」
隣でガナルが息を飲む。
奥に、薄桃色の長い髪を持ち、真っ白な薄手のワンピースを来た女の子が、手首を拘束され、釣り上げられて居た。気を失っているようだ。
『この子が、茨…?』
「──、!いたぞ、ジルファ!」
ガナルが外のジルファに聞こえるように大声で言い、少女に近づく。
「拘束をどうにかしねぇと」
鍵はないから力任せに壊すしか無さそうだ。
『これは?』
その辺に都合よく落ちていたスコップをガナルに放り投げる。
「やってみる」
ガナルは手にしたスコップを、思いっきり振り上げ、少女の手首の拘束具を叩いた。
カンッ、と音をたて、スコップがぶつかり、その衝撃で、金具が壊れ拘束具が外れた。
重量に従って床に落とされた少女の肩に、ガナルが触れた。
その瞬間。
「うわあああああっ!!!」
少女の体から現れた光の茨が、ガナルの身体を絡めとり、バチバチと雷のような光を放った。
これが茨か!この子、無意識下でこの茨を発動させてる!?防御本能というやつだろうか。
『ガナル!手を離して!』
叫ぶが、茨が放つ痛みに悶えるガナルには聞こえていないようだった。
茨がだんだんと広がりこちらまで伸びてくる。
やばい。
私の身を守るようにテルクエスで防御するが、こう何本も枝分かれされては全てに対応出来ない。
このままでは私も……!
『…っ、起きて!』
少女を目覚めさせて、彼女の意思で止めさせる他ない。
『起きて!シオン・アイメリス!』
事前にネアズから聞いていた、その名を呼ぶ。
「……、……っ!」
ハッとしたように少女が目を見開いた。
「うがああああああああ」
続く、ガナルの悲鳴を聞いてか、ぴたり、と私の周りを囲っていた茨が動きを止めて、一瞬にして何事もなかったように消えた。
『ガナル!!』
ぐったり、と倒れ込んだガナルに慌てて駆け寄と、少女は、じり、と1歩身を引いた。
そんな彼女をおいて、しゃがみこみガナルを見る、ぴくぴくと痙攣しているところを見るとまだ生きている。
『……』
「……っ、」
その様子を黙って見ていた少女は、今なら行けると思ってか、走って外に向かって行った。
『あ、待ちなさい!』
追いかけようと思ったが、ガナルを置いて行っていいのか……、いや、
『ジルファ!逃げたわ捕まえて!』
外にジルファがいることを思い出し、咄嗟に叫ぶ。
それから自分よりガタイのいい、ガナルの腕を引っ張ってを肩に乗せるように抱える。
『重い……っ!!!』
とりあえず彼を安全な場所に……って、まあ大声上げればここにいるって分かりますよねぇ。
『─ウィスツェス!』
飛び込んできた装甲兵の顔面に、テルクエスをぶつける。
突然の衝撃に驚いた兵は後ろに倒れ頭をぶつけたようで、意識を失い動かない。
他の兵が入ってこないところを見ると、ジルファと共に少女を追ったか。
……とにかく、私は彼を連れてポイントβのネアズと合流しよう。
『せー、のっ、』
頑張って抱えようとしてみたが、やっぱりダメだわ。
ごめん、ガナル。
ずりずりと彼の足を引きずりながら先の合流地点を目指した。
茨を求めて
それにしても、アレが茨と呼ばれる正体か。まだ十代の少女じゃないか。