オルブス・カラグリア
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ダナにきて数日経つが、この暑さには依然慣れない。
『死にそう……』
「このくらいでなんだ。この辺はまだ涼しい方だ。この先のモスガルはそこら中に火の粉は舞ってるし燃えてるからな」
そう言うのは短い黒髪の男ネアズ。
今日は、ウルベゼクの先にあるギルド駐屯地に潜入していた。
『そこら中、火の粉って……』
「モスガルは採掘場になっているんだが、そこで採れる燃料に、火がついてあちらこちらで燃えているんだ。それまた火の粉が舞い、土地に滲み出している燃料に燃え移る」
『うわ………そんな地獄みたいな』
「地獄だよ。まさに」
険しい顔をするネアズに、なんと返すべきか悩む。
『……そんな所に近い割にこの辺をレナが駐屯地にしてるのはなんでなの?』
「この場所には枯寂の海岸洞があるからだろうな」
『海岸洞!!』
「なんだ、急に生き返ったみたいな顔して…………って、そうか。水の民ってやつなんだったな」
こくこくと頷く。
しかしなるほど。海岸洞があるから海風が入り他の場所より少し涼しいのか。……いや?別に涼しくはないな。
『ちょっと、寄ってみたりは…』
「しないぞ。今日の目的はわかってるだろう」
『…へーい』
見つかる確率が高いのに、わざわざレナ兵士がいる駐屯地に来ているのは、情報収集のためだ。
一応、ジルファからざっくり教えて貰ったのは、このカラグリアの
星霊力というのは、この地の物や生命に宿る力らしく、ダナ人の労働により集められ、集霊器に溜められる。
そしてまた、レナ人たちはその星霊力から星霊術なる物を使うらしい。多分これは私たちの世界で言うブレス──魔法の類だろう。
相手が火だから、水と光の海属性を得意とする私には相性が良いとは思えるが、何せ相手は軍を率いる。領将と戦う前にやられてしまうかもしれない。
レナ人の総数は少ないらしいが、それでもレナの技術を使った特殊な装甲兵らしく、なまくらの刀1本集めるのもやっとな奴隷たちでは数の有利はあれど装備の差で負けるだろう。
どうにかこちらが優位に戦えるようにしなければならないが……。
『なんか、思ったより手薄だね』
まあ日中だし、採掘場の方の監視とかに出ているんだろうけど、それにしても少ないな。
「おかしいな。普段ならもう少し在中していんだが……!身を潜めろ」
慌てたようなネアズの声に、急いで近くの岩の後ろに身を隠す。
ガシャンガシャンと鎧の音が聞こえてきた。
1人の装甲兵が走ってこちらに来ていた。
見つかったか?
じっ、と耐えていると装甲兵はこちらには気づかなかったようで、そのまま走り去っていき詰め所の中に入って行った。
「増援を頼む。城内へ急げ!」
「増援だと?珍しいな」
「石付きが入り込んだのか?」
彼らの言う石付きとは、奴隷にされてるダナ人たちの事だ。
ダナ人達は星霊力を集めるために霊石と呼ばれる石を生まれて直ぐに埋め込まれるのだそうだ。紅の鴉のみんなは抉りとったらしく、その手に大きな傷跡が残っている。
「いや、厄介なのが入り込んだ。とにかく急げ!」
先程入ったと見られる装甲兵が出ていき、それに続いて他の装甲兵たちもやれやれ、と言った様子でぞろぞろと出ていった。
装甲兵たちが見えなくなるまで静かに身を潜める。
「行ったな」
『お城なんてあるんだね』
「ここからでも見えるだろ」
そう言ってネアズは、岩壁に囲まれる地の先を指した。
そこには杯のような形の大きな山。
『え、あれって……火山じゃないの!?』
ウルベゼクからも見えていたが、火山が噴火した結果あんな形たちになっているんだと思っていた。
「ああ。あれはグラニード城。燃えているように見えるのは、そこにある集霊器に集められた火の星霊力でそうみえてるんだ」
『はぇー』
私が思ってる煌びやかなお城とは全然違った。
岩壁出できた自然の城ってことか。
『あそこにビエゾってのがいるのか』
「ああ。それにしても……、誰かが入り込んだぐらいで、駐屯地の者にまで緊急招集をかけるか?」
真剣な顔をしてネアズが考察している。
『厄介なのって言ってたし、普段なら奴隷が入り込んだぐらいは城内の警備で対処できるってことでしょ?』
「ダナ人には戦う術がないからな」
だよね。なら緊急招集の謎は恐らくダナ人の侵入ではない。
モンスター……じゃなくてこの世界だとズーグルだっけ?レナ人たちが飼い慣らしてるらしいけど、はぐれて野生化したのもいるし、そういうのが入り込んだんだろうか?
分からないが、急ぐからには何かしらの事情があるはずだ。
『後を追う?』
「馬鹿言え。兵力が増強された所にわざわざ行くやつがあるか。なにがあったかは後日巡回の兵達のおしゃべりから拾えばいい」
『なるほどね〜。まあそれに一応今回の目的は果たせたわけだしね』
「まさか、城で何かあった、と言う情報だけで帰れると思ってるのか?」
『まっさか〜。でも、それのおかげで分かったことがあるでしょ?』
「今の情報でか?」
うん、と頷く。
『城で何かあれば直ぐに追加の兵を呼ばれるってのは結構大事よ。しかもだいたいどのくらいの数の増援が行くかも分かったし……。あとは兵がいない時を見計らって、ここから城までにどのくらいの時間がいるのか計算しとくと、こちらから攻めるにしても、逆手に取りやすいよね』
そう言えばネアズはキョトンとした顔でこちらを見ていた。
『なに?』
「いや……。ガナルからヴィアベルは頭がいいと聞いていたが、本当だったんだな」
『あはー、そういう風には見えなかったってか?』
「そういう喋り方をするからだろうな」
『普通に失礼。まあ、別に頭いいって訳じゃないよ。生き抜くためにはあれこれ考えにゃならんかったってだけだし』
「ああ。それなら分かる」
まあ、ネアズもそういうタイプだろうね。策に策を練って奴隷から逃げてきたんだろう。逆にガナルなんかは力押しで逃げてきてそう。
『まあ、私の話はいいよ。それより、ちょうどよく手薄になったし、貰えるもん持ってちゃおうよ』
詰め所ならなんかお酒とか食べ物とか飲み物とかお酒とかお酒とかあるかもしれない。
「けど、警備が残ってるぞ」
『いやぁ、こういう時ブレス系は奇襲がしやすくていいよね〜』
「おい、まさか」
『──光よ、フォトン』
小さな光の爆発が、詰め所の前で警備をしていた装甲兵を吹き飛ばした。
『今よ』
「お前、やるならやるって先に言え!」
小さい声で怒るネアズと共に走って詰め所の中に入る。
詰め所の反対側を警備してる兵が異変に気づく前に、貰えるものを持って出て行かなくては。
潜伏ミッション
戦利品は、くず肉と500ガルドとアップルグミだった。